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2人旅。御都での挨拶。

ずるずる


ずずず


ごくり


「美味かった!」


「ごちそう様でした」


「それは、良かった」


 小殴音は、2人の健啖ぷりに呆気に取られていた。


 それはもちろん、兵だ。良く食べるだろうが。


 ここは、ある意味、敵地。敵の指定した店で、敵の勧めた料理を、お代わりした。大物過ぎる。流石、ダイコウチを作っただけの事は有る。


「腹も満ちた。次は遊ぶか。それともデザート行くか?」


「折角、小殴音殿ともお近付きになれた事です。デザートで親睦を深めましょう」


「それで良いか」


「私は構わないが。まだ食べるのか」


「腹八分と言います。アイスは、5個までです」


「だな」


「そうか・・」


 何も言う必要は無さそうだ。多少なり気を使ったこちらがバカだったのだ。


 3人は、アイス、クレープ、パフェを食べた所で食後の食を切り上げ、遊びに出た。


「んで。ここいらには、何が有る」


「そうだな。歴史資料館など」


「良いですね」


 敵を知り己を知れば百戦危うからず。知識は取り込んで損は無い。


「刀剣館とかも有るか?」


「少し歩くが、良いか」


「全然。腹ごなしに丁度良いぜ」


 一行は、小殴音の案内で、御都の歴史、武器の変遷を見聞きした。


 御都は、ヤマトの流れを汲み、刀農、鮭川からの人間も入り混じった、混在都市である。何故、ヤマトから離れたのか、は分からないらしい。恐らくは、首長争いの結果だそうだが。


「よくも、ヤマトに吸収されてねえな」


「間にフ・ズィが有るからな。あの魔獣の巣窟を1国で相手取るのは、厳しい。出来れば、フ・ズィには触りたくない。延々湧いて出る魔獣の相手をしつつ全面戦争を仕掛けるには、時と力が足りなかった」


 その時が熟した時、蹴速が来てしまった。


 翌日も小殴音の世話になり、何となく他の5将軍にも会って、食事などしつつ、鮭川の情勢、コウチ、ダイコウチの現在について話し合ったり。


 超騎士は、特盛が政治に踏み込みすぎていまいか、少し考えたが。問題が発生した段階で、この5将軍を消せば良いと考え直し、特盛の自由にさせた。


 それは、子供の守りをしているかのような発想だが。


 特盛は、話をしながら、御都側の意図、真意を探る意思は無かった。


 こいつらは、強いのか。それとも、そこまででも無いのか。


 おれとやりたがらないなら、弱い。今すぐやるなら、強い。


「今日。暇か?」


「そうだな。訓練場も含めて、空けられるぞ」


「話が早くて助かるぜ」


 特盛は、御都の人間と戦った事が無い。それはいけない。不健全だ。やはり、人間たるもの。健康的な異文化コミュニケーションを図らなくては。


 斬場刀は脇に置く。稽古で壊されてはたまったものでは無い。


「わりいな。訓練用のを持ってくるんだった」


「構わんよ。噂に聞く、鬼神の力。見せてもらおう」


 3名家の力を、新しい5将軍は知らない。少なくとも、特盛は強かろう。では、特盛はどの程度なのだ。御都は今すぐコウチとやり合ったりはしない。が、敵の力は知っておきたい。


 先ずは、特盛と小殴音。


「おれをボコったからって、コウチから抗議は行かねえ。全力で頼む」


「心外だな。コウチと戦はしないが、コウチの意に沿うために在るのでは無いぞ、御都は」


「それは楽しみだ」


 目を見開き、歯をむき出し、殺す態度に入った特盛。


 それを見て、あれ、今日が自分の命日?と気付いてしまった小殴音。


 特盛に害意は無い。相手は、5将軍。3名家が相手をするレベル。今の自分では、勝てない。だから、全てを振り絞り、学ぶ。


 胸を借りる、この時。無駄にしない。


 お互いに、気を入れて、構える。


「行くぞ!」


「おお!」


 飛び込んだのは特盛。有我に相手してもらう時と同じく、真剣に行く。


 速過ぎは、しない。だが、この迫力は!


 小殴音は、斬撃が当たらぬよう、姿勢を崩さない事を第一に避け続けた。そして、隙を狙い、攻撃。特盛は、躱した。多少、動きに乱れが生じつつも、躱し、反撃を叩き込む。更にそれを避ける小殴音。


 戦いは、長引きそうだ。


「これが斬場刀の使い手。鬼神。小殴音と互角か」


 小殴音の方が、特盛より速い。だが、特盛はもっと速い連中と訓練している。今更、小殴音の速度で、驚きはしない。だが、だから勝てるかどうかは、話が別だ。


 強過ぎは、しない。だが、明確に勝てるわけでもない。


 手強い。本気でも、勝てるかどうか。


 特盛は、御都のトップ6人に勝てるかどうかを考える不自然さに、気が付かない。普通の兵の感覚では、ないのだが。


 特盛は、集中し始めた。それに気付いた小殴音は、その集中の隙を突きに行く。文字通り、剣を突き込み、集中の邪魔をする。


 だが、特盛は剣を構えたまま、微動だにしない。構えたまま、来た切っ先を弾く。突きを即応で、弾いた。


 これは・・


 思考に入った小殴音を、今度は集中を終えた特盛が襲う。


ごお


 避け、られない。小殴音は、避けるつもりであった。だが、攻撃の範囲が大きい。避けようとすれば、ダメージを負う。防御する!


 剣を構え、待ち受ける。気を高め剣をしっかりと保持。


 だが、特盛は、全てを砕く。


がお


 全力でガードしたはずの剣が、粉砕された。


 しかも、剣は止まっている。


 剣を砕くほど力を入れていて、尚止めるとは。どういう腕力をしているのだ!


 眼前でピタリと止められ、命拾いした小殴音は、降参した。


「ふう」


 何とか勝てた。が、向こうは本気ではなかった気がする。おれが斬場刀ではなかったように。あちらも、全てを出し切ったってツラじゃない。


 小殴音は、身の置き場に悩んでいた。負けてしまった。有名な者。しかし、3名家程の実力は、まさか有るまい。3名家が自由に動かさせている以上、それなりなのだろうが。


 5将軍は、小殴音の敗北を見ても、特に驚きも否定的な感情も無かった。コウチの3名家が、活動を黙認している存在。ある程度以上の実力者であろうと、予想はしていた。


「お見事」


 超騎士は、両者に拍手を送った。


「ありがとな」


「ありがとう」


 向かい合う2人。


「小殴音。相手してくれて有難う。お前のおかげで、良い思い出が出来たぜ」


「私は、何と言うか、負けてしまって呆然としている。強いな、お前。これでも、私は御都の5将軍の1人なのだが」


「おれは全然だよ。お前が本気じゃなかったから、勝てた」


「そう言う事に、させてもらおうか」


 小殴音も、一応本気だったのだが。そう言われては、もっと修行を積んで、いつか、これが本気だー、とやるしかない。


「我々の相手は嫌かな」


「大喜びだ。嬉しいぜ」


 特盛は、残りの5将軍とも戦い、1勝4敗の記録を打ち立てた。


 特盛の太刀筋は、そう複雑なものではない。レベルが高ければ、1戦で読み切れるものでしかない。その上で、その読みごと断ち切るのが特盛だが。今は、5将軍の方が強い、と言う事だ。


 全身に苦痛の走る特盛は、治癒を有り難く頂戴し、稽古に多いに感謝した。


「やっぱり強い奴は幾らでも居るんだな」


「お前も十分に強い。初見なら、困った事になっていただろうな」


 これは、本音。小殴音との1戦を見ていたから、対策を講じる事が出来た。


 その後、雑談など交わし、5将軍とは別れた。


 夜。ホテルにて。


「ありがとな。何も言わないでくれて」


「何がです?」


「お前から見たら、どんぐりの背比べだったろ。でも、何も言わなかったな」


「あなたも、もっと強くなりますよ。すぐに。確かに今は、私には勝てません。今日会った5将軍とまとめて、私1人で勝てるでしょう。でもそれは、現時点の話です。未来は分からない。鍛えれば、分からない」


「おれも、強くなりたい」


「その気持ちが有れば、その気持ちに準じれば」


「そして、生きてれば、だろ」


「分かっては居るんですね」


「まあなー。口に出して言われはしねえが。心配かけまくってるのは、分かってるさ。実力がねえから、選ばざるを得ないだけなんだけどな」


「ふむ」


「まあ、良いや。寝ようぜ」


「皆があなたを信じている。それだけは、忘れないでください」


「信じてる?」


「あなたが強くなる事であり、その事があなたの人生を輝かせると」


「分かんねえ。けど、頑張ってみるさ」


 明日の予定。旅程など喋りつつ、夜は更ける。

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