海王、再び。
モモ ヤサシサは、魔神シロにもらった首輪を大事に使っている。シロお手製なのだ。
それと同じものが、獣沓にも。これで、言葉が通じるように。
「如何なる理屈か、理解も出来ませんが。魔神様は、すごい方ですね」
何となく思ってたけど。賢いな、こいつ。
獣沓の知性が上がるような効果は、無い。翻訳機能のみ。それはシロから聞いている。この言葉使いも、語彙も、こいつ自身のもの。
「用事はだいたい済ませた。今やるべき事は、無いよな」
「じゃあ、お買い物?お出かけしようか」
「良いな」
神無達は、中つ国に出かけているが。お土産でも買ってくれば、良かろう。
「アオミドリの奴はすねる」
「奴はともかく。マオミドリには、ちゃんと土産を」
「ああ」
アオミドリには、人形。マオミドリには、本、玩具、菓子。
神無には、何が良いだろう。
「行ってから決めようぜ!行くんだろ、ダモクレスランド!!」
「おお」
亜意の気合。もう、お泊りの準備まで済ませてある。と言うより、何時でも、遊園地に行けるよう準備していたのだ!!周るコースもシミュレートしてある。晴天時、雨天時、休日祝日平日、家族のその時の人数によって、何処で食事及び軽食を取るのか。全て考えてきた!
「とっととあっち行ってホテル予約するぜ!」
「お、あ、おお!」
一行は、東京ダモクレスランドへ!
コウチの守りは、任せたぞ!在前御徳!
「え」
必死に頼み込んで、何とか、シロの結界を残してもらった。コウチが知らない者が、1定距離内に入ると、反応が有る。排除はしない。民間船まで、入ってこれなくなる。
「3名家なんて。どいつもこいつも、バカだろ」
「もー。本人の居ない所での悪口なんて。最高にみっともないですよ」
「良いじゃあないか。居ない事だし。・・・・・・誰か残れよ!!!怖いだろうが!!!アインシェンとかが、うっかり反乱起こしたらどうするんだよ!!」
「迎撃するに決まってるじゃないですか」
「そうだけどさあ」
「3名家の不在は痛手。ですが、我々は、3名家のおまけでは有りませんよ。コウチは我らの国。3名家におんぶにだっこなんて、カッコ悪すぎですよ」
「おお・・。言うようになったなあ・・・」
「そりゃ、付いて回りましたからね。何も変わってなかったら、そっちのがすごいですよ」
金甲量猟は成長した。御徳が切り込んだ際は、代わって全体の指揮を取る事も有る。
在前御徳は、バカでは無い。故に、3名家、魔王の不在が気になる。自身の力を過信していないからこそ。ま、1日やそこらの不在を突ける、ケタのちがう相手など、ヤマトぐらいしか。そのヤマトとは、友好支配関係だ。
これは、チャンス。
御徳は、量猟以下、隊長連中を集めて、戦会議場で宴会をする事に。
自分が、今、コウチで1番偉い。何でも出来る。日頃の3名家の無茶苦茶っぷりを大いにあげつらうのだった。
とりあえず、御徳以外の隊長は、全員3名家に告げ口をする気であった。コウチで背信は死につながる。し、御徳を追い落として、次の将軍になりたい。それに、告げ口した方が面白そうだ。
御徳の絶望に満ちた顔を見ながら、鍛錬に励みたいものだ。
量猟も同意した。先程の暴言。ストレスが溜まっているっぽい。吐き出させてやろう。3名家なら、血反吐を吐く訓練を毎日味わわせてくれるはず。
金甲量猟は、上司思いの素晴らしい部下だった。
ダモクレスランドにて、キャラクタ帽子をかぶり、蹴速に肩車をしてもらっている亜意。
その亜意を、蹴速も甘やかす。
子供達より早く蹴速に甘え始めた亜意を、皆尊敬する。あれが、ああなるのか。遊園地すげー。
ごおお
「おいおい」
蹴速は、覚えが有る。またか。今度は、容赦せんぞ。面倒だから。
知っている蹴速、魔王達が、子供を有我達に預け海岸へ。
津波、ではない。あれ?
「おひさ!」
「おお。久しぶり。元気やったか?」
「うん。こっちは元気。約束通り、陸には上がってないよー」
「そうか。約束を守ってくれて、ありがとう」
「いやいや」
海王、デミコラーゲンクラーゲン。人間に比べればはるかに巨大な、海の王。
「今日はどうした?買い物か」
「いやいや。無茶言いなさんな」
「通れる道が無いか。すまんな」
「まあねえ。ワタシにはねえ」
「なんなら、おれが買って来るが。再会の記念に」
「お。脈有りかな」
「ん。嫁は、幾ら居っても言いけど。お前、陸に上がれんのやろ。一緒に居って、辛い思いをするのは、いかんわ」
「へええ。考えてるんだー、って既婚者!すごい!」
「ああ。10何人か、忘れたが」
「色々不味い発言なんじゃないの、それ」
「?数が大事なんじゃあ、ないぜ」
「おお。っぽい」
「それで。買い物でも散歩でもないなら。どうした」
「君に用が有った。それで、張らせてたんだよ。前も此処に来たんだよね」
「良く知ってたな。前会ったのは殺したはずやけんど」
「一応ね。何処に行ったかの確認くらいは、取れるんだよ」
「ほう」
「でさ。力を貸して欲しいわけさ」
「仕事か」
「うん。報酬は特上の魚介類を、ご家族分」
「受けた」
「良い男!」
「照れるな」
まさか、本当に嫁に。魔王達の懸念が発生。
「頼みたい事はね。人間の排除。最近ドンドン増えてきてさー」
「ほう」
「生活圏侵され過ぎーって言うか」
「ふうむ」
「ある程度、人間を減らして欲しいんだ」
「何処の国かは、分かるか」
「日本」
「無理や、と、言いたい所では有るが」
さて。どちらが、面白い。日本人で、強者に目覚める可能性の高い者は、海に出ているか。こちらの言う事を聞く海王を生かしておいた方が、得なのでは。
「日本は、蹴速の母国だろ。ダメなんじゃないの」
「ああ。だが、調査だか漁だかの人間を減らすだけやろ。国土を侵さんかったら、別に」
「なるほどな」
「あたしは、それなら構わないぜ。でも、ここの従業員に手を出す事は許さない」
「分かっちゅう。亜意に嫌な思いは、させん」
「なら良い」
「でも、人間も、定期的にやって来る訳ですよね。時間がかかるんじゃありませんか」
「確かに。スケジュールは確認出来とるか」
「もち。何日、何曜日に来たとか、ちゃんと覚えてるよ」
「おー。やるなあ」
人間側に、この情報を伝え、海王から人間を守る仕事を受けるのがベストの選択だが。
海王は約束を守ってくれた。1度、こちらも仕事を受ける。
「良し。受けた。その情報くれ」
「マジですかい!いやー、受けてくれるとは、正直思ってなかったね」
「なんで来た」
「わらにもすがるって奴よ。下手に手出したら、怖いし」
「覚えてくれちょって、有難うな。おれの言葉」
「死ぬのは勘弁でさあ」
「なんで小物や」
「媚は売るもの。目の前に、有望な者が居れば尚更」
真面目な顔で。海の国の存亡などに興味は無い。だが、自身の死は怖い。人間のフネなど、幾らでも沈めて見せるが、蹴速は怖い。戦いたくない。幾らでも愛想を振りまく努力。
読心したアカは、しかし蹴速に報告しない。その程度で有れば、全員が思い付く。
「んじゃ、よろしく!」
海王は帰って行った。
「蹴速。良いの」
「ああ。あいつは、おれの言う事を聞いた。おれも聞く」
「こだわるな。踏み倒しても、それもまた自由と言うものだが」
「まあな。結局は、海に出る人間に知人が居らんからなあ。両親やら兵やらが来たら、近寄るなよ、と言うて終わり。海王には、すまんが、逃がすだけで終わらせる」
「良いとこどりだね!」
「ああ。それが、1番よ」
「全くだ」
ま、海難事故を偽装するか。
これより1年の間。某海域に進入した船舶が、謎の沈没を繰り返したため、その海域は新たなバミューダトライアングルとして認識される。公共機関は、この海域への進入を禁止。海王の望みは叶った。事が起きている最中。その海域付近で蹴速や超騎士の姿が目撃されるが、その情報が、大きく取り扱われる事は無かった。たまたま立ち寄った近くのレストランで食事、たまたま散歩。きっと、そうだ。気のせい気のせい。弱腰の本部を非難する声は、聞かれなかった。そしてそのまま、この海域はK案件として、関係政府に報告される。最終的に「自然災害によって、今後100年間の立ち入り禁止」となった。
蹴速達は、家族に合流。そのまま、思う存分遊び尽くし、2日後に帰宅した。
獣沓も、そのままの大きさで、盲導犬として入園していた。流石、ダモクレスランド。器もデカい。
家に帰った蹴速は、予定の組立を祝寝とうんうん作り上げる。有我と梅から、ダイコウチ見物に誘われる。それぞれと、一緒に行く事を約束。魔王達と、魔界のそれぞれの城に遊びに行く事を約束。2人きりで遊びに出る事を、皆と約束。蹴速の予定表は真っ黒になった。
「どう。自分の人生を見つめてみて」
「充実しとるな。過労死出来るレベルで」
「労働だったっけ」
「生きる事は戦う事。間違ってはないぜ」
「ふーん」
「まあ、同時に遊ぶ事でも有る。時間の制約は有るけど。皆と遊べるのは、嬉しい事よ」
「私は?」
「お前が1番よ」
「皆に言ってたら、許さんけんど」
「許してくれ」
「ダメ男め」
「そんなのに惚れたお前が悪い。でも、お前を幸せにする」
「なら良い」
なんだかんだ、安定のバカップルであった。




