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休暇始まり。

 1年の休暇。各自の過ごし方。


 仮要明の場合。


「しばらくミヤザキに戻り、新型の飛行機械を開発します」


「そうか。楽しみにしているぞ」


 梅は二つ返事で許可した。神無から聞いている。面白い玩具だと。山がちのコウチでも、有用かも知れない。仮要明へ援助を約束。仮要明は、当然のように巨鬼の許可無く受け取る。コウチに言われては仕方無い。そんな口実が有るのだ。使わずどうする。


 無論、ミヤザキトップは、こんな事は見越してある。御しきれぬじゃじゃ馬。ミヤザキでは、狭すぎる。広い世界に、出してやりたかった。


 半々だ。ミヤザキに繁栄をもたらすきっかけになる。もしくは、コウチの不興を買う。どちらでも良い。選んだのは、自分、この巨鬼きき咲黄さき。若い者が選んだ未来が、ミヤザキの未来。必要ならば、修正もしよう。頑張れ、馬鹿者。


「親方に何か言われた気がする」


「ん?」


「いえ。こちらの話です」


 ナインラインに向かう船。久しぶりにクマモトへ戻る、熊大将くまだいしょう壱日いちかも同船。熊大将は、この機会にクマモトの指針を決めておく。


 現在、コウチとの連携は取れていると言って良い。これを深めるのか。クマモト、ナインラインの独自路線を強化するのか。クマモトの人間、ナインラインの人間、それに巨鬼とも話をしたい。


 送り出してくれた礼も。


「巨鬼殿によろしくな。落ち着いたら、訪ねると言っておいてくれ」


「はい。きっとウチの大将も喜びます。綺羅殿がいらっしゃった時分は、綺羅殿をどうやっつけるか、で熱が入っていたのですが。その綺羅殿は、もう。熊大将殿。どうか適当に、まあヘンな犬が懐いたなあ、と可愛がってあげてください」


「はははは。南刀も全く、言う。また、コウチで会おう」


 いずれにせよ、熊大将はコウチと共に行く。死ぬためではない。自らの生を輝かせるために。


 南刀なんとう仮要明がいあは、才人である。幼少期より、あの子はどっか変。そう言われて育ってきた。俗に言う天才である。群雄割拠と言えば聞こえは良いが、どんぐりの背比べのナインラインで、抜きん出るため飛行機械を発想、開発。進言出来る立場にも居た。そして、巨鬼咲黄は、自分と同じく変な人だった。こんな何の実績も無い若造の言う事を真に受けて。かなり頭がオカシイ。こんな好き勝手やらせてくれる上司は、大事にしなければいけない。


 現在の剛爆式射空砲を、完璧に作り変える。否。新しく作る。アイデアは、既に有る。後は形にするだけ。コウチに居る間、他の将が稽古に励んでいる間、ずっと図面を引いていた。これを、この世に、現す。


 三十鬼みとい三問みといは、ヤマトに帰郷していた。今回の遠征でのコウチの所感を王に伝える。ヤマトは、魔王達が居る間は動けない。端的に言って、コウチの属国を全うした方が良かろう。自分が100人居れば、魔王アカまでは、倒せる。つまり、ナンバーが育ちきれば、あるいは勝ち目も有る。だが、魔神シロは、絶対に無理だ。1万人居ても、どうにも出来ない。


 出来れば、コウチのように戦乱の中心に居たかったが。仕方無し。


 御加土みかど土加作つかさは判断した。


 コウチには、勝負を挑まない。自分の代では、決して。三十鬼の報告を鵜呑みにするなら、何かあれば、ヤマトが消える。手の施しようも無く。100年、200年。時を経て、魔神が居なくなれば、あるいは。それまでは、コウチに従うべし。ヤマトのナンバーを必ずコウチに鍛錬に向かわせ、魔王、魔神の力を拝ませ、その代の王に伝えさせるよう、法を作る。自滅は、避けたい。


 そして、御加土は三十鬼に、武器を与える。


「1年後。またコウチに行くはずだ。連れて行け」


「・・・手を出せません」


「お前以外に振るえる者も居ない。これを、無用の長物にする気か」


「まだ、私は追い付いておりません」


「これからだ。邪馬刀国は、もう居ない。お前が、ヤマトナンバーワン。お前が要らないのなら、これは、ただの飾りだ」


 三十鬼は、思わず手を出した。飾りだと!!!咄嗟に斬りそうになった。


 御加土は、少し腰を浮かしかけたが、我慢出来た。わずかとは言え、三十鬼の気迫を正面から受けて、寿命の縮まる思いだった。


 ヤマトの王の仕事は、1つ。指揮する事。ダイコウチでも、屈指の精鋭達を。武門だけでなく、力の無い民間人の意見を代表する、と言う事で王が居る。なにせ、メシを服を家を作るのは、武人ではないのだ。それら人々を蔑ろにしては、国が滅ぶ。王を生きながらえさせているものは、信用。ヤマトのナンバーが、民間人を斬らないという。


「預かります」


「取っておけ。そして、お前が伝えろ。ヤマトの最強が持つべき剣」


 邪馬太刀やまたち。邪馬刀国のために、ヤマトに有る全ての技術を振り絞って出来上がった、最強剣。単純な硬度でも触れただけで、鉄を切断でき、手入れには、フ・ズィから取り寄せた霊薬を惜しげもなく使い、魔を容易く滅する、無敵の宝剣。


 ヤマトが戦乱の真っ只中を突き進む、その時。邪馬刀国が振るう事を期待されて製造された、個人用最高武具。


 三十鬼は、手を震わせながら持った。邪馬刀国のために作られたもの。おれに、持てるのか。


 それは、ピタリと手に吸い付いた。握りが、ちがう。持っただけで分かる。全然ちがう!今すぐ抜いて、斬りたい。体が熱い。汗ばんだ身を冷やすため、外へ。


 鞘に収めた状態だと言うのに、恐ろしい雰囲気をまとわせた三十鬼。間近にしていた御加土は、今度こそ、胸を撫で下ろした。次の王が誰かは知らないが。楽な仕事でない事は、教えてやろう。



 何の抵抗も無く、抜けた。陽光を反射する刀身は、青く輝く。霊薬の光だ。空を斬ってみる。


さらり


どお


 ただ、素振りをしただけで、30メートル離れた屋敷が、真っ二つになった。


「いかん!」


 人間を斬ってしまったか!


 大丈夫。死人は出ていない。ただ、弁償がどエライ事に。しかし、怪我人さえ居ないとは。


 最悪だ。これは、邪馬刀国の生家。今は、無人だったはず。だからか。


 死して詫びねばならん場所だ。


 そんな所で、何故素振りを?


 より、邪馬刀国の近くに居たかったから。


 こんな素人みたいなミスを。この、おれが。


 いや、おれも、まだまだ未熟なのか。


 これ程の剣を頂きながら。


 何故、邪馬様は、ここに居ないのだ。あの方を超える事が、目標だったのに。


 蹴速。何故だ。


 分かっている、分かっている。分かっているが。


 ヤマトの誰を殺しても良かった。何故、あの方を殺したのだ!


 ・・誰にも言えない気持ちだが。


 市井の誰かなら、ヤマトの進行も止まり、ナンバーも無傷で済んだ。だが、蹴速と邪馬様の衝突は必然。ヤマトの人間を殺されて、じっとしているような武は、ヤマトには居ない。いずれにせよ、ヤマトナンバーワンは死んだはずだ。コウチに蹴速が居た以上。


 こちらに居てくれれば。蹴速が、ヤマトに来ていたなら。


 おれも、こんな意味の無い思索にふける人間だったか。


 半壊した邪馬の家を見ながら、三十鬼は黙想していた。


 一飲涙いのり美乗利みのりは、台所に居た。


「出来ました!次行きます!」


「ああ。こちらも出来ているぞ。順調だな」


「少し、慣れてきました」


「筋が良い。私よりも、早く慣れそうだ。確か、ものすごく強いのだったな。流石だ」


「いえ。海鶴様のご指導の賜物。こういった作業はした事が無いのですが。案外、大変なのですね」


「ああ。私も、そう思ったものだ。初めて陸に上がった時、初めてまな板を使った時、祝寝に全てを教わったのだ」


「祝寝様」


「その呼び方は、やめて」


 祝寝の懇願である。


 少々、予定とちがう。祝寝の予定では、こちらの重要人物数人。それとジン位で済むと思っていたが。人が、増え続ける。


 私の夫だけの事は有る。


 例え、世界人口を10人にしたとしても。私のとこに帰りよ。


 言いつけを守っている。


 人は増えているがな!あいつめ!


 一飲涙は気の入った祝寝を見て、流石は第1夫人と思った。この海鶴と言う者も、元は海神の資質を持った者とか。それを、こき使うとは。流石だ。


 台所から始まり、洗濯物、掃除、買い物。家事を覚えていく一飲涙。


 一飲涙美乗利は、真面目で堅さも有るが、ヘンな道にハマっても、やはり真面目に行ってしまった。なんとなしに、蹴速の嫁になっていた。


 あれ?


 エヒメへの報告には、結婚しました、と書いた。さあ、伝わっただろうか。


 美津波賀みつなが黄神おうかもすくすくと育っている。美津波賀は、早速、海鶴の手ほどきで泳ぎ始めた。流石は海の子の子。黄神もふわっと位は空を飛べた。やはり龍の子。


 完成だ。剛爆式射空砲2型、紅空あくよく。悪の魔王と、魔王アカをかけた名前だ。もちろん、仮要明が決めた。感謝と遊びを込めて。


 カタログスペックではあるが、従来の飛行機械を遥かに超える出力と安定性を両立している。


 問題点は、たった1つ。クソ高い。


 従来の飛行機械の1000倍のお値段になりました。おかげで、コウチからの援助が有りながら試作機を1台完成させて終わり。


 不味い。これは、無駄使いを責められ斬られるパターンではないか。


 仮要明は、取りあえずアカに見せ、成果を確認してもらった後で、3名家に報告に行こうと予定を立てた。死の可能性を少しでも減らすのは、開発者として当然。


 ミヤザキから、直接コウチに向かう。船は使わない。


 おれは翼を得た。


 体正面1門、左右2門ずつ、背部3門、脚部4門ずつ、射空砲を備えている。大型の魔獣であっても、1瞬で粉砕出来る程の威力を、空を飛ぶためだけに使う。もちろん、それら砲を直接体に付けては、保たない。故に、肉体に触れるのは竹馬。皆、子供の頃に遊んだ事はあるかな?あれだ。あれに、大量の砲をくっつけている。その竹馬を、変な話だが、着込むのだ。全身を竹馬で覆い、砲をまとわりつかせる。もちろん、竹製では無く、鋼鉄を更に鍛え上げ魔力加工した上で構築した、超強化竹馬だ。馬鹿みたいに金と人手がかかっている。そして体を固定し、射空砲を自在に操れるようにする。更に、竹馬各部には、長距離砲をまんべんなく配置。1人で軍を消滅させられる能力に仕上がった、はず。


 コウチまで船で1日。だが、これなら、30分だ。


 迎撃に来たキに、一生懸命改めて自己紹介し命拾いした仮要明は、コウチからの援助の追加に成功する。

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