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蹴速の思い出。

「休暇にする。1年」


「ああ」


「良いな!」


 休暇を取る事が、3名家の会議(茶飲み話)で決まった。


 アインシェン、ブルーランド、ヴァイキング、グリス。4つの地域を支配した。当初は、アインシェンを踏み台に、周辺国を制するつもりだったが。ヴァイキング、グリスは望外の成果。ブルーランドの使い道は、まだ分からない。冷凍庫にでも、するか。


 3名家及び4将には疲労は溜まっていない。だが、兵は緊張しっぱなしだったはず。緩めなければいけない。


 それに、戦線を広げすぎると、支配下の国々への対面が保てなくなる。強面が、届かないように勘違いさせてしまう。それは、締めなければいけない。


「と言うわけで、俺は神朗に会ってくる!」


「それが良いだろう。後で手土産を渡す。お父様によろしく頼む」


「ああ!その親父殿の、提案だからな!感謝しているぞ梅」


「いや。3名家の者として、当然の気配り。礼には及ばない」


「ボクが蚊帳の外なんだけど」


「ふ!お前にも感謝しているとも!神朗に経験を積ませる事が出来た。これで、二神のコマは調子が良い。3名家では、突出したかな?」


「良い事だねえ。これからは、神無ちゃんが梅ちゃんの分まで仕事してくれるんだってー」


「それは有り難い。頼んだぞ、神無」


「冗談に決まっているだろう!!俺にそんな仕事は出来ん!」


「ありったけの威厳を込めて言わないでよ。気合の無駄使いって言うか」


「ふふふ」


 これが、現代の支配者の姿。


 先代からの3名家は、かなり仲が良い。今はもう、梅の両親だけになってしまったが、肩を並べて訓練していたのだ。一一人は、有我に斬られて、二神は魔族との戦闘で、もう居ないが。


 3名家がコウチに戻った事で、蹴速も自由に動く気になり、イギリス調査を再開した。


 暗黒大陸は、本当に暗黒だった。夜闇だと思っていたが、時間経過によって朝日が出る事が無かった。


「これで、植物は育つんか?」


「ああ。魔界にも日の当たらぬ地域は有るが、育つ事は育つ。もちろん、日の当たる場所とは種類がちがうものだが」


「ふうん。ある種、魔界に近いのかな」


「かもな。おれも植物は専門外だが、草木の魔族なら、何とか」


「ほう。そんなのも居るんか」


「おれ達自身で魔物を創る事も有るぞ。モモとアオミドリが上手いな」


「へえー。キも上手そうなけんど」


「いや。おれでは、少々魔力がキツい。何とか作れると言った所か」


「しかし、ものすごいものですね。生命創造ですか」


「単純なものだぞ。魔力を物に流すと、出来上がりだ。小麦粉に水を入れ混ぜると、美味いかどうかはともかく、団子が出来るだろう?あれだ」


「それが、美味いのが、モモとアオミドリか」


「そうだ」


 魔王は魔族を作れる。だが魔族は、アカ達、魔王達の部下以外にも、幾らでも居る。


 魔族とは、元の世界の、猛獣なのか。


 では、魔獣の巣食う暗黒大陸とは、サバンナやジャングルと捉えるべきか。異常な地域、ではなく。


 とにもかくにも、賢獣シーラに会う。あいつに聞いた海岸へ。


 怪鳥フウラは、この地域に居る間は、毎日2羽狩って届ける。


 波打ち際。さて、どうする。


ざぶん


「こんにちわ」


「こんにちわ」


 魚に話しかけられた。


「貴方方が、最近こちらにやって来た人間ね」


「おお。耳が早いな」


「まあね。お友達がいっぱい居るのよ」


「用事が有って、お前に会いたかった。聞いてくれるか」


「言いわよ。貴方もお願いを聞いてくれるなら、ね」


「ああ。可能な限りで」


「まず、そちらの子達を殺してくれるかしら?」


「それは、無理な事よ」


「あら。残念」


「んー。お前。どの程度なら痛めつけても死なん?」


「怖い事言うのね。気短?」


「長くは無いなあ。ウロコを1枚1枚剥がされたくなかったら。聞くか聞かんか。はっきり答えてくれるか」


「ゴメンなさいね。聞けないわ」


「そうか。邪魔したな」


 蹴速は背を向けた。気まぐれに殺しても良いが。あいつが、この地域で生きにくくなってしまう。手出しは、出来ん。世話になったものを、仇で返すわけにはいかん。


 シーラは話をしなかった。蹴速が危険だったから。アドバイスをしてしまえば、魔獣達に悲劇が降りかかる。会話で、そう感じ取った。例え殺されても、可愛い子達を殺させない。


「すまん。おれのせいで、時間を食っただけになってしもうた」


 話運びが、下手過ぎる。腕力に頼って良い場面なら、それでも問題無い。だが、それが封じられた場に於いて、蹴速は、ただの足手まといでしか無い。


 キなら、超騎士でも、蹴速よりは上手くやっただろう。ジンと亜意はともかく。


「蹴速。お前が主人だ。おれ達は、お前に続く。だから、胸を張っていろ」


「ま、どーだっていい。あたしが何とかする」


「おれが居るさ、蹴速」


「私が何とかしましょう」


 4人の間で、少し剣戟の音が聞こえた。


 それはともかく。


「すまんな。足で探す事になった」


「なんだ。結局絶滅させないのか」


「ああ。あいつは、殺したくない。それに、あいつも魔獣社会で生きちゅう。狙いの怪物以外は、なるべく手出しせん」


「良いだろう」


「了解しました」


「見ててやるよ」


「それで、早速動く?」


「ああ。一旦、跳ぶか」


 超騎士を抱いて、蹴速達は上空1千メートルまで上がった。


「この山を目印として、全員で散らばって、怪物を探す。集合は1時間後」


「おっけー」


 蹴速達は各々、散開した。


 亜意、超騎士組。


「もの好きな野郎だ」


「魔獣を慮った事ですか?」


「ああ。良いとこ中級の魔族だぞ。皆殺しにすれば良い」


「それが出来ても、好まないならやらない、のが、蹴速様。そうではありませんか」


「ふん」


 確かに。強者は、弱者を思う必要は無い。蹴速は、亜意を思わなくて、良いのだ。


「そう言う事では無くて。全く。分かっているでしょうに」


「へっ」


 何だかんだ、この2人は遠慮の無い関係を築けていた。


 ジン。


 どーしよっかなー。アレ殺して、蹴速の心労を削いでも良いかなー。魔獣とシーラ。ほぼ同一地域に居るし。両方消し飛ばせば。まあ、次善策かな。蹴速と同じ仕事を。困難を分かち合うのも、楽しい。


 キ。


 さて。聞き込み、と言ったかな。有我に見せてもらった職業ドラマでは。おれにしか出来ない仕事。やってみるか。


 蹴速。


 参ったな。1年ぶりにやらかした。強くなって、何でも上手く行く、そう、楽でも無かったな。


 対魔蹴速の仕事の成功率は、実は低い。


 怪物退治なら、まだ良い。100パーセント成功させる。災害に対する備え、災害を事前に消す。これは9割方は、何とかする。ただ、被害総額は、むしろ災害がまともに起きた方がマシになってしまう事も。故に成功率は、8割と言った所か。そして、仕事が気に入らない場合。依頼者、情報提供者を殺害し、事と次第によっては、民間人、兵問わず、被害者犠牲者を出しまくる。


 3度。蹴速を殺すべきと言う案が出た事が有る。その度、失敗した場合の被害が足枷となり、実行はされなかった。万が一、やけになられたら。全人類が死ぬ。


 そして、2度目以降は、超騎士を含む兵自ら、蹴速を消す意見に、反対の声が。


 自由を得たい。兵全員の願望を実践している蹴速を殺すのは、自分の意思と力であって、大勢の謀略などでは無い!蹴速を仕留めるのは、自分。そういった思いから、兵の大半は、蹴速抹殺に反対した。それに、そんな事を認めてしまえば、自分もまた力を持った時、そうされるのだから。


 蹴速は、どうでもいい話を思い出していた。以前、超騎士に教えてもらった。


 知り合いのみ残して、皆殺しにしても良いが。まだ本部には価値が有る。それに、何度も何度も世話になっている。


 地球の人口に正解は無い。多少減らしても、問題有るまいが。


 そこには、超騎士の知り合いも友人も居るはずなのだ。自分と祝寝、とジン。それだけを考えていれば良いのでは、無いのだ。もう。


 蹴速の殺害数は、人類個人最高記録だ。国と比べると、流石に負ける。そう、蹴速より殺している国が、未だ国としての体を保っている。なんだ。問題など、何一つ無いではないか?


 人を殺すのも、生かすのも、自然。普通の人が法律に従うのは、そうした方が都合が良いから。蹴速は故に、法に従う理由が無い。蹴速が従うのは、己。自分が全て決める。


 蹴速は、かつての同級生の親や親戚、本部で世話になった者達の縁者も、既に無自覚に殺害している。それなりに、恨みつらみは、溜まっている。


 そう。自由なのだ。恨みに思ったなら殺せば良い。自分のように。それが、自然。それが自由。殺して、憂さを晴らす。とても良い事だ。


 ただ、祝寝に手を出せば。実際。1度、祝寝に危険が迫った事は有った。その時は、疑わしいと言う理由だけで、本部に有った情報を元に、資料に載っていた全員を殺した。反抗した者、遺憾を表明した者も徹底的に殺した。およそ、1万人。無関係の人間を9989人殺してしまったが。仕方無い。運が悪かったのだ。


 それを境に、蹴速に触れようとする者は消えた。


 噂話レベルでさえ、蹴速の話題は無くなった。


 無双双児のような無茶な人間が、ちょっかいを出し。軽兵のような、金以外にはこだわらない人間が、救援を求め。超騎士が頼り。古強者が認め。


 蹴速は、兵の頂点に登って行った。その気性の故に。


 蹴速には、しがらみが無い。誰でも殺すし、誰をも特別扱いしない。蹴速が守るのは、自己を含めて3人。それ以外、誰も守られないし、誰も蹴飛ばされない。蹴速は殺しまくる。だが、人を無意味にいたぶった事は無い。拷問は何度かした事が有るので、誤解だが。


 蹴速は、兵に頼りにされる事が増えた。超騎士や軽兵経由で。そして、無双双児の無茶苦茶さで、少し緩和されたり。


 しがらみが、増えてしまった。


 何にも属していないため、使い勝手の良かった蹴速はそれなりに仕事も増え、成功させ、名実共に、トップになった。12才の頃である。


 古強者、超騎士の宣言。それにより、潜在的な反抗者も敵意を収めなければならなくなった。強い以外に取り柄の無い蹴速とはちがって、この2人には、かなりの影響力が有る。


 超エリートで、イギリストップの腕前。更に人望も兼ね備えている1流の兵、超騎士。そして、現役の兵として最年長。120才の寝たきり老人でありながら、子供達の子供達の以下略を守るため戦う古強者。ちなみに、古強者は条件付きなら、蹴速と五分に持ち込める。その経歴上、古強者の人脈は現在の兵で最大だろう。


 その2人が蹴速に付いた。


 蹴速が、兵であるが故に。


 超騎士はイギリスを守る力だが、同時に、最強を目指してもいる。その頂きに居る者を、計略などで排除しては、自分は兵では無い。蹴速は、必要ならば、自分が処理する。


 恐るべき事に、古強者に取って、蹴速でさえも、守るべき対象であった。前途有る若者を、殺すなど。言語道断。


 人を殺した数で、その人の罪の大小を計るなら。人の命1つは、然程重くもないのか。過失の兵を、古強者は何度もかばって来た。蹴速の殺した数はケタがちがうが。変わりない。普通の兵だ。皆と、同じだ。蹴速はまだ生きている。なら、守る。それが、古強者の生きて来た道なのだ。子を孫を守る人生が全てなのだ。それより年若い子を手にかけるなど、人生の否定にも等しい。必ず守る。


 蹴速が、敵に回ったなら、あらゆる手を用いて消すが。それは、その時の話。まだだ。


 結局の所。両者に取って、決定的な誰かを蹴速は、まだ殺していなかった。故に助かった。この時点の蹴速が2人を敵に回していたなら。間違い無く蹴速は消えていた。この2人の影響力、それが歯止めになってくれた。


 その事に、蹴速は感謝をしていない。2人も礼を求めていない。お互いの自由の故。ただ、蹴速は多少、大人しくなった。死人が、減った。それが良い事か、と言われたら分からない。人を殺す事がイケナイ事なら、各国の軍人及び、それを指揮する文官及び、その資格を与えている民間人、つまり、人間全部を消す必要が有ろう。イケナイのだからな?人を殺して良い状態は、普通の人は少ない。蹴速は多い。それだけだ。


 蹴速は人間の突出した存在。故に兵の憧れを集めた。


 人を殺して良いのか?良い。そうしたければ、それが絶対に正しい。殺してはいけないのか?いけない。そう自分が思ったなら、絶対にいけない。


 自分に従え。


 法律に従うのも良い。従わないのも良い。


 君は、制限速度を超えて走るクルマをその都度通報しているか。


 そのくらい。大したことじゃない?


 全く同感だ。制限速度は、人を守るために有り、いざと言う時のブレーキの効き具合、コントロールを保てるかどうか、にも関わってくるが、それを大したことじゃない、そう言い切る姿勢。とても自由で好ましく思う。


 結局の所。法律を自分好みに適当に扱うのが、人間の大半。そうでない、法律を順守している人間は少数。その少数には、蹴速を非難する筋が有る。


 ただ。


 蹴速も、身近な人間を殺されれば、危険な目に合わされれば。怒るし悲しむ。その辺の人間と全く同じだ。


 つまり、勝手なのだ。


 勝手な蹴速は、今日も勝手に仕事をし、勝手に家族を仲間を助ける。


 ただ強いだけの、人間だからな。


 要らん事を思い出した。超騎士や古強者のじーさんに、生かされた。恥ずかしい過去。自分1人で上手くやってたと思ってたら。実は、守られていた。助けられていた。本当に恥ずかしい。無双双児から教えられた日。それから数日間、家から出られなかった。


 超騎士は、イギリス防衛を、おれに感謝している。そんな必要は、全く無いのに。古強者も居る。ヨーロッパは、おれが守る。


 礼は言わん。仕事で返す。


 蹴速がつらつら考えているのは、もちろん標的が見つからないからだ。


 やばい。今回、完璧に役に立ってない。キの靴磨きの練習でも、しようかな。


 蹴速は、ちらっと本気で考えてみた。


「ぎあ」


「ぎい」


「ぐう」


「ぐいぐい」


「感謝するぞ」


 なるほどな。


 キは成果を持ち帰った。


 残り3人も蹴速と同じく、得たものは無かった。魔獣は多数。しかし、イギリスに出現した怪物が居ない。


 集合。


「成果無し」


「同じく」


「おれも」


「分かった事が有る」


「おお!流石キ」


「流石だ」


「やはり、有能な方ですね」


「すげー」


 キは話した。


 件の怪物。この辺に自生している獣では、無い。ある日、突然湧いて出たらしい。最初、餌が増えたーと喜んでいた周辺の魔獣だったが、余りにも数が多過ぎた。生息域が、奪われてしまいかねない。シーラの助言により、魔獣は一丸となり、新参の怪物を蹴散らした。おかげで、巣は奪われず済み、今は普段通りの暗黒大陸だ。


「ふうむ。つまり、此処の魔獣に取っても、怪物は、得体の知れない何か、か」


「うむ。おれは、そう解釈した」


「あの魚も、素直に教えてくれれば、良かったのに」


「仕方無い。おれの聞き方が悪かった」


 蹴速は情報が欲しかった。そして交渉を行い、情報は得られずじまい。蹴速が、無能な役立たづだった、そう言う事実が明らかになった。


 蹴速は容赦しない。それが、自分であっても。


 怪物の発生時期は、イギリスでの発生時期と被る。間違い無くあの穴を通ったのだ。だが、分かったのはそこまで。何処のどいつなのだ、一体。


「ここまで来て、途絶えたか」


「すまんな」


「いいえ。あなたの功績が我々の中で最大のものです。それ以上にならないのは、何も手がかりを得られなかった私達の落ち度」


「ああ。あたしも、な」


「そーそー」


 しかし。参った。


 蹴速一行は、考えあぐねた。


「諦めて、暗黒大陸を開拓する?」


「いや。それは、やらん」


 もしも、有我達が、どうしても、と言うならともかく。今は、そういった状況では無い。諦めて、失敗しましたー、で終わっても良い。それは、蹴速の一存で、決めて良い。


 と。


「があ」


「おお。キ、こいつは」


「ああ。あいつだ」


 この前の魔獣。どうした。


「ぐあ(やあ。息災かな。今日は、どうしたのだ)」


「ぎいあ(お邪魔します。先日は、お役に立てなかったようで。にも関わらず、フウラの供給は絶えず。感謝しきれぬ思いです)」


「があ(何だ。そんな事か。こちらは、欲していた情報を手に入れる事が出来た。予想以上にな。その礼として、当然の事)」


「ぐあ(ですが。私としても、申し訳無さを覚えるのです。故に少しばかり、探って来ました。件の怪物。あれは、元々こちらのモノではなかったようで。北から来た、と言う情報しか、得られませんでしたが)」


「がああ(なんと。おれ達では、そのような情報は、手に入れられなかった。これは、ますます頭が上がらないな。深く感謝する)」


「ぐあ(いえ。出来れば、もう少し詳細な情報を得て、皆様を驚かせたかった。戦闘では、相手にならずとも、何かで、出し抜きたかったのです)」


 キの翻訳を聞いた蹴速は、いたくこの魔獣を気に入った。気が強い。我が強い。今度は殺されるかも知れないのに、再び姿を現し、この発言。


 蹴速は、この魔獣を誘う事にした。


「キ。こいつ、おれらあに付いてくる気は、有るろうか?もし、この土地にこだわりが無ければ、一緒に暮らさんか、聞いてみてくれ」


 そうしたら、暗黒大陸を掃除する時。殺さず済む。


「いぎ(一緒に来ないか。ややこしいルールも有るが、おれ達と共に暮らさないか)」


「ぎいぎい(その言葉、待っておりました。今まで見た中で、最も強いあなた方に付いていけば、私の生活も安泰。・・・ですが、私には、この地の利以外、何も取り柄が有りません。お連れくださっても、ご期待に添える活躍は、出来ないかと存じます)」


「だそうだが、蹴速」


「お前が欲しい。来てくれたなら、それで良い。仕事は、おれらあで割り振る。色々従ってもらう事も多い。ストレスも溜まるろう。それでも、メシだけは保証する。寝床も期待に添えるよう、頑張る。絶対に従ってもらう事は、家族を襲わない。人間を、あまり襲わない。どうやろう。おれは、お前と一緒に遊びたいが」


「ぎあ(承知しました。元々人間を食べる機会も有りませんでした。遭遇機会も無いですし。食事と巣については、追々詰めましょう。私には、この土地に対するこだわりは、恐らく有りません。離れた事も無いので、断言はしかねますが。もし、万が一、外の世界に適応出来なかった場合は、どうなりましょう)」


「ぐあ(どうにもならん。また、こちらへ連れて来よう)」


「ぎい(そうですか。重ね重ね、有難うございます。あなた方の対応は、この凡庸な魔獣には過分。ですが、この幸運。掴ませてもらいます)」


「があ(よろしく頼む)。蹴速、まとまったぞ」


「そうか。キ、ありがとう。今回は、完璧にお前の仕事になった。お前が居らんかったら、全然ちがう展開やったろう。おれの望み通りの展開。お前が、作ってくれた」


「この程度。お安い御用さ」


 むずがゆい。強さを、うたわれたのではない。どうでもいい事のはずだ。なのに、心が暖かい。おれは、蹴速に、仲間に、思われている。


 皆とも、この思いを分かち合いたい。今は、亜意しか居ないが。


 亜意。お前は、おれの気持ちを分かってくれるか。強く猛々しい、戦意の塊のお前でも、蹴速の前では可愛いものだ。ひょっとしてそれは、おれと同じ思いを抱いたからか。


 なんだあいつ。ニヤけながら、こっちを見てる。別に羨ましくねえぞ。


 特に通じてはいなかった。


 北へ。新たな仲間を得た一行は、進む。

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