ジンの武器。
ヴァイキング到着。歓迎の色が。ジンの仕事だろうか。
「下りるよー」
「ああ」
全員で移動する。船には、コウチの兵と、グリスの生き残り。万が一は、ヴァイキングの生き残りを血祭りに上げる。そのために同行させている。
マキもキと一緒にさせた方が安心だ。
下りた所、港には、ジンとメイルの姿。どうやらヴァイキングの民と共に待っていてくれたようだ。
「お待たせ」
「うん。待ったよー」
「まあまあ。急いては事を仕損じるってね」
「兵は神速を尊ぶ、だよ」
「どーでもいいから、事情を」
「ああ。ヴァイキングの武器は一掃した。っぽい。多分!」
「ええ。ジンさんの援護のおかげで、人を操る武器は倒せました」
本当に。人的被害は、最小で済んだ。感謝してもしきれない。
「ヴァイキングの支配系統は、どうなっている?」
「私の親族が。しかし、大半が自失状態のままです」
「あたしの仕事なわけだな」
「お願いね、亜意」
「付いて来たからにはな。任せな」
亜意も、気付けば、腰元に剣。良いなー。
亜意はメイルの案内で、癒やしに。
有我はジンと、何処を重点的に回るか、真っ先に押さえた方が良い地点は何処か、を検討した。
そして、2日後。
「そういうわけで、よろしくね」
「はい。これより、ヴァイキングは、コウチ、ダイコウチの船頭となります」
「うん。期待してるよ」
話はトントン拍子に進んだ。
ヴァイキングの指導者。グルウメ・グロウヴの死。その娘、戦姫メイルの主張。さらに、ヴァイキング領土を、守りきれなかった事実。
そして、目の当たりにした、ジン。
今、ジンは、新しい武器を手に取った。
海神のモリ。
最初は、ヴァイキングへのパフォーマンスとして、砦の一つを粉々にしただけだった。人は居ないので、破壊しても後片付けが洒落にならないだけで済む。
なんと、破壊された砦からモリが。むしろ、モリを覆い隠すようにして、建造された、と言うべきか。
「これは」
「何だろうね」
「海神のモリ。ヴァイキングの何代目かが、譲り受けたとの伝説が有ります。ただ、実物を我らは見た事が有りません。故に、ただのおとぎ話として捉えていたのですが」
「実話だったんだねえ」
大きい。およそ、全長150メートル。山肌に沿わせてある。その上に砦を築いたようだ。
「これさあ、使っても良い?」
「え?・・・え?・・・いえ、どうぞ、ご自由に」
「ありがとね」
メイルは、まさか手に取るつもりではないだろう、と思い返した。最初は、ジンなら、とも思ったが。きっと、今回の記念に、コウチに持ち帰るつもりなのだろう。
ぼごり
モリが、浮いた。
「・・・・・・」
声も出ない。
圧倒的な光景。砦より高いものが、人の手により、自在に振り回されている。
手応えが有る。重い。
だが、しっくり来る。問題は、強度。
ぶおん
突いてみる。
崩れた・・・いや、復元した。どういうことだ。
もう一度。
ぐお
ジンが、それなりの力で振ったモリは、刃先の原型を留めていない。しかし、ピタリと止めると、元に戻った。
うーん。復元は便利。だが、こんなもの、何の役に立つのだ。
「すごい!本当に!本物の!海神のモリ!」
「え。そんなに、すごいかな」
確かに、ジンが振っても持ち手は消失していない。何だか、持ち手がヌルヌルした気がしたが。今は、何も無い。
「海神のモリは、伝説によれば、海そのもの。海を斬る事能わず、砕く事能わず、失う事能わず。永久不滅の武具として、海神から賜ったものです」
海神。有我が、ここに居たなら、海鶴に聞く事を思いついた。だが、ジン。後で、海の事なんだから、海鶴に聞けば良いや。
結果オーライ。
「しかし、なあ」
「ジンさん。その辺の、人の居ない山を狙って、撃ってみてください」
「こう?」
軽く放ってみた。見事山を穿ったが。
「あれ?」
先程、ジンが振った時、刃先は消えていた。だが、今。山を刃先が貫いている。
「先程は、振るう意識をしたから。今は、山を穿つイメージをしましたね。モリが、応えてくれたのですよ」
きっと。メイルも、神器など、使った事は無い。
ふうむ。ジンは、得心した。
「じゃあ」
ばじゃあ
モリは、雨粒となり、大地に降り注いだ。
「あ。海水は、不味いか」
「いえ。これは、真水のようです」
ジンはモリを持って、ツブテ、雨粒となれ、と念じた。すると、本当にそうなった。雨水だから、真水。なのか。
海に原型など、無い。意のままに応える、武具。しかも。ジンの力に付いてくる。
「これは、掘り出し物だなあ」
文字通り。
「持って行ってください。どうやら、持ち主のようです」
「良いの?遠慮なくもらうけど。これ、君のご先祖様が頂いた物なんでしょ」
「ええ。ですが、我らは、それを信じなかった。自ら、探しはしませんでした。持ち主では、無いのです。恐らく。それに、丁度良い恩返しにもなります」
「そう?なら、もらうね。ありがとう!」
ジンは海神のモリを見る。
長さ150メートル。重さは、良く分からない。ざっと数千トンかな。タンカーよりは、遥かに軽い。フェリーに似ているか。以前、持った事が有る。
問題は、置き場だ。特盛の斬場刀は、まだ良い。駐車場を占領すれば、まあ行ける。これは、ダメだ。家に置き去りか、それこそこないだの、銀河が相手でもなければ。稽古であっても、シロ相手にやったら、間違い無くコウチが消滅する。使いどころが、難しすぎる。
持ち手たる、ジンがそう思っていると。
持ち手を残して、モリは、消えた。
「え」
「すごい」
ジンはびっくりした。メイルの驚嘆の声も、聞こえなかった。
そこまで、気が利くのか。
お前、使えるんだな。
モリは、持ち手を液状化。更に小さく、ジンの手に収まるサイズ、20センチの棒状になった。流石に10センチになったら、失くしてしまう。
「応えた」
「これが、海神のモリ」
海神とは、何者なんだ。
ヴァイキングの祖先は、これの使い方を知らなかった?いや、知っていて、拠点の底にしたのだ。一族をまとめあげる底石とした。海神の護りを、首長の力とするのでなく、民のクサビにする。すごいリーダーだったんだな。これを振り回せば、敵は居ないだろうに。
何はともあれ、ジンは、驚くべき武器を手に入れた。早速、蹴速に見てもらいたい。特盛は、どうしよう。ショックかな。いや、現実は見せた方が良いか。
一応、蹴速と同い年のジンに取って、特盛は年上なのだが。そんな勘定はジンには無い。蹴速と祝寝と、それ以外、だ。それと両親も別枠か。
可愛い。
己の指を握る、赤子を見て、それ以外の感想は、無い。
相貌を崩す蹴速を見て、海鶴も己黄も笑んでいる。
忙しい毎日だ。2人とも体調を元に戻しつつある。祝寝も、2人のおかげで、ハリのある毎日だ。もちろん、魔王達との日々も楽しいが。姉妹には、姉妹の楽しみが有るのだ。
「祝寝にすっかり任せきりだった。今度は、私達が祝寝の出産を手伝おう」
「お願いね、海鶴」
「うむ!子育ては、先輩!任せよ!」
「ふふ。己黄もね。頼りにしてるから」
またも、涙が。何故こうも。
海鶴が、目元を拭ってくれる。
「泣き虫め!そんな事では子に笑われるぞ!」
神無。ええい。
「ふん!」
「蹴速は行動で示す?しかし、親の沽券もあろう!」
「ぬう!」
「行動とは背中?むう。そうかも知れんな!」
「うむ!」
「うむ!」
神無と己黄は、お互い胸を張り、顔を見合わせ、瞳を突き付け合わせ、会話している。相変わらず、平和で、安心する。
蹴速は、シロとの稽古を行った後、地球に赴いた。
目的は、青星。
超騎士を連れて。
「ふ。皆には申し訳無い事ですが、二人きりは、嬉しいものです」
「申し訳無い、なんて事は無い。超騎士がそれで良いなら、良いわ」
「そうしておきましょう」
腕を組んだ蹴速達は、宇宙へ。青星まで、蹴速でも2時間はかかる。地球への影響を考えず、幾らでも加速が出来るから、案外早いが。
超騎士は思う。
蹴速はドンドン強くなっている。シロとの稽古を見た。あれ程の力を持っていながら、指先1本の使い方にも気を配っている。
私も見習う。エネルギーの総量を増やすと同時に、更に丁寧に結界を扱えるように。肉体の底上げをしなくては。そのためには、亜意の協力を得て、限界まで振り絞った後の回復をしてもらうか。これで、強化は加速するはず。どんな副作用が有るかは知らないが。
超騎士の思考中に、着いた。
地球と然程変わらぬ星。青星。例の別の地球の人間も住んでいるはずだが。
さあ、ここであの少女の家を探すのか。星一個の中から。
「こっちやと、思う」
「知っているのですか?」
「ああ。登録の時に、住所、おれも教えてもろうた」
「なるほど」
手堅い。流石、蹴速。
おれも、押しかけて戦おー、とまでは言えんが。んー。邪魔なら殺せるが。女の子に嫌がらせは、ちょっと。殺すより、ひどいか?と言われると、何も言えんが。
都市部。地球より、発達しているのではないか。そう思える都会に下り立つ。
「さあ。こっから細かい場所は分からん。足で探すしかない」
「お供しましょう」
てくてく歩いてく2人。
「蹴速さん?」
「おお。ラッキー。会いに来た」
「はい?」
少女は、前回の白い服を着ていない。今は、地球でも見受けられる、普通の服装だ。
「お前より強い奴、居る?」
「あー。えーと。居ますけど」
「案内頼める?」
「あ、はい。今日はお休みなんで、全然大丈夫です」
「そうか。ありがとうな」
超騎士は静観。蹴速の意向を確認し、それを叶えるために。
「あの服は、お母さんが編んでくれたんです。宇宙は、寒いからって」
「ほー。優しいお母さんよ」
「ええ。夜なべして、作ってくれて。あれでいつか、私も自由になるんだって思って」
「自由?」
「あの、あなた方の言う所の、宇宙恐竜です」
「ふむ」
「私達は、あれから逃れて、怯えずにすむ生活を手に入れるのを、夢見ていたんです」
「嫌では、あったんか」
「ある意味、安定はしていました。いつも、どうなるのか、先が見えない生活。幸い、研究開発に適した隕石は幾らでも引っ張られてきました。この星には、沢山の水も生命も息づいている。後は、この星が何かと衝突する前に脱出する事だけ。そんな時に、あなた達が、来た」
自分達の住んでいる銀河が、消失していく。忌まわしい安息の地。しかし、放っておけば、自分達の星も消える。直ぐに逃げられる人員なんて、数えられる程。しかし、星は、離脱させられた。
やって来た、数人の人間に。
たった数人で、あれを滅ぼした。我々には、逃げる発想しか無かったのに。それ以前の人間達も、迎撃、敵対し頑張っていたが、やはり逃げた。仕方ない。勝てるわけもない。戦うとか、そんな段階では無いのだ。一体誰が太陽と殴り合おうとする?銀河には、恒星も両手の数以上有ったのだ。
自分達では、出来なかった事を、造作も無く。苦も無く成し遂げるのを見て。否定されているように感じた、のだろう。
「宇宙恐竜も強かったけど、あれより強い奴も居る。なので、気にするな」
「あなたの事ですか?」
「いや。おれは宇宙恐竜より、弱かった。強いのは、おれの嫁。まだ、1人では勝てた事が無いんよ」
「それは、人間ですか?」
「いいや?魔神」
話しているうちに、少女の家に着いた。
大きい。幾つも棟が有る。家と言うより、何かの施設だろうか。
「こっちです」
少女の案内で、とある棟に。
「お母さん。こちら、あの惑星系を消した人達の、1人」
「まあ!見させて!」
蹴速は、癖でカウンターを入れかけたが、超騎士の結界によって止められた。
すまん。めちゃくちゃ助かった。
いえ、内助の功です。妻として、当然の事。
「お母さん!失礼な事をしないで!」
娘がシリアスな雰囲気で母親を叱る。気付いた。蹴速の雰囲気が、少し変わった事。攻撃を、もしかしたら受けていた。あの服でも、対抗出来ないものを、敵に回したくない。
「こんな美人さんが相手してるのに、そんな言い方しなくても」
不満そうだ。
「お母さん。良いから、お兄ちゃんは?」
「知ってるでしょ。今日も、見回りよ」
この家の兄。彼は妹よりも更に高性能な防護服で、青星の警備に当たっている。また、宇宙恐竜にならないために。
「帰って来るのも、いつも通り?」
「そりゃそうでしょ」
「なら、また来るわ」
「お邪魔しました」
蹴速は、あっさり帰る。
少女も強く引き止めもしないが。
「あの。何故ココに?」
「ああ。強い奴と戦いたくて」
「そうですか」
助けてくれたし。少し、強引なお誘いかと思った。
お誘いではある。戦闘の。
「今度、また遅い時間に来たら良いかな」
「えーと。土曜日なら、空いてます。完全な休日のはずなので」
「なるほど。それなら、いつか、土曜日に」
「あ、はい。お待ちしてます」
2人はそのまま帰った。
生身で青星を離脱する2人を見て、母親は呟く。
「ねえ、あれ、何?」
「人間。私が、あの服でも、完璧に負けた」
「へえ!すごいじゃない!」
「お兄ちゃんと戦いたいんだって」
「ええー。お兄ちゃんのは、特別製なのよ。壊して欲しくないんだけどなあー」
「研究って事で良いんじゃない?あの人のデータ取れるし」
「確かに!」
そんな調子で良いのかなー、と思いつつ。少女は、謎の青年の来訪を待つ事に。
ちなみに、この少女。年齢は、17才。
対魔蹴速、16才。
蹴速は登録を見て知っているが、別に気にしてない。少女は知らない。




