表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/100

ジンのヴァイキング見物。

「ありがとね」


「ありがとうございました」


「なんのなんの。困った時は、お互い様よ」


 無双双児は、先日助けてもらった、病院に運んでくれた、ヴァイキングに礼を言いに来た。


「お前ら、もう動けるのか」


「うん。まだ痛いっちゃ痛いけどね」


「リハビリもかねて。もう動き出しませんと」


 あれから、2週間。全治3ヶ月の怪我のはずだが。


「まあ、元気でやれよ」


「それで、イギリスの様子は?」


「ヴァイキングが当たってるんですよね」


 騎士団は守り。調査は、ヴァイキングが受け持った。


「ダメだな。進めねえ。敵の数に、キリがない」


「生き物なんでしょ」


「クローン・・いえ。それでも不可解な速度の生産」


「ああ。有り得んのだ。そのうち尽きると思っていたが」


 いくらなんでも、多過ぎる。蹴速達が、無数に殺し尽くした後なのに。


「蹴速に出張ってもらうしか、ねえな」


「なるほどねえ」


「それが、安全ですね」


 ヴァイキング、ジンは蹴速の誕生日祝いから戻っていた。


 いきなりシロが現れて、どうしたのかと思ったら。


 おれに直接言えよ、蹴速。


 全く。


「嬉しそうですね」


「ああ!とても!」


 メイルは、ストレスが溜まってきていた。船にも乗れない、戦えもしない。何も出来ない。


「そう言えば、そのうち来るってさ」


「コウチが、ですか」


「うん」


 それならば。


ざん


 足音。


「何か、注文した?」


「いえ」


 メイルは、自分の武器を取った。


 ジンは扉を開けた。この家は鋼鉄製ではない。閉じこもるのは、不利だ。


 骸骨の群れ。やはり。


「ここが襲われている、と言う事は」


「街が危ない!」


 メイルが駆ける。街を目指して!自分の領地を守るために!


「頑張るなあ」


 ジンは、視界全ての骸骨を滅ぼしてから、メイルを追った。


 街には骸骨が溢れていた。街角では、ヴァイキング兵が踏ん張っているが。


 メイルは叩き潰し始めた。得物は、大金槌。船だろうが、砦だろうが、海獣だろうが、捻り潰せるお気に入りの武器。


 骸骨も粉々にする。やってみて分かったが、多少吹き飛ばす程度では、復活する。完全に粉微塵にしなければ。


「オオオオオオオオ!」


 太い声。強い声。大金槌が唸りを上げる。


「なんだ、強いじゃん」


 ジンが追い付いた。


 さて、どうする。有我達が来るのを待つ予定では有ったが。


 予定変更。今すぐ、ぶちのめす。


 ジンはやはり、視界全ての骸骨を街並みごと消して行った。


 多少メイルからの抗議も有ったが、有事だ。仕方無い。


 ヴァイキング砦。ここが本拠らしい。


「支配階層は、ここに居ます」


「ふーん」


 ジンは、砦ごと消滅させるか、と一瞬思ったが。お手伝いさんとかも巻き込むな、と思いやめた。


 正面から入る。敵らしい敵は居ない。骸骨だけ。メイルの案内で、上階へ。


 ある一室。会議室か?


「あれかな」


「確かに。あれは、魔刃」


 刀ではない。剣でもない。それは、刃。日本刀の持ち手が無い状態、と言い表すべきか。刃のみねに、指を通す場所が有る。超とがったメリケンサックと言えば分かりやすいか。


 それが、人を操っている、のだろう。明らかに、振れてない。武器に振り回されている。


 ジンは取りあえず、全力で拳を振るい、魔刃を消し潰した。


 持ち主は、うつろなまま。やはり、亜意やシロが居ないと。


「可哀相だけど、この人は、このままだね」


「ええ。殺さないで頂いて、ありがとうございます」


「良いよ」


 ジンとメイルは砦を後にした。骸骨は、倒れ伏している。


 メイルの頭に入っている、父と親しいヴァイキング首脳部。後は、水飛沫号の乗組員だけか。


 水飛沫号。父が、自分が、初めて船に乗った時の、練習船。あれを、手にかけるのか。


 今は、親族の誰かが動かしているはず。


 水飛沫号が普段居る、港へ。


「うわあ。いっぱい居るね」


「ええ」


 骸骨の群れ。そして湧き出している元。


 水飛沫号。


「出来るだけ、武器と骸骨だけ消すよ」


「お気遣い、有難うございます」


 本心から、メイルは感謝した。


 船の周辺を掃除してから、乗り込む。人間の姿も少しは有る。


 問題無く、全て消した。船も原型を留めている。流石にアチコチ小破しているが。


「これで、全部なのかな」


「どう、でしょうか。私の記憶に有る限りは、片付いたはずですが」


「見回って来ようか」


 ジンはメイルを抱いて飛んだ。


 ヴァイキングの国土は、それなりに広い。大地、島、船。主要拠点を見回ってみたが、問題無い。


「問題解決、かな。後は、直ぐに来てくれれば」


「ええ」


 操られていた人間達は、未だ自我を取り戻していない。遠からず、死体の山になるだろう。


「何か、欲しい物は有りますか?」


「ん?」


「今なら。混乱のドサクサで、何か国宝でも、問題無いと、思います」


 メイルはメイルなりに、ジンに報いたかった。


 それが、門外不出の品でも。


「良いの?じゃあ見てみようか」


 それほど、期待はしていない。だが、メイルの気持ちも嬉しかった。し、自分が此処まで来た理由。何か、分かるかも知れない。


 先程の砦に戻る。此処には、ヴァイキングが各地で奪った物、ヴァイキング自身が生み出した物、あらゆる物が有るはずだ。


 だが、大部分は持ち出されているはずだ。皮肉にも、操るはずの武器に、そそのかされて。


 キョロキョロ。


 普通の武器ばかりだ。


 もちろん、一級品では、有る。が。ジンの武器としては、資格は無い。


 蹴速と同じく、今まで、武器を使った事は無い。


 さて。見物だけで帰るか。


「これなど、どうでしょう」


 メイルのおすすめ。きらびやかで在りながら、鋭さがにじみ出ている。名槍。逸品である。


 ジンは、少し振ってみた。槍が、消え失せた。


「・・すごすぎる」


「まあねー」


 蹴速と同じルート。蹴速の親に作ってもらうしか、無いか。まー、蹴速とお揃いなら、それがベスト。


ごとん


 槍を消し飛ばした衝撃で、何かが倒れた。


 おお。


 禍々しい。先刻のと同じ、魔刃。


 蹴速が居れば。自分がこれを手に取っても、操られても、何とかしてくれるのだが。今は、この場所には、居ない。


 ジンは魔刃を消した。もったいないけど。


「申し訳無い。時間を取らせただけでしたね」


「いやいや。面白かったよ」


 本当だ。自分の世界では、あまり見られない武器も沢山有る。これは、個人携行用大砲だろうか。元の世界では、もっと小型化されている。こんなデカい、砲身が10メートル、弾倉らしきサイドカーみたいなもの。それに、腕を突っ込む場所が有る。つまり、これは個人が持ち運ぶものなのだ。


 きっと、特盛みたいな人間を見て、開発してしまったに違いない。


 槍、剣と言った基本的な武装も、様々。見ているだけでも、かなり面白い。


「うん。楽しい」


 ジンは笑顔なので、メイルも胸を撫で下ろした。礼を欠いてしまうのは、不味い。基本、力の横行する世界では、仁義が重要になる。意外な事だが、法治の進む程に、人の間での礼儀作法は廃れる。腕力がモノ言う世界では、礼節は恐ろしく重要になる。それ以外に、力を押し留めるものが、無いから。


 それ以上に、恩人に何も返せないのは、生き恥だ。何も返せないと言った。言いはした。だが、本当にヴァイキングがその程度の民族だなんて!


「何でも言ってください。私の名にかけて、融通します」


「うん。じゃあ、まずは。美味しいもの食べよう!動いたからね」


「ええ!肉と魚。どちらが好きです?」


「肉かなー」


「では、串焼きなど」


「良いね!」


 和気あいあいと、2人は、いつも通りの街に入った。


 先程まで骸骨の襲撃を受けていたのに。すごいものだ。


「良い風」


「ああ」


 有我は亜意と一緒に船の上だった。


 神無も帰って来た。ヴァイキング、グリス同時制圧の時。


 神無と、4将(何故か、仮要明も含まれている)は休ませる。


 健康のため、モモも外に出ている。そして。


「母上。これが、外、ですか」


「ああ。これが、外だ。マキ」


 キと蹴速の子。マキも初陣だ。最も、激しい戦闘にはならない。そう言う背景有っての事ではある。


 いつかは、外に出る。故に、可能な限り安全な戦場へ。


 それでも、流れ弾も、有りうるのが戦場だが。


「お父様も一緒なら、尚の事良かったですね」


「ふ。そうだな。だが蹴速は蹴速で忙しい。分かってやれるか」


「それは元より。されど、心の寂しさが埋まるわけでは有りませんよ」


「ふふ。そうだな」


 キはマキを抱く。


 ややこしいが、母体はキなので、母親でも合ってる。


 有我は、どういう言葉使いしてんだ。と思ったが。まあ、良い。我が子には、海鶴と己黄の子を見習ってもらおう。きっと祝寝の影響が濃い。真人間に育つだろう。


 モモはニコニコしている。キが、親らしい。立派だ。少しの寂しさも無くは、無い。しかし、仲間が友が、家族が。素晴らしい魔族になっている。我がことのように、嬉しい。


 3隻の船で、外海を行く。普通なら戦力も知識も、全く足りていないはずだが。


 ヴァイキングとグリスの生き残りに案内を頼んでいる。生と安住を約しているので、まあ働いてくれるだろう。


 彼らの知識によると、外海故の魔獣は、そう居ないらしい。強いものは場所を選ばないから、外海のみに留まっては、居ない。


 むしろ、海鶴の言う海竜がヤバそうだ。陸上の竜と同じなら、育つだけ育った海竜は、魔王で無ければ、止められるまい。


 有我とて、コウチナンバーワン。勝つ自信は有る。だが、万が一は起こりうる。だから、万が一と言うのだ。


 亜意とキ。治癒と合力の能力で、手助けしてもらう。


 モモは、適当。それこそ、マキを守ってくれれば、それで良い。安心出来る。


 どうも、戦闘を好まない人間は、有我には良く分からない。生まれた瞬間から闘争を義務付けられている、一一人には。少し荷が重い。


 魔神は、何故モモを作ったのだろう?有我の知る魔族の知識に、噛み合わない。そんな事を言えば、魔王達と家族になっている、一一人など、有り得ないのだが。


 分からない事など、人生には幾らでも有るものだが。


 シロにもモモにも聞けない。


 一一人に、遠慮などと言う感覚が有ったとは。


 有我も、コウチを率いる立場になって、それなりに時が経つが。自分自身をすら、良く知っているわけでは無いらしい。


 面白いものだ。


 三十鬼三問は、ヤマトの人間の活躍を聞き、邪馬刀の初陣を耳にし、胸が熱くなった。活躍の場を与えてくれた王、そして三完、特盛に感謝。


 だが、この戦いは、もっと熱くなってしまう。


「強うなった?」


「アカに鍛えてもらったんでな」


 飛び込み、斬る。単純な動きだが、全開の三十鬼の速度は、御徳より、尚速い。魔王を含めても、明確に三十鬼より速いのは、アカとシロだけだろう。クロは、良く分からないが。


 それでも、蹴速は寸分で躱し、カウンターを入れる。


 ギリギリで避ける事に成功。蹴速は力を入れてない。当たっても、死なないとは思うが。自分の速度で、蹴速の拳の硬さを味わいたくない。


 今すぐ、逃げ出したい。邪馬刀国との稽古以来の感覚。


 楽しい!


 更に速度を上げ、蹴速の周囲に数十の三十鬼の姿が。


 うん。強い。蹴速は微笑み、数百の姿を現した。


 三十鬼は可能な限り斬って斬って斬り捨てたが、全身に、背、腹、頭、両腕、両足に触れられ、蹴速は立ち止まった。


「お前は、本当に、何者なのだ。おれより、コウチナンバーワンより、明らかに強い」


「んー。人類最強。対魔蹴速。目下の目標は、打倒シロ」


「魔神か」


 三十鬼は、シロと剣を交えた事は無い。ただ、蹴速とシロの戦いは見た事がある。他国の者に見せて良いのか?と思いはしたが。見せてくれるのだから、文句も無し。


 自分なら、1秒経たず死んでいる事だけは、理解した。あの戦いに、有我は飛び込んで行ったらしいが。冗談ではない。状況は、そんな単純なものではなかったらしいが、それでも、尋常では無い。有我を、尊敬した。


 有我が魔神シロと戦った時。シロは、本気では無かった。有我も理解しているが。最強の一一人が挑みながら、シロには、遊ばれていた。蹴速と戦う時だけ、シロは本気になる。隙と言えば隙。だが、その隙。蹴速でも無ければ、突けない。


 何故シロは、魔神は、人間を襲わなかったのか。魔王の育成をしていたのか。理由の一つは、分かった。強者を求めていたのだ。一一人が、邪馬刀国が生まれたように、人間からも強者は生まれてくる。その刺激として、魔族を適度に人間の世界に紛れさせた。魔界の存在も意識付けた。


 そして、蹴速と出会ったのだ。


 三十鬼は、蹴速に近付いた。剣は鞘に収めている。


「ん?」


 無防備な。おれでは、何も出来ないと思っているな。


 口付ける。


「・・・」


「・・・」


 ・・・?これから、どうすれば、良いのだ。


 蹴速に抱きかかえられる。唇は自然に離れた。


「んーと。まず、風呂な」


「ん、ああ」


 そういうものなのか。流石、既婚者。


 ヤマトナンバーワンの立場と言うもの。しかし。ヤマトの新しい子を育てるのも、また大切な仕事では無かろうか。うむ。


 トップクラスは、頭の回転も速い。自己弁護を1秒で済ませた。


 ヤマトとしては、対魔蹴速個人と縁が出来るのは、悪くない結果だ。


 と、思いたい。


「どう思う」


「ん?好きにしたら良いわ。ヤマトを守る理由が、出来てしもうた。三問のご両親も居るんやろ」


「まあな。だが、それは関係無い。おれの子であれば、問題無いが。一一人が、三鬼が、何故お前を使わないのか、良く分かった。お前が居なければ、何も出来なくなってしまうのだ。それを恐れている。おれもな」


 蹴速は首をかしげる。自分もシロを頼る事は有るが。そういうものだろう。いくらなんでも、蹴速と言えど、飯を服を家を、生み出すなど出来ん。人に頼れば良い。


 ここでの勘違いは、蹴速も以前、銀河を相手取った時、シロの力を借りるのを渋った事が有ると言う事。蹴速は、それをごっちゃにしてしまっている。


 蹴速の思いは、恐らく真理。だが、蹴速自身、それを自分だけでは、受け入れられなかった。 


 ここに居るのは、ただの人間。完成された人格者ではない。


 それが、人類最強であっても。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ