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特盛、獲る。

 特盛は梅に謝り倒した。顔を真っ青にして、借金に塗れる覚悟も、吐き気を催しながらも決めて。


「どうと言う事は無い。お前が故意に暴虐を働いたならともかく。その倉庫の代金は、コウチが持とう。お前は私の命令で動いている。責任は私が取る。これからも、コウチのために全力を振るうのだ」


「はい!!!ありがとうございまずう!!」


 泣いていた。


「その、幼馴染とやらにも礼を言っておけ。民間人にタダ働きをさせるのは、体裁が悪い」


「はい!おれの方から、礼を尽くします!」


「うむ」


 連絡は終わった。


「どうだ?怒られたか」


「・・・いいや!無罪放免よお!おれは一生梅さんに付いて行くぜ!!」


「そ、そうか。そりゃ、良かった」


 少し退く幼馴染。


「で、どーすんだ」


「ああ。梅さんに頼んで、コウチから回収の兵を寄越してもらう事になった」


「まあ、そうか。それで、敵の動向は、どう探るよ」


「分からねえ。あの倉庫の近くに陣取って、待つ。必ず接近するはずだ。あの武具を必要とした奴らが」


「なるほどな。ま、頑張れ、差し入れ位、持ってってやるからよ」


「いや。来るな。目を付けられたら、やばい。人質にされてもな。だから、しばらくは近寄るな。おれの力量じゃ、守りきれない」


「特盛」


「今日は、おごってやる。んで、仕事が終わったら、何かおごれや」


「ああ。生き残れよ」


「当たり前だろうが!おれが死ぬかよ!」


ははは!


 特盛と幼馴染は、一緒に食事を取り、しばしの別れとなった。


 それから、特盛は港の雑役として雇われた。コウチへの輸出で、仕事は幾らでも有った。


 斬場刀は、コウチ詰所で預かってもらう。


 3日後。来た。


 外海の船だ。デカい。


 下りてきた、船員。強そうなのは、全く居ない。とりあえず、仕事を抜ける事を連絡。コウチ詰所に戻り、斬場刀を手に取り、兵を多少連れて行く。今度はさくっと殺したりしない。捕縛する。


 倉庫付近をウロウロしているのを見て、特盛は問答無用で全員を気絶させ、全員を詰所まで連れて行かせた。


 三鬼梅からの指令は有った。平特盛に協力してやれ。何者か知らないが、3名家からの命令だ。従ってみたら、面白い事に。入国制限などは、無い。だが、無視出来ない。これは、この詰所の手柄になりうる。特盛に従うのは、悪くない。


 さあて、これからの尋問で、どれだけ割れるか。船の捜索も徹底的に。そして、ヤバイのが来ていない。あの武器を使いこなす者。


 まだ、仕事は終わっていない。


 久しぶりに、詰所に戻った特盛だが、やはり幼馴染はコウチに戻ったようだ。流石にな。


 もちろん戻ってなどいない。特盛は全く気付かなかったが、釣り人が、居た。それが奴だ。


 子供が生まれた。


 泣きながら子を抱き上げる蹴速を見て、海鶴も、頬をほころばせた。


「己黄も、もうすぐだ。行ってやれ」


「ああ。ああ、ああ」


「蹴速。お前の子。我らの子。嬉しいぞ」


「ああ。ああ!」


 蹴速は、ようやく海鶴の子を、母に返して部屋を出た。


 祝寝が、手を握ってくれた。


 己黄の部屋には、アカに連れて来てもらった神無も。


ピシ


「孵る」


「ああ」


 生まれそうだ。堅い殻を、頑張って破ろうとしている。


 頑張れ!!!もうすぐだ!!


 父親も、姉も、心中で全力で応援していた。


 出た。


おぎゃあ!


 泣いた!


「む・・」


「己黄・・」


「おお」


 蹴速は、言葉にならない。前も見えない。涙で。


 起きた己黄は、神無に付き添われ、子を抱き上げ、乳をやる。


 子はすぐさま、乳に吸い付き、飲み始めた。


「元気な子だ。蹴速に似たのだな」


「うむ。我もそう思う。・・・神無、いつも、側に居てくれたな」


 乳をやりながら、己黄は神無に話す。


「俺は、お前の姉だからな。妹の大変な時に、力になるのは当然」


「神無」


 頬をこすり合わせる姉妹。


 蚊帳の外の蹴速も、ずっと子を見ている。


「ほら、蹴速」


「ああ、ああ」


「どうしたのだ」


「ああ。ああ」


「しっかりしろ、夫」


 子を抱いて、泣きじゃくる蹴速。


 己黄と神無は、蹴速の泣き止むのを待ってくれた。


 子供達は、蹴速の手甲を遊具として育つ事になる。


 蹴速の泣いた意味。どうして蹴速は涙を抑えられないのか。それは、蹴速自身にすら分からなかった。


 しばらく使い物にならない蹴速に代わって、この家を守る決意を固めるキ。それを手伝おうとする、モモ、下心有りのアオミドリ。


 そんな家族を見て、ニヤけるシロ。我関せず、マクロを新たな宇宙の支配者として育てる教育法を試行錯誤しているクロ。


 超騎士に、下の兄弟を守るよう言い含められる、マオミドリ、マアカ、マキ、マシロ、マクロ。


 次代の支配者として、その片腕となるであろう、妹弟。守らなければ!


 母と父の結束を深めるためにも、兄弟仲は良好としておくべき。


 一緒に遊びたいなあ。


 いっぱい戦えるかなあ。


 勉強を見てやろう。そして、一緒に本を読もう。


 子は子なりに、考えていた。


 アインシェン、仮要明は、ある程度掴んだ。


 海上という、落ちても重傷で済む地形により、成長は促進された。


 速度、安定性もゴリゴリ上昇し、持ってきておいた機材も使い果たす勢いだった。


 稽古に於いて、三十鬼に全く勝てない神無は、素晴らしく楽しかった。飽きもせず戦い、訓練する。駐留していなければならないし、コウチの威光も示す必要が有る。体の良い言い訳が有ったので、公衆の面前で、ずっと鍛錬に励んでいた。


 何故か、アインシェンの強者とも剣を交え、交流が生まれた。予想外の成果が。


 実務は、熊大将と一飲涙にほぼ任せきりだった。本当に使える。ストレス発散としての稽古も、半ば神無の要求だったが、知らぬ剣を交えると言うのは、やはり刺激的で、最後には一飲涙も笑みをこぼしていた。


 鮭川の情勢を探っていた幼馴染は、違和感に気付いた。


 謀略が潰されたはずなのに、鮭川に動揺が見えない。


 もしや、これは、最初から前提が、ずれているのか。


 特盛はじっと待っていた。必ず来る。


 来た。


 1週間。剣も振らず、働きもせず、ただ待っていた。


 外海の船なのは、同じ。だが、今度は乗っている人間がちがう。まだ船は止まっていない。下りてきていない。


 にも関わらず分かる。ヤバイ。


 大急ぎで詰所に戻り、斬場刀を取り、兵を呼ぶが。死人が増えるだけではないか。そう疑った。


 下りてきている。


「止まれ。跪きながら、聞け。何者だ」


「話が早いな。いや、耳が早いと言うべきか?」


 特盛の言葉を無視し、近づいてくる。強そうなのを数人斬ってから、ヤバイのに当たる。そう計算した特盛は、兵に言い放った。


「盾になれ!こいつらを逃がすな!そしたら!おれが敵をぶっ殺しとくからよお!!」


「おおお!!」


 兵は特盛の言う事を聞けた。こいつに従っておけば、あるいは出世も有りうる。3名家の直々の命令でもある。何より、命令を下す自分が最前に出ている。これは、コウチの伝統的な戦法。こいつは、間違いなくコウチの兵。ともがらの言う事は、聞く耳が有る。


 敵もまた構えている。得物は多くが槍。ちらほら斧に剣。警戒すべきは手斧に短刀。投げ槍は無い。ただの槍なら問題は全く無い。こちらの得物は斬場刀。つまり、


「死ねあっ!!」


 切り刻む、ではない。斬り潰す。槍のリーチなど、何の意味もなさぬ。


 特盛が剣を振るった後、生きている敵は居なかった。


 だが、


「う」


「は・・」


 味方に死人が出ている。特盛とは直接当たらず、まず味方の数を減らそうとしている。強いのが、味方の方に行ってしまっている。


「クソがっ!!」


 斬場刀を大上段に構え、ぶち殺しに行く。


 だが、速い。逃げ足は、少なくとも特盛を超えている。追いかけっこは、意味が無い。


「手当出来るか!」


「治癒者は、居ない!救急箱しか!」


「頼んだ!」


「お前は死ぬなよ!おれらもヤバくなるから!」


「当たり前よお!」


 敵総数、数十名。強そうなのは、ノーダメージ。更に特盛が強そうと見た者が残っている。切り込むか。味方を斬られる前に、敵を。


「提案が有る」


「あ?」


「お前1人が自害すれば、残りは見逃す」


「はあ」


「おれ達も死にたくない。だが、お前もおれ達を相手に、そこのを守りきれると思っていまい。これが、一番死人が出ない提案だ」


「なるほど」


「そこの、どうだ?」


「どうって・・」


 残りの兵は顔を見合わせた。死にたくは、ない。


「仕方ねえな」


 特盛は斬場刀を上空に投げた。見えなくなる程に。


「おい、危ないだろ」


 敵は得物を手放した特盛に殺到した。


「逃げろ!」


 味方からの声。ありがてえ。


 だが、


 心配無用。


「お前ら皆殺しにすれば、コウチの死人はこれ以上出ねえ。これが。一番賢いやり方よ、馬鹿共が」


 武装した敵を相手に、特盛は素手でぶちのめし始めた。先日の手斧の件。あれで、特盛は、自分が武器を掴み取れる事に気が付いた。


 毒でも仕込んであれば別だが、日常的に毒の武器を持ち歩く馬鹿は居ない。手入れが面倒過ぎる。


 斬場刀を振り回せる腕力で、殴る。殴った端から、敵は血を吐き出す肉になる。


「へえ」


 強そうと、目を付けていた奴が来る。


「やるじゃないか。おれに付かないか」


「馬鹿め」


「な」


 何が、とでも言う気だったのだろうか。


 落ちて来た斬場刀に潰され、それ以上は言えなくなったが。


 おれと、斬場刀を舐めるからだ。おれ達が、口で止まるか。


 残った敵に強そうなのは居ない。捕縛にかかる。


「良し!治療急げ!捕縛頼む!」


「おお!」


 特盛の指示で兵はきびきび動く。


 30人程を殺して、20人程を捕まえた。船には大量の武器。商売と言うのも嘘じゃなさそうだ。


 以前の船にもやはり、武具が有った。


 そして捕まえた人間から、手に入れた情報を統合。


 ブルーランド。それはヴァイキングから別れた流れ。ヴァイキングに返り咲くためにも、世界に覇を唱えるためにも、鮭川と言う大地を手中に収める。悪くない土地だ。氷原たるブルーランドでは、手に入らぬものが山程。


 此処を拠点にする。それが、白熊王の目的だった。


 と言う事らしい。


 ブルーランドを押さえる。特盛は、そう結論付けた。


 これ以上、好き勝手はさせない。


 梅に連絡を取る。遠征の許可を。


「なるほど。分かった。丁度良いな」


「え」


 鮭川に、増援?コウチにそんな予定が無いからこそ、おれが派遣されたはず。


「待っていろ。直ぐに着く」


「はい」


「お前の好きに動け。私がどうとでもする。お前はただ、全力を振るうのだ」


「はい!!!」


 必ず、梅に。コウチに。戦果をもたらす。


 蹴速にも、自慢しなきゃ。


 特盛は、その後、素振りでもして、待つつもりだったが。


 即日来た。


 フ・ズィからの増援。


「君が平特盛か。九重九連様から話は聞いている」


「あ、ああ。お前は?」


二十七巻数ふつなかんず 不津鳴ふつな。ヤマトの下位ナンバーだ」


 その、ヤマトの下位ナンバーとやらが、10名程居るのだが。


 特盛の目には、有我との差が、あまり見られない。


 唾を飲み込み、聞く。


「え。なんで、ヤマトのお前らが?」


「三完殿から、ヤマトに連絡が有ったのだ。コウチの平特盛が、鮭川で何やら獅子奮迅の活躍を見せるとか。それに、救援に行ってもらえないか、と」


 当初、ヤマト王、御加土土加作は、無視しようとした。ヤマトに、何一つメリットが見当たらない。だが、九重と十言充言が忠言した。


 座していては、強くなれない。ナンバーツー、及びナンバースリーである自分達は動けない。遠征に赴いた三十鬼の意を汲むためにも。


 しかし、下位ナンバーは動かせる。そして。


 建造してより動かしていない、豪火戦艦、邪馬刀やまと。無論、かつてのナンバーワン、邪馬刀国から取った名だ。


 試験航行すら、ろくに済んでいない、邪馬刀を、実戦で動かす。修行しなければ、強くなれない。丁度良い。口実とするべきである。


 部下からの忠言。御加土は受けた。


 下位ナンバーに乗組員、そして、フ・ズィからの治癒者。これらを乗せて、援軍は鮭川にやって来た。


「お、おおお」


 特盛は、涙を流した。九重。十言。あいつら。それに、三完さん!


 それを見た、二十七巻数は、聞いた通りの者と確信した。こちらにも下心は当然有る。それを、分からぬわけでも有るまい。


 気持ちの良い馬鹿だ。


 兵を癒してもらった後、特盛を乗せた邪馬刀は、ブルーランドに向けて出航した。


 それを見送る幼馴染。流石にヤマトの船には、潜入出来ない。あっさり捕まるだろう。


 生きて帰れよ。


 ご丁寧に、特盛のため、斬場刀の輸送船まで来ていた。特盛は、礼の手紙をしたため、不津鳴に預けた。


 借りが、出来た。


 ブルーランドまで、ざっと2週間。航路には氷塊も見当たり、多少面倒だった。特盛を始めとした実力者が、ことごとく叩き割り、進む。


 寒い。


「トイレと友達になれるよな」


「ああ」


 邪馬刀には、鮭川に行く、と言う事で防寒具も準備されていた。だが、ブルーランドに近付くに従っての寒さは、特盛や不津鳴の想像を超えていた。何人か、鮭川から寒冷地のアドバイザーとして同行してもらっている者達が居るが、彼らが居なければ、航海は更に険しかっただろう。


 何故、コウチは北ではなく、南海を獲ろうとしているのか。特盛は、骨身にしみて理解した。


 たまに見かける海獣を狩り、皆で食べるのだが、その命の味が無ければ、くじけていたかも知れない。見渡す限り、命の光景が、無いのだ。


 水と氷。それだけの世界が広がっていた。


「たまんねえ」


 毛皮にくるまり、デッキで視界を確認する特盛。先日の海獣のものだ。暇なので、なめしてみた。


 不津鳴ではない下位ナンバーが、ココアを持って来てくれた。


「どうぞ」


「わりいな。ありがとう」


「いえ」


 2人。静かに海を見る。


「ブルーランドの奴らは、こんな所に住んでんのか」


「でしょうね。彼らの指示に従っての航路です。たどり着けなければ、惨殺すると脅してあるので、間違いは無いと思います」


「さみい。それに、飽きちまう光景だ」


「ええ。かも知れません」


「だから、鮭川に来たんかな」


「かも、です」


「おれは、コウチ生まれのコウチ育ちよ。何不自由無く育って、今は、コウチの最前線に立つ栄誉も有る。こんなさみい所で、今のおれになってた自信は、ねえ」


「・・・私もですよ。皆そうでしょう。生きるには、寒すぎる」


 それとも、これも慣れなのか。ブルーランドの奴らは、こんな環境に慣れているのか。


「食うか」


「頂きます」


 干し芋。


「これは?」


「もらいもんだ。おれのためにくれた物。仲間と分けれて嬉しいぜ」


「そんな、大事な物を」


「言ったろ。仲間と一緒に食えて、嬉しいんだよ、おれは」


「私も、です」


「そうか。そりゃ、良かった」


 特盛と下位ナンバーは笑みを交わし合った。


 ブルーランド到着。


 現地には、若い男は数える程。女子供が多かった。


 以前の船に乗っていた奴らが、その若い男達だったのだろうが。


「話を付ける。流石に、戦闘には、ならねえだろ」


「同行しよう」


「ああ」


 ヤマトの者への不信感は、特盛には全く無かった。それは致命的なまでの隙なのだが。ヤマトにも、今、特盛を害する意思は無かった。


 氷原を歩く。斬場刀は、置いてきた。


「よお」


「・・・」


「おれはコウチの平特盛。お前らの代表は?」


「白熊王」


「そいつは、居ないだろ。その次は」


「次も、船で」


 まさか、斬った奴らの中に居るのか。


「わりいな。そいつら全員、おれが斬った」


「何・・」


「死体も残ってねえ。お前ら、どうする」


「代表は、居ない」


「コウチに、これ以上、逆らわれても困る」


「では、どうすれば良いのだ」


「降れ。ブルーランドは、コウチに従え。そうすりゃ、これ以上、死ななくて済むぜ」


「代表は」


「お前が代表だ。他に居ねえんだから。仕方ねえ」


「・・降る」


「正解だ」


ぎああああ


「何だ・・氷か」


 此処に来るまでの海路でも、氷の擦れ合う音は度々聞いていた。


「悪い事は言わん。逃げろ」


 ブルーランドの者に言われた。


「ああ?そりゃ、船は危険だが、此処は地上じゃねえか。雪崩だって、起きる地形じゃねえぞ」


「そうじゃない。これは」


 聞くまでも、なかった。


 怪獣出現。


 まるで、氷山が動いているかのような。


「何だこりゃ」


「殻ペンギンの、主。この氷の世界の王だ」


「へえ」


 言われてみれば、亀のような甲羅は、殻か。


「ちょっと斬場刀取って来る。待ってろ」


「ああ。お前が帰って来たら、共に仕掛ける」


「それで行く!」


 特盛は大急ぎで船に帰り、斬場刀を持つ。この感触。お前が居てくれれば、どうにかなる。


「待たせた!」


「おれ達を使いこなせるか?」


「自信はねえ!だが、ちょっとデカい程度の鳥に偉そうな顔はさせねえ。此処は、コウチがもらうんでなあ!!」


 特盛は、全力で踏み込んだ。


 目論見としては、殻ごと叩き割る。


ギン


 斬っ・・・れ、て、ない!

 

「馬鹿な!」


 てめえは蹴速か!


 立ち上がる殻ペンギン。何をする。


 何かをする前に、ヤマトの下位ナンバー達が突っ込む。速く、無駄の無い動き。ただの切り込みなのに、惚れ惚れするような動きだ。


 四肢を切り刻み、装甲の無い腹を狙う。


 だが、ペンギンは、その場で回転。ヤマトの者達を寄せ付けない。


 特盛はその間に、回転していようが、何だろうが、もう一度斬り付けた。


「オオオオオオオオオ!!!」


 久方ぶりの、全身全霊。


 今度は斬った。腕が1本飛んだ。


「良し!行け!」


 ヤマトの者達の猛攻が始まった。腕を斬られバランスを取れないペンギンに、なすすべは無かった。


 ペンギンは、息絶えた。


「良し!!勝った!」


おおおおお!


 特盛とヤマトの共同戦線は、勝利に終わった。


 殻ペンギンの死骸は、皆で食った後、殻を斬場刀と同じ船で持ち帰る。記念だ。


 警戒心、敵意を持っていたはずのブルーランドの者は、むしろ敬意を以って、こちらに接するようになった。


 そして、ブルーランドの住人は、順次、鮭川に移住する事になった。


 労働人口である男集は、特盛に次々と斬られている。このままでは、ブルーランドは消滅する。鮭川で、労働力として活躍してもらう。


 鮭川では、新たな移住者は戸惑いと共に受け入れられた。労働力は欲しい。


 鮭川は、打って出る。産業立国として。


 コウチとの定期航路が出来た。これを、チャンスと捉える。


 言うなりでは、ダメだ。鮭川の存在感を示し、ダイコウチでの必要性を増していく。


 そのために治癒者をフ・ズィに頼んでもいる。今までよりも働く。自然の中で。それは、より怪我を負うと言う事。


 後日、何故か、フ・ズィから治癒者が出張に来た時、貴重なはずの薬を大量に手土産にもらった。噂に聞く通り、三完林は慈悲深いのだ。鮭川の住人はフ・ズィに厚く感謝した。


 もちろん、疑ったわびである。


 梅からも、鮭川の産業への援助が、コウチ公式として届いた。これで、鮭川は更に発展する。


 特盛は礼を述べ、邪馬刀と別れた。


 不津鳴は、ちゃんと九重に手紙を渡し、九重と十言をニヤケさせた。


 今回の成果。無実の鮭川を疑ったのは梅の責任。実際に来たブルーランドの者を撃退し、ブルーランドを支配下に置く事に成功したのは、特盛の功績。そう、梅は記した。


 読んだ有我は、適当に、話半分に受け入れた。梅が、我が身可愛さに甘い仕事をするなど、天地がひっくり返っても有り得ない。だが、逆は有りうる。それに、今回は、梅の子飼いの部下の仕事。かなり点数は甘いだろう。それとバランスを取るために、自分の不出来を強調したはず。


 全く。私情を挟むなんて。梅もまだまだ。


 ヤマトの協力は有った。鮭川のコウチ一般兵の命も使った。


 それでも、ほとんどを1人でまとめあげた特盛の名は、鮭川、ヤマトに轟いた。


 帰って来た特盛は、無事、幼馴染におごってもらい、楽しい時を過ごした。

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