コウチ、世界征服する。
フ・ズィ到着。ここには軍を入れない。
トレーラーとオープンカーのみでドライブ。
「会見が終われば、お前達の新しい仕事だ。心機一転頼む」
「はい!」
「はっ」
「頃合を見て、引き上げる。それまでは踏ん張ってくれ」
「フフ。フ・ズィの魔族は全滅させますよ!」
「頑張りましょう」
ま、そこまでキツくは無いだろう。と梅は思っていた。ついでに、危険な魔族の情報も入手しておくか。
フ・ズィ本部。簡素な建物だ。飾りっ気が無いにも程がある。
「ほう」
「ん?」
「結界が何十にも埋め込まれています。ある属性にのみ反応するようですね」
「あたしとかか」
「亜意はどうでしょう。純粋な人間です。梅の方が引っかかる可能性は高い。故に、2人とも、覆っておきます」
「助かる」
「ま、どうでもいいがな」
フ・ズィの結界に引っかかると言う事は。熊大将は、やはりとんでもないもの達と関わったものだと思った。
超騎士の結界で亜意と梅をカモフラージュ。ただの人間に置き換える。
そして、フ・ズィ代表。三完林。
「フ・ズィは争いません。それは、認めて頂きたい」
「うむ。コウチに逆らう事は許さん。だが、それを守れば、自治を認めよう」
「事実上の犬ですか」
「安心しろ。ペットは可愛がる方だ」
「仕方ありません。従いましょう」
「それで良い。心を預けろ、とまで言わぬ。充分だ」
「分かりました」
会見は順調に終わった。
「所で。フ・ズィと折角お近づきになったのだ。我々も援助してやろうと思ってな」
「要らぬ事ですが、何でしょう」
「兵を2人、魔物退治に預ける。私の腹心だ。最前線に使ってくれ」
にやりとする特盛。顔色を変えない熊大将。
「最前線?いくらコウチの方とは言え、舐めているのですか」
「舐めているのは、お前だ。フ・ズィの最前線など、コウチにとっての庭先に過ぎぬ。雑草を刈り取ってやろうと言うのだ」
梅の眼光。
「そこのお若い方は、死にますよ」
「その時はその時。だが。私の選んだ者が、容易く死ぬか」
「おお!」
特盛は手を上げて応えた。
「おれも、問題ありませぬ。コウチのため、フ・ズィのため、働きに来たのです」
「その通り!敵を用意してください!全て斬りますから!」
威勢の良い。
「そこまで言うのであれば。文句は無しですよ」
「無論」
「では。案内の者を」
特盛、熊大将は、これで別行動だ。
「お前達なら、何とかなる。最悪、逃げ帰っても構わん。死ねば、コウチの戦力が減る事、理解しておけ」
「心配無いですよ!必ず勝ちます!」
「おれも、働きます」
超騎士と亜意は、少し心配になった。梅は特盛の目を見て、送った。
「ここで、また強くなれ。次に会うのを楽しみにしているぞ」
「はい!!」
「特盛を、頼む。新兵ゆえ、未熟さも目立つだろうが、これからの者だ。面倒を見てやってほしい」
「は。おれの出来る限りで」
「うむ。では私達は、御都に向かう。またな」
「行ってらっしゃい!」
「武運を祈っております」
行ってしまった。特盛は、寂しさをぐっと堪えて、熊大将に話しかけた。
「じゃ、行きますか」
「ああ。短い間だが、よろしく頼む」
斬場刀を持ち上げた特盛を先頭に、2人は、案内された不進林に進入する。聞いた話では、フォーデス山脈とは比べ物にならないとか。
斬り甲斐が有ると言うものだ。
特盛の背を見ていた熊大将は、気が宿るのを見た。
この、新兵と紹介された者が、これほどの迫力を。コウチはどんな鍛錬を積ませているのだ。
熊大将から、特盛への侮りは消えた。
有我、神無は、先に御都の鼻先に着いていた。翌日に梅達と合流する手筈だ。
「上手くやったかな」
「梅ならな」
「ま、亜意も超騎士も居る。どうとでもなるか」
「そう。心配は要らない」
「どう。治った?」
「8割方、な。神化も数分なら保つだろう」
「ボクの指示無しに使っちゃダメだよ」
「なんだ。お前が指揮官か」
「当たり前でしょ」
「てっきり、お前が切り込むものかと」
「ヤだよ。総大将ってのをアピールしてからだよ、そんなの」
「突っ込むのは突っ込むんだな!」
「ボクが出ないと負けるでしょ。仕方ない」
「ふっ。頼りにしているぞ、総大将」
「うん。ボク達が居れば勝てるよ」
「ああ!」
祝寝と海鶴は、大勝パーティーの計画を練っていた。
「ううん。その30メートルの魚は、西の海なのね」
「ああ。東には大ダコ。南には大イカ。北には大貝」
「魔王達に頼んで、獲って来てもらおうか」
「うむ。私では、少し時間がかかるな」
「私達は料理だね」
「己黄は?」
「やはり、空を見ている。神無の行った方を」
「己黄は神無が大好きだね」
「うむ。私が祝寝を好きなようにだ」
「ふふふ。嬉しい」
「私もだ」
子供達と遊ぶ蹴速、ジン。
「ほっ」
マアカの蹴りを蹴りでさばき、こかす。
「ふっ」
こけたマアカは、手を付き、即反転、反撃。しかし、蹴速にさばかれ、降参。
「うん。また上手くなってる。頑張っちゅうな」
「うん!」
蹴速と手をつなぎ、他の魔王候補の様子をうかがう。
ジンはマオミドリと腕相撲を。いや、マキもだ。右腕でマオミドリと、左腕で、マキと。それぞれ、頑張っているが、ジンの腕は揺れない。
「行くぞー」
「うっ」
「ぬ」
ぺたん、と子供達の腕はテーブルに付いた。
「はーい、お疲れー」
「強い、ジン姉」
「本当に強いな」
「ふふん。お父さんの次に強いのが、おれだからね」
「えー。それはアカ姉じゃないの?」
「いやいや。まあねアカもね、良い線行ってるけどね、強いのは、おれかな」
「へえ」
子供相手に適当ぶっこいてるのが、人類で蹴速の次に強い人間だ。
多分超騎士にしめられる。
「マシロはどした」
「あいつは瞑想してる」
「ほう」
生後約1ヶ月だが。体型は10才並みとは言え、そこまで到達しているのか。
魔神とは!宇宙最強とは!
分からん!
以前シロがのぞいたマシロの心だ。正直、今のマシロが瞑想する意味は無いのだが。まあ、好きなようにしたら良い。自分で体験して分かる事も、有る。
梅が来た。全軍健在。
御都に、挑む。
「御都は正将軍を戴く、由緒正しい、武闘国家。簡単に勝てる相手、ではない。だが。私達は常に勝利してきた。今まで、そしてこれからも。それは我々全員の力で勝ち取った勝利。そう、我ら全員が力を合わせれば。必ず勝てるのだ!コウチの覇道、阻めるものなど、有りはしない!明日の勝利!掴みに行くぞ!」
おおおおおおおおお
「おっけー。行こうか」
「ああ」
「見事だ、梅」
3名家を頂点とし、コウチ2万は御都本部、イバラキへ進軍。道中の妨害は、各隊に排除させ、3名家は温存する。
妨害、無し。
「どういう事だ」
「5将軍は健在。削りに来る、そう思っていたがな」
だから超騎士、亜意を隊列中間に置いている。
「待ち構えてる?」
「ここまで来たら、そうだろうな」
「ふん。敵国内で、正面衝突か」
「敵は何処からでも増援を出せる。憎たらしいねえ」
「とにかく、当初の戦術は、正将軍の首を速やかに取る」
「こうなると、難しいか」
「うん。敵は分散して、いないね」
「むしろ、こちらが取られる番、か」
神無の言葉に応えるように、進軍中のコウチ、もう少しで御都本部に着く、その時に、敵襲。
「敵、速い!止まらない!」
「来たか」
「どうする」
「ボクが止める。梅、斬って。神無、動くな」
「応」
「承知」
3名家が本腰を入れる。
敵、5将軍自ら特攻。わずか5名でコウチ2万をちぎって来る!
それを1人で止めるのは、最強の一一人。
「君らの運命、御都と共に、今日までさ!」
踏み込む!全速!
見えない有我に、まず1人斬られた。4名の目が有我を向いた瞬間。1人の首を、突如現れた剣が、薙いだ。突然首の落ちた同僚に心乱した3人は、有我になで斬りにされた。
「どうと言う事も無かったね」
「流石だ」
「見事!」
損害は200名程か。
「500を置いておく。治癒及び、遺体を船に。丁重にな」
「さあ。御都を斬るよ」
「ああ」
「行くか!」
進軍。最早阻むもの無し!
御都本部。
正将軍が立つ。
「強いな」
「ちょっと斬って来る」
「逃したなら、私が斬るぞ」
「ま、大丈夫でしょ」
5将軍の力から推測して、どれほど高かろうが、蹴速と出会う以前の有我レベルだ。
向かい合う2人。
「降らぬか」
「馬鹿なの?」
有我は自然に歩き出した。その足先に、斬撃。だが、有我の姿は、もうそこに無い。
「遅い。そのレベルで正将軍とは」
正将軍の聴覚が有我の言葉を捉えた時には、既に頭は胴から離れていた。
「降伏する?」
御都は落ちた。御都の全戦力が当たったなら、ただでは済まなかった。幸運だ。
これからはコウチが徹底的に直接支配する。
「さあ、刀農だ」
「神無、行ける?」
「誰に聞いているのだ」
「だね」
刀農へ、止まらず進軍。精兵を船で寄せてある。今まで来た軍は御都を見ている。
コウチ御一行様ご案内!
そんな看板が、有った。
「またか」
「また?」
「ほら、中つ国の」
「ああ・・そうだったか」
「計略の可能性は?」
「有る、としか」
「行ってみるか」
「うむ」
疑いつつも、前に進む。
刀農本部、イワテ到着。妨害、無し。
「行って来るよ。警戒お願い」
「超騎士、頼んだぞ」
「ええ。安心してください」
「行くぜー」
「亜意」
「乗りかかった船だ」
「大丈夫だよ。弱い者は、ここには居ない」
「ならば。生きて帰れ」
「うむ」
「うん。じゃ、行って来るね」
有我、超騎士、亜意は本部に乗り込む。周辺には刀農住民が普通に居る。
「通告は出したはずだけど」
「普通ですね」
「これが刀農か。全住民が武器を持つとかいう、イカレ国家」
言う亜意の表情は、しかし楽しげだった。あるいは友好的と言っても良い。殺し合いには、馴染みが有る。
そのうち、身なりの兵らしい人が案内を買って出てくれた。
「いやあ、本当に強そうですね、コウチの人は!」
「まあねえ」
「で、どうやって強くなってるんです?こっそり私だけに教えてくださいよ」
「だーめ」
「いいじゃ・・・」
途中で面倒になった有我は、鞘に手を伸ばしかけたが、案内人が、即土下座をしたので、手を引っ込めた。
「へえ。見極めは良いね」
「えへへ」
冷や汗をかいている案内人は、一応刀農の代表の1人だった。様子をうかがう目的だったが。思ったより危ない。正気じゃない。こんなのが、ほんとに統治出来ているのか?
「ん?」
「いえ!ご案内いたします!」
それはもう従順だったそうな。
本部到着。
「ようこそコウチ様!」
「うん。出迎えご苦労」
「歓迎会の準備は万端!飲みましょう!」
「んー。先に色々してからね」
「いえいえ!郷に入っては郷に従え、まずは飲みましょう」
有我は、そのようなヌルい習慣に付き合う気は、一切無かった。
「この場の全員死ぬか。ボクの言う事に従い続けるか。好きな方を選んで良いよ」
「それは、傲慢じゃ、ありませんかね」
「君は、意味を履き違えている。強いものが弱いものを好き勝手するのは、当然だよ。だからボクらは死体の上を自由に歩いてきたんだ」
「死体にも、足をすくわれますよ」
「そうか」
有我はその場の全員の首を刎ねた。
「さあ、すくってもらおうか」
「ものすごい思い切りの良さですね」
「んー。ボクは支配者。向こうは奴隷なんだよ。完全に見誤った。繰り返し、こんな馬鹿が来るようなら、刀農は灰にする」
亜意にも異は無かった。強者が全てを得るのだ。そう実行してきた。
幸い、次の代表は従順だった。有我に完全に従った。まだ、転がってる死体、首は片付けていない。
「ボクは。いたずらに痛めつけるような真似はしない。コウチの者がそのような事をすれば、遠慮なく報告して欲しい。ただ、ボクら3名家に従えないのは、死を選んだとみなす」
生きている代表にとくと聞かせる。
「ボク、神無、梅。この3名の言う事を絶対に聞き、そしてコウチに従え」
意外にも、刀農は大人しく従った。
「んん?あの調子なら、どんどん死人が増えて、刀農は消したと思うんだけどなあ」
「うむ。俺も意外に思っている」
「意外、ではないさ。刀農は、生き残るために剣を取るのだ。歯向かえば、必ず死ぬ、という結果を見せつけられた。従うのが、刀農らしさと言えるだろう」
「へええ。梅ちゃんすごい」
「とにかく。これで、当面の目標は成功!俺達の勝ちだ!」
「ああ・・!」
「祝勝会は、3回位やろっか」
「だな。家と公式と、もう一度家で」
「ふふふ」
「ま、ボクは鮭川まで行って来るね」
「俺が行っても構わんぞ。神化を使う必要も無さそうだしな」
「ううん。神無ちゃんは刀農をよく見ていて。梅ちゃんの見立て通りだとは思うけど」
「ふむ」
「ボクは鮭川に話を付けたら、一旦帰る。それから、神無ちゃんに用が有るから、一緒に帰ろうね」
「ああ!早く帰って来い」
「私は、コウチか」
「うん。有り得ないとは、思うけどね。長々とコウチに3名家が不在は、不味い」
「了解した」
とりあえず、世界征服に目鼻立ちがついた。後はじっくりと支配体制を整えるだけだ。
大海編、中完。




