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強者達。

 ミヤザキからの定期連絡。ナインラインは従順。エヒメも同じく。中つ国は、エヒメと連絡を取りすぎている。と、エヒメからも同じ内容の連絡が来た。


「中つ国は大層な寂しがり。1人では、コウチ様に会いに行けぬ、とか」


 エヒメの評価を上げる。もし、放置しておいたなら、もろともに消していた。それを、分かっている。思ったより食えない。危ないかも。しかし、反逆していない国を焼くのはただの暴虐。人が付いてきてくれなくなる。自負も、無くなる。


 中つ国は機を見て頭を取り替える。とりあえず神族会議全員の首は刎ねる。大義名分は出来た。二神の血筋を持っていくか。血統を主張すれば、まあ、なんとかなるだろう。


 三鬼梅はヤマトに向かう準備を整えていた。コウチ代表としてヤマト王に会う。コウチナンバースリーで、ヤマトトップには充分。少なくとも、対外的には。


 護衛として、超騎士、特盛、熊大将、亜意。


 ヤマト攻略の後は、なだれ込む。フ・ズィが会見のみで終わるとして、御都、刀農。この2つを叩く。神無と有我、3名家総出で。時間を置くと、連携される。特に刀農の底力は不味い。さらに御都の正将軍の力も未知。警戒してし過ぎる事は無い。


「良いのか、亜意。お前は働き通しだろう」


「てめえに言われるとはな。戦争が始まって休んでないのは、お前だろ。梅」


「私達が始めた事だ。休む理が無い」


「あたしもあたしの意思だ」


 というのは、半分嘘だ。祝寝に頼まれた。


 もし。死にそうなら連れて逃げてあげて。

 あ?

 有我。あと神無と梅も。

 あいつらにそんな心配が要るかあ?

 要るよ。世の中には蹴速もシロも居るんだよ。他所に、とても強いのが居たって、不思議じゃないんだよ。

 そら、そーだが。

 死ぬよりは、良い。だから、何があっても、連れ帰ってあげて。

 へいへい。・・お前、なんであたしに頼む?


 だって、亜意も私と同じ気持ちじゃない。


 ちっ。


 昨日今日会った人間に、見透かされていた。あの時。蹴速が魔神を殺した時。もし魔王までを殺したなら。1人でも、あの場の全員を殺し、仇討ちを。心では思っていたが、誰にも言った事は無いのに。祝寝め。


「親切は素直に受け取っておけ」


「ふん。ちゃんと休めよ。戦場には出なくて良いからな」


「せいぜい、見物させてもらうぜ」


 ふん。


 亜意が冷たい人間に見えるのは、見た目だけだ。それは梅にも、他の付き合っている人間にも分かっていた。


 心配をかけている。家族に。


 その夜は、女子会。蹴速の部屋に居るアカ、キ、アオミドリを除いた者達全員で雑魚寝。


 時速800キロでかっ飛ぶ枕を顔で受けるジンが、ベストパフォーマンス賞に選ばれた。


 子供達が寝静まった後。


「明日。ヤマトに向かう」


「遠いの?」


「船と車で、ほんの二日」


「おれは御都戦で、合流だな!」


「無理はするな。お前が居てくれれば、百人力だが」


「刀農はねー。神無ちゃん居ないと厳しいかも」


「ふむ。焦る事はあるまい。皆、健在だ。何も困っていないだろう」


「あはは。確かにね」


「うむ!」


「うむ!」


「保存食、いっぱい用意してるから」


「ああ」


「楽しみだ!」


「そろそろ電気消すよー」


「おやすみ」


「おやすみなさいませ」


「おやすみじゃ」


 対魔蹴速の強さについて、語ろう。


 練習を具体的に言うとだ。雨の降る日。彼はその視界に入る全ての雨粒、その一滴一滴を、一発一発の拳で打ち壊す事が出来る。彼の目の前で、雨は霧になる。


 岩塊をまず蹴り壊す。大きな石を蹴り壊す。石ころを蹴り壊す。その石ころを砂粒になるまで蹴り壊す。巨大な岩が、砂場になるまで蹴る。


 これが、通常だ。本気になると、この5千倍、今なら1万倍の能力は出せるか。


 魔王達への、ねぎらい。最も欲しい物は何か?


 蹴速の血を褒美として、与える事にした。


「すまんな!」


「いや、まあ」


「その代わりと言っては何だが、メシはいくらでも食ってくれ!そして血を作ってくれ!」


 蹴速は、承諾して良かったのかどうか、ちょっと後悔していた。


 血を飲まれるのは、初めてだ。


 腕をシロに切ってもらって、血液をコップに。各自、200ミリリットル。


ごくり


 各魔王分で、1リットル。モモの分もだ。


「私は」


「もう、出してしもうた。捨てるのも、な」


 蹴速がコップを押し出す。モモは、結局受け取ってくれた。モモが血をあまり飲まない事。魔王としての寿命に関わる事は、聞いていた。


 アカはぐびりと。キは味わって。アオミドリはちびちび。亜意はぐっと。モモは。モモは、口を付けただけ。


「ふう」


 血を抜いて、少し疲れた蹴速は、シロの膝枕の上だった。海鶴が汗を拭ってくれる。


「すごい」


「ああ」


「熱い」


「おお」


 4魔王には好評のようだ。全員の気が充実している。各々が自分で全力を発揮した状態よりも。


 モモは。


「保存しておくか」


「はい」


 シロに保存してもらう。


「飲めばいいのになー」


「モモには、モモの考えが有るのだ」


「ちょっとは飲んだし」


「ふん」


 相変わらずのモモを心配する魔王達。


「ま、いい景気づけになった」


「それは、良かった」


 寝転がってる蹴速の唇を奪う亜意。


「行って来るぜ」


「おお。元気よく帰ってこい」


「当たり前だ」


 亜意、出陣。


「私は、こちらで初めての仕事になりますね」


「おお。そう言えば、そうやったか」


「祝福を」


 頭を差し出す超騎士。蹴速は超騎士の額に口付ける。


「では」


「皆で無事に」


「はい。あなた」


 やべえ。乗り遅れた。


 特盛は、どうして良いか分からなかった。


こいこい


 蹴速の手招きに応じる。


「あの剣。すごいかっこいいな。振り回して来い」


ちゅっ


 ほっぺたに口付け。


「フン!おれの活躍聞いてビビれよ!」


 特盛は蹴速にやり返して、旅立つ。


 ヤマト、フ・ズィを乗り越えれば、有我、神無と合流。全力で御都、刀農とぶつかる。


 出て行った者達の無事を祈る。


「お前は血は要らんのか」


「わしは、飲む必要は、無い」


「要らんのか」


「・・欲しい」


「ほれ」


 シロは蹴速の腕に噛み付いた。


「吸血鬼っぽいな」


「・・・あのような者と一緒にするな」


「居るのかよ」


「犬の仲間じゃぞ」


「そうなんか」


「蹴速も、まだまだ物を知らぬ」


「おう」


「わしがついておらねば」


「おう」


 蹴速は、そのまま受け入れた。


「おれの側に居れ」


「うむ」


 蹴速の腕を抱きしめたまま、シロは眠った。


 ・・・腕がしびれる。


 船上の人である、梅は。高揚感を楽しんでいた。これから、始まる。コウチが世界を覆う。時代が始まる。


「ご機嫌じゃねえか」


「ああ。実にな」


「良い事です。モチベーションを維持するのは」


「おれが、きっとやってみせますよ」


「微力ながら、おれも」


 特盛は、そう言えば、こうした公式の出陣で梅と一緒になるのは、軍学校以来だ。フ・ズィで一旦別れるとは言え、昂ぶっていた。


 熊大将は、急遽命じられた仕事に不満は無かったが。新人と組まされている事に、疑問は有った。


 一応、クマモトトップだ。ただ、3名家の1人が重用している部下。もしかしたら懐中の剣かも知れない。しかし。


「熊大将。まるで雑務を押し付ける事になって、済まないな」


「いえ。立派な仕事です」


 特盛は感心していた。コウチに一瞬で負けたとは言え、仮にもトップが、特盛自身腐ってしまうような仕事を投げないとは。立派なものだ。


「頑張りましょうね!」


「ああ。よろしく頼む。しかし、本当にあんな得物を使うのか」


 特盛の剣。斬場刀には、専用の貨物船が用意された。


「?そりゃそうすよ。いくらおれでも、素手で魔族と戦う程馬鹿じゃないっすよ!ハハハ!」


 特盛以外の全員が、こいつは馬鹿なのだなと確信した。しかし、熊大将は思い出していた。前クマモトトップ、綺羅郷。あの方もまた、馬鹿だった。


 遠い目をした熊大将を置いて、船は動く。1夜明けて、ヤマト到着。


「ここからは車だ。今日中にヤマト本部に行く」


 オープンカーに乗る梅達。トレーラーの屋根に陣取る特盛。そして軍団用の軽戦闘車両。歩兵はトコトコ付いてくる。


「あいつのアレは、フ・ズィまで要らねえだろ」


「持っておきたいのだろう。気持ちは分かる」


「優しいのですね」


「最もやつに適した処置をしているだけだ」


 最も適した処置を選んでいる事が、即ち優しさなのだと、皆知っていたが。口にする者は居なかった。当然であるが故に。


「ヤマトは、大人しく在るでしょうか」


「ああ。跳ね返りは、居ない」


 ヤマトともなれば、ナンバーツー、ナンバースリーも有我並みの実力者だろうが。蹴速と戦ってしまった以上、抵抗の意気は有るまい。


「あたし達の出番は無さそうか?」


「そう思っているし、そう願っているよ」


「万が一の時は、おれが盾になりましょう」


「頼もしい。だが、心配は要らんよ。じっくり行こう」


「はっ」


 何話してるんだろー。特盛は1人、トレーラーの上で、オープンカーの様子を見ていた。時折来る魔獣を斬りながら。


 寂しい特盛のために、予想より早く着いた。道路が完璧に整理されていた。戦闘車両の駐車スペース、歩兵用のテントすら用意されている。


「すごい。これが、ヤマトの地力」


「戦ったらやばかったか」


 からかう亜意。


「ああ。正直に言おう。一般兵の練度が高すぎる。これに最強格が加われば、勝ち目は薄い」


「良い目です。戦力計算を怠る者に未来は無い。三鬼梅。やはりあなたは信じられる」


「ふ。間近で見てやっとだ。将軍としては、物足りない能力さ。私などはな」


「持ってった方が良いすか!」


 特盛が聞いてくる。最早、疑う者は居ない。綺羅郷でも、ここまででは無かった。建物に、それを入れるつもりか!


「置いていけ。超騎士が居る。万が一は、慌てて逃げる。長得物は邪魔だ」


「な、なるほど」


 得心したような顔の特盛。周囲は、梅の気配りに感心していた。亜意などは甘すぎると思っていたが。


 本部進入。きっちりと整然と並んでいる兵。普段の訓練の厳しさが見える。


 通された王間。ヤマト王、御加土土加作。側には、ケタの違う者も。


「今日は盛大な歓迎に感謝する。御加土よ」


「うむ。ヤマトをじっくり見ていくが良い」


 挑発に乗らない側近。やはり違う。素の梅より、恐らく強い。そして土加作の言葉。ヤマトを侮らせないための意思。これが、大国。


「コウチはヤマトを支配する。だが、非道な真似をするつもりは無い。どちらが上か。はっきりさせたいだけだ。分かってくれるか」


「ああ。コウチが上。ヤマトは、下に付こう。お互いの繁栄に協力し合おう」


「うむ。よろしく頼む」


 案外、するすると上手く行った。本当に護衛は必要無いかもしれない。


 仕事を終え、ヤマトを後にする。付いてくる者、2名。


 武器を捨て、さらに近付く。


「なんだ」


「捨て台詞を言いに来た。必ず、コウチを倒してみせる」


「おれ達が、必ずな」


 この場で処断して、ヤマトに絶望を味わわせても良いが。


「楽しみだ。名を聞こう」


「ヤマトナンバーツー。十言じゅうげん 充言みこと


「ヤマトナンバースリー。九重ここのえ 九連ここのつ


「覚えておく」


 梅はもう声をかけなかった。十言達も追わない。用は済んだのだ。盾が有る事をアピール。ヤマトへの無体な真似はさせない。


 殺すには惜しい。


 コウチにとって命取りかも知れずとも、梅は殺せなかった。だから、これ以上の会話は謹んだ。


「元気の良い者達でしたね」


「ああ」


 特盛は汗をかいていた。本物のプレッシャー。どのレベルかはともかく、強い。こんなのに、よく背を向けられるな。梅も超騎士も亜意も、それに熊大将も。全員、おれより遥か上なんだ。


 特盛は、強くなった気で居た。もちろん3名家には勝てずとも。その辺の普通の兵と戦っても勝てる気だった。


 畜生。


 特盛は、ヤマトのトップクラスを、立ち居振る舞いを見ただけで強いと感じ、背を向ける事に恐怖を感じていた。さらにトップクラスを普通の兵、と同じに認識した。


 この根本的な思い上がりを正す者は居なかった。思い上がりで無くなるまで、このままであった。


 少し大人しくなった特盛を他所に、ヤマトを去るコウチ一行。


 見送るヤマト一行。御加土と話しているのは。


「どう見た」


「三鬼梅なら。勝てます。鎧の者と、武器を持っていなかった者。その2名は不明です」


「ふむ。護衛だろうが、コウチも侮れない」


「対魔蹴速以外は、問題無いかと」


「やつは、用心棒と言っていた。コウチの身内では、無い」


「それは隙でしょうか?」


「かも知れぬ。だが、わざと、の可能性も。名家の入れ知恵やもな」


「勝てる、のに手が出せぬのは、口惜しいものです」


「急くな。今、手を出せば、ヤマトは滅ぶ。完全に勝てるようになるまでは。辛抱だ」


「は。その時を、待ちます」


「うむ」


 コウチとの会見の場には姿を見せなかった、梅に気配を悟らせなかったヤマト現ナンバーワン、三十鬼みとい 三問みとい


 コウチの後ろ姿を、目に焼き付けていた。


「じっと見てくる者が居ます」


「ああ。恐らく今のヤマトナンバーワンだ」


「へえ。分かるのか」


「ざっと、だ。王座の後ろ、幕の裏が、やけに静かだった。静寂過ぎた。王座の後ろに居た者の支配力が、高過ぎた。ケタの違うボディガードだとは、思ったな」


 ナンバーツー、ナンバースリーを前面に出していたのは、ナンバーワンを見せたくなかったから。不義理を避けつつ、真の戦力を隠し通す。


 超騎士は結界を直径1ナノメートル程に加工、それを首都の隅々にまで張り巡らせ、強者の気配を探って知っていた。これまで、蹴速にすら気付かれた事はない奥義だ。故に、味方にすら喋る事は無い。この技によって知った所、ヤマト強者は、数十名。その全員が、梅と互角にやり合える。そのうち数名は、梅より強い。だが、この情報も必要無い。梅は油断していない。


 おごった間抜けなら、蹴速と一緒にコウチを見捨てる所だが。最後まで付き合う事になるだろう。そう超騎士は確信した。

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