那須の巫女
那須の巫女
朝、まだ日が昇る前から起き出し、火の始末などをして森に入り川沿いに登った。
那珂川の森は深く、日が昇り始めると木陰から日の光を感じた。
暫くすると、森を抜けて平野に出た。
リーダーはホッとした。
森は何が出るか分からないところがあり、緊張するのであった。
平地に出ると、日が高くなり、休むことにした。
昨日焼いたタヌキの肉をホオノキの葉に包んだものを出した。
岩場があちこちにあったので石の上に座り、森と違う草の香りのする中、肉を食べた。
那珂川の森は微妙に登っていたんだろう。
足がかなり疲労していた。
岩に座るとジーンとした。
暫く歩くと、大きな岩があって那須の巫女の集落がポツポツ見えてきた。
小屋を目当てに山を登って行くと、平らな広場があって大岩に穴が空いていた。
入り口に草で編んだカヤのようなものがかかっていた。
そこに入り込み、リーダーが声をあげた。
「那須の巫女様、ケヤキの集落の者です。北川辺の大巫女様の言伝があります。」
岩場の洞窟の中で声が響いた。
岩場の陰から、侍女がやってきて、リーダーを促した。
奥に大きな広間があって、真ん中あたりに石で組んだ焚き火が赤く燃えていた。
その火の後ろに巫女が立っていた。
リーダーは、巫女に挨拶した。
「ケヤキのリーダーになったのね。久しぶりね。」
那須の巫女は、岩場の反射で、低い声だったが響いた。
「巫女様、北川辺の大巫女様が、西の方から新しい力が生まれておるようだと仰っていました。」
「西の方から、、、ね。」
「海の巫女様と水戸の巫女様から、西の方からの者たちが米という植物と鉄器をもたらすと聞きました。」
「そうか。我も海からの者たちとは違う峠を越えてくる者たちがいるのは知ってる。詳しくは宇都宮の巫女に聞くがよいと思う。」
「山を越えて関東に入って来るものがいるんですか?」
「ハッキリと分からぬが、今まではなかった動きがある事は確かだ。」
北川辺の大巫女の発言は確かなものであった。
リーダーは、巫女たちが動きを感じている事に感心した。
那須の巫女が続けた。
「リーダー、ケヤキの巫女は、世代交代したんだろう。どうじゃ」
「北川辺の大巫女様に褒められました。僕もリーダーとなってケヤキの集落をまとめています。」
「ほほう、リッパなものじゃ。」
リーダーは、今回の旅の様子を語り、関東の巫女ネットワークの顕在を語った。
洞窟では、外の明かりが見えないので、時間が分からなかったが、那須は、自分の親父がリーダーだった時に来たことがあった。
懐かしさで話が膨らみ、夜遅くまで話が続いた。
よく朝、殺生石の近くの温泉に入り、ひと息ついた。
硫黄の匂いが鼻を刺激したが、気持ちのいい朝を迎えることができた。




