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忘れられた王国  作者: 熊さん
第二章:弥生化の波
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創世記の罠

創世記の罠



大巫女が、ゆっくり語り始めた。


「はじめ、世界は、岩がゴロゴロしているだけだった。


まるで、山の頂が広がったような世界であった。


やがて、雨が振り続け、川が生まれた。そしてやがて海ができた。


すると、岩や川や海が、風を誘い土地に向かって大きな声で命令した。


木や草よ生えろ。


大木が生まれ、草原が風に靡き始めた。


暫くすると獣が生まれ、人も生まれた。


人は弱く、すぐ死んでしまった。


そこで、火を使い仲間が集まり、道具を持つようになった。


そして知恵を持つようになった。


これが、縄文の理としての創世記となった。」


大巫女は、静かに口を閉じた。


サワは、違うと思った。

自分が習った創世記とは違うのだ。


「大巫女様、違います。自然の前に太陽があって、人がいます。そして人の力で自然が生まれると習いました。」


大巫女は、伊勢の教えとの違いを理解していた。

だが、すぐには、否定しなかった。


「そうか、違うのだね。でも、人が、自然を作ることは、可能だろうか?」


サワは、ハッと思った。

人が自然を作る事が出来るのかと問われ、考えてもいなかった事に気がついた。


伊勢の大巫女も、自然の動きは予想するけど、支配はしていない。のではないか。


大王は、どうだろうか?

自然を支配する事が出来るのか?


大巫女はサワが賢く、自分の伝えた疑問に答えがないことを理解したと思った。


「我らが縄文の理の中で生きてる限り、我らは何ものにも支配いされぬ。」


大巫女はさらに続けた。


「人は弱いから火を使い仲間を集め、知恵を使うようになった。」


サワも、そうだと感じた。

人が自然より上なのは、伊勢の理屈だ。


本来は、逆なんだ。


サワは近畿圏の支配が恐ろしくなった。

こうやって歴史を書き換えてるんだ。


近畿圏の王が支配できる仕組みを作っていたのだ。

このことに気がついたのだ。


そして、大巫女は知っていた。

大巫女は優しく微笑んでいる。

このゆとりは本物だ。


だから北川辺が弥生化しないことに躍起になっていたんだ。


サワは大巫女にさらに質問を続けた。


「大巫女は、伊勢の理屈を知っているのですか?」


「伊勢や近畿圏のことは、理解する必要がないのじゃ、ソレが縄文の理という事じゃ。もうお前にも分かるだろう。」


「でも支配の理を作り、進めている」


「そのことが何か影響するのか。我らには縄文の理があれば良いという事じゃ」


相手にされてなかったのか。

そのことであった。


近畿圏の創世記の罠に効果がなかったんだ。


焚き火は、またバキッと割れた。

静寂が続いた。


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