縄文の理
縄文の理
朝、早く祈る大巫女に侍女たちの踊りが早朝の小屋の中を揺るがしている。
毎朝、大巫女は、起きると、焚き火の前に来て、祈りを捧げている。
祈りの最後は、手をパッと伸ばし青い炎を立ち上げる。
しばらく大巫女は目をつむり、口元を動かしていた。
サワは、見学していた。
祈りが終わると大巫女が語り始める。
「今日は女どもの漁が始まる。若者の幾つかのグループがキツネ狩りだな。そうだ、サワお前は米の発育について知見はあるのか?」
「はい、理解しています。いまは、順調に進んでいて、青く茂る準備をしているようです」
「ほほ、よく分かってるな。巫女の卵は、そのような事も学んでいるのか」
「はい、田んぼの為の水利の活用も学んでいます。」
「水利もか、たが、三殿台から来た男達が水利は管理してくれてる。我らにはその程度でよかろう。」
田んぼに期待していない感じが、ちょっとイラッとした。
それは、伊勢で学んだ価値観とは明らかに違っていた。
そこで、サワは大巫女に聞くことにした。
「大巫女様は、近畿圏の大王をご存知ですか?」
「大王か、よくは知らんが、海の向こうから来たものじゃろ、弥生化の主をやってる。伊勢の大巫女はその使いのようなものだろ」
サワは、この大巫女の理解力の高さに驚いた。
「昔に来たものじゃろ、弥生化に縄文のものも入ってるからのぉ。」
「大巫女様は米作に興味がないのですか?」
「何を言ってる。米作は新たな食料として我が集落にも入っておるじゃろ」
米作への理解がある。
それなのに、弥生化にならない理由が、サワには、分からなかった。
「何故、大王を無視なさるのですか?」
「無視はしておらんよ。ただ、我らは縄文の理の中におるだけじゃ。」
サワは、縄文の理が分からなかった。
大巫女は、弥生化の構造を理解しながら、それでも縄文の理を選んでいるように見えた。
米作を取り入れてるのに、伊勢の大巫女や近畿圏の支配にはいらないのが理解できない。
縄文の理は、そんなに大きな力があるのか。
それが疑問であった。
何かが違うんだと思った。
「大巫女様、私は、縄文の理を習ってきませんでした。
縄文の理とはどういうものなのでしょうか。」
にこやかに笑う大巫女、怒ってないようだ。
聞いたサワはホッとした。
「大巫女様、私の勉強不足です。教えて下さい。」
また笑った。
大巫女は、伊勢から来たこの巫女の卵は、近畿圏や伊勢の理屈しか知らないのだろうと感じた。
何から話そうか。
と思った。
「サワは創世記の話を知っておるか?」
「はい、わかってます。」
「まぁ待て、儂から話してやろう」
焚き火の薪がパキッと割れた音がした。
大巫女は真剣な顔になった。




