北川辺の暮らし
北川辺の暮らし
翌朝、大巫女が朝のお祈りのあと、サワは外に出た。
微高地を超えると、湿地帯に田んぼのような米が田植えされていた。
畔のような道で区切られ、水利の管理が行われているのが分かった。
田んぼは、それなりにあって、女どもが草を刈ったり、水利をみる男がいた。
サワには弥生化が進んでるように見えた。
彼女は心の中で思った。
(そうだ。器も薄く、弥生化のモノだった)
ブラブラと田んぼの先を見つめると、男が見えた。
田んぼの先は、小さな木も生えてる、草原とも言えない土地が広がっていた。
男が動くと、その先にキツネが走り出していた。
すると、パッと立ち上がり、弓を放つものがいた。
矢が2つ飛んだ。
その男の後ろにもう一人いたのだ。
キツネを追っていた男がキツネの足を持ち上げていた。
サワは身近で見る狩りは初めてだった。
さらに別の日、広場で、老人達が草を編んでいると、北川辺の親父たちが、見知らぬ者たちと、イノシシを担いでやって来た。
大巫女が広場に出てくると、サワに権現堂の巫女を紹介した。
「権現堂の巫女様、伊勢から来たサワです。宜しくしておくれ」
権現堂の巫女は、サワを見ると、気がついたように言った。
「おお、儂が権現堂の巫女じゃ。なるほど貴様が巫女の卵か、大巫女の教えをよく学べ。」
サワは、迫力のある背の高いその姿に、彼女が巫女かと思った。
「サワと申します。巫女様が狩りに行かれるのですか?」
権現堂の巫女は、大きな声で笑った。
「儂は弓を使う。北川辺とケヤキとの共闘の狩りじゃ」
見渡すと、イノシシがゴロゴロいて、権現堂の巫女の従者が、イノシシを担いで、川辺の方へ移動していた。
「大巫女様、今回もケヤキのリーダーのおかげで大量じゃよ。」
大きな声で再び笑い、お辞儀をして去っていった。
弥生化が進んでいたと思っていた北川辺の暮らしで、狩りが中心に行われてるのを目の当たりにした。
サワは混乱した。
田植えまでしている田んぼがあるのに、何故に、共闘した狩りが必要なんだろうと感じた。
広場では、イノシシの皮を剥ぎ、肉を取り出していた。
青い空に白い雲がまだらのように広がっている。
爽やかな風が、頬を伝う。
サワは伊勢の大巫女の話を思い出していた。
北川辺は、米策が進んでいるのに弥生化が進んでない。
そのことであった。
周りを見ると、狩りの収穫を喜ぶ皆の姿が、目に留まる。
サワは、どのように切り出して、北川辺の大巫女と話すべきだろうかと思った。




