ケヤキの集落
ケヤキの集落
北川辺から利根川を遡った左側に微高地があり、その先に大きなケヤキの木があった。
ケヤキの木の前には小屋があり、左右に小屋が並んでいた。
ここは、ケヤキの集落。
左側の奥の林に、男たちがバラバラと集まっていた。
男、2人がオスの大きなイノシシを追っていた。
イノシシは、後から追われて、利根川とは別の荒川の方へ向かっていた。
バラバラの男たちは、先回りして少し大きめの石を抱え、荒川の草原の縁で構えていた。
リーダーの男は弓を構えている。
風が荒川に向けて吹いていた。
シュッ、シュッ
イノシシの目と首筋に弓が刺さった。
ボコ、ボコ、ボコ、
構えていた男たちがいっせいに、石をぶつけていく。
追い込んだ男が石斧で首筋を叩き倒す。
ウォーっと皆の声が上がった。
オスのイノシシが倒れた。
足を結び、棒を差し込んで担いで運ぶ。
一方、利根川の伏水流では、女どもが腰に籠をつけて、魚を両手で掬い、モロコやオイカワをポンポンと籠に入れている。
ケヤキの集落は、移動するグループがケヤキの木に魅入られた巫女が、ここに定住したいと言い始め、定住を決めた集落だった。
ピー
と、ケヤキの木に鷹が止まった。
ケヤキの前の小屋に巫女が一人、焚き木を燃やし、目を瞑っていた。
焚き木が、バキッと折れた。
その瞬間に鷹が飛び立ち、天高く跳んで行った。
そこにケヤキのリーダーが入って来た。
「巫女、イノシシを狩ったぞ、いま捌いているところだ。余った肉は、燻製にしてもらう。」
「リーダー、ちょうど良かった。いま、北川辺の大巫女から連絡があったの、行ってくれない?」
「爺さん小屋の前で、捌いてるから、後をよろしくお願いする。俺は、北川辺に行く。」
リーダーは、急いで利根川に向かった。
途中で、魚を獲っていた女どもとすれ違った。
「巫女の使いで北川辺に向かう、丸木舟を使う。」
「分かったわ。」
「あ、そうだ。イノシシを捌いてる。巫女に任せたから行ってくれ」
女どもは、ワーッと喜んだ。
笑いながら、去る。
リーダーは利根川の川辺に置いてある丸木舟に乗り込み、川を下った。
空は青く輝いていた。
風も爽やかに吹き付けていた。
北川辺は、微高地のすぐ下に砂浜があった。
リーダーは、丸木舟を留め陸に上げると、近くにいる男に声をかけた。
「ケヤキの者だ。止めさせてもらう。よろしく頼む。」
リーダーは、慣れたように声をかけ微高地に進んだ。
立ち並ぶ小屋を抜けて、広場に出た。
広場の先に大きな小屋があり、大巫女がいる。
リーダーは、小屋を見つめて、一息ついた。
ピー
鷹が青空をくるくる回っていた。




