権現堂の巫女
権現堂の巫女
三殿台では、田んぼの作付けが始まり、中央の大きな小屋も出来上がっていた。
米の作付けが、まだまだ不十分だったので、族長たちは、自らの狩りの集団を作り、小動物の狩りを行っていた。
女たちも周囲で草や樹の実を採取し、米の不足分を補う形が出来ていた。
周りにいた縄文の者たちも加わり、集落の形が整理されていた。
元々、海の漁を生業としていた者たちは、海に出て、漁を始める余裕も生まれていた。
大きな舟は翌年、伊勢に戻し、伊勢の大巫女に北川辺への移住は無理なことと、三殿台での新たな暮らしの様子を伝えた。
舟は、移住民を乗せて、戻って来ていた。
千葉では、新たな住民が田んぼを作り、米作が順調に進んでいた。
海の漁とともに土浦との交流も進んでいた。
海の巫女は、海の漁と米作の区別なく、共生を進めるような形を堅持した。
ここは、夏に大きな嵐が来るので、互いに助け合わなければ、生活が成り立たない。
その事を巫女はよく皆に言い聞かせていた。
さらに、水戸の巫女は、悩んでいた。
那珂川の右岸の平地に定住する者たちが増え、米作が進んでいた。
こちらは千葉とは違い、勝手に集落が生まれてきていた。
しかも、森の獣が少なくなっていたのだ。
リーダーが北川辺の大巫女の伝言で何回か来た時、移住先の相談をしていた。
「那珂川の右岸に移住民が入ってきて、森が変化したんだ。」
リーダーは、これはチャンスだと思った。
「竹弓の技術を教えて下さい。我らの行田にも竹林があるんです。北川辺の大巫女様に相談してみます。」
大巫女との相談で、水戸の巫女の一族を北川辺の少し下流の権現堂に動かすことが決まった。
水戸の巫女の巫女を連れて、利根川までやってきた。
「おお、この川は那珂川とは比べ物にならないほど雄大だな。」
巫女が驚きを込めて発言した。
やや下った所に川が広がり、浅瀬のあるところから川を渡り、平地に出て、権現堂の微高地に向かった。
微高地に上がると、利根川を見渡して、巫女は大きく息を吸った。
「良いところだ。」
一番良いと思えるところを広場とし、まず巫女の小屋を建てることにした。
土を掘り出し、固め、柱を建て、ケヤキの集落からカヤを持ってきていたので、早々に作った。
微高地は、広々としていて、集落の者どもは、各人で作った。
食料もリーダーが保存用の薫製した肉を持って来ていて、集落の皆に配った。
翌日には、集落の形ができた。
広場で権現堂の巫女となった巫女とリーダーが話していた。
「リーダー、助かったよ。リーダーの協力がなければこんなに早く形にならなかったよ」
「いやとんでももない。我らにも利がありますから、巫女様、竹弓の件、よろしくお願いします」
「おお、そうであったな、若い技手術者であったな。良い男がおるのじゃ」
巫女は、侍女に話をすると、一人の若い男がやってきた。
リーダーは巫女に礼を言って、その男をケヤキ集落に連れて行くのであった。




