宇都宮の巫女
宇都宮の巫女
静かに宇都宮の巫女が語り始めた。
「ケヤキの集落のリーダー、連絡をくれてありがとう。
北川辺の大巫女様が、西の方からの新しい力は確かに動いている。ここからでは、海の動きまでは分からぬが、碓氷峠から、わずかな人の動きが見えてきている。」
リーダーは、口を挟まず、静かに聞いている。
「人の動きは、新たな力が示されてるようだ。まだ我にも具体的には分からぬが、人の動きをとめることはできぬ。」
巫女は、目線を鳩の顔に向けて、鳩を撫で直した。
「昨日、那須の巫女から返事をもらった。リーダーがキツネを狩り、焚き火を使ったのが見えた。そこから利根川の前でテントを張り、焚き火をしたこと、林の上の鳩に手を上げたこと、理解している。安心せい。」
リーダーは驚愕した。
今朝の林ばかりが、昨日から見られてたのか、さらに那須の巫女とのつながりもあった事に驚いていた。
「巫女様、西の方の力とは何でしょうか。」
「我にも具体的には分からぬ。しかし西の方というのは近畿圏のことだと感じている。そして伊勢の大巫女様が大きな影響を与えてると思う。」
「近畿圏とは何でしょうか」
「近畿圏は、新たに力を持った者たちが作った勢力じゃ、伊勢の大巫女様が縄文の者たちとの共生を進めているようじゃ」
新たな力と共生。
リーダーには理解できなかった。
「新たな力とはどんなものなのでしょうか?」
「リーダー、私にも分からないよ。しかし、共生だから徐々に進んくるんだと思う、出来る事をするだけさ。」
「我らは抵抗すべきでしょうか?」
「抵抗とは、くだらない事だと思う。新しいものを恐れる必要はない。出来る事を出来るようにすれば良いだけだと思う。」
流れに任せる事だという巫女の言葉に少し安堵の気持ちがあったが、大きな事が起こる気配にリーダーもこの事を伝える責任を感じていた。
鳩がまた、グルルと泣いた。
巫女は静かに顔を鳩に向けて、手を頭に乗せた。
静かだが、大きな情報を得たと感じていた。
巫女の前にあった炎が揺れた。
リーダーは、巫女に頭を下げて、色々教えてくださり、ありがとうございますと礼を述べて、巫女の部屋から去った。
外に出ると、老人達が、草を編んでいた。
小さな子供達が、周りで遊んでいる。
ふと見上げると、男体山が見えた。
山の上が白く、青い空に映えていた。
気が付くと、鷹が空高く跳んでいた。
北川辺の大巫女に伝えることをまとめねばと思った。
風は緩やかに頬を撫でた。




