エルキ共和議会・定例会合へ
「……定例会合?」
「ええ、昨年できた村の代表という事で、ダイクさんか貴方に出席してほしいの」
この町で出来た初めてのパン。その味を楽しみつつ夕飯をとっていると、ユナからそんな誘いを受けた。
一度焼け落ちてしまった橋は、なんとか春の雪解けまでには完成させることができた。現在ようやく通商路が完成し、これから商人が訪れる大事な時期だ。
「村長は何て?」
「商売の準備で忙しいし、この村の功労者はニールさんだから……だそうよ」
この村にとって、初めての商売だ。どうやら村全体を挙げての大規模な売込みにするらしい。
「そうか……」
俺は顎に手を当てて唸る。
確かに、今の時期は魔物の襲撃はそこまで多くない。そして、村の防御はかなり整備されてきている。だとすれば、俺がこの村を開けたところで何の問題もない。
そう、むしろ今問題なのは、俺の個人的な用事なのだ。
通商路が開かれたという事は、人と物の行き来があるという事で、それはつまり杖自体や、杖の素材を買うことができるのだ。
ガロア神父の言っていた、装備が整ったら声を掛けろという言葉も気になるし、なるべく早い段階で物を揃えておきたかったのだが……
「行ってきたらいいじゃない。どうせ杖を買いたいとかそういう話でしょ? アタシ達でもお使いは出来るわよ」
サーシャが窓から部屋に入ってくる。ここは二階なんだが、木を登ってきたらしい。これだからエルフは人間社会での常識が無いとか言われるんだ。
「いや、しかしな」
触媒としての杖は、ただ歩くときの支えに使うわけではない。自らの魔力を収束・圧縮・解放させるための鍵のような物だ。できれば自分、もしくはせめて、お互いの事をよく知っている同職でなければ、まともな杖は選べない。
「まあ魔法職じゃないアタシが選ぶのは不安だろうけど、モニカと一緒に見てもらえばいいじゃない?」
む、確かに。
「うーんでもなあ……仕方ない、杖の購入は次の機会にするか」
魔法職は、基本的にみんな多かれ少なかれ凝り性だ。
なるべくなら自分で、それこそ誇張なしで三日三晩悩み抜いたような出来の杖を使いたい。そういうタイプの人種なのだ。
だから、初心者やよほどズボラな人間ならまだしも、他人に杖を作らせるのは気が引けるのだ。
「いーや、ニル兄はアタシたちに杖を作らせるべきだよ! そのほうが、ほら、えーっと、狡猾的?」
「効率的、な」
「そうそれ!」
玄関のドアを凄い音を立てて開いたアンジェが、この部屋まで駆け上がってくる。お前まさか家の物壊してないだろうな?
しかし何なんだ二人とも、妙に拘るな。
「あ、あの、ニール……モニカも頑張って選ぶから……」
アンジェに続いて、モニカがおずおずと部屋に入ってくる。まともなのはお前だけだよ……
「はぁ、分かった分かった。お前らに任せるよ。ただし、気に入らなかったらもう一回売って別のを買うからな」
結局、そうでも言わないとこの押し問答は終わらない気がしたので、俺が折れることで話を切り上げた。




