ショッピングをしよう
「じゃあ、何かあれば中央評議会館まで魔道文を飛ばせ」
「うん、わかった……いってらっしゃい。ニール」
「モニカが居れば大体のことは大丈夫だとは思うが、サーシャとアンジェは羽目を外し過ぎるなよ」
「信用無いなあ、大丈夫っすよー」
「あら、お言葉ね。私たち、これでも節度はあるのよ?」
「お前らは常識ない癖に、妙に自信あるのが心配なんだよ……とにかく、行ってくる」
『行ってらっしゃーい!』
領主であるエレンに付き添って、ニールは村を離れていく。その姿を見送りながら、モニカは小さくこぶしを握った。
「行ったっすかね?」
「少なくとも見える範囲には居ないわね」
「サシャ姉が見えないなら大丈夫っぽいっすね!」
モニカの側にサーシャとアンジェが寄り添う。三人で秘密裏に進めていた計画を、実行するならこのタイミングだけだった。
「せっかくカインが氷竜と八咫烏の素材を落としてくれたんだもの、これを軸に杖を作らなきゃ勿体ないわ」
サーシャが道具袋から氷竜の大腿骨と八咫烏の風切羽を取り出す。片方は手袋越しでも長く触れないほどの冷気を発し続けており、もう片方は水で満たした長細い瓶の中に仕舞われていた。
「魔物素材、特に銀等級以上の魔物から取れる希少部位は、魔法触媒としては最高に近い品質。特に氷竜と八咫烏なんていう、竜種と聖獣、そして炎と氷、相反する二つの要素が複数あるものはそう簡単には揃わない。そもそも――」
「あー、あー、モニちゃんその位にして、アタシの頭が茹で上がっちゃう」
変なスイッチが入ったモニカを、アンジェが制止する。
「あ、ご、ごめんなさい……」
はっと我に返り、申し訳なさそうに小さくなるモニカに、サーシャは優しく語りかける。
「まあまあアンジェ、この作戦はモニカが居ないと成り立たないのよ。少しくらいの蘊蓄は許してあげましょう」
三人の計画、それは「ニールに新しい杖をプレゼントする。しかも三人の手作りで」というものだった。
今回の為にメイを通じてダイクやユナ、エレンにまで頼み込んで、行商人が訪れ始める前にニールを村から引き離したのだ。
「それで、氷竜の骨と八咫烏の羽根を紐でくくるだけじゃダメなのよね?」
「うん、二つをそのまま組み合わせると、相反する属性同士がぶつかって二つともダメになっちゃう。だから、お互いを接触させないための緩衝材が必要で、安いものなら石英とか水晶、硝子なんていうのがあるけど、それらは完全に魔力を遮断できないから大きくなりがちで」
「あー、あー……」
「……つまり、骨と羽根をくっつけるために、魔力絶縁機能の高い鉱石を行商人から買えばいいのね?」
再び知恵熱を出し始めたアンジェを気遣って、サーシャはモニカの話を要約する。
「そう、それもかなり高品質な物、鑑定はモニカがやるから、それっぽいなと思ったら買う前に呼んで」
モニカは満足げに頷くと、もうすぐ訪れる行商人たちに思いを馳せた。
「ふふ、ふふふふふ……おかいもの、楽しいな」
「……サシャ姉、アタシ達の中で一番ヤベー奴ってモニちゃんじゃないです?」
「あら、今頃気付いたの?」
三人は、冒険者パーティを組んでいた頃のように楽しげだった。




