表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
掌の眼  作者: 瑠璃雀
楽しい夏休み!
89/113

ピザと初めてのテニス

 午前中、昨日と同じメンバーが篁邸に集結し、勉強に精を出す。昨日と同じようにさくらも来て、中学生たちの質問に答えてくれていた。恭平や司、双子たちも広いテーブルに資料を並べてはパソコンやノートとにらめっこしている。

「そういや、今日は鷹也来ないの?」

 智樹の質問にさくらが笑顔で頷いた。

「バスケの試合らしいですよ。帰って来るとしても夕方だと思います。」

 プリントに集中しながらも、それを聞いた七海はホッとしたような、それでいて寂しいような、複雑な気持ちだった。


「読書感想文って超苦手なんだけど‥どう書いたらいいのー?」

 流水が悲しそうに呟いている。

「あはは、懐かしいな!確かに大変だよね。」

 智樹がそう言って智琉を見やった。

「お前、得意だったろ?コツとかあるんじゃないのか?」

 そう振られて、智琉はもったいぶるようにコホンと一つ咳を落とした。


「まず自分が“いいな”と思った文章を抜き出す。なんで“いいな”と思ったのか、理由を考えてメモる。そのシチュエーションを想像して、自分だったらどうするかを考えてメモる。最後にそれをまとめる、以上。」

 流水の表情がぱあっと明るくなり、さっそくノートにメモを書き出した。

「ありがとう!サト兄ちゃん!頑張ってみるー!」

 にっこにこで礼を言われた智琉は、まんざらでもなさそうに笑った。

「やっべえ、うちの妹の次にかわいいかもしれん!」

 さくらはそんな兄の言葉にくすくす笑っている。


「‥ああもう‥世の中全ての言語が日本語になればいいのに‥」

 遊馬が絶望したような声を上げる。

「マジ、そう思うわ。第二外国語とかいらねえ‥」

 大学生たちのぼやきに、遊馬がびくりと肩を震わせる。

「‥第二‥外国語‥?まさか、他にも覚えなきゃいけないの!?」

 遊馬の悲痛な叫びに兄たちは頷いた。

「翻訳こんにゃく買ってきてええええええええ!!」

 遊馬の叫び声と共に、全員の笑い声が上がった。



 セットしていたアラームが鳴ると、全員がペンを置いて伸びをする。

「今日は家で昼飯な!父ちゃんも母ちゃんも家にいて、二人で何か作るって張り切ってたし!」

 遊馬が意気揚々と立ち上がる。皆、勉強道具を片付け始めてテーブルの上を拭き、座布団をひとまとめにして部屋の隅に積み上げた。

 さくらは友人との約束があるからと、片付けを終えた後に篁邸を後にする。明日もまた、午前中の勉強会には参加してくれるらしい。中学生たちは笑顔で見送った。



 篁の家から遊馬の家までは徒歩で5分ほどだ。敷地がかなり広く、その一角に屋内テニスコートと、屋外テニスコートがあるらしい。

「バスケゴールも置きたいのに、却下されたんすよねえ。」

 司が少しばかり残念そうに言い、庭の一角にある東屋に皆を呼び寄せる。

「いらっしゃい!」

「いらっしゃーい!」

「にーちゃんたち、おかえりー!」

 五十嵐夫妻と遊馬の弟、涼が昼食を運んでいてくれている。

「「「「ピザ!?」」」」

 東屋の傍に石窯があり、どうやらここでピザを焼いてくれているらしい。

「ハローーー!!エブリバーディ!呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」

「ハーアーイ!お勉強お疲れ様ね!私もお呼ばれしちゃいました!!」

「‥こんにちは‥」

 やかましい二人と、その二人をジト目で見る霧江も一緒だった。言わずもがな、二人とは蒼介と雅だ。


「‥しかし、テニスコートってすごいな。」

 いったいいくらかかるんだろう、といった表情で蒼介がテニスコートを見やる。

「家族と庭でテニス!夢だったのよー!」

 遊馬の母、沙織が心から嬉しそうに笑っている。五十嵐家は子供の頃からテニスもやらされていたらしい。

「遊馬も司も、部活がテニスじゃないって聞いて、ちょっとだけ寂しかったのよね。」

「いやーテニスは嫌いじゃないけど、いつでも出来るからさ。違うスポーツやりたかったんだよねえ。」

「俺は初めて弓道見て、“これしかない”って思っちゃったしなー!」

 司と遊馬の言葉に、沙織は笑顔のまま頷いている。決して強制をしてこなかった母には感謝もしているのだ。


「さて!焼き立てを召し上がれ!!」

 オーソドックスなマルゲリータから、サラミのたっぷり乗ったピザ、ポテトとベーコンのカレー味のピザなどがどんどんテーブルに並べられて行く。

「「「「いただきまーーーす!」」」」

 外はサクサク、中はもっちりとした生地はそれだけでも美味しかったが、はちみつやメープルシロップ、チョコソースも置いてあり、耳に少しかけて食べても美味しかった。

「やば!!」

「なにこれ、うま!!」

「カレーのやつ最高!!」

 そこに霧江が家から持ってきた自作の照り焼きチキンや、大量のきんぴらごぼうとそぼろを沙織に渡す。

「わあ!!ありがとう、霧江ちゃん!これは大変だわ!!」

 さっそく生地に照り焼きチキンを並べ、マヨネーズでデコレーションしていく。

「「「うわ!!それは禁断のやつ!」」」

 さらに生地にそぼろをたっぷり乗せ、その上にきんぴらを盛ってチーズを乗せる。

「「「きゃーー!おいしそう!!!」」」

そこに篁と環、賢一と桔梗までが合流した。

「手土産だ。ぜひこれも使ってくれ!」

 大量の海老とホタテ、グリーンアスパラに歓声が上がる。


「てか、この生ハムめっちゃ美味い!!」

「チーズもなんかすごそうだよね!?」

 その言葉に蒼介が得意げに笑って見せる。

「プロシュートとモッツアレラ、ゴルゴンゾーラ、パルミジャーノ・レッジャーノは、知り合いの伝手で送って貰ったんだ!ははははは!」

 得意げに胸を張る蒼介に、全員が拍手を送る。

「やはりエビマヨかしらね?」

「ホタテとアスパラはバターとブラックペッパーだな!」

 次々と焼かれるピザに、大人も子供たちも大喜びだ。


 さんざんピザを堪能した後は、のんびり休憩をしながら、テニス初心者達に駿と沙織がラケットの持ち方からレクチャーしてくれる。

「久しぶりだなあ‥」

「‥そうですわね。」

 篁と環が経験者であるらしいことに、五十嵐一家は大喜びだ。七海と流水、茜、道明以外は、経験者であるようだ。

「‥球技は苦手なんだよな、俺。」

「私は運動全部苦手だから大丈夫!!」

「同じく運動ダメダメ、流水ちゃんだよー!」

 茜と道明が意気投合し、そこに流水も混ざった。


 室内テニスコートの一角には壁打ち出来るコーナーがあった。七海たち初心者を遊馬が誘導してくれ、ラケットの振り方からボールの打ち方まで教えてくれる。

 ボールをワンバウンドさせては壁に向かって打ち、手元に戻ってきたボールを掴む。

「やっぱ、七海はコツ掴むのはえーな。」

 遊馬が感心したように言い、ニヤッと笑って見せる。雅・道明・茜・流水の4人は相当に手こずっていた。

「ふぎゃ!そっち行っちゃダメって言ってるのにー!!」

「あーん!もう!どこ行っちゃうのー?」

 流水がボールにそう言い聞かせ、雅が困ったようにボールに行方を尋ねている。

「わかるー!どこ行くか行き先伝えてほしいー!」

茜も笑いながらそう言い、ボールを追いかけまわっていた。ラケットに振り回されている三人と比較すると、道明は安定している。

「面に対してどう当たるのが正解だ?」

 遊馬がインパクト時の面の角度を静止状態で説明すると、道明も途端に安定しだす。

「そういや俺、バレーボールのレシーブは得意だったんだよな‥」

 中学入学時、兄に倣ってバレー部に入り、レシーブだけは褒められていた。


 食後の休憩を取っていた大人たちも、早速コートへと向かった。環と沙織、篁と駿、智樹と智琉、霧江と恭平、司と蒼介が室内と室外に分かれ、ラリーをしている。

「わ!お祖母ちゃんもお祖父ちゃんもすごい!」

 見ていた流水が歓声を上げ、七海達もその様子を眺めながら手を叩いた。見ていると簡単に打っているように見えるが、それぞれがちゃんと相手の打ちやすい位置に返している。

「‥ナナの運動神経がいいのは、お祖父ちゃんお祖母ちゃんのおかげ?」

 そう茜が尋ねると、七海が困ったように笑う。

「‥私の運動神経が良くないのは、お母さんのおかげ?」

 流水が笑いながら尋ねると、雅はにっこり笑って頷いた。

「仲間がいないと寂しいじゃなーい!」

 悪びれることもなく言う雅に、流水は「あははは!」と笑って雅とハイタッチを交わした。


「よし!じゃあ外の空いてるコートで打つよ!涼、球出し頼む!」

「おっけー!打ちやすい球出すようにするー!」

 遊馬の呼びかけに弟が元気良く答え、涼がサービスラインの中央に立ち、ボールが山ほど入ったかごを置いた。

「じゃあ俺を狙って打ってみてー!」

 エンドライン際、向かって左側に遊馬が立って手を振っている。

 屋外コート2面の周囲には高い位置までネットが張られ、外にボールが行かないようになっていた。

「ミヤちゃーん!頑張れ!」

 司とラリーしている蒼介に声援を送られ、雅はぴょんぴょん跳ねながらそれに応える。


「えっとね、一人三球ずつにしようかな。打つ人はここ、順番待つ人はここ。あ、にーちゃんさ、お手本見せてあげたら?」

 涼に言われて遊馬が位置について構える。この時に、構え方のレクチャーもしてくれた。

「いいよー!」

 掛け声で涼が球を出し、遊馬がワンバウンドで打ち返す。三球続けた後、後ろに下がって待機組の最後尾についた。

「こんな感じ。最初だから慣れないと思うけど、やってみよー!」


 先頭は七海だ。タイミングを測り、しっかりとボールを捉えて遊馬の立っている位置にボールを運ぶ。

「すご!ナナねーちゃん、本当に初心者?」

 驚きながらも笑顔で言われ、七海は嬉しそうにピースして見せる。

(‥そうだよね?私、たぶん、わりとすごいんだよね?)

 そう心の中で呟く。一球だけ当たり損ねてしまい、ホームランになってしまったが、二球はちゃんと遊馬の近くに返せた。


 次は雅の番だったが、ネットを超えられなかったり、なぜか真横に飛んでいったり、鈍い音と共にその場で高く上がってしまったりといった状態だ。

「うーん、全部フレームに当たってるから‥ガット‥ええと網に当たるようにしてみてー!」

 涼のアドバイスに「ありがとうございまーす!」と朗らかに返す。

「なるほど!網のほうが面積大きいのに、フレームだけに当てる私、もしかして天才!?」

 そんな雅のポジティブすぎる発言に茜が吹き出し、七海も笑ってしまう。

「ふぎゃ!」

 やはりおかしな声を上げながらボールを打っているのは流水だ。渾身の力を込めてフルスイングした打球は、一直線にネットに向かう。


「ルミ姉!そんなに思いっきり振らなくていいよー!当てるだけ、にしてみてー!」

 涼のアドバイスに、ボールを面に当てることには成功した!ボールは上に向かって飛び、遊馬が立っている手前にぽとりと落ちる。

「すごーーーい!!ヤバイ!私天才!!」

 自画自賛する流水に涼は笑いながら三球目を出す。同じように当てることに意識するが、ボールはネットを超えられなかった。

「面の角度―!下向きで当たると、ボールは下にいっちゃうよー!」

「ありがとーございましたー!」

 流水はラケットを軽く振り、面の角度を見ながら頷いている。

「よーし!次も頑張るぞー!」


「お願いしまーす!」

 茜が構えると、涼が球出しをしてくれる。

「うー!それっ!」

 ボールを上手く捉え、振る。が、ネットを超えることが出来なかった。

「角度?‥よいしょー!」

 今度はたかーく上がり、遊馬のかなり手前に落ちる。

「ええええ!この角度、超難しくない!?」

 三球目、面の角度を見ながら再びボールを捉える。今度はちゃんと返せた。

「茜、ナーイス!!今のいい感じ!」


 そして最後は道明だ。ボールを捉え、しっかりと打ち返す。

「うわ、すげ。」

 筋トレやロードワークの賜物か、体幹が安定しているために妙なブレがない。残り二球も、確実に遊馬の位置へと返せた。

「道明すごいじゃん!」

 七海が笑顔で声をかけると、道明も照れたように笑った。

「球技は苦手意識あったんだけどね。バスケやバレーより相性いいのかもな?」

 二人は笑い合い、ハイタッチを交わす。そうして交代でボール打ちを続け、カゴのボールが無くなったら全員で拾い集める。


「ボール集め終わったら休憩するよー!暑いから水分補給しないとね!」

 遊馬がそう声をかけ、全員が汗を拭きながら昼を取った東屋へと歩いて行く。

「はじめてのテニスはどう!?」

 涼がスポーツドリンクを手渡してくれながら声をかけてくる。皆、笑顔で「ありがとう」と受取り、それぞれが感想を話した。楽しんでくれている様子に、遊馬と涼が嬉しそうに笑っていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ