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掌の眼  作者: 瑠璃雀
神楽祭
86/113

補 境界を護るもの

 黒煙の如く、瘴気が噴き上がった瞬間、社と現世の境界が大きく揺らいだ。ここが崩れれば、この空間ごと崩壊するか、或いは、崩壊まではいかなくとも、現世と再び“道”を繋ぐのに長い長い時間を要することになる。

<篁!食い止めねば危険だ!> 

<なぜこんなことに!?> 

<境界に神力を!!>

 神々が光の玉となって現れ、共に境界のゆらぎを落ち着かせる。


(‥まさかここまでとは‥)

 篁は予想外の展開に歯噛みした。予兆はあった、対策もした、しかし想定以上の瘴気に、誰もが動ける状態ではない。重鎮たちですら、瘴気に纏わりつかれて思うように動けずにいたのだ。

(‥鷹也‥)

 強力な結界能力を持つ鷹也の式、ブラン。あれならばこの瘴気の渦であっても耐えうるかもしれない。とはいえ、今の状況は予想以上に悪い。

(あいつらでも厳しいか。)

 篁単独では到底乗り切れない。焦りが湧き上がってきたそのとき、鷹也が瘴気を斬り捨てながら現れた。祓えると聞き、少しばかり安堵したが、これほどの瘴気を伴う穢れを、二人で祓えるのかと不安な想いに駆られる。

「祓いを!!俺は境界の支えに回る!神々と力を合わせても、おそらくかかりきりになる!」

 そう声をかけたが、鷹也は表情一つ変えることなく、短く応じた。そして――


(‥くっ‥瘴気を斬れば斬るほど‥こちらにも衝撃が‥)

 まるで斬られた痛みに耐えかねて大暴れしているような、それほどの衝撃が境界を圧迫する。

<篁!この空間全部に神力を通せるか!?> 

<あちらも仲間が守っているが‥厳しいらしい>

「無茶を言ってくれるな‥ええい‥何とかしなけりゃならんのだろう!?」

 篁は目を閉じて意識を集中させる。この空間を包むように覆う境界へ、自らの神力を送り始める。祓い切れなければ押し切られるかもしれない。或いは、時間がかかりすぎて神力が尽きれば、やはりこの場は崩壊するかもしれない。冷たい汗が背中を流れ落ちる。


<こいつは‥はるか昔の穢れ‥かな>

<おそらく、な。位相の境界に巣食い、成長したらしい。>

<鷹也が引きずり出しては斬ってるが‥人は消耗する‥>


 焦ってはならぬ、と必死で平静を保つ。

(‥鷹也のあれは即興の剣舞か‥それにしても‥さくらさん、あの速さに合わせるか‥凄まじい技量だな。)

 心を落ち着けるために、祓いの状況にも意識を送る。


 しばらくすると凄まじい瘴気が鷹也を取り囲むように襲い掛かった。

「‥む!圧が‥弱まった?‥あいついったい何を!?」

<無茶をするなあ!あいつ、地に刀を突きたてて神力を送り込んだ。>

<さすがにあの量の瘴気‥結界も持たんぞ!>

<篁!水の社の水を持っていたのではなかったか!?>

 神々の言葉に篁はハッとした。念のためにと水の社の湧水を汲んで持って来ていたことを、完全に失念していた。

「しばらく!ここを任せてよいか!?」

<<<応!>>>


 篁は数歩先の自らの手荷物からペットボトルを取り出した。

「鷹也!!」

 大声を上げると、孫はこちらに向かって走ってくる。篁が投げたペットボトルをしかと受け取った。

「水の社の湧水!?‥じっちゃん、用意良すぎねえ?」

 祖父と孫はニヤリと笑い合う。


 その後、琴の音色が深く、透き通るような美しい旋律へと変化していく。

(これは‥不思議と力が沸いてくるようだ‥)

<美しい‥> 

<消耗が‥やわらぐ?なんだこの音色は!?>

 境界の歪みが僅かに和らいでゆき、篁は息をのんで二人を見やる。鷹也は立ち止まり、湧水を刀にかけ両手で刀を握り、瞑目したまま、ひた、と止まった。

(何を‥?)

 わずかなひと時で瘴気は勢いを取り戻し、再び鷹也の周囲を取り巻く。結界も相当に消耗しており、いつ崩壊するかも分からないはずだ。それでもなお、微動だにせず意識を集中している孫に、篁は戦慄する。

(‥なにをしておる!?‥結界が‥)


 次の瞬間、刃から白銀の閃光が走った。


(‥これは‥湧水を媒体に自身の神力に、さくらさんの神力‥いや琴の音色か?‥それを重ねた‥?)

 これまでとは比較にならない威力に、広範囲の瘴気と穢れが消滅してゆく。その様を見て、篁は言葉を失った。

(あいつは‥鷹也は‥焦りだとか不安といった感情に流されない。結界の損耗を観察しながら、最適解を出した結果が‥これか‥)

 白銀の靄が立ち込め、篁もようやく一息ついた。

(あいつは‥ときに人間らしさもなく機械的に処理をする傾向はあるが‥こういうときのあいつほど、頼りになるものはないな。‥だが、心臓に悪いわ!)


 祓いの神楽は所作も美しい。琴の音とも相まって、その静謐さに思わず口元が緩む。

(雪景色の中、深く青い水、鏡面のように穏やかな水面に映る月。美しいが、極寒。‥こっちまで寒くなってくるわ。)

 人によって浮かぶ情景は変わる。鷹也の場合は、雪と氷、月、そして恐ろしく寒さを感じる。


「‥祓い切ったか‥」

 フッと力が抜け、境界そのものが安定したことに安堵の吐息を漏らす。念のためと、鷹也が周囲を見回し、式のブランを顕現させて一通り確認している。

 篁自身にも異変は感じ取れなかった。

<問題はない。>

<うん、これでもう大丈夫なはず。篁の浄化が入ればね。>

<そうだな。あの祓いは完璧だった。篁の浄化で盤石だろう。>

 神々からもお墨付きをもらい、篁はゆっくりと歩き出す。


「ご苦労!俺が浄化を行う!」

 そう告げた途端に、鷹也が脱兎のごとく逃げ出したのを見て、篁はつい笑ってしまう。

(‥あいつは寝てしまうからな‥)

 何故か篁の浄化を浴びると、スイッチが切れたように眠ってしまうのだ。式たちや妖たちに聞いても、理由は分からなかったが、ただただ熟睡するだけと聞いて笑ってしまう。

 境界の維持でかなり消耗し、さくらの琴で持ち直した。完全な状態とは程遠かったが、孫があれだけ頑張ったのだ。中途半端な浄化など出来ない。ましてや多くの者が、あれほどの瘴気を浴びてしまっている。


 式のタツにも協力してもらい、意識を集中する。白銀の抜き身を手に、思い切り振り上げた。瞬間、神力が巨大な柱の如く吹き上がる。振り上げた刀を横薙ぎにすると、白銀の大波が周囲を一気に覆いつくした。

(‥くっ‥さすがに‥やりすぎたか?)

 一気に消耗したが、それでも大きく、穏やかに神楽を舞う。瘴気や穢れの残滓が残っていないか、感覚を研ぎ澄ませつつ、舞い続けた。


 浄化が終わると、皆の様子を確認し、慌ただしく指示を送る。そして重鎮たちとも言葉を交わし、今後についても考えることとなった。

 重鎮たちに頭を下げられたときも、篁は苦虫を嚙み潰したような表情で適当に流した。

(これほどまでの災害になるのは想定外であった。‥人的被害がなかったから良かったようなものの、これは俺の判断が甘かった。‥こうなったのは結果論でしかない。)

 一族の重鎮や若手達を危険な目に遭わせてしまったという、忸怩たる思いがある。手放しで喜べることでも誇れることでもなかった。


 そして一通りすべきことを終えると、篁は着替えを持って孫の元へと走った。問題ないだろうことは分かっているが、それでもその姿を見て安心したかった。

「ああ‥付き添ってくれていたのか。ありがとう。‥そして見事だった!」

 さくらに向けて惜しみない賞賛を送り、深々と頭を下げる。相変わらずさくらは謙虚で、あれだけのことをしたにも係わらず控えめだった。

 そんなさくらにいたずら心が湧き、孫の着替えを手伝ってくれるよう頼んだ。頬を染め、少し困ったようすでありながらも健気に手伝ってくれ、ついつい笑顔になってしまう。


 さくらにも着替えてくるよう伝え、篁は熟睡している孫の傍らに座り込んだ。

「‥全く‥心配させおって。状況が悪ければ悪いほど、その状況を覆すことを楽しんでいるようにも見える。‥それがおまえの強さでもあり、危うさでもあるな。」

 静かに篁は語りかける。触れるわけでもなく、起こすわけでもない。総代ではなく、孫を見る祖父の目でただ見ているだけだ。


「‥せめて俺が生きている間は、俺がお前の楔にならんとな。‥というか年取ったら落ち着くよな!?‥いや待て、こいつは親父似!?」

 自身の父、巽を思い出してぶるりと震える。現在85歳の父は、離島で夫婦二人、仲良く暮らしている。未だに山を走り、海に潜るのを日課としており、道場につれられ手合わせさせられる。老人という言葉が全く似合わない、野生動物のような強さを持った父である。そしてこの父と鷹也は、同じ感知持ちのせいもあってか妙にウマがあった。その顔を思い浮かべて、篁は「うわあ‥」という気持ちになる。


(いやしかし!さくらさんが居てくれれば!人間社会でやっていくはず‥だよな?‥山奥に巣ぐらいは作るかもしれんが‥あれ?‥どうしてこうなった?)

 知能、身体能力、感知能力、あらゆる面で常人離れした力を持つ。この孫が参謀役になったとしたら、総代は相当助かるだろう。その倍は気苦労が絶えないだろうが。

(まあ、こいつがこうなったのは、断じて俺のせいではないしな!)

 篁は心の中でそう呟いて笑った。色々と厄介さはあるが、しかし頼りになるのは事実だ。


(やはりお前が水澤家の次期当主だな‥)

 篁は熟睡している孫を見て、嬉しそうに笑った。


 その後、第五区で対応に動いてくれた皆へ、感謝と労いを伝えて頭を下げる。ここでも賞賛と感謝を受けたが、やはり苦笑いを浮かべることしか出来なかった。

 一族の者達が疲れた様子ではありながらも、パニックを起こすことなく、また、瘴気を受けて寝込む者がいなさそうなことに、安堵したのだった。


 ひと段落した後は部屋に戻り、各地の者達と連絡を取り合う。無事であろうことは分かっていたが、改めて口頭による報告を受け、ようやく人心地着いたのだ。

【あなた、お疲れさまでした。】

 妻の労いの声に、フッと緊張が解ける。凛とした声の中に、自分を気遣う柔らかさが、スッと身に滲みてきた。

【そちらも、ありがとう、環。‥雅さんや孫たちも大丈夫そうだ。】

 篁はそう言ってそっと吐息を落とした。

【‥今回の件、誰にも予測は出来なかったことです。結果論であれ、収まったのですから、貴方はそれを喜んでゆっくりお休みください。】

 篁は言葉につまり、スマートフォンを持つ手が微かに震える。そして、ゆっくりと長い吐息をつき、微かに笑った。

【お前には、お見通し‥か。】

【貴方の考えそうなことくらい分かりますわ。今はとにかく休息を。‥そして無事に帰って来て下さい。】

 妻の言葉は優しく、力強かった。

【‥分かった。ありがとう、環。今日のところは休んで、明日以降、すべきことをする。】

 その言葉に妻は笑い、二言三言、言葉を交わして電話を切った。その後は温泉に浸かり、手足を伸ばして目を閉じる。タイミングが良かったのか、一族の者はおらず、総代としての顔をしなくて済んだのは幸いだった。



 翌朝、まだ日も昇らぬうちに目を覚まし、社へと向かう。日月社の代表管理者二名も来ており、鷹也もほぼ同時に到着した。

「おはよう、このような時間にすまんな。‥して、どうだ?その後の様子は。」

 篁が声をかけると、二人は口を揃えて「問題なし」と答える。神々とも言葉を交わしたうえでの返答であるそうだ。鷹也は地に手を置き、瞑目して集中している。

「‥違和感はないなー。というか、じっちゃんの浄化の残滓がまだ境界に作用しててさ、大きな歪みを少しずつ修復してる感じ。」

 その見立てに篁も代表管理者もひきつった笑みを浮かべる。やはり感知能力の高さは相当なものだ。

「‥はは。それなら良かった。」

 日乃下家の当主が渇いた笑いを漏らしながらそう零した。

「では他エリアも見て回るとするか。‥鷹也。」

「うい。」

 篁は鷹也を伴い、社の中へと入っていった。第一区から第四区まで、順に巡り、二人で社と境界の様子をつぶさに確認する。

「最後に零区だな。」

「‥だね。」

 5つの社を結ぶ、根幹ともいえる社。これは最北の地、雪に覆われた極寒の地にある。管理者は総代であり、この社周りは人が住める環境ではない。そして根幹の社に足を踏み入れられるのは、一族の中でも限られた者のみだ。元々その資格を有している篁、今回の件で神々から資格を付与された鷹也、二人は零区の社へと向かう。


「‥ここ、なんかいいなー‥」

 冷気と神気に満ちたその社へ入るなり、鷹也が呟いた。

<おお、来たか> 

<この度は久方ぶりにひやりとしたぞ>

<念のため、篁に浄化を頼んでおきたい>

 神々が現れ、そう伝えてくる。

「‥俺たぶん寝るけど?」

 鷹也の自己申告に神々も篁も笑ってしまう。

「それは仕方あるまい。それより、俺もまだ本調子ではない、お前の増幅は必要だ。‥せめて浄化が終わるまではなんとかしろ。」


 こうして鷹也が龍笛を奏じ、篁が浄化の舞を行う。鷹也により増幅された浄化の神気が、社全体から再び各地へと波及していった。

 神々の支えもあり、何とか旋律で支え続けた鷹也は、浄化が終わった直後、その場に崩れ落ちて熟睡してしまう。

<我らがここにおる故、篁は行ってもかまわんぞ。為すべきことがあるだろう。>

<これはしばらく起きんだろうな‥>

 篁はそのまま社を離れ、再び神楽祭の場である第五区へと戻ったのだった。



 その後、勢揃いした重鎮たちとの会議を経て、神楽祭への準備に取り掛かる。開催時間の決定や、その連絡、その後の閉会式へと向けて粛々と動き回った。

 無事に神楽奉納の儀が済んだときには、心からホッとしたものだったが、この時点になっても鷹也が戻っていないことに気づき、慌てて零区へと向かう。


<おお、今年の神楽奉納の儀、いつにも増して素晴らしかったぞ>

<これでもう大丈夫であろう。ご苦労だった。>

 そんな声をかけられて篁はホッとしながら笑みを浮かべる。今しがた起きたばかりであろう孫は、まだボーっとしているらしい。

「閉会式が始まる。着替えて会場に入れ。‥あとそのボサボサ頭はなんとかしろ。閉会式が終わったらとっとと寝てかまわん。」

 笑いながらそう言い、孫とともに第五区へと戻った。鷹也はまだぼーっとした様子で第一区、水の社から篁の屋敷を経て大学近くの自宅へ戻り、水浴びと着替えを済ませて第五区へと戻った。


「‥まだ起きておらんのか?」

「そういうなよ‥何かしらんけど、だるー‥」

 式場へと向かい、二人は用意された席に腰掛ける。式が始まってからも鷹也はボーっとしたままの様子であり、篁は苦笑いを浮かべる。

 そして次世代への紹介が始まり、駆が鷹也を見やって微かに笑い挨拶を述べる。続いて鷹也も呼ばれたために仕方無く立ち上がって挨拶をした。

 あまりにも短い挨拶に、あちらこちらからヤジは飛んでくるが、本人は全く気にする様子もなく、「義理は果たした」とばかりに席につく。

(仕方のない奴だ‥)

 これはこれで既に受け入れられているのを、呆れつつ嬉しくも思う。閉会式が終わるとすぐに鷹也は社から自宅へと戻るらしい。妖たちのいる自宅の方が回復には適しているからだろう。

「明日朝には一度戻るよ‥」

 帰りしなにそれだけ言い残し、篁は笑いながら孫を送り出した。その後、第五区では打ち上げを行うとのことで、篁も少しだけ顔を出した。全員に労いの言葉を送り、改めて感謝する。酒も飲まされ、感謝や労いを受けつつ言葉を交わし合う。時間にして小一時間ほど滞在し、静かにその場を辞した。



 早めに就寝し、翌朝目を覚まして帰る準備をする。鷹也と共に社へ行くと、以前バーベキューでも会話をした、鷹也と同世代の数名と会った。挨拶を交わした後、一人が進み出る。

「おいこら、閉会式のとき、やたらかったるそうだったが、大丈夫なのか?」

 さくらの兄、智樹が鷹也にそう声をかける。

「‥ん?眠かっただけだよ。さすがに死ぬほど寝たからな~」

 鷹也がそう答えると、皆、安心したように見えた。

「大体な、お前は自覚が足りない!疲れてるならそう言え!バカタレ!!」

 恭平がそう言って少しばかり不機嫌そうに睨む。

「‥眠いだけで疲れてたつもりもないんだけどなー?」

「疲れたから眠かったんだろうが!!」

 智琉にも突っ込まれ、さくらが穏やかに笑っている。

「良い仲間に恵まれたなあ。」

 思わず篁が呟くと、智樹・智琉・恭平が一斉に嫌そうな顔を浮かべた。そして大きなため息を漏らし、困ったようにそっぽを向く。

「「「こいつだしなあ‥」」」

 そんなボヤきを残し、別れの挨拶をして去っていく。


「いよー!鷹也!何か面倒なこと押し付けられて大変だなー!」

「あっははは!また大学行くから、そん時にな!」

「鷹也様~!!私も祓いを見たかったのに!残念です!!」

 そう声を掛けてきたのは、不知火家の蓮司・明武・燐の三名だ。不知火家当主は第ニ区の守りに徹していたため、来たのはこの三名だけである。

「あーはいはい。気をつけて帰れよー」

 適当過ぎる鷹也の挨拶に兄二人は爆笑し、燐はふくれっ面だ。それぞれが篁と改めて挨拶を交わした後に帰路につくのを見送った。


「‥いつの間に知り合ったんだ?」

 篁が面白そうに尋ねると、鷹也は面倒そうに経緯を話してくれた。

(‥若手にとっては、妬みの的になりかねんとも思ったが‥存外うまくやっていけるのかもしれん。)

 自分より背の高い孫の横顔を見ながら、篁は満足そうに笑う。今後、自身が引退した後でも、きっとこの孫が繋ぎ、そしてまた先の世代へと縁を作ってくれる、そんなふうに思えた。

(まあ‥周りは苦労するかもしれんが‥)

 能力こそ高いが、それと比例して人を混乱に陥れる能力も高い。思わず笑ってしまいながら、次世代を担う駆がやってくるのを迎えた。



 帰宅するまで、いましばらくかかる。最愛の妻が待っているだろうことを思うが、半端なことは出来なかった。環に確実に怒られる。

(引退したら、環とのんびり旅行にでも行くか‥)

 そんなことを思い、篁は再び務めを果たすべく移動するのだった。






第四章・完



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