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掌の眼  作者: 瑠璃雀
神楽祭
72/113

合流そしてカツ!

 売店で買い込んだジュースを持ち、女性陣は男子たちに近づいていく。

「道明!遊馬!!お兄さんたちー!!」

 七海が大声で叫ぶと、4人は振り返って手を振ってくれた。

「「「「おー!」」」」

 互いに近づき、七海が飲み物の入った袋を差し出す。

「はい!水分補給!‥この暑いのに何してたの?」

「え!?マジで!?ありがと‥ありがとうございます!!」

 道明が他の3人に飲み物を見せると、集まってきて口々に礼を言って頭を下げた。一緒にいる雅や立夏に対しての感謝であるために、口調が改まったのだろう。


「「「「ぷは!生き返る!!」」」」

 4人は汗だく、砂まみれで笑っている。

「いやー!砂浜ジョギングがさ、体幹とか瞬発力鍛えるのに良いっていうから。鬼ごっことボール遊びしてたんだけど!めっちゃきつい!!」

「これ想像以上に足にくるわ。明日朝ここに走りにこようぜ!」

「埋もれるしな!靴の中えらいことになった!!」

「けど楽しいよなーーー!!」

 男子達は楽しそうに笑い合い、服についた砂を払いあっては笑っている。七海達は呆れ顔、雅と立夏は楽しそうに笑っていた。


 そのまま流れるように街なかを歩き回る。美味しそうな匂いにつられて試食してみたり、お土産を見て回ったりと、楽しく寄り道だ。

「かき氷くいてー!でもとんかつかーー!!」

「ただの氷とシロップだな。甘い水みたいなものだけど?どうする?いっとく?」

 遊馬が誘惑と戦っているのを司がからかい、流水と茜までが誘惑と戦い始めた。

「水とシロップ‥でもーー!」 

「糖分はカロリー!!」

 昨日からの食べ過ぎを気にして踏み切れずにいる。

「まだ美味しいものたくさんありそうだよね?でも暑いもんね?悩むね~?」

 七海も笑いながら2人をからかいはじめ、雅と立夏も笑っていた。


「あ!何か、かわいい!!」

 流水が誘惑と戦いながらも可愛いセンサーに反応して、また別の店へと入っていく。そして女子たちは気になってついて行く。

「うわ、このハンカチかわいい!」 

「このシュシュ‥織物なんだ。記念に買おうかな?」

 七海も余りの暑さに髪をまとめたくなり、茜と一緒にシュシュを選ぶ。

「確かにこの暑さだと、髪下ろしてると暑いわね‥」

 雅と立夏も一緒になって選び始め、結ぶほど長くない流水も一緒になって眺めては、これが似合いそう!とはしゃぐ。それぞれ気に入った小物を買い、髪をまとめて縛る。首元に風が当たるだけで、少し涼しくなった気分だ。再び店巡りをしながら、皆で買い物を楽しんだのだった。



 昼になり、予約した食事処で落ち合った。

「予約ありがとうございます。これだけ混雑しているから、予約してもらって良かったわ。」

 雅と立夏が礼を言う。

「せっかくですから美味い物、食べたいですしね。」

 智樹はそう言って爽やかに笑った。

「鷹也がいないと普通なんだな、お前ら。」

 恭平が思わずツッコミを入れる。

「お前も人のことは言えんと思うけどな‥」

 智琉がそうまぜっかえし、道明と遊馬、司が笑っている。ネコ討伐隊筆頭三名の態度は、鷹也がいると大いに盛り上がる。盛り上がるというか崩れる。

「‥うちの鷹にゃんがご迷惑を?」

 雅の言葉に智樹たちの時が止まった。


「…鷹‥にゃん?‥」

 そして雅が嬉しそうに笑いながら写真と動画を公開した。

「ママ!?」 

「お、おかあさん?」

 七海と流水が慌てたが、時すでに遅い。

「ぶふぉっ!!‥ちょ‥こっ‥あはははは‥ふっ‥ふひっ‥だめだ‥あはははは」

 智樹・智琉・恭平が呼吸困難になるほど笑っている。司も撃沈していた。

「鷹也先輩‥なに‥やってんすか‥ちょ‥ははははは‥しぬ‥」

 さくらは再び画面を見て硬直しているが、口元はゆるんでいる。そして道明と遊馬も笑い転げていた。七海も顔を両手で覆い震えている。茜と立夏も笑顔のまま動画に見入り、“にゃー”で撃沈した。

 ぶり返す笑いの発作に咳き込みながらメニューを見、注文する。


「‥水が‥飲め‥ない‥くくくくく!あはははは!」

 道明がコップを手に取ったものの、震えてしまって水が波打っている。

「‥飲んだら吹くぞ?」

 恭平も震える手でコップを持ちながら、飲みたくても飲めない状況に陥っていた。

「‥そういうわけで、ちょっと変わった子かもしれないけれど、宜しくお願いしますね?」

(‥ちょっと!?‥)

 おそらく全員の心の中で同じ疑問は湧いただろうが、無邪気な雅の笑顔の前に、何も言えない。ましてや討伐対象ですなどと、言える空気ではなかった。


「あーでも鷹兄は討伐対象だけどなー!兄ちゃんたちが鷹兄倒す!って。」

(おまそれいまいうーーーー!?)(心の声 昨日に引き続き4回目)

 遊馬の無邪気な一言に、智樹・智琉・恭平・司が固まった。雅は笑顔のまま固まり、その後ハッとして兄達を見やる。

「まあ!あの子の討伐!?頑張ってね!応援しているわ!!」

 討伐対象の母親から、敵である討伐隊にエールが送られようとは、誰が考えていただろうか。

「え?あの、お母さん?‥鷹兄を応援するんじゃないの!?」

「え?鷹ちゃんが倒されるところ、ちょっと見てみたいし!討伐記念の写真、待ってるわ!」

 七海の質問に、雅は楽しそうな返事を返し、討伐隊たちと握手を交わしている。

(‥水澤家、どうなってるんだ!?)

 決して口に出せない疑問を、討伐隊メンバーは心に抱いたのだった。


「お待たせいたしました。ロースかつ定食のお客様!?」

 定食が運ばれて来て、皆の前にこんがりきつね色のトンカツが並べられている。男子チームとさくらは、トンカツダブルに大盛りごはんと食欲旺盛だ。スマホで写真を数枚撮り、さっそく箸をとる。

「「「いただきまーす!!」」」

 サクッとした衣の歯ざわりが心地よく、厚切り豚肉は簡単に噛み切れた。脂はほんのり甘く、ジューシーで、口の中で解けていく。

「うま!!」 

「やわらかー!!」 

 この暑さで揚げ物は辛いのでは?と思っていた雅と立夏も、揚げたてを頬張って幸せそうに食べている。

「美味しいわねえ‥こんなに厚切りなのに、びっくりするほど柔らかいし。香りもいいわー!」

「ホント!良いお店をチョイスしてくれてありがとう!」

 立夏と雅はそう言って笑い、智樹に再びお礼を言う。

「当たりでよかったですよ、智琉と二人で厳選した甲斐がありました。」

 智樹はそう言って笑い、智琉もトンカツを頬張りながら親指を上げて笑った。



 食事を終えた一行は、店を出た。

「‥そろそろ行くか、遊馬?」 

「あーじゃりじゃりだからシャワー浴びないとだしなー」

 道明と遊馬は、そう言い合って伸びをした。

「二人はもう戻るの?」

 この後、プールでも行こうかと誘おうとしていた七海は少し残念そうだ。

「‥え?あー俺らこれからリハーサルがあるんだ。シャワー浴びて着替えたらそっちにね。」

 少しばかり言いにくそうに道明が言う。

「え?あ!そっか、夕方からだもんね。リハーサル、頑張って!」

 道明に気を遣わせてしまった、と、七海は明るい笑顔になる。

「ミチくんも、あっくんも、私たちの分まで頑張るんだぞー!」

「「おう!!」」

 茜の言葉に道明と遊馬は元気よく答えた。

「はは!先を越されたが、精いっぱいやってこい!」

「俺もだね!楽しんでこいよ、遊馬!」

 それぞれの兄からもエールを受け取り、昼を共にした皆からも温かい言葉を掛けられる。

「「んじゃ!また後でな!!」」


 遊馬と道明は並んでホテルへと歩いて行った。その後姿を見ると、七海は何とも言えない気持ちが湧き上がってくる。

「ナナ!私たちも後で一緒に行こうね!」 

「私も一緒にね!」

 茜と流水に声をかけられ、七海も笑顔で頷いた。

(いつまでも引きずっていてはダメだ。‥みんなに気を遣わせてしまうだけ。しっかりしなさい!)

 七海は自身にカツを入れる。

(さっき美味しいカツも食べたしね!)

 面白いわけではなかったが、それでも笑った。


「ね、このあとどうする?」

相談した結果、もう少しお店巡りをしたらホテルに戻り、一度温泉に入って汗を流し、部屋で涼もうという話になった。雅と立夏も準備のために一足先に戻るという。

「それじゃ、俺らと一緒に行こうか。」

 さくらと智樹、智琉、恭平、司、七海に流水に茜、8人でお店を巡る。兄世代はみな親切で、話すと面白い。そうして楽しい時間を過ごすことが出来たのだった。





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