合流そしてカツ!
売店で買い込んだジュースを持ち、女性陣は男子たちに近づいていく。
「道明!遊馬!!お兄さんたちー!!」
七海が大声で叫ぶと、4人は振り返って手を振ってくれた。
「「「「おー!」」」」
互いに近づき、七海が飲み物の入った袋を差し出す。
「はい!水分補給!‥この暑いのに何してたの?」
「え!?マジで!?ありがと‥ありがとうございます!!」
道明が他の3人に飲み物を見せると、集まってきて口々に礼を言って頭を下げた。一緒にいる雅や立夏に対しての感謝であるために、口調が改まったのだろう。
「「「「ぷは!生き返る!!」」」」
4人は汗だく、砂まみれで笑っている。
「いやー!砂浜ジョギングがさ、体幹とか瞬発力鍛えるのに良いっていうから。鬼ごっことボール遊びしてたんだけど!めっちゃきつい!!」
「これ想像以上に足にくるわ。明日朝ここに走りにこようぜ!」
「埋もれるしな!靴の中えらいことになった!!」
「けど楽しいよなーーー!!」
男子達は楽しそうに笑い合い、服についた砂を払いあっては笑っている。七海達は呆れ顔、雅と立夏は楽しそうに笑っていた。
そのまま流れるように街なかを歩き回る。美味しそうな匂いにつられて試食してみたり、お土産を見て回ったりと、楽しく寄り道だ。
「かき氷くいてー!でもとんかつかーー!!」
「ただの氷とシロップだな。甘い水みたいなものだけど?どうする?いっとく?」
遊馬が誘惑と戦っているのを司がからかい、流水と茜までが誘惑と戦い始めた。
「水とシロップ‥でもーー!」
「糖分はカロリー!!」
昨日からの食べ過ぎを気にして踏み切れずにいる。
「まだ美味しいものたくさんありそうだよね?でも暑いもんね?悩むね~?」
七海も笑いながら2人をからかいはじめ、雅と立夏も笑っていた。
「あ!何か、かわいい!!」
流水が誘惑と戦いながらも可愛いセンサーに反応して、また別の店へと入っていく。そして女子たちは気になってついて行く。
「うわ、このハンカチかわいい!」
「このシュシュ‥織物なんだ。記念に買おうかな?」
七海も余りの暑さに髪をまとめたくなり、茜と一緒にシュシュを選ぶ。
「確かにこの暑さだと、髪下ろしてると暑いわね‥」
雅と立夏も一緒になって選び始め、結ぶほど長くない流水も一緒になって眺めては、これが似合いそう!とはしゃぐ。それぞれ気に入った小物を買い、髪をまとめて縛る。首元に風が当たるだけで、少し涼しくなった気分だ。再び店巡りをしながら、皆で買い物を楽しんだのだった。
昼になり、予約した食事処で落ち合った。
「予約ありがとうございます。これだけ混雑しているから、予約してもらって良かったわ。」
雅と立夏が礼を言う。
「せっかくですから美味い物、食べたいですしね。」
智樹はそう言って爽やかに笑った。
「鷹也がいないと普通なんだな、お前ら。」
恭平が思わずツッコミを入れる。
「お前も人のことは言えんと思うけどな‥」
智琉がそうまぜっかえし、道明と遊馬、司が笑っている。ネコ討伐隊筆頭三名の態度は、鷹也がいると大いに盛り上がる。盛り上がるというか崩れる。
「‥うちの鷹にゃんがご迷惑を?」
雅の言葉に智樹たちの時が止まった。
「…鷹‥にゃん?‥」
そして雅が嬉しそうに笑いながら写真と動画を公開した。
「ママ!?」
「お、おかあさん?」
七海と流水が慌てたが、時すでに遅い。
「ぶふぉっ!!‥ちょ‥こっ‥あはははは‥ふっ‥ふひっ‥だめだ‥あはははは」
智樹・智琉・恭平が呼吸困難になるほど笑っている。司も撃沈していた。
「鷹也先輩‥なに‥やってんすか‥ちょ‥ははははは‥しぬ‥」
さくらは再び画面を見て硬直しているが、口元はゆるんでいる。そして道明と遊馬も笑い転げていた。七海も顔を両手で覆い震えている。茜と立夏も笑顔のまま動画に見入り、“にゃー”で撃沈した。
ぶり返す笑いの発作に咳き込みながらメニューを見、注文する。
「‥水が‥飲め‥ない‥くくくくく!あはははは!」
道明がコップを手に取ったものの、震えてしまって水が波打っている。
「‥飲んだら吹くぞ?」
恭平も震える手でコップを持ちながら、飲みたくても飲めない状況に陥っていた。
「‥そういうわけで、ちょっと変わった子かもしれないけれど、宜しくお願いしますね?」
(‥ちょっと!?‥)
おそらく全員の心の中で同じ疑問は湧いただろうが、無邪気な雅の笑顔の前に、何も言えない。ましてや討伐対象ですなどと、言える空気ではなかった。
「あーでも鷹兄は討伐対象だけどなー!兄ちゃんたちが鷹兄倒す!って。」
(おまそれいまいうーーーー!?)(心の声 昨日に引き続き4回目)
遊馬の無邪気な一言に、智樹・智琉・恭平・司が固まった。雅は笑顔のまま固まり、その後ハッとして兄達を見やる。
「まあ!あの子の討伐!?頑張ってね!応援しているわ!!」
討伐対象の母親から、敵である討伐隊にエールが送られようとは、誰が考えていただろうか。
「え?あの、お母さん?‥鷹兄を応援するんじゃないの!?」
「え?鷹ちゃんが倒されるところ、ちょっと見てみたいし!討伐記念の写真、待ってるわ!」
七海の質問に、雅は楽しそうな返事を返し、討伐隊たちと握手を交わしている。
(‥水澤家、どうなってるんだ!?)
決して口に出せない疑問を、討伐隊メンバーは心に抱いたのだった。
「お待たせいたしました。ロースかつ定食のお客様!?」
定食が運ばれて来て、皆の前にこんがりきつね色のトンカツが並べられている。男子チームとさくらは、トンカツダブルに大盛りごはんと食欲旺盛だ。スマホで写真を数枚撮り、さっそく箸をとる。
「「「いただきまーす!!」」」
サクッとした衣の歯ざわりが心地よく、厚切り豚肉は簡単に噛み切れた。脂はほんのり甘く、ジューシーで、口の中で解けていく。
「うま!!」
「やわらかー!!」
この暑さで揚げ物は辛いのでは?と思っていた雅と立夏も、揚げたてを頬張って幸せそうに食べている。
「美味しいわねえ‥こんなに厚切りなのに、びっくりするほど柔らかいし。香りもいいわー!」
「ホント!良いお店をチョイスしてくれてありがとう!」
立夏と雅はそう言って笑い、智樹に再びお礼を言う。
「当たりでよかったですよ、智琉と二人で厳選した甲斐がありました。」
智樹はそう言って笑い、智琉もトンカツを頬張りながら親指を上げて笑った。
食事を終えた一行は、店を出た。
「‥そろそろ行くか、遊馬?」
「あーじゃりじゃりだからシャワー浴びないとだしなー」
道明と遊馬は、そう言い合って伸びをした。
「二人はもう戻るの?」
この後、プールでも行こうかと誘おうとしていた七海は少し残念そうだ。
「‥え?あー俺らこれからリハーサルがあるんだ。シャワー浴びて着替えたらそっちにね。」
少しばかり言いにくそうに道明が言う。
「え?あ!そっか、夕方からだもんね。リハーサル、頑張って!」
道明に気を遣わせてしまった、と、七海は明るい笑顔になる。
「ミチくんも、あっくんも、私たちの分まで頑張るんだぞー!」
「「おう!!」」
茜の言葉に道明と遊馬は元気よく答えた。
「はは!先を越されたが、精いっぱいやってこい!」
「俺もだね!楽しんでこいよ、遊馬!」
それぞれの兄からもエールを受け取り、昼を共にした皆からも温かい言葉を掛けられる。
「「んじゃ!また後でな!!」」
遊馬と道明は並んでホテルへと歩いて行った。その後姿を見ると、七海は何とも言えない気持ちが湧き上がってくる。
「ナナ!私たちも後で一緒に行こうね!」
「私も一緒にね!」
茜と流水に声をかけられ、七海も笑顔で頷いた。
(いつまでも引きずっていてはダメだ。‥みんなに気を遣わせてしまうだけ。しっかりしなさい!)
七海は自身にカツを入れる。
(さっき美味しいカツも食べたしね!)
面白いわけではなかったが、それでも笑った。
「ね、このあとどうする?」
相談した結果、もう少しお店巡りをしたらホテルに戻り、一度温泉に入って汗を流し、部屋で涼もうという話になった。雅と立夏も準備のために一足先に戻るという。
「それじゃ、俺らと一緒に行こうか。」
さくらと智樹、智琉、恭平、司、七海に流水に茜、8人でお店を巡る。兄世代はみな親切で、話すと面白い。そうして楽しい時間を過ごすことが出来たのだった。




