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掌の眼  作者: 瑠璃雀
神楽祭
68/114

ホテル到着そして会合へ

 大きなホテルに案内され、従業員さんが荷物をせっせと運んでくれる。

「すっごい!!めっちゃ立派なところだー!!」

「迷子になりそう‥」

 流水と七海はホテルの前に立って圧倒されている。

「先にチェックインを済ませましょうか。」

 大人たちはぞろぞろとフロントへ行き、七海達はロビーを物珍しげに見つめる。夏休みであるためか人も多く、同じように物珍しげに見ている人も多い。



「お疲れ様です。」

 ロビーには別で来ていたらしいさくらと双子の兄達がいて、温かな笑顔で迎えてくれた。

「さくらちゃん!」 

「髪切ったんだ!!」 

「似合ってる!!」

 七海と流水と茜は大興奮だ。

「ほら、だから言ったろう?」

 智樹がそう言って笑っている。

「髪を切ったはいいけど、やっぱり気になってたみたいでさ。」

 智琉も言いながらさくらを見やった。

「‥ありがとうございます。やっぱりなんか緊張してしまって‥」

「いや、めっちゃきれいっす。」 

「うん、いいと思う!」 

「自然が一番だって!」

 司と道明、遊馬が笑顔で言ってくれたことで、さくらもようやくホッとしたらしい。


「さ、行きましょ‥あら!さくらちゃん!」

 雅が呼びに来てくれ、笑顔で挨拶してくれる。立夏や蒼介、駿も来て、軽く自己紹介と挨拶を交わした。

「さくらちゃん、素敵になったわね!印象が明るくなってとってもいいわ!」

 雅がそう言って褒めると、立夏も笑顔で頷いてくれる。

「あ、ありがとうございます。」

 蒼介と駿もにこやかで、どうやらこの目を気にされてはいないらしいことに、さくらはホッとしたのだった。

「夕方から会合があるから、15時半にロビー集合で」

そう打ち合わせをしたあと、スタッフが運んでくれた旅行鞄を手に、それぞれ部屋へ向かった。蒼介と駿だけは一つ下の階で降り、残りは全員同じ階だ。

 同じ階の部屋は、手前に男性陣、奥に女性陣がまとまっていて行き来もしやすそうだった。男子は智樹・智琉・恭平たちと、道明・司・遊馬たちの二部屋に分かれ、女子はさくら・七海・流水・茜たちと、雅・立夏たちの二部屋で、それぞれ隣同士になっていた。


 さくらが部屋に入り、七海と流水、茜も後に続く。

「広ーい!ベッドだー!」

 手前にはベッドが2台置いてあり、その奥は和室になっている。この部屋は、七海と流水、茜、さくらの4人部屋らしい。


 荷物を置いた4人は、さっそく畳の上で寛ぐ。やはり長時間の移動と初めての土地の緊張感からドッと疲れが出た気がするのだ。

「ひゃー何か疲れたー!あ!お茶とお茶菓子があるね!」

 流水が手際よくお茶を淹れてくれ、皆さっそく口にした。程よい甘さの和菓子と、温かなお茶が身体と心を優しく解してくれるようだ。

「はー‥外に出たくない。」

 七海は畳の上にばたりと寝転んだ。それを見た茜も、流水までが便乗する。

「ふふ、外は暑かったですものね?」

 さくらは長い髪を器用にまとめ、かるく縛った。首筋が汗ばんでいたので、それだけで少し涼しくなったような気がする。


「プールけっこう広いねー!」 

「楽しそう!!」

 ホテルの館内案内を見ていた七海と流水が嬉しそうにはしゃいでいる。事前に知らされていたため、水着も持ってきている。泳ぐのは好きなのだ。

「レジャー施設のプールだから、ナナと流水ちゃんには物足りないかもよ?」

茜はそう言って笑った。水系譜であるせいなのか、元水泳部の蒼介以外でも、篁や鷹也、七海、流水までもが、千メートル単位で泳ぐ。市営の25mプールで飽きるほどに泳ぐのを、茜は何度も目撃しているのだ。

「そっかー‥ちょっと残念だけど、遊べたらいいねえ。」

「せめて2000くらいは泳ぎたかったけどねえ?」

 既に二人の会話がおかしい。茜とさくらは顔を見合わせて笑った。

「温泉あるし!砂蒸し風呂?これもなんか気持ちよさそう!!」

 茜とさくらがガイドを見ていると、七海と流水もそれに乗り、楽しくおしゃべりをしたのだった。



 ロビーで待ち合わせをした後、近くの式場へと向かう。近いこともあって、徒歩での移動だ。

「何かちょっと緊張するねえ‥。」

 茜がそう言って七海を見やると、やはり七海も緊張しているらしい。

「まーあれだ、学校の終業式とか始業式?みたいなもんだから、もう少しリラックスな!」

 恭平が笑顔で話しかけてくれ、道明や遊馬もそれを聞いて少し安心したようだ。

「そうだね、前回の神楽祭以降に開眼した人は、名前を呼ばれるから。呼ばれたら返事をしてお辞儀だけすればいいよ。」

 智樹も親切に教えてくれる。

「え!名前を呼ばれるんですか!?」

 七海がつい聞き返してしまう。もしまた開眼した眼をお披露目しないといけないのだとしたら‥

「あはは、そんな固くならないでいいよ。開眼していない人も多くいるから、わざわざ眼を見せることもないしね。ただ返事をして起立して礼。全員が立ち上がった後に合図があったら座る。それだけさ。」

 智琉もそう言ってくれたので、4人はそれを聞いて落ち着いた。


「まあ手の平見せられてもなー。俺らには分からないしね?」

「そうだな。最初に遊馬が“眼が出た!”と大騒ぎしたときには、“何を言っているんだ?”と思ったしな。開眼のこと自体忘れていたほどだぞ?」

 蒼介が笑いながら言った後、駿もそう言って笑った。

「まあ、久しく開眼者が出なかったから、遊馬に続いて司までも開眼してくれて、嬉しかったがな!」

 駿がそう言って二人の肩を叩く。

「会場では名入りのネックストラップを渡されるのよ。ストラップの色で赤は開眼者、青は未開眼者みたいに色分けされるわ。‥私たちも全員は覚えきれていないもの。」

 立夏もそう教えてくれた。


「そういえば‥皆さん、これまでに神楽祭の選考には出られたんですか?」

 七海が兄世代たちに尋ねる。

「俺は高1の時に選考出たけど落ちたよ!」

と恭平。

「私は中3の時でしたが‥選考自体出ていませんね。」

とさくら。

「俺たちは丁度受験でね、選考は出てない。本番は見に行ったけどね。」

と双子。

 皆が当たり前に参加しているものと思っていた七海には、新鮮だった。そして恭平が落ちたことを全く気にしていないことにも。

(私が気にしすぎてたのかな…)

 あの時の絶望を思い出すと、今でも胃がキュッとする。もし兄世代の話を聞けていたのなら、少しは安心できたのだろうか?

 そんな会話をしているうちに式場へ到着した。会場は広いホールになっており、円テーブルが数多く並んでいる。

「よ。」

 受付には鷹也がいて、名札のついたネックストラップを渡してくれる。

「見かけないと思ったら手伝いだったのか?」

 智樹が受付を済ませてネームプレート受け取りながら尋ねると、鷹也は頷いた。

「まあねえ‥名前と顔を一致させろってさ。無茶言うなよなー。」

「あ~そりゃ言われるわ、お前!」

 恭平も笑いながらネームプレートを受け取る。

「うっせえ。‥とりあえず後がつかえるからとっとと行け。」

 次々とネームプレートを渡しながら面倒くさそうに促すので、皆、ぞろぞろと移動していくと、各テーブルにはポップスタンドが置かれており、そこに家名が記されていた。


 水澤家を見つけて近づくと五十嵐家と火乃宮家も一緒で、隣は土門家と月影家が一緒だ。

「この数字ってなあに?」

 水澤家の左上には「1」と記されている。隣ともう一つのテーブルが「1」であるようだ。

「これはね、エリアを分ける数字だよ。俺たちは第1区になるんだ。ここは第5区と遠方だからね、第1と第2の参加は少ないようだね。第5の参加が圧倒的に多いはずさ。」

 流水の問いに蒼介が教えてくれたので、興味深げに周囲をみやる。確かに5という数字が記されたテーブルは多い。


「お飲み物は何になさいますか?」

 そう声をかけられ振り返った所で七海は固まった。以前、選考会で”羊の皮を被ったゴジラ”と称した女性だ。確か不知火(しらぬい)家の(りん)という名だった気がする。

「あ、ええとお茶をお願いします。」

「はい。」

 下向きになったテーブルのグラスを直し、手に持ったお茶を注いでくれる。流水はそれを見て慌ててコップをひっくり返した。笑顔ではあるが圧が強い。


「五十嵐遊馬くん。‥お久しぶりね?」

 そう声をかけられた遊馬だが、全く覚えがないらしい。目をぱちくりさせている。

「神楽選考のときに一緒の組だったのよ?不知火燐。私は落選してしまったけれどね。」

「え、あ、はい?‥あ、どうも。」

 遊馬もどう答えたら良いのか分からず、戸惑っているらしい。美人であるせいかもしれないが。順にコップを満たした後、月影家のテーブルで燐は固まった。

「え?‥あの‥どちらさまかしら?初めまして?」

 理知的イケメン二人と、オッドアイの美女。その組み合わせにフリーズしたらしい。

「ああ、初めまして、かな?月影智樹、こちらは智琉。俺たちは双子でね?」

「初めまして、俺が智琉です。」

「燐さん、お久しぶりです。さくら、です。」

 燐の瞳が見開かれた。これまで前髪で隠されていた素顔を初めて見たのが衝撃的だったのだろう。

「‥さ、さくら‥さん?」

 衝撃を受けていた燐だったが、気を取り直して飲み物をサーブする作業に移る。最後にお辞儀をし、飲み物を乗せたワゴンを押しながら次のテーブルへと移動して行った。

「やっぱり目力つよい‥」 

「きれいだけど迫力あるよね‥」

 七海と流水はそう言い合い、「但しイケメンには弱いらしい」と笑い合う。これには茜までも吹き出してしまった。





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