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掌の眼  作者: 瑠璃雀
夏休みの始まり
61/115

合同お誕生会という名のBBQ カオスなお祝い

 8月は茜と遊馬の誕生日がある。7日が茜、8日が遊馬だ。道明とさくらの誕生日も一緒に祝おう!ついでにバーベギューだ!と、トントン拍子に話が進んだのだ。

「人数は多い方が良い!」

 そんな蒼介の言葉があり、結果、人数が膨れ上がった。

水澤家 篁 環 蒼介 雅 鷹也 七海 流水 霧江 8名

月影家 賢一 桔梗 さくら 智樹 智琉 5名

五十嵐家 遊馬 司 涼 3名

火乃宮家 立夏 茜 灯 融 4名

土門家 恭平 道明 美園 圭輔 4名

 何と総勢24名にもなる。とはいえ篁邸は敷地が広いため、これだけ集まったとしても全く問題はない。茜や道明、遊馬の妹や弟たち、兄達全員が集まることになった。完全にカオスである。


 開催日当日、昼からスタートということもあり、全員が大わらわだった。篁と蒼介、鷹也は庭の清掃を手早く終わらせ、バーベキューコンロやテーブル、椅子を組んでセットした。母屋の前が広い庭になっているのでこの人数ならば問題はない。

 環、霧江、桔梗、さくら、流水が朝からキッチンに詰めている。七海と雅はサポートだ。肉や野菜を切り分けては袋詰めにし、冷蔵庫とクーラーボックスへ分けて保管するのだ。


 薪で火を起こし、大量の炭をくべて着火させる。大型のバーベキューコンロが三台ともなると、使う炭の量も多い。

『今日はなにがあるのー?』 『なんかそわそわー』 『人おおいー?』

 鷹也の周りを妖たちが歩き回ってしきりに尋ねてくる。

「バーベキュー‥えっとね、外で肉や魚、野菜焼いて食うの。来るのは一族だけだけど、まだ開眼してない子どももくるよ。」

 妖たちはそれを聞いてきゃあきゃあ走り回った。開眼してなければ見えないし、ぶつかることもない。ただこうして妖たちと話している姿を見たら、独り言を言っているようにしか見えないはずだ。


 昼近くなり、続々と参加者が集まって来た。土門家、月影家、火乃宮家、五十嵐家がそれぞれ差し入れを手にやって来た。

 キッチン部隊もひと段落つき、炭火も準備が整い、あとは焼くだけである。

「まずはみなさん、ようこそ!当初の予定から名目が増えたのでな!

お誕生会 火乃宮茜さん、五十嵐遊馬くん、土門道明くん、月影さくらさん

既にかなり過ぎている者いるが、せっかくだから一緒に祝おうということになった。

おめでとう!!」

 篁がそう述べると、全員が一斉に拍手をした。

「おめでとー!」 「道明遅くなっちゃってごめん!」 「さくらちゃんも!」 「おめでとう!!」

 そんな言葉をかけられ、4人は嬉しそうにお辞儀をした。


「さて、次が神楽祭選考で選ばれた、土門道明くん、五十嵐遊馬くん、遅くなってしまったが、こちらもお祝いだ!もうすぐ神楽祭、頑張ってな!」

 二人に対して温かい拍手と声援が送られた。


「つい先日、開眼を迎えた五十嵐司くん!まずはここでお祝いだ。おめでとう!」

 司は右の掌を全員に向けて見せる。とたんに拍手が起こった。


「そんなわけで喜ばしいこと続きだな。あー‥神楽祭でも話すつもりだったが、ついでに言っておこうかの。孫の鷹也と月影さくらさんが婚約することになった。」

「「「「えええええええ!!!!」」」」

 驚きの声を上げたのは、恭平、道明、司、遊馬の4人である。


「はははは!というわけで、皆、飲み物は持ったか?」

 テーブルにはジュースやワイン、ビールが注がれており、全員が手に取った。

「それでは乾杯!!」

「「「「かんぱーい!!」」」」

 それぞれコップをぶつけ合い、色々ごちゃ混ぜカオスなお祝いバーベキューがスタートしたのだった。


 そして、道明と恭平、遊馬、茜が鷹也の元に走る。

「おい鷹也!!」

 口火を切ったのは恭平だ。ちなみにバーベキュー用の炭に着火するため、鷹也はずっと火の傍にいた。

「あー言いたいことは分かるがちょっと待てー!」

 そこに智樹が割って入り、ポカリを渡す。

「先に水分補給だ。それ、汗だろ?」

「あーさんきゅー」

 500ミリを一気飲みし、肩にかけたタオルで汗を拭う。Tシャツは汗でぐっしょり濡れ、絞れそうなほどだ。

「ほれ、もう一本」

 智琉からも受取り、こちらも一気飲みする。

「‥鷹也さん、着替えます?一応、替えのTシャツ持ってきましたけど。」

 そこにタイミングがいいのか悪いのか、さくらがやってきて、真新しいTシャツを差し出した。

「そうねえ‥どうせまた同じことになりそうだけどな‥」

 汗で貼り付いたTシャツを脱ぎ、背中をタオルで拭いて新しいTシャツを着る。脱いだTシャツを絞り、適当な石の上に置いて乾かすつもりらしい。

「洗濯しますよ?」  「いやいいよ、煤もついてるから、今日の着たのは捨てる。」

 そんな二人のやりとりを見て、双子はニヤニヤし、その他は固まっていた。


「た、鷹也!?婚約ってなんだよ!?」

 恭平に詰め寄られ、道明と遊馬も頷きながらこちらを見ている。

「‥?‥たぶんだけど、婚約って‥そのうち結婚するよーってことだろ?」

「ブフォッ」

 双子が盛大に吹き出して爆笑した。

「いやあのそういうことじゃなくてな!?」

 恭平がムキになって突っ込むと、鷹也は首を傾げる。

「あれ?‥そうなんだ?じゃあ婚約ってなんだ?」

 双子は腹を抱えて笑っており、さくらも肩を震わせている。そして恭平はフリーズした。遊馬と茜も肩を震わせている。おそらく笑っているのだろう。


「あ、炭が足りないみたいなんで、後でな?」

 鷹也は焚火から炭を取り出し、炭壺へ入れてバーベキューコンロへと歩き去った。


「きょ‥恭平!聞き方!!」

 智樹がひいひい言いながら何とか言葉にした。

「ダメだあれ‥婚約の定義とは何か?そう聞かれたと‥あははは‥思ってる‥」

 智琉が息も絶え絶えに言うと、恭平も笑い出し、道明も盛大に吹き出した。全員が笑いの渦に飲み込まれている最中に鷹也が戻り、焚火の中から炭を取り出して再び持っていく。

「‥さくらちゃん‥だ、大丈夫なの?」

 笑いながら道明が尋ねると、さくらも笑いながら何とか頷いた。


「‥何か楽しそうだな?」

 再び戻って来た鷹也の言葉に、全員の心が一つになった。

「お前のせいだよ!!」

 代表者:恭平の一言で、再び笑いが起きる。

「‥鷹也さん、さっきの恭平さんの質問は、婚約の定義を聞いているのではないです。ええと、鷹也さんと私が婚約するなんて聞いていなかった!と、なぜそうなったかを聞きたかったのかと。」

 さくらが解説すると、ようやく頷いた。

「あれ?言ってなかったっけか。まあさっき聞いたんだし、いいだろ?」

 さらりと流され、恭平がぐぬぬぬといった様子で鷹也を見ている。

「鷹兄、鷹兄、あのな?婚約とか結婚てさ、人生最大のイベントなんだよ。‥まあ大事なことだから、鷹兄から直接聞きたかったなーと、思ってるの。ここ最近会ってる訳だし。」

 そう道明は言って笑いかけた。

「‥そういうもんなのか。悪かったな?」

 どうやら重大さが分かってはいないようだが、言わんとしていることは理解してくれたらしい。

「すみません、実は許嫁という話が祖父同士の間でありまして。‥婚約しようとなったのは本当にごく最近なんですよ。‥不意打ちみたいになってしまって申し訳ありません。」

 さくらがそう言って頭を下げると、恭平も慌てた。

「あ、いやいやそんな!」

「さくらーお前は謝らなくていいぞー!このクソネコが全部悪い!」

「そうそう。さくらは悪くない。まあ、俺らはさすがに身内だから知ってたわけだけど。俺らも言ってなかったしね?」

 智樹と智琉のフォローが入り、一旦落ち着いた。


「とりあえず、焼き係そろそろ交代しないとなー」

 鷹也はそう言い捨ててすたすたと歩き去って行く。

「どうしてあいつはああなんだ!!」

 恭平がそう毒づくが、面白がっているのは明らかだ。肉の焼ける匂いが辺りに漂い始めたので、全員ぞろぞろと移動する。

 コンロの周りには誰もいなかったため、さっきのメンツがそのままグリルの周りに集まった。

「適当に焼くから勝手に持ってって食えよ?」

 両手に箸を持ち、片手でひっくり返し、片手で肉を並べていく。肉の焼ける香ばしい匂い、ジュージューと落ちる脂、ほんのり焦げ目のついた肉。そこからは肉の争奪戦となり、どんどん肉が無くなっていく。


「‥そういやさくら?」

 肉をもきゅもきゅしているさくらが鷹也を見やる。

「メシ食う時、その前髪ってジャマじゃねえ?」

 その言葉に双子と茜がフリーズした。この三人はさくらのコンプレックスを知っているせいだ。

「‥そうなのですが‥自分の目が気になってしまって‥」

 気まずそうに言うさくらに、鷹也は首を傾げた。

「俺はさくらの瞳の色、きれいだから好きだけどなー。」

瞬間、茜の顔がボワット赤く染まり、双子はフリーズした。さくらはピタリ、と止まってそろそろと前髪を上げる。

「本当に‥気に、ならないです?」

 恐る恐るさくらが聞くと、鷹也は微かに笑う。

「さくららしくていいじゃんか。夜と月っぽくてさ。」

 その言葉にさくらが微笑むと、双子も嬉しそうに笑った。道明も顔を赤らめ、遊馬は呆然としている。茜は両手で顔を覆い、ぷるぷると震えていた。

「‥ありがとう‥ございます‥」


 それまで置いてきぼりになっていた恭平が、ぶるんと頭を振った。

「いや確かにそうだけど!!お前、照れもせずよくもそんなことが言えるな!!俺が恥ずかしいだろうが!!‥さくらさんの瞳、確かにきれいですけど!!隠してるのもったいないし!」

 恭平が鷹也に対して文句を言いながらも、さくらに対してのフォローも忘れない。

「鷹兄たらしだー‥もー!!‥これ私、どうしたらいいのー!!」

 茜が真っ赤になったまま、叫び声を上げたため全員が笑った。

「‥肉やけたから食えばいいと思うよ?」

 唯一、真顔のままの無表情男が、茜に焼けた肉を差し出し、再び笑いが起きる。

「うきゃーーーーーーー!!」

 思わず叫んでしまった茜だが、ちゃんと肉は受け取った。肉に罪はない。道明がぽんぽんと背中を叩き、遊馬が腹を抱えて笑う。婚約発表には驚いたが、もうそれもどうでもよくなった。

(((鷹兄だから仕方ない!!)))

 三人は妙に納得してしまい、その後は会話を楽しみながら肉を食べ続けた。



「にーちゃーん!カイゲンってなんだよー!」

 弟の涼に聞かれ、司は笑った。

「そうだなあ‥涼がもう少し大きくなったら分かるかもな!」

 自分の掌の眼を見せたところで、開眼していない涼には分からない。説明が面倒になった司は適当に流した。

「えー!なんだよー!」

「肉が焼けたっぽいけどいいのか?‥なくなっちゃうぞ?コーラも飲むんだろ?」

 司がそう言って歩き出すと、涼はまんまと釣られた。チョロい。

「おにくー!おいしい!!」 「うめええ!!」 「おにくー!」

 コンロ近くのテーブルには、美園、灯、融がいて、流水が運んだ肉を食べていた。

「ずりー!融、もう肉食ってのかー!?」

「‥うん‥うま‥」

 司がクーラーボックスに入っていたコーラを持って来てコップに注いでやる。

「ありがと兄ちゃん!」 「あーおれもー!」

リクエストに応えて融にもコーラを注ぐと、二人は嬉しそうにコーラを飲んだ。

「はい!追加のお肉とー!リンゴジュース二つね!」

 美園と灯はリンゴジュースを受け取って礼を言う。皿に肉を盛られた涼が目を輝かせた!

「いただきます!!」

 言うやいなや肉を口に放り込み、表情を緩ませた。

「うまーーーーー!!」

 司が嬉しそうに笑っていて、流水も笑顔になってしまう。


「優しいお兄ちゃんだなあ!司さんも、あっちで焼き立て食べてきたら?」

「あ~俺はこいつらの様子見てようと思ってるんすよね。・・走り回ると危ないし。」

 流水はにっこり笑ってコンロ周りへと小走りに去ってゆく。そして大量に肉を盛って再び戻ってきた。

「司さんも食べてね?‥飲み物、お茶持ってきたけど良かったかな?」

「あ、わざわざ持ってきてくれたんすか?ありがとう!‥こいつらも食べきりそうだなぁ‥」

 司は子供たちの皿に肉を取り分け、その後で食べ始める。

「うは!めっちゃうめえ!!これ止まらなくなるわ!流水ちゃんも一緒に!」

 二人はお皿の肉をつつきながら笑い合う。

(司さん、子供たちに本当に優しいんだなあ‥)

 食べながらも子供たちの皿を気にする司に、流水はそう思ってほっこりしたのだった。



「いやはや‥バーベキューと聞いて、胃に重そうだと思っていたが‥魚介がたまらんな!」

 縁側では篁と賢一が焼き立てのホタテを食べながら一献酌み交わしている。

「これは病みつきになりそうだ。たまにはこういうのもいいな!」

 そこに環と桔梗も合流する。

「おお、お疲れさん。戦場だったろう?」

 篁がそう労うと、二人は笑った。

「蒼介や鷹也が良く見てくれてますからね。‥流水と七海もせっせと運んでくれてますし。大丈夫ですよ!」

 焼きうにを口にし、とろりとした濃厚な甘さを堪能する。生きているウニをそのまま炭火で炙っているため、雑味が全く無い。

「これは!!」  「いかんな!!」 「いけませんね!!」 「危険です!!」

 それぞれ口々に言いながら、日本酒で濯ぐ。

「「「「ふーーーーー!!」」」」

 香ばしく焼いた岩牡蠣に醤油を落としては唸り、プリプリの海老の塩焼きに唸り、ホタテのバター醤油に唸る。ちびりちびりと飲んでいる日本酒が瞬く間に空になってしまうのも、仕方ないだろう。

「4合だとあっという間ですねえ‥」

 顔色一つ変えずに環は言い、キッチンから新たな4合瓶を持って来るのだった。



 蒼介が焼き、雅が焼けたものから皿に移すという共同作業をしている傍に、七海が運び役として参戦していた。

 流水が焼けた肉を持ってきてくれ、七海が焼けた魚介類を運ぶ。

「やあ!七海ちゃん!」

 そう気さくに声をかけてくれたのは、山で先生をしてくれた圭輔だ。

「あ!圭輔さん!この間はありがとうございました!」

 ぺこりと頭を下げた後に、蒼介と雅に山での先生だと紹介する。

「これはこれは!娘がお世話になりました!すごく勉強になったと聞いてます。」

「お世話になりました!本当に楽しかったようで!」

 蒼介と雅が口々に言って頭を下げる。

「いやいや!‥みんな真剣に取り組んでくれましたので、楽をさせて頂きました。」

 爽やかに笑う圭輔に、七海が焼き立ての魚介を渡す。

「まあまあ、まずは食べて!ビールもありますよ!」

 蒼介がキンキンに冷えたビールを手渡し、圭輔はさっそく口にする。

「うっわ!これはヤバイですね!!」

 圭輔は満面の笑みをたたえて海老を頬張っている。醤油を少し垂らし、香ばしさ倍増の海老はどうにもならないほどに甘くて旨い。


「ははは‥炭火で焼く魚介は美味いからなあ‥!」

 蒼介もビール片手にご機嫌だ。

「ホタテも岩ガキも美味しすぎて困る!!」

 七海も運びながら焼きたてを頬張り、満足げに笑っていた。

「君は本当に真面目に一生懸命取り組んでいるね。」

 圭輔は穏やかに七海へ話しかける。

「え!?そ、そうですか?」

「はははは!だから悩むし、考え込むのさ。それは君の美点でもある。しかし、同時に他のことに気が回らなくなる危険さもある。‥色々な人と話して、考えを聞くといいよ。今日も色々な世代がいることだしね。」

 七海は少し考え、そして頷いた。

「ありがとう、圭輔さん。私もちょっと他のところを回りますね!」

 そう言って七海は烏龍茶を片手に去って行った。

「よくあの子を見てくれてますね。‥意外と人見知りなんですよ。」

 雅は素直に歩き去った七海を見て、安心したように微笑む。ずっと自分たちのところにいたため、心配だったのだ。

「大丈夫ですよ、七海ちゃんは。」

 圭輔はそう言って笑い、大人たちは改めて乾杯したのだった。



「カレー出来たわよーーー!!」

 お盆に大量のカレー皿が並び、炭火焼きの鶏もも肉が次々と乗せられる。子供もいるために、中辛と甘口を作ってあり、お皿の色で分けてあった。霧江と立夏が忙しそうに動き回っている。

 司とちびっ子達が最初にやって来て、嬉しそうにカレーを受け取った。

「よそ見しないで。落としちゃうよ?」

 完全に司がちびっこ達のパパ役になっていて、見ていて微笑ましい。自らもカレー皿を受け取り、テーブルへと戻っていった。


「うわ、美味そう!!」

 言いながらハイテンションでやって来たのが、恭平と双子たちだ。さくらと遊馬、道明、茜も一緒になってカレー皿を受け取って行く。

「ああ、さくらちゃん。鷹也のはこっち。」

 大皿に山盛りになったご飯と、山盛りのカレーを渡される。

「俺が持つよ。片手じゃきつそう!」

 道明が手に持って笑っている。

「てか、鷹兄こんだけ食うのに何で太らないんだよ。」

「ああ‥あれね、君の想像の30倍動いてるからだ‥」

 一度、鷹也と一日共に行動した智樹がげっそりしたように呟いた。

「30倍どころじゃないかもな‥」

 智琉もそう言ってため息をつく。二人の様子を見た道明が戦慄した。確かに山キャンプの時、独り平然としていたのを思い出す。


「私もカレー食べたくて来ちゃった。」

 七海がはにかんだように言い、カレーを受け取って合流した。

「ちょっと俺、兄ちゃんと弟のとこ行ってくる!」

「私も妹と弟が気になるから行ってくるね!」

 遊馬と茜がカレー皿を持って立ち去るのを、道明が「ついでに妹もよろしく!」と声をかけた。ここに七海一人を残していいかどうか、少し気になったのだ。

「‥さくらちゃん?‥前髪、上げたんだ?」

 常に目を隠していたさくらが、前髪をピンで止めていることに気づいて声をかける。少し恥ずかしそうに笑いながら、さくらは頷いた。

「‥はい。皆さん、気にしないって仰ってくれたので。」

 双子がニヤリと笑い合い、恭平までもが苦笑いをしているので、何か会話があったのだろう。

「ええと‥恭平さんと智樹さんと、智琉さん、ですよね?」

 名前を間違えては失礼と念のため七海は確認した。

「そうそう!‥妹さんはちゃんと名前覚えてくれるのに!!」

「本当にな!俺が智樹でこっちが智琉だよ。さくらと仲良くしてくれてありがとうね!」

 兄たちは口々に言い、笑顔で応対してくれる。


「鷹兄!!カレー!!」

 着替えたはずのTシャツは再び濡れそぼり、暑さのせいか気怠そうだ。

「ありがと、ミチ。」

 そして智樹は2リットルのポカリを押し付けた。

「‥水分補給。」

「ああ。サンクス。」

 流れる汗をタオルで拭い、カレーとポカリを摂取する。

「鷹兄とは以前からの知り合い‥なんですか?」

 何となく気心知れている仲のように見えたので、七海はつい聞いてみた。

「俺はこいつの同級生だよ。顔も名前も覚えられてないけどな!!」

「俺達はこいつの中バス先輩だよ。顔も名前も覚えられてないけどな!!」

 道明とさくらが笑っているが、七海はうわぁ‥という表情を浮かべる。

「うちの鷹兄がなんかすみません!!」

 カレーを食べる手を止め、思わずお辞儀してしまう。


「‥気にしなくていいのに。」

「「「お前が言うな!!!」」」

 鷹也のつぶやきに恭平・智樹・智琉がつっこんだ。それから鷹也の学生時代のエピソードを聞かされ、さくらと道明は爆笑し、七海は頭を抱えたのだった。



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