2-12 山での修行?2
翌朝、鳥の囀りで目を覚ました七海はベッドの上で大きく伸びをした。驚くほどスッキリ目覚められ、朝の空気を堪能しようと着替え始める。
「おはよー‥ナナはやいねー‥でもなんか気持ちよく寝れたー!」
茜も起き上がって目をこすっている。
「ちょ!茜‥髪!やばい!!」
ふだん癖のある肩までの髪をポニーテールにしているが、ドライヤーを使えなかったためなのか爆発している。
「う?‥うわあああ!!」
自分の髪を触り、状況を把握して手櫛で整えようとするが、寝癖と相まって大変なことになっている。
「っ!ふっ‥あはははは!」
「もおお!ふふっ!あはははは」
七海が自分のリュックからブラシを取り出して髪を梳かす。
「ナナはいいなぁ‥サラッサラのストレート!超うらやま!!」
茜も着替え、髪をポニーテールに結んだ。洗顔や歯磨きを終えて外に出ると、まだひんやりした空気が心地よい。
「‥あれ?起きたの?」
声はするが姿が見えず、七海と茜は周囲を見回す。
「鷹兄、だよね?」
「うん、鷹兄の声。」
直後に着地音がして振り返ると、髪ボサボサの鷹也が立っていた。
「どこから現れたの!?」
「飛び降りた‥」
説明する気があるのかないのか分からないまま、てくてくと歩いてゆき、岩から渓流に飛び降りる。
「「ええええええええ!!」」
七海と茜が慌てて見に行くと、岩場の影になっている淵に飛び込んだらしい。一度水中に潜って再び浮き上がると、盛大に水を滴らせながら岩を登って歩いてきた。
「今の‥なに?」
「え?顔洗っただけ。」
思わず問いかけた七海に、何かおかしい?といった表情を向けてくる。
「いやあの!顔洗うのに飛び込む必要ある!?」
「全身ずぶ濡れだったけど!?」
茜と七海の疑問をよそに、山小屋へと入っていく。
「おはよう!」
「オハヨー‥」
テントからごそごそと遊馬と道明が出て来て、爆発している髪に茜と七海は再び大笑いだ。
「んあー朝はこうなるんだよー」
既にしっかりと目覚めている道明と
「髪?‥あれ?はえてるね?」
まだ半分寝ぼけている遊馬の対比に、笑いが止まらなくなる。
「はえてるね、じゃないんだわ!!」
思わず笑いながらつっこむ七海に、道明も笑い出し、茜は笑いながら涙を流している。
「おー!起きたか!おはよう!昨夜はしっかり眠れたかい?」
既に起きていたらしい圭輔が爽やかに挨拶をしてくる。
「はい!寝落ちしました。」
「横になってすぐだった!」
七海と茜がスッキリした顔で答える。
「俺は眠れなかったような‥?」
呟く遊馬に「秒で寝てたわ!!」と道明がツッコミを入れ、圭輔も笑い出す。
「‥おはようございます‥」
少しふらつきながらさくらもやってきた。
「え?大丈夫!?さくらちゃん、具合悪い!?」
七海が心配そうに声を掛けるが、さくらは首を振った。
「低血圧で‥少し落ち着いたら大丈夫です。寝起きはちょっと‥」
そう言って岩の上に座り込む。
少し騒がしい朝だったが、昨夜のうちに炭の中に埋めていたアルミホイルの塊を圭輔が取り出した。かなりたくさんあり、何だろう?と覗き込む。
「めちゃくちゃ美味いぞー!」
軍手をした手で一つ一つアルミホイルを剥くと、中にはサツマイモとじゃがいも、かぼちゃが入っていた。
「塩バターで食うんだよ。」
七海達も軍手をし、熱々のじゃがいもやサツマイモにバターを塗り、一口食べた。
「「「「うまああああ!!!!」」」」
ホックホクの身は甘みがぎゅっと濃縮され、バターのコクと塩味が混ざり、食べても飽きが来ない。
「自家製ソーセージもあるからなー!」
炭火で炙ったソーセージも程よい焦げ目があり、皮はパリッと、肉汁が溢れ出してお口の中が幸せだ。昨夜に引き続き食事を堪能し、食後のお茶がさっぱりと身体に沁みていく。
「あの、鷹兄?まだびしょ濡れみたいだけど‥?」
「うん。そのうち乾く。」
気になった七海が兄に声をかけたが、鷹也は全く気にしていないらしい。
(鷹兄って、こんな雑なの‥?まだ寝ぼけているのかな?)
七海は、それ以上どう声をかけたら良いか分からないまま兄の様子を眺めていた。
全員で昼食用のおにぎりを作り、フィールドワークへと出発する。既に元気になったさくらが、七海と茜の傍に行く。
「山小屋からさほど遠くへは行きませんから、お手洗いに行きたくなった言って下さいね?」
女子二人は安心して笑顔になり、頷いた。やはり年上の女性がいると心強かった。
傾斜もさほどきつくはなかったが、やはり木の根や下草のせいで少し歩きにくい。
「この先に祠があってね、山神様がおられるから挨拶に伺うよ。」
今日のことは当然事前に伝えてはある。それでも山に入った以上は挨拶に行くべきだろう。4人は神妙な表情になり、静かに歩みを進めていった。
七海達が釣りをしていた渓流の、少し上流に当たる場所。ここには大きな石も多く、ひときわひんやりした空気に包まれているように思う。
「こちら、だな」
木と岩の間を通り抜けると、そこは微かに霧が出ていた。大木の根本に石の塊が見える。風化していて形が崩れかけているが、どうやら石組みの祠らしい。
<おお‥来たのか‥>
人型のような淡い光がふわりと現れた。
「お邪魔してます。ご挨拶に伺いました。」
圭輔がそう言って軽く頭を下げる。そして4人を振り返った。挨拶をしろということだろう。
「おっお邪魔してます。‥騒がしくしてしまってすみません!」
七海がつい大騒ぎしてしまったことを謝罪する。気を悪くさせてしまったら申し訳ないと思ったのだ。
<ほっほ。そう気にせずとも良い。楽しんでくれたら良いからなあ>
穏やかな声で答えられ、かなりホッとした。
「お邪魔してます。この山の空気、すごく気持ちよくて!来られて良かったです!」
茜が元気よく挨拶し、ぺこりとお辞儀をする。
<そうかそうか。それは何より。ゆっくりしていってなあ。>
「こんちゃー!ここの風、何か軽い?感じがしていいなーって思ってます。よろしく!」
遊馬の話し方はかなりフランクだ。
<ははは!そうか、風が軽く感じるか。ここの風は湿気が少ないのでな?そう感じるかもしれん。>
へえと遊馬は呟き、慌ててお辞儀をした。
「こんにちは。お邪魔してます。‥ここの雰囲気、俺も好きです。」
道明も深々とお辞儀をして笑顔を向ける。
<ふむ、地脈を視る目が良いのう。‥せっかくだ、この山をしっかり視ていくといい。>
「ありがとうございます!」
「こんにちは、お邪魔しております。明日までこちらでお世話になりますので、どうぞ宜しくお願い致します。」
さくらも丁寧に挨拶し、深々とお辞儀をした。
<そんなに畏まらんでもいいのに。だが、気持ちは受け取っておくぞ。気を付けてな?>
「はい、ありがとうございます。」
さくらも笑顔で下がる。
挨拶を終えてそっと祠から離れる。ちなみ鷹也は手前で待っており、山神様に挨拶はしていない。
「鷹兄は行かなくていいの?」
「うん。」
七海が気になって聞いてみるが、理由を説明する気もないらしい。
「ええと、その‥神様に怒られたりしない?」
「?‥しないよ?」
茜が問いかけても何でそんなこと聞くんだろう?といった様子だ。二人はそれ以上の質問を諦め、困ったように笑い合う。
「さて、それじゃあ早速今回のメインイベントだ。‥鷹也、位置は分かるか?」
圭輔に話しかけられ、鷹也はその場で目を閉じる。
「‥近いところだとこっちだね。」
「案内してくれ、ゆっくりな!!」
圭輔に釘を刺され、鷹也は時折後ろを振り返りながらゆっくりと歩く。殿は圭輔だ。
「このペースだと歩いて20分くらい。少し手前で休憩入れるか?」
「そうだな、そうしよう。」
日が高くなり、気温も徐々に上がってきた。蝉時雨の中、4人は緊張した面持ちのまま歩いてゆく。比較的歩きやすい道ではあるが、それでも一般的な登山ルートと比較すると狭くて凹凸は多かった。
(ああそうだ、足裏全体を使うんだった‥)
躓きかけて何とか堪えたあと、七海は昨日言われたことを思い出し、足裏全体で歩くようにする。
「ここで休憩しようか。」
少し平坦になった場所で、そう声をかけられる。全員がその場に座り、汗を拭きつつ水分補給をする。
「さて、この先に小さな“穢れ”が発生している。まずは皆に、神楽の実践をしてもらう。」
圭輔がそう言って一人ひとりの顔を見て回った。遊馬ですら少し緊張した面持ちになっており、七海に至っては顔色が悪くなっているほどだ。道明と茜も唇をきゅっと結び、真剣そのものである。
「あははは!そんな怖い顔をするなって!」
圭輔が突然笑い声を上げ、一人ひとりの肩を軽く叩いた。
「ちょっとした体験学習なんだから。失敗しても、上手くいかなくてもそれでいい。というより、失敗の経験を積んでもらうのが目的だ。」
そんなふうに言われ、場の空気が少し緩んだ。緊張しすぎていた七海の右手を茜が、左手をさくらが握ってくれる。
「ナナ、だいじょうぶ。」
「七海ちゃん、落ち着きましょうね。」
小声で囁かれ、七海はコクリと頷いた。二人の手の温もりが、強張った身体と心を溶かし、不思議なほど落ち着ける。
「それともう一つ、今まではただ神楽を舞っていただけだったと思う。式との信頼関係が強化され、場数を踏むことによって神楽を舞うと“神力”というものが出てくるんだ。」
圭輔はそう言って全員を見回す。
「‥しんりき‥?」
ぽつりと茜が呟いたので、圭輔は頷いた。
「そう、俺たち一族はね、開眼するとその神力を扱えるようになる。そして式を通じて更に扱える量が増えるんだ。これをきちんと扱えないと、浄化も祓いも出来ない。」
4人は真剣に話を聞いている。
「でも‥神楽やってるとき、そういうの全然分からなかったけどな‥?」
遊馬が不思議そうに呟いたので圭輔は頷いた。
「うん。今の段階では分からなくていい。おそらく神力が出てはいても、感じ取れないんだ。なので、今回は少し感じ取れやすいようにサポートをする。もしいつもと違う感覚があったとしたら、その感覚を覚えておいてもらえれば、今はそれでいい。」
圭輔はそう言って笑顔を向ける。
「その後に、俺とさくらさんで祓いと浄化を実践するからね。こういうものだ、と分かってもらえればそれでいい。今回はそういう実習だ。」
まだ何のことか、よく分からないまま少し考え込む。
「ええと‥車の運転は実際にしないけど、ゲーセンでさ、カーレースで遊ぶみたいな?」
遊馬の例えに圭輔が思わず笑い出す。
「面白いな、君。うん、まあそんな感じでいいんだ。だから気軽に、ね?」
ようやく4人はホッとした表情になり、緊張も少しほぐれたようだ。
「社以外で神楽って初めてだから、とりあえず転ばないように気をつけよう‥」
茜の言葉で笑顔になり、明るい表情になる。さくらも4人の様子を眺めながら、穏やかに笑った。
休憩を終え、少し歩いた先に黒煙のようなモヤモヤが視界に入る。
「え、なにあれ?」
「あの黒いのが穢れ?」
「何か臭そう?」
「嫌な感じがするな。」
それぞれ思い思いに口にして、その場に立ち尽くす。
「そう、あれが穢れ、だ。まだそこまで危険なものじゃないから、近づき過ぎなければ大丈夫だよ。」
落ち着いた声で圭輔が言う。
「近づきすぎるとどうなるの!?」
不安になった七海が思わず口走る。
「頭痛とか目眩とか、気持ち悪くなるかな?‥この程度なら1,2時間休めば大丈夫だけどね。」
そこまで危険なものではないと聞き、4人は安心して身構える。
「そうだな、全員が確実に覚えているのは奉納神楽か。それでいい、余り広い場所じゃないから、一人ずつ行こう。武具でね。‥道明、行けるかい?君は近接武具だけど近づく必要はない。」
圭輔はまず甥の道明を指名した。
「うす。ロード!」
一歩前に出るとフーっと息を吐いた。道明の式であるロードが、両腕を覆う。そして鷹也が龍笛を取り出し、音を奏でる。
道明の神楽は空手をしているだけあって、緩急が見事だ。足元がさほど良くない割に動きは滑らかで、全員が見入った。
(‥あれ?‥なんかいつもより動きやすい?‥なんだ?血の巡りとは違う何か‥何か流れてる?)
足が地面に吸い付くような、大地から力を得ているような、不思議な感覚のまま神楽は終わった。
「じゃ、次は‥七海ちゃん、いけるかい?」
声をかけられ、七海は頷いて立ち上がった。
「はい。‥ユキ!」
七海の式であるユキが双剣となって左右の手に収まる。少し手は震えたが、それでも一旦目を閉じて集中した。再び鷹也が音を奏でる。
双剣を巧みに操り、型を完璧になぞる。
(右手・左足半歩前・右手を下ろして左手を前に‥)
七海はリズムを取りながら一つ一つの型を確実に再現していった。
(あ、今の左手はもう少し上げないと)
小さな差異はあったが、ほぼ完璧に舞うことが出来、ホッとして息を吐いた。
「じゃあ‥茜ちゃん、いいかい?」
茜は軽く目を閉じた後に立ち上がる。
「はい。イグニス!」
刀となったイグニスを両手でしっかり握る。鞘には収まっておらず抜き身の状態だ。一歩踏み出して大上段に振りかぶる。再び鷹也が音を奏でた。
(大きく!堂々と!‥ミスしてもいいんだ!)
茜はいつになく大胆に動いた。刀を振り抜き、一歩引き、中段に構え横薙ぎに。足元の不安定さにぐらついてしまい、数歩よろめいたがそれすら足捌きの一つ、とでもいうように継続する。
(あれ?‥何かおへそのあたりが温かい?‥腕へと流れてるみたいな?)
一瞬、不思議な感覚になったが、それもすぐに消えてしまった。そして神楽が終わる。
「じゃあ遊馬くん!」
動きたくてうずうずしていたらしい遊馬は勢い良く立ち上がった。
「うっす!ウサ吉!!」
「ぴるーーーーーーーーーーー!!」
やっと出番が来たとでも言うように顕現し、くるりと一回転して地面に降り立つ。毛色は何故か白い。
「いやあのね?武具になってくれないと?」
ウサ吉はもう一度くるりとその場で一回転し、シャキーン!と効果音が出そうなポーズを決めた。
「ぴるっ!!」
「ああ、うん。分かったから。たのむって!」
ウサ吉と遊馬の掛け合いに、目を丸くしていた圭輔だったがたまらず笑い出した。もちろん他のメンツも大爆笑している。それに満足したのか、ウサ吉はフッと消えて遊馬の手に収まった。
「うし、やるぞ、ウサ吉」
今日は何故か純白の弓になっている。右手に弓、左手に矢だ。スッと一歩踏み出し、踊るように舞い始める。もちろん鷹也も遊馬の動きに合わせて音を奏でる。
(お?なんかめっちゃ軽い。鷹兄の笛の音色に合わせて何かが循環してる?)
開始早々、遊馬は不思議な感覚を味わい、気持ちが高揚してきた。今なら風の流れを全て読めそうな気さえする。
(あー違和感があれかー‥穢れってやつだ‥)
遊馬は舞いながら弓を引いた。神楽で矢を放つ動きは一度だけ。本来ならば反転して空に向かって放つ。が、迷いなく穢れに向けて矢を放った。
黒い靄が、怯んだように萎んだ。が、すぐに元通りになる。
(神力っていうのか。これがまだまだ足りてないから‥だから当たってもダメなんだな‥)
遊馬は神楽を終えてふーっと長い吐息をついた。いつもの舞いよりも、疲れを感じたせいだ。
「よしよし、お疲れ様。初めての経験だったと思うが、今感じたことをしっかり身に刻んでくれ。」
圭輔はそう言って一人一人に声をかけて労った。良いも悪いも言わず、ただこの状況できちんと舞えたことを褒めたのだ。
「さて、それでは俺が祓いを。さくらさんに浄化をしてもらう。同じ奉納神楽の方が良いだろうから、それでいくよ。」
圭輔が一歩踏み出し、式を顕現させる。道明と同じ金色の猪であるが、少しくすんだ落ち着いた毛色だ。
「デン、頼む。」
その一言で槌へと変容する。柄の長いハンマーのような武具だ。両手持ちをして構えに入る。一歩踏み出すのと同時に、龍笛の音色が響く。
ドンっと地響きが起きそうな重い一歩、そこから力強い舞いが始まった。洗練された動きに、4人の目が釘付けになる。各家によって型に違いがあるのと、武具によっても異なる。道明と似て異なる動きではあるが、迫力が段違いだった。
(‥微かに光ってる?‥)
武具が淡い光を帯び、軌跡にも光の粒子が舞っているように見えた。その光が靄に向かってゆき、槌を振りぬいた瞬間、黒い靄は霧散していく。直接叩いたわけではないのに塵のようになって消えていったのだった。
神楽を終えた圭輔は、さくらに視線を送り、入れ替わるようにさくらが前に出る。
「ノワール」
さくらの両手に漆黒の扇が現れた。龍笛の音色が穏やかで落ち着いた音色へと変わる。さくらは扇を構えて舞いだした。
(‥うわぁ‥さくらちゃんの舞い‥めちゃめちゃキレイ‥扇ってかっこいい‥)
七海は呼吸をすることすら忘れ、舞に見入った。優雅でありながら、どこか迫力がある。そして月の光のような、白金の光が、靄のあった場所とその周辺へ広がった。その余波を浴びるだけで、身体から悪いものが出て行くような気すらする。
神楽が終わると、空気が浄化されたかのような心地よさがあった。
「‥祓いと浄化は、間をおかない方がいいんだ。さくらさん、鷹也、協力ありがとう。さっきの黒い靄が跡形もなくなっているだろう?こうやって穢れを消す‥いや、消すというよりは解いて散らすんだ。」
圭輔の言葉に、4人は頷いた。
「さて、良い時間だし、さっき休憩した場所で昼にしよう。聞きたいことがあれば、遠慮なく言ってくれ。」
その言葉に荷物を持ち、さっき休憩した平坦な空地へと歩き出す。誰も口を開くことがないのは、今の体験について考えているからだろうか。
休憩地点に到着し、適当な場所を選んで座りこんだ。
「さて、お疲れ様。腹も減ってるだろう?まずは腹ごしらえだ!」
圭輔がリュックから水と、今朝炊いて作ったおにぎりを取り出す。
「いただきまーす!」
言いながらおにぎりにかぶりついたのを見て、4人もリュックからおにぎりと水を取り出し始めた。
「「「「いただきます」」」」
ちなみにバーベキューで余った肉を刻み、焼肉のタレと共に混ぜ合わせた米でおにぎりを作っている。
「うま!」
「焼肉のタレごはんやべえ!!」
「甘辛いの最高!」
「やば!」
これまで神妙な顔をしていた4人の表情が一斉に緩む。やはりご飯の力は素晴らしい。そしてこのおにぎりにはさくらがひっそりと爆弾を仕掛けている。
「「「「半熟煮卵!!!」」」」
一口食べるととろりとした黄身がごはんと合わさる。焼肉のタレの甘辛さと刻んだ肉のスパイス、卵のまろやかさが混然一体となってお口の中に広がるのだ。
「「「「やば!!!」」」」
お口の中のハーモニーに夢中になっており、全員が自然と笑顔になる。そこから少しずつ会話も増え、さっきの“穢れ”に対して質問も出て来た。
「なんかさ、調子に乗ってあの靄に矢を当てたけど、全然効かなかったな!」
遊馬が明るい調子で言うと、圭輔も笑いながら頷いた。
「そうだね。まああれで祓えちゃったら、俺の立場がないからな。まだまだ君たちはこれから成長していくわけだしさ。届かなかった、と体験出来たことが今回のテーマなんだよ。」
その言葉に4人は明るい表情で頷いた。
「てか圭さんの神楽、めっちゃ迫力あったし、さくらちゃんの神楽はめっちゃきれいだし、鷹兄の笛?あれなんか身体が軽く感じたんだ。」
道明がそういうと、全員がそれに頷き合う。そしてつと鷹也を見ると。
「鷹兄…?待って、それはなに?」
キャベツひと玉を手に持ち、ぺりっと剥がしてはもしゃもしゃしている。
「‥?‥キャベツだけど?」
「「「「見ればわかるわっ!!」」」」
全員が突っ込んだのは言うまでもない。そして興味を持った4人はキャベツを一枚ずつもらい、容器に入った味噌につけて一緒になってもしゃもしゃし、おかわりまでもらったのだった。
「キャベツうま」
「けど弁当にキャベツ一玉はどうよ?」
「でも鷹兄だし‥」
「でもうま」
そんな雰囲気で昼休憩を取り、雑談を交わしたあとは再び山小屋へと歩き出したのである。
弁当にキャベツ一玉持って歩いていた男




