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掌の眼  作者: 瑠璃雀
掌の眼
3/32

1-2 開眼祝

 部活を終え一度帰宅した七海は、制服を着替えて家を飛び出した。既に流水も霧江も家にはおらず、おそらく篁の家にいるのだろう。徒歩で20分くらいだ。

 160センチを少し超える七海は、手足も長く、歩幅も広い。気温はかなり下がってきたが、まだ少し汗ばんでいるため、タオルで汗を拭いつつ、夕方のひんやりした空気を浴びながら歩いていた。


「よお!」 「ナナ!」

 声をかけてきたのは道明と茜だ。それぞれ道場と部活を終え、同じく一時帰宅して着替えて来たようだ。遊馬の家は目的地である篁の家の途中にあるため、そこで合流することになりそうだ。


「‥そういえばさ、開眼祝って何やるんだっけ?」

 七海が道明に声をかけたが、平静さを装っているのが茜にはバレバレだった。七海と茜の二人は、自分たちの開眼祝のとき、途中で退席したため内容を知らないのだ。

「‥うん?」

 道明は茜と七海の表情を交互に見やる。その時「何があったのか」を聞いていない道明であったが、空気を読むことにかけては天下一品だ。


「うーん、最初にお披露目だっただろ?‥その後は大人たちの宴会。俺らは隅で料理とケーキにがっついて終わった。まあ、見てりゃ分かるよ。」

 道明はそう言って笑い、七海と茜にそう声をかけた。二人は分からなかったからこそ、その言葉に頷くしかない。自分たちが何かをしなければいけないわけじゃないと知り、少し安心したのだ。

『今日はえんかい?サケある?』

 ひょっこり出てきたあやかしがぴょんぴょん跳ねながら近づいてきた。家がまばらになり、樹木や草が生い茂る場所も多いため、彼らを頻繁に目にする。


「あるよ?みんな来るんでしょ?」

 茜がにこやかに答えると、妖はぴょんぴょん飛び跳ねる。妖たちの姿形は様々で、声をかけて来たのは小動物のような見た目をしている。近くの木にすいすい登り、キャッキャッと声を上げた。

『タカムラのとこーーー!』

 その言葉にあちらこちらからぴこぴこと妖たちが姿を現す。

「ありゃま、こりゃ大勢集まってきそうだな~」

 遊馬があちらこちらをきょろきょろしながら合流してきた。

「すっごいタイミングだね、あっくん!」

 茜が言うと、遊馬は肩を竦ませる。

「ロードからウサ吉に伝言飛ばされてさ、のんびりしてたらウサ吉にケツ叩かれたんだよ‥」

 どうやら道明が遅刻常習犯の遊馬対策に、自分の式と遊馬の式を利用したらしい。

「さすが道明。遊馬の取り扱いには慣れてるねえ」

 七海がそう突っ込むと、道明は笑い声をあげた。

「だって食うもの無くなってたら、こいつこの世の終わりみたいな顔になるだろ?」

 その言葉に四人は笑い声をあげる。楽しみにしていることでも、すぐに他のことに気を取られるのが遊馬の悪い癖だ。



 篁の家は敷地が広く、敷地内には多くの植栽と築山、湧水から引いてきた小川、小さな橋までもがある。家はこれまた広い大きな平屋で、母屋の他に離れが点在している。七海達はこの離れでお泊まり会を何度もしたものだ。


 通されたのは、母屋の玄関を上がり、まっすぐ廊下を歩いた先の庭に面した和室である。十二畳三部屋の間仕切り襖を取り払い、大空間になっている。この廊下も一般的な住宅より広く、大人二人が余裕ですれ違えるほどだ。

 庭側には縁側があり、こちらも七海が寝転がってもまだ余裕があるほどの幅があるのだ。

「‥はーやっぱ広いなー!子供の時の印象が広くても、自分の身体がデカくなると狭く感じるっていうじゃん?今でも広いと思うわ」

 道明の言葉に遊馬も頷く。

「年々広がったりしてねえ?篁じーさんの家だしさー‥」

「「そんなわけないじゃん!」」

 遊馬の言葉に七海と茜が見事にハモった。


「‥そうか、遊馬は気づいたか。」

 フッと現れた鷹也がそういうと、茜と七海の顔に衝撃が走った。道明までもがギョッとしている。七海の四つ上の兄であり、全体的に色素が薄そうで髪も瞳も薄茶、肌も白い。

 上背もあり細めではあるが、ひ弱そうな印象はなく、鋭い眼光が怖そうにも見える。

「え!?待って?マジで!?」

 遊馬が思わず食いつき、道明までも驚いて鷹也を見やる。

「え!?こっ‥ここがそんな不思議空間だったなんて‥‥」

 思わず納得してしまいそうになる雰囲気に、茜と七海がどちらからともなく手をつなぐ。


「まあ、冗談だけどな。」

 それだけ言い捨て、すっと身を翻す。

「え!?ちょっとまてーーー鷹にいーーーーーーーー」

「素直だなあ。まあ‥のんびりしてな?」

 完全にからかわれたのだと悟り、4人は顔を見合わせて笑いあった。少しばかり緊張もしていたが、それも無理やりに解かれたようだ。

「…鷹兄はどこまで本気でどこからが冗談なのか、本当に判別つかないんだよなあ。」

 そういう雰囲気に一番敏感な道明ですら分からないらしい。


「それより、私たちも手伝えることあるかな?」

 茜が気を取り直して言い、四人はぞろぞろとキッチンへ向かった。この母屋には普通のシステムキッチンと、昔ながらの土間台所がある。そして大きな(かまど)が二台並んでおり、それぞれ三口の炉があった。

 年末の餅つきでもこの竈が大活躍し、大量の餅米を蒸したり、小豆を煮て餡を作ったりして利用されている。


 台所には、和装に襷掛(たすきが)けの祖母 (たまき)と、七海の叔母 霧江、茜の母 立夏、月影家の桔梗(ききょう)と知佐子が調理と盛り付けを取り仕切っていた。ちなみに桔梗と知佐子は姑嫁の関係であるが、本当の親子のように仲がいい。

「おばあちゃん、何か手伝う?」

 七海が声を掛けると、祖母はにっこりと微笑んだ。

「ありがとうねえ。でも大丈夫よ。」

 環は両手を腰に当て、声を張る。

「あんたたち、相伴に預かりたいっていうなら働きな!その方が美味さも一入(ひとしお)ってもんだ!」

 その言葉に妖たちがわらわらっと集まって隊列を組み始める。

「配膳係を任せるからね!ひっくり返すんじゃないよ?」

『『『わかったーー』』』

 和室には既にテーブルが用意してあり、そこに妖たちが運ぶ手筈になっているらしい。

「ばーちゃん‥まさか妖たちをあそこまで使っているとは‥・」

 普段は柔和で優しく、おとなしい印象の祖母であるが、やはりそれだけではないようだ。


 四人は庭で妖たちがキャッキャしながら料理や飲み物を運んでいる姿を眺めていた。どうやら開始時間よりもかなり早く到着してしまったらしい。

「ここって、妖たちも影たちもたくさんいるよねえ‥」

 茜が周りを見回しながら呟く。

「何か、ここの空気が馴染むんだって。」

 七海がいつか聞いた妖の言葉を口にする。


「‥こんばんは‥」

 ゆらりと出てきたのは、黒く長い髪を腰のあたりにまで伸ばし、白い服を着た女性だった。前髪も長く、目元が見えない。

「ひえっ!!」

「わっ!!」

「貞子!?」

「きゃっ!!」

 それぞれが違う声を上げ、思わず飛び退る。

「あら‥ごめんなさい。驚かせてしまいましたね。」

 女は四人の言動にも全く動じることなく、優しげに声をかける。

「さ、さくらさん。来てくれたんですね!」

 一瞬怯んだ七海だったが、それでもしっかりと挨拶をする。この女性は月影家の長女、さくらである。鷹也と同じ大学に通う女子大生なのだ。


「流水ちゃんのお祝いですもの。」

 にっこりというよりも、口元がニイッと笑うだけの様子が少し怖い。昔から長い髪を下ろし、前髪も長く口元しか見えないようにしている。

『髪を切ったら絶世の美女だったりして‥?そんなベタなことはないよね‥』

 さくらを見るたびに、七海の心に不意に浮かぶことだった。身長も高く、痩せぎすな印象だ。しかし声は柔らかく、聞いていて心地よい。見た目の印象はあまり良くはなかったが、七海もさくらのことはわりと好きなのだった。


 今晩は、水澤家・火乃宮家・土門家・月影家の他にも五十嵐家や日下家、その分家達が集まっていた。人数にして五十名前後だろうか。

 一族には、火・水・風・土・日・月を冠す苗字があり、それぞれ系統がある。各系統からの代表三家は筆頭三家と呼ばれ、それ以外は傍家と呼ばれる。

 宴会の席順に決まりはなく、本家や分家、傍家が入り乱れて適当に座っていた。一族を取り仕切っているのが「総代」であり、現在は七海の祖父である篁がこの総代となっている。


 和室の奥に壇が置かれ、その横では白装束に瑠璃色の羽織を来た流水が緊張した面持ちで立っている。横に霧江もおり、流水の背を撫でているようだ。


「皆、今日は突然の祝の席に参加してくれたことに、まずは礼をいわせてくれ。本当にありがとう。」

 篁がそう声をかけ、深々と頭を下げると、流水もそれを見て慌てて頭を下げた。


「さて、今朝方孫の流水が開眼を迎えた。」

 篁は流水を促し、壇の上にあがるよう促す。そろりそろりと壇に上がると、更に緊張した顔で頬が真っ赤になっていた。篁はそんな流水を宥めるように、震える肩にそっと手を置く。そして優しく流水の左手を取り、ゆっくりと手を上げさせた。

「おー!」 

「おめでとう!」 

「きれいな濃紺だなあ!」 

「やはり水系か!」

 温かな拍手と、大人たちの声がざわめきのように広がる。



「七海‥・大丈夫?」

 そっと声をかけられ、七海はそっと汗を拭った。そうだ、自分はこのとき閉じたままの眼を見せることが出来ずに退席してしまったのだ。

「うん。‥ありがと、茜ちゃん」

 今となってはそこまで落ち込んではいなかったが、この場であの時の感情が蘇り、少しだけ嫌な気持ちになったのだ。それを茜が察して、七海の手を取ってしっかりと握ってくれる。

「大丈夫だよ」

 そう言われているようで、七海はホッとして妹の晴れ舞台に視線を送るのだった。


「あっ‥あの!みずしゃわ、るみです!」

 盛大に噛み、更に真っ赤になってしまった流水だったが、それだけでは終わらない。

「にゃー!噛んじゃいました!みずさわ、るみです!よろしくおねがいします!」

 そう堂々と言い放ち、最後に輝く笑顔を振りまいてペコリとお辞儀をした。


「かわいいーー!」

「にゃーって!!にゃーってーー!!」

「何あの子!うちの娘に!!」

 大人たちまでも笑顔になり、盛大な拍手を貰っていた。篁までもが蕩けそうな笑顔を浮かべ、流水の頭を撫でている。

「うちの孫は渡さんからな!!!」

 篁は精一杯厳しい表情を浮かべて声を上げたが、ただの孫バカである。一同はにやにやしながらも和やかな雰囲気でその場は終わった。


 その後は乾杯となり、手にグラスを持って高々と上げる。七海達もジュースや烏龍茶を手に、グラスを掲げて乾杯した。

「‥・もしかして、これで終わり?」

 七海が問うと、道明と遊馬が同時に頷いた。

「着替えて飲んで食ってた!」

「かーちゃんに無理やり服脱がされた」

 もっと仰々しいものかと思い、そんな中退席したことが、心の中に棘となって残っていた七海と茜である。

「「ただの宴会じゃん!!」」

 茜と七海が見事にハモリ、道明と遊馬は大笑いしたのだった。


「ほら、あれだ。開眼の儀ってやったじゃん?あっちが正式な儀式でさ、これマジでただの宴会だったんだよなあ。まあ、一族の顔合わせって感じかもな。」

 道明が言い、唐揚げを口に放り込む。カリッとした衣にじゅわっと脂が広がり、表情を見るだけで美味いのだと分かる。

「‥そっか。」

 七海はぼそりと言い、その後一族の人たちとの関わりもあったが、皆、自然に接してくれていたなと思う。腫れ物に触れるでもなく、変に気を遣われるでもなく、今までと何ら変わらない接し方だった。

(私が考え過ぎてたのかな‥・?)

 

 七海は少し元気になり、お赤飯と天ぷらを取り口にした。

「うまっ!!」

 サクサクの衣にプリプリのエビがたまらない。揚げ物特有の油っこさがなく、何匹でも食べられてしまいそうだった。


「おねえちゃーん!!」

 着替えた流水がやってきて、ジュースを一息に飲み干す。

「緊張したーーー!噛んじゃったーーーー!!おなかすいたーーーー!!」

 そう言って七海の腕にしがみつく。七海はつい笑顔を浮かべて可愛い妹の頭を撫でくりまわした。

「でもすごいじゃん!ちゃんと言い直してお辞儀して!さすがだよ!?」

 自分にはああは出来ないだろうなと思いながら七海は流水を褒めそやし、料理を取って渡してやる。

「ありがと!おねーちゃん。わたしもおねーちゃんみたいにカッコよくやりたいのにな‥」

 流水からそんな言葉を聞かされ、七海の顔がにやけてしまう。


「流水ちゃん、おめでとう!」 

 すいーっとさくらが寄ってきて流水に声をかける。

「ありがとう!さくらちゃん!!」

 さくらは嬉しそうに流水の頭を撫でていて、流水も嬉しそうだった。

「さくらちゃんも食べよう?」

 服から伸びる華奢な腕を見た流水が心配そうに言い、七海が料理を取り分けて渡す。


「‥ありがとう。わたし、そんなに少食に見えるのかしら?」

 さくらが唐揚げを飲み込んだ後にぽつりと呟く。

「うん!野菜しか食べてなさそう!」 

「弁当箱とか俺の四分の一くらいの大きさっぽい!」

 遊馬と道明が言うと、さくらは再び口元をほころばせた。

「‥そうなのね。わたし、さっきからあちらこちらですごい量を取り分けてもらってるの。今、七海ちゃんがくれた量を‥そうね‥十皿は食べたかしら。」


「はい!?」

「え?マジ!?」

「うそーん」

「えええ!?」

 4人のリアクションが面白かったのか、さくらは声を上げて笑う。

「誰も信じてくれないのだけど、こう見えて‥実は大食漢なのよね‥」

 再び更に盛られた料理を、上品に口にしながらさくらは言う。

「さくらさん!?それだけ食べてどうやって痩せられるの!?」

 最近お腹周りが気になる茜が食いついた。

「‥母もそうだったみたいだから。遺伝?なのかしらね。」

 七海と茜に流水までもが羨ましそうにさくらを見ている。甘い物大好きな年頃でもあり、体重と甘い物の消費量が比例することが悩みのタネでもあるのだ。


「さくらの胃は異次元にあったりしてな。」

 鷹也もひょっこりと顔を覗かせ、さくらをからかう。

「‥だから栄養が回らないのでしょうか‥?」

「いや、だから間に受けんな。」

 鷹也がこういう軽口を叩くのは、家族と遊馬、道明以外ではかなり珍しく、七海と流水は思わず顔を見合わせた。


 七海は唐揚げを食べながら兄の視線に気付いた。自分を気遣うような、何かを推し量っているような、そんな視線に戸惑ってしまう。

「‥なに?」

 しばらく見つめられた後、フッと視線を逸らされた。

「なんでもないよ。せっかくだから存分に食っておけよ?‥体重は気にせずに。」

 そう言って鷹也はニヤッと笑う。

「体重のことは言うなああ!!セクハラだからね!?鷹兄!!」

 茜がすかさずツッコミを入れ、道明と遊馬が笑い出す。

「そーだそーだー!テーブルの足に小指ぶつける呪いかけちゃうんだから!!」

 流水も便乗し、さくらが楽しそうに笑った。

「あらら。じゃ、訴えられる前に退散するわ。」

 鷹也はそう言ってその場から歩き去っていった。


(鷹兄‥もしかして心配してくれた‥?)

 兄が時折、何かを見透かすような視線を送ってくることがある。今回もそれを感じたのだ。血の繋がった兄妹でありながら、これまで一緒に暮らしたことはない。しかし、常に自分たちのことは気にかけてくれる、そんな存在なのだ。



『のめや~うたえ~』

『えっさっさーー!ほいさーー!』

『ひーっく!酒うまーー!もっとーー』

『おーっとと!こぼれちゃうーー』

『わーい!!』

『けーきおいしーーー!!』

『じゅーすもっとほしーーー!』

 妖たちも嬉しそうにどんちゃん騒ぎを楽しんでいる。中には地面に横たわって眠っている妖たちもいた。


「こんな風景、開眼しなかったら体験しなかったんだね‥」

 流水が楽しそうに笑い、そう呟いた。おそらく開眼前から気配は感じていたはずで、それが視えるようになったことに戸惑いもありながらも楽しんでいるようだ。


「そっか!流水ちゃんには見えてなかったんだものね。‥意外と驚いてない?」

 茜の言葉に流水は笑顔を見せる。

「驚いたよ!?学校でうっかり声あげそうになったし!でも友達は気にしてなかったし!‥でもここだとさ、みんな見えるのが当たり前って感じで。ちょっと安心した!」

 流水はそう言って近くにいる妖をつついてみる。

『きゃー』

 声を上げては避け、しかし楽しそうに遊んでいる。

「あ!でも、この眼は別!!見られないか超ドキドキで!!手を上げたときに先生にギョッとされないかとか、友達に見えちゃわないかとか、ずっとあわあわしてたんだけど。‥学校じゃ誰にもバレなかったみたいで。みんなには本当に見えないんだなあって思った。」

 流水は不思議そうに言い、茜は穏やかに微笑む。


「最初は私たちもそうだったかな。‥同級生がいたのも心強かったし。そっか‥流水ちゃん、独りだと心細かったよね‥」

 その言葉にハッとして七海は流水を見やった。自分が気づいてあげなければいけなかった部分を、言われて初めて気づいたことにショックを受ける。

「大丈夫だよー!慣れればたぶん!」

 流水はそう言って無邪気に笑った。


「ナナ、そんな顔しないのー!‥余裕、なかったんだよね‥?」

 茜に小声で囁かれ、七海はバツが悪そうに頷いた。

「大丈夫!ほら、見て!流水ちゃんも楽しそう!」

 七海が改めて流水を見ると、妖と楽しそうに笑い合っている。そして皆、そんな様子を笑顔で見守っていた。


(‥こんなに温かい雰囲気だったんだ‥)

 一族との関わりを、どことなく居心地の悪いものだと思い込んでいたのかもしれない。

(‥気にしてないつもりだったけど‥意外と気にしてたんだな‥)

 こんなふうに一族の集まりを穏やかに楽しく過ごせたのは、初めてな気もする。茜がそっと七海の腕を取り、七海はつられるように笑った。二人は顔を見合わせ、もう一度小さく笑い合った。


挿絵(By みてみん)

月影さくら/水澤篁・環/水澤鷹也


※画像はAIによるイメージです。

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