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掌の眼  作者: 瑠璃雀
掌の眼
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体育祭 午前の部

 その日、七海はテーブルに置いてあるおにぎりとおかずを食べ、食器を洗って家を出た。霧江は朝からお弁当作りのために、篁の家に行っているのだろう。流水も朝早いらしく、既に家を出た後だった。

「おはよう!ナナ!」

 茜が元気に声をかけてくれる。

「今日はいい天気だね!気持ちいい!」

 二人がたわいもない話をしながら歩いていると、遊馬が走って来た。


「よー!あれ?道明‥は応援団か!」

「そそ!流水も応援団らしくって。おねーちゃん応援するんだ!って盛り上がってたんだけど、流水は2組だから赤なんだよね!」

 七海の言葉に茜と遊馬が笑い声をあげる。

「流水ちゃんかわいい!色違いって言ったら超ショックうけてそう!」

 茜が笑いながら言うと、七海も頷いて笑った。

「“えええええ!?でも!赤組だけど心は白組だし!”だって!」

 七海が流水の真似をして言うと、茜も笑ってしまう。

「かっわいいなー!‥けどさ、中学最後なんだねえ‥」

「それな!!入学したの一昨日くらいじゃねえの?って気分。」

 少ししんみりした茜に対し、遊馬が大いに同意した。

「「さすがにないわー!」」

 七海と茜が思わずハモり、お互いに顔を見合わせて笑う。

「中学最後、か。‥勝って気持ちよく終わりたいな!」

 そんな七海の言葉に、茜も遊馬も頷いた。


 着替えも終わり、開会式が終了した後はラジオ体操だ。

「何かさーラジオ体操みんなで踊ると楽しいねえ!」

「ラジオ体操は躍らないって!」

 流水の言葉にクラスメイトが笑いながら返す。小学校の時よりも人数が多く、何となくお祭りのようでワクワクしてしまうのだ。


 最初の競技は全員参加の徒競走だ。1年生から順に始まるため、流水たちも小走りになって入場門へと急ぐ。ラジオ体操のゆったりした音楽から、天国と地獄へと切り替わったためについ駆け足になってしまうのだ。

1年生の後ろには2年生が並び始め、押し出されるように1年生が徒競走の位置へ並んだ。各クラス背の順で2人ずつ4名の組み合わせで並んでゆく。

【それでは、全員による徒競走です!みんな頑張れ!!】

 そんなアナウンスが流れ、号砲と共に4名が走り出す。

「いけー!」 「がんばれー!」 「気を付けて―!!」

 父兄たちの声援もありつつ、1年生たちは必死で走る。


パンッ

 号砲の音と共に流水もダッシュだ。足は余り早い方ではない。それでも一生懸命走るのだが、走り始めるとつい笑ってしまう。

「あははは!」

 たまたま運が良かったのか、2位でゴールイン出来た。ビリになることも想定していた流水にとっては快挙だ。2位の旗の前でついぴょんぴょん飛び跳ねてしまう。

 1年生全てが走り終えると、順位の旗前に並んでいた全員が席に戻らされる。篁と環、霧江の姿を目ざとく見つけた流水はピースサインを掲げながら走って自分の席まで戻った。

 その後2年生、3年生と続き、七海が走る番になる。流水は思わず立ち上がってしまう。号砲と共にスタートした姉は、伸びやかに走り抜けていった。圧倒的な速さで1番にテープを切る。

(わ!やっぱりお姉ちゃんはすごい!)

 クラスメイトたちとハイタッチを交わす姉を見ていると、つい頬が緩んでしまうのだ。


「あー!またお姉ちゃん見てる~!敵なのに~!」

 同級生にからかわれ流水はえへへと笑った。

「でもめっちゃ速いね!背も高くてカッコいいというか。確かに自慢したくなるの分かる!」

 そんな風に言われると、嬉しくてくねくねしてしまい、さらにからかわれるのだった。


【さて―次は!大縄跳び!!昨年の記録は19回!今年はこれを破れるか!?】

 学年ごと、クラスごとに分かれた大縄跳び。これは計3回チャレンジして、一番多く飛べた回数が記録される。流水達のクラスもかなり練習してはいたが、7回がベストスコアだった。姉のクラスが11回。そして2年生のクラスがまだ飛び続けている。

「じゅうはちー! じゅうくー! 」

 赤も白も学年も関係なく、父兄も声を揃えてカウントしている。

「にじゅうー!! にじゅういちー!!」

 「頑張れー!」「すごーい!!」 そんな声があちらこちらから上がり、一気に盛り上がった。

「にじゅうにー!! にじゅうさ‥あーーーーーーー!!」

 23回目でとうとう足に引っかかってしまい、大きなどよめきとため息が沸き起こる。


【昨年の記録更新です!2年2組!飛んだ人にも回した人にも惜しみない拍手をお願いします】

アナウンス後、生徒、父兄、先生方、全員から惜しみない拍手が送られた。2年2組も笑顔で手を振ってそれに応える。

「うっわあ!すっごい悔しい!!白組だから敵なんだけど!!30まで行けてたら!!」

 流水のクラスメイトからそんな声も上がった。そういう敵味方関係なく、喜んだり、残念がったり、それが何より嬉しいなと流水は思った。


【さあ!運動会の定番、綱引き!二年生全員参加です!】

 1クラス40名前後で学年2クラス。紅白で分かれ、そこから更に半分に分かれているので、少人数での争いだ。しかし、これはこれで勝負は白熱した。

「いけー!!」 「あ!引きずられちゃった!ケガしてないかな!?」 「頑張れー!!」

 流水も大きな声を張り上げ、ぴょんぴょんジャンプしては、周りの子たちと声援を送る。しかし全部見終わる前には、入場門へと移動しなければならなかった。

 1年生たちはそそくさと移動し、入場門から声援を送る。

【さあ!次は先生同士の綱引きだ!生徒に良い所見せるチャンスですよ!】

 いつもはワンピースにハイヒールな英語の先生も、ジャージにスニーカーで負けまいと必死だ。理科の先生はもうお年なので、ほどほどに頑張って欲しい。

「山田先生がんばれーー!!」 

「さっちゃんせんせーー!!」 

「おじじー腰痛めないでねーーー!!」

「こらーー西!!気合入れろーー!」

 特に3年生からのヤジが多い。流水たちはそんなヤジに大笑いしながら、きゃあきゃあ声援を送るのだった。


【2年生の皆さん、そして先生方お疲れ様でした!さて次は1年生による玉入れです!】

「玉入れ大好きなんだよね~!」

 しかしこの玉入れは少し変則だ。赤組の3年生が竿に取りつけたかごを持つ。白組の3年生も同様だ。グラウンドには大きな円が書かれており、その中で玉拾いをする3年生がそれぞれ3人。かごを持った3年生が逃げ惑う中、紅組は白組のかごに、白組は赤組のかごにそれぞれ玉を投げ入れるのだ。円の中の玉は、玉拾い係がせっせと円の外に放り投げる。

 号砲と共に2人の3年生は円の中を走り回る。そしてその外から1年生が玉を投げ入れる。

「きゃー!」 

「あーーはずしたー!」 

「にげられたーー!」

 1年生たちははしゃぎまわり、笑い声をあげて大騒ぎだ。逃げ惑う3年生も楽しそうに笑っている。

「なにこれ!!超たのしい!!」

 流水も大笑いしながら玉を拾っては投げる。玉拾いの3年生は、敵チームではあるが「頑張れ!」と声を掛けてくれた。

「ありがとーございます!!」

 流水は大きな声でお礼を言い、かごめがけて玉を投げた。


 玉入れは人気競技でもあるらしく、かご持ち係が交代しての3回戦マッチだ。かご係も面白く、ただ走り回る者、止まったかと思うと動き出す者、回り出す者までいる。3年生でもこの係は人気らしい。

「あー!!にげられたーー!!」

 流水も息を切らしながら玉を拾い、必死で投げる。2年生や3年生、父兄たちからも声援と笑い声が上がって3回戦が終わるころには皆、完全に息が上がっていた。

「やっばい!超面白かった!!」 

「私3年生になったらかご係やりたい!!」

 そんな会話をしながら再び入場門へと歩いて行く。そして再び流水たちも参加の競技だ。競技数自体は少なく全員参加が多い。


【次はー台風の目です!1年生から3年生まで!2人1組でぐるぐる回りますよー!回る回数はサイコロ次第!張り切っていきましょう!】

 赤組には赤組の先生が、白組には白組の先生が、スタート地点から50mの所にいる。ロープの両側に結び目があり、二人が端を持って先生の所まで走り、その場でぐるぐる回転して戻り次にロープを渡すゲームだ。

 先生二人がサイコロを振り、サイコロの数だけ回転することになっている。回転数を拡声器で伝えてくれるのだ。

「白4回!」 「赤2回!」

 言われた回数を回り、再びダッシュで戻って来る。回数が少ないためにさほどふらつくこともなく、戻って来た。そうして何組かがスタートした直後


【はーい!ボーナスステージでーす!今からサイコロが2個になりまーす!時間は3分!!】

「白12回!」 

「赤2回!」

 それぞれ6と1のゾロ目が出たために、生徒たちから悲鳴と歓声が上がる。12回まわった白組はへろへろになりながら何とかロープを渡す。

「白4回!」 

「赤11回!」

 今度は赤組がへろへろになる。皆笑い、叫び、声援が飛び交った。流水は幸いにもボーナスステージからは外れ、3回まわっただけで済んだ。それでも少しだけ足はもつれたが、次の人にロープを渡す。

 七海は7回転で、少しよろけつつもクラスメイトと支え合い、笑いながら次へと渡し、茜が4回転でしっかりとした足取りで渡す。遊馬が11回転したのにも関わらず、ダッシュで次へ渡したのは圧巻だった。道明は5回転で、こちらも危なげなく次へと渡した。


【それではここで午前の部は終了となりまーす!目が回った皆さん、お昼を食べてしっかり回復しましょう!】





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