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掌の眼  作者: 瑠璃雀
掌の眼
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楽しい?勉強会! 中間試験とその後

 その後も毎日篁の家に直行し、落ち着いた雰囲気の中勉強に励む。ほぼ毎日のようにさくらが来てくれて傍らで勉強を教えてくれる日が続いた。

 その日はいつもの時間になってもさくらは現れず、鷹也がひょっこりと顔を覗かせる。

「よ。」

 そう言って畳の上に腰を下ろしたところで、七海が思わず尋ねた。

「鷹兄?その手、どうしたの?」

 右手の甲から前腕の半分くらいまで、包帯がきっちりと巻かれている。

「ん?まあ気にするな。ガラスで切っただけ。」

 大したことでもないというように右手をひらひらさせたので、七海は口をつぐんだ。

「‥なぜにガラスで手を切るんだ?」

「‥そこにガラスがあったからだが?」

 道明と鷹也が掛け合いのように言い、他の三人が笑い出す。

「鷹兄‥以前もガラスで切ってなかった?」

 流水が思わず聞くと、鷹也は首を傾げる。

「さあ?まあそんなこともあったかもな?‥これ以上突っ込むとガラスの生成方法をみっちり説明するぞ?ざっと三時間ほど。」

 それを聞いた五人は「余計な知識を増やしている場合じゃない」と、慌てて机に向かう。鷹也は庭をぼうっと眺めている。そして少しずつその周りに妖たちが集まり始めた。

『タカヤー』 

『タカヤあそんでー』 

『なでなでー』 

 一応、勉強している五人のことを気にしているのか、妖たちは小声で鷹也にまとわりつく。ここ最近さくらが来ていたときにも妖は集まっていたがここまでではない。


「鷹兄ー!数学が俺を拒否している!」

 遊馬が教科書と問題集を持ち、鷹也のところに歩いていった。

「これがさー!さくら先生に教わってここまで出来た!こっからホワイトホールが発生してね?」

「ホワイトホールの定義から説明するか?」

「やめて!!おねがい!ええと‥」

 小難しいことを説明されたらかなわんと、遊馬は必死で解きかけの問題について説明する。

「なるほど。そこまではオーケー、ここはね‥」

 鷹也はノートに図を書いて説明する。その手に握られていたのが、今まさに七海と流水が使っている、かわいいネコがくっついたシャープペンシルだった。

 七海と流水はそれに気づき、お互いに笑い合う。ゴールデンウィークでサファリへ行った時のお土産で、三人お揃いにしたものだ。ちなみに七海はハチワレネコ、流水はミケネコ、鷹也はクロネコである。


「あー‥そうか。ちょっとこれで問題解いてみる。」

 遊馬は図を見ながら、問題に真剣だ。その間に今度は道明が数学を聞きに行く。

「ここでさ、こういう解き方を教科書でやってるじゃん?こうでも同じ答えになりそうなのに、違っちゃうのは何でか、どうしても分からなくて。」

 紙にサラサラと問題文と道明の解いた道筋を並べて書く。

「間違い探しだ。さて、どこが変わった?」

「あ!」

 道明は納得して、その下にもう一度解答を書いてみる。

「分かった!ありがと!!」

 嬉しそうに言い、再び机に向かっては問題を解いていった。そうやって入れ替わり立ち替わり質問に行き、理解できたことで喜び勇んで戻って来る。



 そんな勉強会が試験前一週間、毎日のように続けられ、五人は着実に理解度を上げていった。さくらが来る日もあれば、鷹也が来る日もある。教え方はもちろん違うのだが、どちらの先生も分かりやすく、五人にとっては天国のような環境でもあった。不安はある。それでも以前ほどの焦りはなかった。

そうしている間に、瞬く間に中間試験当日を迎えたのである。




 中間試験は2日間で五教科である。試験前日までは毎日篁の屋敷に通っていたが、試験が始まったらあとは家でゆっくりすることにしたのだ。

「今日の数学どうだった?」

 道明が話しかけると、遊馬と茜がホッとしたような笑顔を浮かべた。

「どうしようかと思ってたけど、けっこうイケた気がする!」

「私も絶望的だったのに、意外と解けたと思う!」

 数学苦手な二人組の表情が明るい。七海と道明も明るい表情で互いの健闘を称え合った。明日は理科の試験がある。これは茜と道明が苦手らしく、遊馬が得意である。

「明日も頑張ろうな!!」 

「おー!」

 そんな風に声を掛け合い、帰路についた。


「おねーちゃん!テスト返ってくるのがドッキドキなんだけど、どうしたらいい!?」

 帰宅するなり流水が話しかけてくる。

「うん、ドッキドキのまま、数日間過ごすんだよ~」

「あーもう!いーじーわーるー!」

 姉妹がきゃあきゃあじゃれ合っていると、霧江が笑いながら「お昼の準備出来てるわよ」と声をかけてくれた。

 エビピラフに卵スープ、マカロニサラダと、七海や流水の好物が並べられ、二人は歓声を上げた。今日のテストについて会話をする二人を、穏やかに笑いながら霧江は聞く。

「あ、明日はテスト終わったあと部活なの!」

「私もー!」

 二人が口々に言うので、霧江はにこやかに頷いた。

「じゃあ明日はお弁当用意するわね。」

 元々料理は好きであったが、二人の喜ぶ顔を見たくてついつい力が入ってしまう。

「わーい!霧江さんのお弁当美味しいし、すっごい華やかだから好きー!」

「卵焼きが大好き!いつもありがとうございます!」

 そんなふうに言われ、霧江もつい張り切ってしまうのだった。




 試験も無事に終わり、いつもの日常に戻った。五人とも平均点を大幅に超え、七海は学年二位、道明は四位だった。茜も遊馬も中の上といった結果が出て満足げである。流水も上の中という結果を残せた。

五人はさくらと鷹也を篁の屋敷に招待し、持ち寄ったお菓子とジュースで簡単なお疲れ様会を開いた。先生たちへの労いと、頑張った自分たちへのご褒美でもある。


中間テストが終わった後も様々なイベントが目白押しだ。流水の誕生日もある。今回、さくらに勉強を教わったことがきっかけでメッセージのやりとりもするようになった。

(流水の誕生日プレゼント、さくらちゃん誘ってお買い物いこうかな?)

 元々さくらとは面識もあったのだが、交流自体は少なかった。それがこの勉強会で交流が深まり、お姉ちゃんが出来たみたいで嬉しかったのだ。


 毎年自分の誕生日も、流水がはりきって準備をしてくれるのだ。お姉ちゃんとしては、負けていられない。絶対に流水が喜んでくれるお誕生日にするぞ!と気合も入る。

 

 その前に体育祭。流水の誕生会が終わった後は神楽祭選考。流水は開眼したばかりで、神楽もまだまだ序盤である。年代ごとに選別されるため、蒼介を除く家族全員が選考に参加は出来るのだ。

(神楽も頑張らなきゃ!)

 この先に向けて、七海は気合を入れ直すのだった。


(というか、わたし、気合入れてばっかりだな。)

 そんな自分が可笑しくなり、ついつい笑ってしまいながら、それでも頑張ろうとカレンダーを見てグッと拳を握りしめた。





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