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掌の眼  作者: 瑠璃雀
掌の眼
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水澤家集結 お誕生会と旅立ち

 にぎやかに過ぎていったゴールデンウィークも、気がつけばもう終わりが近づいていた。そしてこの日は、蒼介と雅の誕生日である。二人を祝うため、篁の屋敷で誕生会が開かれることになっていた。

当初は自宅開催の予定だったが、篁と環の意向もあって篁の屋敷でやることになった。ケーキは茜の母である立夏が作る特別ケーキだ。料理は霧江と祖母の環である。

 少し遅めの朝食を終えた後、蒼介と雅は二人で出かけて行った。明日早朝に家を出る蒼介と雅のために、午後二時頃から集まろうという話になっている。

 霧江と七海、流水は一足先に篁の家に行って準備をするのだ。


「こんにちは!」

 七海も流水も、ちょくちょくこの屋敷には来ている。

「いらっしゃい、どうぞ!」

 環に声をかけてもらい、食材を両手に抱えた霧江は早速キッチンに、七海と流水は居間に、それぞれ移動して早速準備に取り掛かる。

「そういえば鷹兄いないね?」

 流水が少し寂しそうに言い、七海も残念そうに頷く。鷹也は大学でバスケ部であるために、ゴールデンウィーク中も練習や試合があるのかもしれない。

 お土産のシャープペンシルを渡せないまま、ゴールデンウィークが終わってしまうのかと思うと、少し寂しい気持ちになったのだ。


 七海と流水が折り紙と和紙を使って簡単な飾りを作る。

『くるくる~!』 『きゃーい!なにこれー!』

 ここは妖も多く、折り紙や和紙に絡まって遊ぶ妖たちにほっこりしながら、二人は作業を進める。

「おとーさんとおかーさんのお誕生会なんだよー!」

 流水がにこにこしながら妖を撫でると、妖たちはきゃっきゃと声を上げた。

『おとーさんとおかーさんー?』 『そーすけとみゃーび!そーすけボクらみえてないネー』

 開眼していなくても気配は感じるそうで、たまに妖たちの気配に振り返ることもあるらしい。ただ撫でたり声を交わしたりが出来ないのだそうだ。


「鷹兄はいないんだよね?」

 思わず七海が聞くと、妖たちは頷いた。

『タカヤあっちのいえー!』 『かえったー!でもまたくるー』 『タカヤくるのまってるー』

 兄は妖達に大人気らしい。七海達の住んでいる家にはほぼ妖はいないのだが、この家には鷹也目当てで集まって来るのだという。

 小学生の頃にもよく作っていた折り紙の鎖や、花、それを作っては壁に飾る。居間には壁掛けテレビと、腰高のキャビネット、テーブルくらいしか置いていない。いたってシンプルな部屋である。天井が非常に高く、七海達の家の1.5倍くらいはありそうだ。

「天井が高いから広く見えるのかな?」 「あーそれはあるかも!」

 純和風の作りであるが、普通の和室よりも引き戸や押入も背が高い。昔、この家を建てた時の当主が非常に高身長であったため、特殊なサイズなのだと聞いたことがあった。


そんなお喋りをしながら飾り付けを終え、キッチンを見に行く。キッチンは非常に広く、フローリングのキッチンと、土間のキッチンが隣接しているのだ。

 二人は環に言われ、食器とカトラリーをせっせと運んでは、テーブルの上に並べていった。



 そして14時、蒼介と雅を玄関に迎えに行った七海と流水は、二人を居間に通す。

「ひょーーーーー!すげーー飾り付けから料理から!!うわーーーー!」

「きゃーーー!お義母様と霧ちゃんの料理――――!」

 ハイテンションは相変わらずだ。写真を撮りたいという二人の希望で、料理を前にしたり飾りを前にしたりと何枚もシャッターを切る。もちろん全員集合写真も忘れない。


「…相変わらずだな、蒼介。元気そうでなによりだが。」

 篁にそう声をかけられ、二人は畳に正座して改めて挨拶をした。ついさっきまで篁や環と腕を組んで写真を撮っていたとは思えないほどの切り替えっぷりである。


「父さん、改めていつも七海と流水、鷹也が世話になっています。」

「私たち不在の中、子供たちを見て下さっていること、心より感謝致します。」

 蒼介と雅が改まって挨拶をし、深々と平伏する。

「改まらんでいいわ。調子が狂うからさっきのままで良い。」

「本当に。でもね、七海も流水も鷹也も、みんないい子達よ。霧江さんもいつもありがとうね。」

 篁と環が挨拶に応じた後、蒼介も雅もフッと肩の力を抜いて笑顔を浮かべた。


「おとーさん、おかーさん、お誕生日おめでとー!」

 流水がそう告げると、主役二人以外の四人が一斉に拍手をした。照れくさそうに笑う蒼介と、雅の姿に篁も柔らかい笑みを浮かべる。

「えっとこれ‥私から」

「これは私から!」

 七海と流水がプレゼントを二人に手渡す。

「きゃーかわいい!!」 

「なにこれ!かわいい!!」

 流水のプレゼントはお手製の羊毛フェルトで作った、マスコットキーホルダーだった。ネコ大好きな流水の意向なのか、黒猫と三毛猫のマスコットである。

「おおお!これもすごいぞ!」  

「わああ!これも素敵!」

 七海が送ったのは、ちょっとオシャレな名入りボールペンである。色違いのお揃いにしたのだ。


「「二人ともありがとう!大切にするわ(よ)!!」」

 二人が完全にハモったので、皆笑ってしまう。そしてケーキを切り分け、料理が取り分けられる。篁は蒼介にビールを、環が雅と霧江にスパークリングワインを注いだ。流水と七海はオレンジジュースだ。篁と環にもそれぞれ蒼介と雅が注ぎ返し、全員がグラスを持つ。

「誕生日おめでとう。二人とも身体に気をつけて、また来年も祝おうぞ。乾杯!」

 それぞれが「乾杯」を言いながらグラスを触れ合わせ、口にする。


 蒼介も父親の前だとやはり少し緊張するらしい。アルコールの力を借りて和やかに話をしているのを見て、環も目を細めていた。

 七海や流水の学校の話になると大人たちは真剣に聞き入り、時に笑い、時に励ます。七海は中学を卒業したのち、都内の高校へと進学することになっている。まだまだ先の話ではあるが、改めてそんな話題にもなり、来年の今頃は東京にいることが想像も出来なかった。

「そっかー来年はおねーちゃん、いないんだ…」

 流水が寂しそうに言い、七海の腕に自分の腕を絡める。昔から流水はお姉ちゃん子で、いつも七海の後を追いかけまわしていた。

「でも長期休みは帰って来るしね!」 

  努めて明るく言い、流水も明るく頷いた。どちらにしてもまだ先の話なのだ。



 夜もまだ浅いうちに四人は帰宅した。順に風呂へ入り、寝る準備を整える。

「七海ちゃん、流水ちゃん、今日は本当にありがとう。」

「本当にありがとうなあ!二人がこんなに良い子に育ってくれて、本当に嬉しいよ!」

 二人は少しばかり涙ぐみながら娘を抱きしめ、頭を撫でる。二人には朝は見送りしなくていいよ、と伝えてあるのだ。

 

 しっかりと別れの挨拶をした後、二人は寝室に入り、娘たちからのプレゼントを開いては嬉しそうに微笑む。キーホルダーを財布につけ、ボールペンをペンケースにしまう。

「またしばらくは帰ってこられなくなるなあ‥」

「私はちょこちょこ帰ってくるけど、少し寂しくなるわね。」

 目覚ましをセットして就寝する。



 翌朝、準備を整えて出ようとしたところで、七海と流水が眠い目をこすりながら見送ってくれた。二人は笑顔で手を振り、霧江の出す車に乗り込む。

「これ、鷹也から二人にって。預かっていたんだけど、七海や流水の前では出さない方がいいかと思って。」

 二人は丁寧に包まれた包装を開け、思わずため息を漏らした。

「ペアウォッチ…俺が海外だから世界時計ついてるのか…」

「これは、素敵ね。」

 しみじみと二人はそれを眺め、さっそく腕につける。


「ねえ、蒼介さん、これ!」

 腕時計の文字盤の裏に記されているのは昨日の西暦と日付、そしてSousuke&Miyabiという二人の名前であった。

「あいつー!くそカッコいいな!何か悔しい!!」

 蒼介もそうは言いながらも嬉しそうだ。二人は笑い合い、腕時計を身につける。霧江もそんな二人を微笑ましく眺めながらつい口元が緩んでしまうのだった。


 こうして、水澤家の賑やかなゴールデンウィークは幕を閉じた。



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