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掌の眼  作者: 瑠璃雀
掌の眼
15/38

1-14 神楽祭選考 1

 今年は3年に一度開催される神楽祭がある。これは各系統・年代毎に複数名が選出され、全員が集う中で舞を披露し、奉納するのが習わしだ。

 普段は無気力そうに見える七海だが、過去に母や兄が選出されていたこともあり、「私も」と静かに意気込んでいる。


 そもそも七海は神楽が好きだ。そしていかに美しく優雅に舞えるのかを考え、それを身体に叩き込み、指先の動き一つにすら細心の注意を払うほどに意識を集中している。


「選考は明後日だっけ?」

 学校からの帰り道、茜にそう声を掛けられた七海は、かすかに頷いた。

「ナナはいいなぁ。すっごく優雅できれいな舞だよねえ。‥私は何かこう上手く舞えなくて‥」

 神楽の「型」というのは、属性ごとに差異がある。茜が属する「火」系は、大胆さや迫力があって七海はそれを見るのも好きだった。


「‥茜ちゃん、もっと自信を持てばいいのに。道明なんてちょっと間違えても堂々としてるじゃん?」

 七海の言葉に茜は、はあああとため息をこぼす。

「道明はさ、本当に堂々とミスるんだよねえ‥それなのに何か統一感があるっていうか。私一回ミスるとそこで一瞬フリーズしちゃってさ。頭真っ白になっちゃう。」

 茜の神楽は火系にしては大胆さが物足りない、とこれは母や祖父母からも言われているらしく、本人も深く悩んでいるのだ。


「お務めの時の神楽はそんなにミスないじゃん?」

 七海がそう言って慰めるが、茜はふるふると首を振った。

「あれはさ!ナナと二人だったり、せいぜい道明が混じるくらいじゃん?ギャラリー増えたら私、口から心臓出るよ?マジで!」

「いやでも口から心臓だしたことないでしょ?そもそも口と心臓つながってないし。」

「あーもーーー!そうだけどそうじゃないっ!」

七海の冷静なツッコミに茜は声を上げ、二人は思わず笑いだした。初夏の緑の中、二人の笑い声が響き合う。


『なんかたのしいことあったー?』 

『ナナもアカも楽しそー』

木の陰からひょっこりと妖達が顔を出し、声を掛けてくる。

「あー神楽祭のことで茜がちょっとナーバスでさ」

妖たちは首をかしげる。

『アカのかぐら、やさしくてすきー』 

『まちがえるのアカらしくていいー』

『ナナのはきれいー』 

『まちがえないねー』

 彼らは嘘をつかない。嘘をつく必要がないからだ。だからこそ素直でストレートな言葉だというのが分かり、茜は軽く笑った。


「間違えるのが私らしいかー。ちょっと悔しいけど、そうかもね。私らしく、でいいんだ。」

 少し気持ちが軽くなったように表情も明るくなった。

『アカは笑ってる方がいい!』 

『囲炉裏の火みたいであったかい!』

「まあ、今時囲炉裏も減ったけどね」

 思わず七海が突っ込むと、妖たちは再び声を上げる。

『ナナのそういうとこ、かわいくないー』 

『タカヤに似てきた?りくつっぽいー!』

 鷹也は七海の兄であり、大学は理系らしい。

「‥いや、あそこまでぶっ飛んでないと思うんだけど‥」

 七海が思わず反論すると、茜が笑い出す。

『だいじょぶーミズサワんとこみんなぶっとんでるー!』 

『ぶっとんでるーー!』

「確かにぶっ飛んでる!」

 妖と茜が楽しそうに言うと、七海は「こらー!」と言いながら皆を追いかける。茜も妖もキャッキャいいながら走り回り、七海もつられて笑ってしまった。


初夏の陽気に移り変わり、木々が競い合うように葉を繁らせる。朝と夜はまだ寒い日もあるが、昼間は長袖だと汗ばむ陽気の日もあるほどだ。青葉の眩しい木々のトンネルの中、にぎやかな声が響き渡り、日差しがキラキラと輝いて、空気までもが明るい雰囲気に染まっていたのだった。




 その日は朝から気持ちの良い快晴で、吹き抜ける風も心地よい。早朝から様々な人たちが社に立入り、慌ただしくも活気のある喧騒であった。

 普段は気怠げな七海ですら、緊張している。


「私は午後からか‥」

 世代・属性がランダムに組み合わされており、共に神楽を舞うのは初めての者ばかりであった。茜や道明、遊馬以外の人と共に舞う機会がないだけに、不安な気持ちの方が強い。

 そもそもなぜ「共に神楽を舞うこと」が重要視されるのか。死んだ者・生きている者の強い負の感情がわだかたまり、澱となったものを浄化するためである。

 想いやその地の特性に応じて、水・火・風・土・日・月の各属性が協力し、深い共鳴を起こすことで浄化の作用が強まる。

 掌に開眼した者たちは、その澱や想いの残滓を「掌の眼」で見通し、解放・浄化する役目を担う。だからこそ、他家との協力や共に神楽を舞い、調和するための訓練にもなる行事なのだ。


「ナナちゃん、珍しく緊張してるの~?」

 のんびりとした声をかけてきたのは、ゴールデンウィーク以来、久々に会う母だった。普段はコンサル業をやっており、あちらこちらを飛び回っているが、ひょっこり顔を出すことも多い。

「うえ、来てたんだ?」

 思わず七海が声をあげると、母は笑いながら指で額をつつく。

「もーつれないわねえ。相変わらずなんだから~」

「ああ、母さん。‥この間ぶり。」

 そこに七海の兄である鷹也がふらっと現れて声をかける。

「あなたもまたそうやってすぐに人を驚かせるんだから!元気そうね?」

 兄の鷹也も大学通学のため、今は少し離れたところに住んでいるらしい。

「まあ見ての通りかな。」

「顔色も良さそうだし、ちゃんとご飯も食べてそうね。」

 七海そっちのけで会話を続ける母と兄に、思わずため息を吐く。

「それより鷹兄、バイトとか部活とかで忙しいんじゃ?お母さんだって仕事忙しいって・・」

 七海の言葉に雅はにこりと笑った。

「ナナちゃんの神楽を見に来たのよ!鷹ちゃんもそうでしょ?」

「ん?そうだね。」

 二人が来てくれたことが嬉しくて、七海はつい笑顔になってしまう。母と兄が見てくれる以上、失敗は出来ない。絶対に選ばれてみせるのだと、静かに闘志を燃やした。


「‥こんにちは」

 背後から声をかけられ、七海は飛び上がった。声をかけてくれたのは月影家の長女さくらである。最近になって色々と交流はしているのだが、前髪で目を覆っているために不意に現れると驚いてしまう。今日は白いワンピース姿であるため、尚更幽霊のように見えるのかもしれない。


「あら!さくらちゃん。お久しぶりねえ、お元気そうで良かったわ!」

「‥はい、おかげさまで。‥あの、曾祖父が久々にお二人にお会いしたいと‥」

 七海に気遣うような雰囲気を見せ、鷹也と雅に声をかける。

「え?尊じーさん?元気になったのか?」

 鷹也の言葉にさくらは頷く。

「先日退院しましてね、お見舞いに来て頂いたのに会えなかったと、残念がってました。」

 鷹也と雅は頷き合い、ちらりと七海を見やった。

「ちょっと行ってくるわね?」

 雅はそう言って鷹也を促すと、七海に背を向けて去って行った。

「‥七海ちゃん、ごめんなさいね。少しだけお二人をお借りします。」

 さくらはぺこりと頭を下げ、しずしずと歩いてゆく。


「さくらちゃん、優しくて好きなんだけど‥やっぱり夜に見かけたら怖いよね‥?」

 茜がぼそりと言うと、七海もそれに同調した。

「前髪、少し整えるだけで印象全然変わると思うのに、もったいないな‥」

一緒に買い物に出かけたとき、一瞬だけ見えた黒い虹彩。そのあと何故か再び隠してしまったが、あのときの印象は強く残っている。

 鷹也と同じ大学で別の専攻であるとは聞いていたが、幼馴染だったというのも初めて聞いたことだった。


「あら?さっきこちらに鷹也様おられませんでした?」

 そう言ってすらりと背の高い女性がつかつかと歩いて来た。きりりとした顔立ちで美人ではあるが、妙に迫力がある。

「‥ええと、鷹兄に何かご用ですか?」

 七海が尋ねると、その女性はキッとこちらを見る。思わずたじろいでしまったのは、余りに視線が強いせいかも知れない。

「鷹兄?‥あなた、鷹也様と仲がいいの?」

「‥私の、兄なので。」

 ぐいぐい来られ、つい腰が引けてしまいながら七海は答えた。

「あら、失礼。私は不知火(しらぬい)(りん)と言います。エリアが違うからなかなか会う機会がなくて、さっきお見かけしたから話したかったの。」

「鷹兄は母と月影の曾祖父様の所へ行ったそうですよ。」

 礼儀正しく茜が答えると、燐は小さく頷いた。

「‥そう。月影か。」

 穏やかな口調なのに、わずかに滲んだ感情が妙に強い。七海と茜は顔を見合わせ、何も言えないままその場に立ち尽くした。


「あなた達も選考会に出るのかしら?お互いに頑張りましょうね?」

 にこやかな言葉とは裏腹に、その眼差しは燃え盛る炎のように激しい。まるで“選ばれるのは私よ!”とでも言っているように思える。射抜かれたら、そのまま燃え上がってしまいそうなほどの熱量に、茜は思わず一歩身を引く。

 燐が足早に去っていくと茜は思わず大きな吐息をついた。


「こわ!何かものすごい目ヂカラ半端ないよ。‥羊の皮を被ったゴジラみたいな?」

 七海の言葉に思わず茜が吹き出し、そのまま咳き込んだ。

「なっナナ!やめて‥」

 笑いが止まらなくなり、呼吸困難に陥りそうになっている。

「羊‥の皮かぶった‥ゴジラ‥‥パワーワードすぎて‥‥」


「すっげー言い回しだなー!でも何か分かるわー」

 辺りをきょろきょろしながら歩いてきたのは遊馬である。このような会合に来るのが初めてであるため、物珍しげだ。


「君が五十嵐遊馬くん?」

 声をかけられて遊馬は振り向いた。

「私は涼風泉州(すずかぜせんしゅう)と言います。遊馬くんのことは聞いてましてね、会ってみたかった。」

 祖父篁よりも更に年上のようにも見える。しかし飄々とした雰囲気のせいか、老人とは言い難い男性である。

「五十嵐遊馬です。‥えっと‥よろしく?」

 泉州は柔らかな笑みをたたえて軽く会釈する。

「はじめまして、水澤七海です。」

「はじめまして、火乃宮茜です。」

 それぞれ自己紹介をしてお辞儀をすると、泉州は柔らかく微笑んだ。

「よろしく。そうか、君たちが同級生なんだね、色々とフォローしてあげて欲しい。遊馬君、君の神楽を楽しみにしているよ!」

 七海と茜は力強く頷き、遊馬は笑顔で頷いた。泉州は満足そうに頷いて、颯爽とした足取りで離れていく。


「もうちょい堅苦しいもんかと思ってたわー。思ったよりも普通ってか、ちょい安心?」

 遊馬が言うと、二人もそれに頷いた。

「なんか怖い人もいたけど、大丈夫、かも?」

 七海の言葉に茜も頷き、その後で少し不安げに声を上げた。

「気にせず頑張ってらっしゃいと言われてたけど‥ご挨拶とかしなくて、いいんだよね?」

 親戚同士であれば見知らぬ顔でも挨拶はするが、一族同士の関わりについての作法は全く分からない。周囲を見ると、大人たちは挨拶を交わしていたり話したりはしている。

「ま、そのうち関わることになってから、挨拶でもすりゃいいんじゃね?」

 遊馬は気楽にそう言い、大きな伸びをした。その様子に七海と茜も肩の力が抜け、三人で雑談をしながら開始を待つことにした。



 一方、七海達と離れた場所では

「道明!ずいぶんと背が伸びたもんだ。いや逞しくなったな!」

 やはり普段会うことのない、土師(はじ)家の当主である(いわお)(77歳)である。土師家は陶芸を生業としており、道明も子供の頃に遊びに行っては、粘土をこねまわしたものだ。道明の父、孝之介に連れられ挨拶に来ていたのである。

「最近は陶芸もやらなくなっちゃいました。また遊びにいったら手ほどきしてもらえますか?」

 道明が嬉しそうに尋ねると、巌も嬉しそうに頷く。

「もちろんだ!待っているぞ!」

 孝之介とも仲は良いのだが、道明も幼い頃から巌に可愛がられていたのだった。そんな巌に今日は成長した自分の神楽を見てもらいたいと気合が入る道明なのだった。


 神楽の順番や、組み合わせはくじ引きである。筆頭三家以外の(ぼう)家での参加者もいる。年代別に壱・弐・参の各世代に分かれており、七海達世代は壱世代だ。

 無論、霧江や雅、鷹也も参加することは出来るのだが、今回は辞退したらしい。雅は「見る方が楽しいから」と言い、鷹也と霧江は神楽祭の準備スタッフで忙しいからだそうだ。



 以前、流水の開眼の儀で使われた社の中にある、30畳ほどの大広間、ここで神楽を舞う。七海達にも馴染みの場所であるのが心強い。

 この神楽殿は広い庭に面していて、木の外廊下と木階段で、庭と行き来が出来るようになっている。普段は締め切られている戸を開放することで、外からも神楽を見られるようになっているのだ。

 裏庭も相当広く、こちらには休憩するためのベンチや軽食が用意されているが、いざ神楽が始まれば、この庭に見物する者が集結するだろう。



 午前中は参世代による神楽であるが、やはり年齢層が高いこともあり品格がある。楽器による音色も深みがあり、同じ楽器を使っているのに響きに重厚感があるのだ。

所謂一般的な神楽と違い、雅楽と神楽の融合といった音色でもある。動きながら楽器を奏でることもあれば、楽器の種類によっては固定位置で演奏し続けることもある。太鼓や琴、笙といった楽器に至っては動きが制限されるためだ。


 武具を手に舞う者たちも、その足運びや緩急が巧みで自然に息合いが出来ているという、七海達とは比較にならない熟練度である。

 系統による型や所作の違いは、単独で見ると不思議に思えるが、全系統が集まると、まるで一つの大きな型のように見えた。普段は精々二人から三人での舞であったため、七海も初めて見るこの神楽に真剣に見入っている。



「うー緊張してきた‥」

 茜が消え入りそうな声で呟く。日差しは温かく汗ばむほどではないが、寒くはない。それなのに指先が冷たく、掌に汗をかいていて、頻りにハンカチで手汗を拭っている。

「‥だいじょうぶ」

 七海はそんな茜の手を握る。茜と手をつなぐことで、自身の緊張感までもが少しずつ緩んでいくような気がする。


「しかし‥やっぱすげぇなあ‥何てーの?ちょい神々しさまであるな?」

 遊馬の言葉に道明も頷く。

「そりゃね、普段から浄化や祓いを実践している人たちだから。俺らとは格が違うよな。」

 小声でそんなことを話しながら、大人たちの神楽に見入る4人だった。

「ていうかさ、型も所作もこれほど洗練されているのに、ここからどうやって選ぶんだろう?」

 道明が思わず呟くが、さすがにこれには誰も答えることが出来ず、顔を見合わせては首を傾げた。自分たちには見えない何かが、選定者である筆頭三家の当主たちには見えるのだろうか?

「えっと‥参世代が三組か。それが終わって次が‥五組、けっこう多いな。俺ら四組だし、今のうちに軽く何か食っておく?」

 道明が時計を見ながら声をかけてきた。奉納神楽は第一節から第五節まである。今回の選考では、第一節から第三節までの、およそ15分を舞う形だ。

「たしかに、ちょっとお腹すいたかも?でも直前じゃ、食べられないよ~ 緊張で」

 そんな茜の言葉に皆が同意する。

「神楽終わってからだと、俺が腹ペコで倒れる!」

 遊馬がそう言って笑ったので、皆、裏庭へと移動することにした。



裏庭では霧江を含めた女性陣が握り飯と味噌汁を準備している。小皿に握り飯が二個、漬物とゆで卵が添えられ、具沢山の味噌汁を受け取って、4人は設置されたベンチに腰掛けた。


「あ、道明のお兄さん、来てないんだ?」

 そういえばと辺りを見回して七海が尋ねる。道明には5歳上の兄がおり、現在は大学生だ。

「あー‥何かレポートとか色々重なって死にそうになってたから‥辞退したっぽいな。」

 道明はそう言って笑った。道明の兄は東京で大学生活を満喫しているらしいが、周りのレベルが高くて追いつくのが大変だと常々こぼしているらしい。

「マジで、“俺、鷹也の爪の垢煎じて飲むと頭良くなるなら迷わず飲むわ!”とか言ってたよ。」

 笑いながら道明が言うと、遊馬が「うえぇ~」と言いながら笑っている。鷹也も独り暮らしで大学生活を送っているが、かなり余裕そうだ。


 このように学校や仕事、諸々の都合により参加を辞退する者も少なくない。それでもこの選考で人が集まらないということはないようだ。義務というわけでもないが、全系統が揃って神楽を舞うという機を逃したくない者もいるのだそうだ。



「ご飯食べたら少し落ち着いたかな?‥みんな何組目?」

 引いたくじを確認したところ、4人はキレイにばらけた。一組目が遊馬、二組目が茜、三組目が道明、最後が七海だった。

「神楽覚えて一番日の浅い俺が最初か~」

 遊馬はそんなことを言っているが、あまり緊張した様子はない。考えてみれば弓道の試合でも注目されればされるほど、口の端にうっすらと笑みを浮かべている。そして的中率も上がる、という強さを遊馬は持っているのだ。

「俺ら第壱世代が24名ってことは、半分が振り落とされるわけか‥」

 道明がフッと息を吐いた。

「で、でも!私たち一番年下だし。‥選ばれなくても、仕方ないよ、ね?」

 茜が余りにも自信なさげなため、七海がふっと笑顔を見せる。

「いつも通りやれば大丈夫だよ。頑張ろう?」

 そんな声に励まされ、再び4人は第弐世代の神楽を見るべく庭へと移動した。



 弐世代も中盤に差し掛かる。やはり参世代と比較すると、所作のばらつきやタイミングのズレがある。音色もさきほどの重厚な音と比較すると、軽くて明るい音色に聞こえるのだ。

「さっきの見ちゃうとなあ。‥俺らこれ以下ってことだよな?」

 遊馬がしみじみと呟く。自分たちより上の世代でも、このような形でズレを生じるのだ。自分たち、第壱世代はこれ以上にズレやばらつきがあるのだろう。

「‥そうだよね。」

 七海がきゅっと唇をかみしめ、選考席を見やった。そこには水澤家当主でもあり、一族の総代を務める祖父の篁がいる。


(私は絶対に失敗できない。完璧な神楽を舞わなければ!)

 緊張感よりも、今は使命感が勝っている。このことを胸に、母や兄に自分の力を見せるのだ。七海達は裏手から神楽殿の控えの間へと向かって行った。





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