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掌の眼  作者: 瑠璃雀
掌の眼
14/32

1-13 流水の誕生日

6月1日、この日は水澤流水、13歳の誕生日だ。両親は仕事で不在のため、祖父母宅で誕生会をしようと計画している。霧江にはもちろん祖父母にも相談済みだ。

 誕生日直前の日曜日、七海は篁の家へと向かった。さくらと連絡を取り合い、プレゼントを買うために、せっかくだからと少し離れた大型ショッピングモールへ行くことにしたのだ。

「こんにちは。今日は宜しくお願いしますね。」

 スカート姿の多いさくらだが、今日はデニムに白のカットソー、淡いピンクのパーカー姿だ。相変わらず前髪で目は隠れている。

「こちらこそ宜しくお願いします!」

 今日は七海もデニムにカットソーだ。シースルーのブラウスを合わせた。お姉さんとのお買い物に、七海はテンションが上がっている。


「んじゃ行くよ。」

 運転席は兄の鷹也だ。後部座席に二人が乗り込むと、車は静かに発進する。

「鷹兄、ありがと。わりと忙しかったんじゃないの?」

 少しだけ不安そうに七海が聞くと、鷹也がルームミラー越しにこちらを見る。

「気にしなくていいよ、本当に忙しけりゃ断るし。」

 サラリと言われ、七海は安心して車窓の景色を眺めた。

「そういえばさ、さくらちゃんと鷹兄わりと仲いいんだ?」

 以前から何となく気になっていたことを口にする。兄はさほど人付き合いに興味がなさそうで、友達と遊びに行くという話も余り聞いたことがない。尤も七海が知らないだけかもしれないが。

「幼馴染ですからね。小さい頃から篁さんのお屋敷で遊んでいたんですよ。」

 さくらにそう言われ、なるほどと思う。恋人同士のような雰囲気もなく、なんとなく自然に会話をしていたのはそのせいだったのか、と七海は納得した。


「それより七海ちゃん、流水ちゃんにはどんなプレゼント考えてます?あ、鷹也さんも何か考えてたりしますか?」

 七海はうーん‥と頭をひねる。正直全く思いつかなくて、さくらと一緒に見て回りたいなと考えていたのだ。

「ああ、それは気にしなくていいよ。」

 鷹也がそう言うと、さくらはにこりと微笑む。

 車を降りると、さっそく二人は店内を回った。

「わーこの服かわいい!」

 七海とさくらはついついあちらこちらへ目が行き、お店を回ってはきゃいきゃいはしゃいだ。

「私も兄しかいないので、かわいい妹が出来たみたいで楽しい!」

 普段は物静かなさくらだが、やはり少しテンションが上がっているようだ。

「私もお姉ちゃんが出来たみたいで、何かすごく楽しい!」

 七海とさくらはお互いに喜び合って笑顔になった。

「流水ちゃんて、お料理とかお菓子作り大好きだったと聞いた気がします。」

「うん。霧江さんとよくクッキーやケーキ焼いたり、料理もしたりしてるよ。」

 さくらは少し考える。


「ケーキ焼くならミトンもあった方がいいし、エプロンとお揃いで可愛いのないかしら?」

 そんな言葉に二人は雑貨屋を見て歩いた。

「このネコちゃんの超かわいい!流水はネコ大好きなの。」

 お腹のポケットから猫がひょっこり顔を出し、エプロンの両脇にはちっちゃな手足に肉球までついていた。

「同じイラストのミトンも!みてみて!お耳ついてて手首にはしっぽもある!」

 七海とさくらは迷うことなくエプロンとミトンを手にする。

「きゃー!ネコの形のクッキー型!ケーキ型まである!絶対喜びそう!」

 二人は周囲を見ながらネコ料理グッズを片端からかごに入れる。全てをプレゼント用に包んでもらい、ニコニコしながら店を出た。


「ちょっとお茶でも飲みませんか?」

 さくらの提案に二人はカフェへと入った。さくらは慣れた様子であるが、七海にとってはまだ経験値が浅い。どぎまぎしながら注文し、生クリームがたっぷり入った飲み物に心が躍る。

「おいしーい!」

 七海は心からの笑顔でストロベリーなんちゃらをストローで啜る。さくらもカップを持ち、右手で前髪の右半分を耳にかけたため、普段見えない片目が現れた。黒目がちな瞳と目が合い、七海はフリーズしてしまう。

「‥あ。」

 さくらは慌てて髪をもどし、何事もなかったようにストローに口をつけた。七海と同じストロベリーなんちゃらだ。


「ふふ!これ、美味しいですね!」

 以前、流水や茜と話していた「さくらちゃん、前髪整えたら超美人?」という疑念が湧き上がる。

「‥あの、さくらちゃんて‥どうして目をかくしてる、の?」

 聞いた瞬間、さくらが硬直した。どうやら聞かれたくなかったことらしく、七海は聞いたことを後悔した。

「あ‥ごめんなさい。ちょっと、ね。」

 さくらは困ったように笑い、言葉を濁した。

「ごめんなさい!初めてさくらちゃんの目を見て、すごいきれいな人って思って!だから‥その‥かくしてるの、もったいないなって!」

 七海が必死になって言うと、さくらはくすくす笑った。

「ありがとう。そんな風に言ってもらえて嬉しい。」


 さくらが笑ってくれたことで七海は安心し、その後は流水がどんな顔をするか、喜んでくれるかで話が盛り上がった。

 再びウインドウショッピングをしていると、さくらがアクセサリー売り場でブレスレットを見ているのに気付く。

「さくらちゃん、ブレスレット好きなの?」

 七海が問いかけると、さくらは少し困ったような表情を浮かべた。

「好きなんですけどね、金属アレルギーで‥なんでもオーケーっていうわけじゃないんですよね‥」

 七海は思い切って店員さんに声をかける。最近は金属アレルギー対応のアクセサリーがあることを、七海も知っていた。そして七海自身も夏に汗をかくとかゆくなってしまうこともあった。店員さんは親切に金属アレルギー対応コーナーを案内してくれ、さくらと七海は二人であれこれとつけてみたのだった。


「迷ったけど、やっぱりこれかしらね。」

 星型のチャームと多面体の球が交互に組み合わさっているブレスレットだ。

「わー!私も買うならこれって思ってたの!ねね、さくらちゃん!私とお揃いで良かったら、プレゼントさせてもらえない?」

 突然の申し出にさくらは驚いたようだ。

「え?‥だめよー!私はアルバイトしてるし、これくらいは‥」

「あのね、今回の中間テスト、すっごい成績が上がってみんな喜んでたの。‥それでさくらちゃんに何かお礼がしたいねって話してたんだ。だからお願い!」

 七海が懸命に訴えると、さくらは困ったように笑った。

「‥ありがとう。それじゃあお言葉に甘えさせて頂いちゃおうかな。みんなの気持ちを断るのも失礼でしょうし。」

 金額的にさほど高くなかったこともあり、さくらはそう言って受け入れてくれた。

 七海がお金を払い、二人はそのまま身につけた。

「やっぱりかわいい。」

 お互いのブレスレットを見せ合いながら、二人はふふっと笑い合った。そのまましばらく、二人はウインドウショッピングを楽しみ、鷹也に迎えに来てもらってその日は解散した。



 流水の誕生日当日、篁の屋敷では霧江と環がせっせと料理を作っていた。流水の大好物は、霧江の作るスパゲティナポリタンである。ウインナーや玉ねぎ、にんじん、マッシュルーム、ピーマンがたっぷり入ったナポリタンは七海の大好物でもある。

 茜の母のケーキ屋で予約していたケーキを受け取り、七海は足取りも軽く篁の屋敷へと入る。

「ケーキ、ありがとう!」

 霧江が受け取り、早速冷蔵庫にしまう。七海は、今日は独りで飾り付けだ。物置から脚立を取り出し、100円均一で買った飾りを壁に取付けた。これも先日さくらと出かけた時に購入したものである。


(こんな時に鷹兄がいてくれたら飾り付けも楽なのに~)

163センチの七海もクラスでは高身長であるが、兄の鷹也はバスケをしているからなのか、確か185センチだと聞いた記憶がある。水澤家は高身長が多く、流水を除くと女性陣は160センチ超え、男性陣は175センチ超えだ。

羨ましいと言われることも多いのだが、少し小さいくらいの方が可愛い気がする。そういえばさくらも七海より少し背が高かった。

(っていうか、さくらちゃん本当に美人だった‥。気にしてたみたいだから聞けなかったけど、絶対前髪整えたらみんな振り返るだろうな‥)

 誰も知らない秘密を知ることが出来たのが、少しだけ嬉しい。


(あ、もしかして鷹兄とさくらちゃんが結婚したら、さくらちゃんが本当にお姉ちゃんになる!?)

 ふとそんなことを考えて、ついにやけてしまう。兄に関しては、何故か祖父の家に住んでいたし、今現在どこの大学に通い、どこで独り暮らししているのかすら曖昧だ。

(だって鷹兄、気がつくと姿消してるし、聞いても色々教えてくれないし。)

 七海が困った時には必ず助けに来てくれるのに、距離を感じて寂しく感じることもあるのだった。


 考え事をしながら飾り付けを完了し、ケーキ用のお皿やフォーク、コップを並べる。

『きょうはエンカイ?』 『だれかくるー?』 『わーい』

 ふと見ると、妖たちが飾りからぶら下がって遊んでいる。

「あーもう!ぶら下がらないのー!」

 七海が注意すると、妖たちはきゃーきゃー言いながら走り回る。妖たちも不思議な存在で、確かに触れている感触もあるし、物にぶら下がって遊んでいるものの、飾りが落下するとか、壊れることはない。

「そういえば食べたり飲んだりはしてるんだよね?」

 実際に飲み物や食べ物は、彼らが食べていると確実に減っているのだ。

『たべてるよー!』 『たまきのごはんうまいー』

 妖たちはそう答えるが、かといって糞害があるとも聞かない。考えてみると不思議な存在だ。

「ごはん食べるとどうなるの?」

 思わず七海が聞いてみると、妖たちは首を傾げる。

『わかんない!』 『しらなーい』 『おいしーだけー』

 ちなみに七海の家には妖はいない。たまに敷地内を通りすがるくらいだ。やはり古い家には多いらしく、道明の家や茜の家には敷地内にも住み着いてるという。篁の屋敷が水澤家の本家でもあり、かなり古い家だけに別格なのだろう。


 七海はタブレットを用意して、座席が映る位置にスタンドごとセットする。無線マイクもテーブルの中央にセットしたので、こちらの会話も拾えるはずだ。これらはもちろん、不在の父、蒼介と母の雅とがテレビ電話で参加するためのものである。

 セッティングが終わると、サラダや箸など運べるものを運び、次々とテーブルに並べていく。


「こんにちは。」

 ひょっこり現れたのは、先日お揃いのブレスレットを買ったさくらだ。

「わ!さくらちゃん来てくれたんだ!?」

 七海の表情がぱあっと明るくなる。自分の手首とお揃いのブレスレットが、さくらの左手首にもあり、それだけで嬉しくなってしまう。

「‥実は鷹也さんが来られなくて。ごめんなさいね。私が代わりに来ることになりました。」

 兄が来られないことを残念に思う七海だったが、さくらが来てくれたのは嬉しい。

「鷹兄は相変わらずだなあ。でも、さくらちゃんが来てくれて良かった!」

 さくらはニコッと微笑み、挨拶をしてくるとキッチンへ向かった。七海も笑顔でそれを見送る。


「こんにちは!すみません、何か急にお邪魔してしまったみたいで。」

 キッチンに行き、忙しそうに働いている霧江と環に声をかける。

「いいのよー!‥で?あの子は何をやらかしたのかしら?」

 環が静かにさくらへ問いかける。

「ええと。ガラスに突っ込んだとのことでして‥頭と肩あたりに被害が‥」

 さくらが困ったように呟くと、霧江は呆れたように笑う。

「今年になって丸々5ヶ月?何度目よ、あの子?」

「‥三回目、ですね。」

 水澤家の男たちはどうにもガラスと相性が悪く、篁も蒼介も鷹也も、よくガラスに突っ込んでいる。何故なのか理由は分からない。ただ共通の天敵なのは間違いない。

「まあでも女の子が多いと華やかでいいわ!せっかくだから楽しんでちょうだいね?」

 環が明るく声をかけてくれ、さくらはにこやかに頭を下げた。

 一族の会合に出かけていた篁が戻り、その後に流水が走ってやってきた。

「ただいまー!あー!さくらちゃん!!」

 流水もにこにこしながら挨拶し、さくらも笑ってそれに答える。そしてそのまま全員が居間に集結し、お誕生会は始まった。


「流水ちゃーーーーーん!!」

「おー!愛しのマイプリンセスーーーー!!」

 もちろんこの声はテレビ電話を通じた雅と蒼介である。雅は国内移動のみのため、子供たちの誕生日には帰ってくることも多いのだが、今回はどうしても都合がつかなかったらしい。


「お父さん!お母さん! 13歳になったよー!!」

 流水がタブレットに向かって両手を振り、両親も負けじと振り返す。そして蒼介が突然バースデーソングを歌い出す。

「はーっぴばーすでいるーみー!」

 そのまま全員がその歌に乗り、流水は嬉しそうに笑っている。歌い終わると全員が拍手し、1と3のろうそくを流水が吹き消した。

「おめでとーーーー!」

 さくらがその様子を動画に取りながら、写真にも収める。これは両親に送るためだから、と鷹也に頼まれて撮っているものだ。きっと後で動画編集をしたうえで二人にデータを送るのだろう。


 霧江が隣の部屋から箱や袋を持ってやって来た。

「これが私から、これがお父さん、これがお母さんからのプレゼントよ。」

 そして七海とさくらが二人で大きな袋を差し出す。

「これ、私と七海ちゃんからです。」

 さらに、さくらがもう一つ小さな箱をテーブルに置いた。

「あと鷹也さんから預かってきました。」

 流水は目をキラキラさせながら一つ一つを大事に開けていく。


 流水は歓声をあげ、貰ったプレゼントをタブレットに見せながら笑顔を振りまいていた。そしてとうとう七海達が買ったプレゼントに手がかかる。幸い誰ともかぶっておらず、七海も安心したのだ。

「わ!かわいい!!エプロンと、ミトン!?わー!ちょうど新しいのを買おうかと思ってたの!クッキー型もネコちゃんあるんだ!?すごーい!!」

 一個一個眺めながら流水は七海とさくらに笑顔を向け、きゃーきゃー大騒ぎだ。

(流水のこういうリアクション、本当に可愛いなあ)

ちょっと羨ましく思いながらも、七海はほっこりするのだった。


 ケーキを食べ、料理を食べる。

「あーん!霧江ちゃんのナポリタンー!私も一口ー!」

 切なげに声を上げる雅に、流水はタブレットの前でナポリタンをしっかりと見せ、くるくると器用に巻いてぱくりと食べる。

「いーやー!流水ちゃんのいじわるううう!」

「俺にもくれーーーー!」

 相変わらず賑やかな両親をからかいながら、流水は楽しそうに笑い、祖父母と霧江も穏やかに見守っている。


「そういえば流水、神楽はもう教わっているの?」

 両親との通話を終え、少し落ち着いたところで七海が切り出した。

「ん?まだちょっとだけ!それよりまだ白衣と袴の履き方が分からなくって!難しいねえ!」

 流水はにこにこしながらナポリタンをもぐもぐしている。

「あー!そうだ!あの何だっけ?上着留めるやつ!お姉ちゃんと同じ、雪の結晶だったよ!」

 開眼の儀の日、七海の留め具をキラキラした瞳で見ていた流水が、スマートフォンを取り出して写真を開いた。

「あ、ほんとだ!この銀の雪の結晶いいよね!私もすごく気に入ってるの!」

 ふたりがきゃいきゃい話していると、さくらもスマートフォンを覗き込んでくる。

「本当に、雪の結晶はきれいねえ。‥私たち月の系譜は銀の勾玉形なんですよね。」

 さくらにも写真を見せてもらい、二人は「きれい」と声を揃える。


「月は銀、日は金とな。月と日は陰と陽、対になると考えられていてな、二つを組み合わせて円となる。そういう意味がこもっているんだよ。」

 篁の言葉に、七海と流水は頷いた。

「水は雫型か雪の結晶、火は炎を、風は渦や羽を、土は結びや樹木というのが基本の形だ。極稀に特注で作ることもあるが、ある程度皆似たような金属細工だな。」

 そういえば、と流水が思い出しながら尋ねる。

「お祖父ちゃんと鷹兄が特注?だよね?お祖父ちゃんが龍で、鷹兄は‥あれって鷹!?」

 七海はそこまで気づいていなかった。やっぱり兄は特別なのかと、羨ましくもあり自分との差を考えて気分が沈み込む。

「ああ、そうだな。‥まあ特注だから何かあるわけでもないが。」

 七海の様子を見た篁が少し言いにくそうなのを、流水は敏感に察知した。

「そっかー!でも私はこの雪の結晶がすっごく気に入ってる!おねーちゃんとお揃いだし!」

 底抜けに明るい妹の声に、七海もつい笑顔になった。

「そうだね!そのうち流水と一緒に神楽が出来るといいな。」

 そんな姉妹の様子を見て、篁と環、霧江が柔らかな表情で笑っている。さくらも笑顔だ。

「みなさん、今日はありがとうございました!プレゼント、大事にします!」

 流水はぺこりとお辞儀をして、再び料理に手を伸ばす。流水も七海もお腹いっぱい食べ、笑い、さくらも一緒になって暖かくもにぎやかな食卓になった。



 解散後、七海に手伝ってもらいプレゼントを持ち帰った流水は、七海が風呂に入っている間に鷹也に電話を掛ける。

「もしもーし!鷹にい!プレゼントありがとー!!」

『ああ、行けなくて悪かったな。』

「で?なにしたの!?またガラス!?テレビ電話もなしってことはービジュアル的にヤバイ!?」

『‥お前はエスパーか。』

 流水は「やっぱり」と言って笑った。

「まあ鷹兄のことだから大丈夫なんだろうけど!ていうか次会ったとき顔変わってたりしないよね!?」

『んなわけあるか。ちょっとだけ頭に被害がね?』

「頭ダイジョーブ!?」

 流水の言い方に鷹也が笑い声をあげる。

『その言い回しは悪意あるだろ‥』

「えへへ!でも良かった、大丈夫そうで。また治ったら家きてね!シフォンケーキ試作中だから!たぶん鷹兄ならお腹壊さないし!毒見してもらう!!」

『あはは、楽しみにしとくよ。』


 そうして電話を切った後、流水は手首の腕時計に視線を落とす。白とピンクの可愛らしいベビーGは、流水が以前から欲しかったものだ。

「本当にもう!心配させないでよね!」

 兄は心配されるのを嫌がっているのを知っている。姉が心配性なのと世話焼きなのを知っているので、わざわざ姉に聞かれないのを見計らってお礼の電話をしたのだ。鷹也の体質について、全く聞かされていない。けれど流水は、昔から何となく一定の距離を取っていた。深く考えているわけはない。ただ自然と、そうしていたのだ。


 部屋にプレゼントを並べ、一つ一つを眺めて笑顔を浮かべる。

「よーし!今年も一年頑張るぞー!‥適当に。」

 流水はそう言って一人明るく笑い、その日はベッドにもぐりこんだ。





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