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掌の眼  作者: 瑠璃雀
別章 水澤家の歩み ー鷹也はいかにして災害ネコになったのかー
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同級生2

 結局、一学期の期末テストも俺はクラス1位にすらなれなかった。クラスでも学年でも2位。俺が悔しがってるせいで、友達が「Mr.セカンド」とか呼びやがるし!マジふざけんな!


 で、夏休み明けの体育、何とバレーボールだったんだよな。これは俺が活躍出来る場面だ!だから俺は朝からワクワクしていたよ。いやもちろん?そんな素振りは出さないけどな!

そして待ちに待った4時間目の体育。サーブレシーブやトスアタック、バレー部の俺と友達がみんなの前でお手本を示す。なんかこういうのいいな!


 で、だ。クラスメートを見回したが、あいつがいねえ。そうだよ、水澤だよ。3時間目までいたはずなんだけどな?

「そういや、水澤いなくね?」

 皆の所に戻ったときに聞いてみたんだ。だけどさ、「あれ?あ、ほんとだ。」みたいなさ、そういう感じなわけよ。分かる?何か誰も関心を持っていない感じで、逆に気になるんだよ!そうしたら、どうやらあいつ早退したらしい。は?体調不良?‥なんだよ!何か不完全燃焼のままその日は終わった。


 そして次の体育の日、この日は試合形式での練習だった。バレー部の友達と俺は別のチームになり、対戦することになった。そして水澤は体育に参加していて、俺とは敵チームだった。俺のスパイクでビビらせてやろう!そんなふうに思ってちょっとワクワクしてたんだ。


 『土門くん、すごいスパイクだね?』

『いやあほら、俺バレー部だしさ、ごめん大丈夫だったか?』

 『当たらないようにコントロールしたんだよね?すごいな。』

『いやそれほどでも・・』

 そんな水澤との脳内会話をしてニヤついたのは内緒だ。まあ、話すきっかけにはなるかなってね。そして始まったバレーの試合。水澤は見た目ヒョロい。身長は俺より少し低いくらい、とはいえ、クラスでは後ろから数えたほうが早いくらいだった。

 体育の授業だからさ、そんなにうまくトスが上がるわけではないけど、それでもチャンスは来た。水澤は前衛だ。よし、真横を抜いてやるぜ!!


 タイミングを合わせて踏み切り、完璧に合わせられたので思い切り腕を振り抜く。完全に決まった――はずだった。

 けれど完璧にブロックされてコートに落とされた。あろうことか水澤に。

「はああああ!?」

 思わず声が出たよね。俺らバレー部のサーブやスパイクなんて、避けるやつすらいるっていうのに。しかも会心の一撃といって良かったよ、今の。

「すげーー!!」

敵チームにいたバレー部友達は、呆然とした直後にやっぱり大声を上げていた。そりゃそうだ、あいつは俺のスパイクをレシーブする気満々で構えてたんだから。ところが水澤は笑顔もなければ、一言もない。ただ「この後どうするんだろう?」みたいな顔をして周囲を窺っている様子だった。


 その後俺は何度かスパイクチャンスがあったよ。でもな!悉く水澤に叩き落とされた!俺、バレー部!!あいつバスケ部!!おかしくね?ってかおかしいだろ!

 得意げになるわけでもなく、ただ淡々と、無表情のまま、ボールが来たからブロックしました。そんな作業のような様子に、俺はがっつり落ち込んだ。



 放課後の部活、俺は盛大なため息をついて練習に入った。結局、水澤と喋ることもないままだ。3年生も引退したからね、俺はバレー部の副部長になっていたんだけどさ。部活で俺のスパイクを完璧に止めるやつ、いないんですけど?

「キョーちゃん、荒れてるなー?」

 隣のバスケ部コートを見ながら友達が話しかけてきた。

「うるせえ!」

「ん?どうしたんだ?キョーちゃん?」

 隣のクラスの部長が話しかけてくる。

「あははは!体育の授業で、こいつのスパイクを全ブロックしたやつがいるんだよ!」

 友達がそう言って笑うと、部長は驚いた顔をした。

「え?いやいや、冗談だろー!?体育の授業なら手え抜いてるもんなあ?まともなトスも上がらないだろうしさ。」

 部長は笑いながら言ってくる。そりゃそう、俺だってそう思うと思う。


「ふらふらっと上がったのが丁度打ちごろだった。タイミングも合わせた。思い切り振り抜いた。‥それなのに完璧ブロックされたんだよ!」

 俺はつい大声を上げてしまった。

「はあああ!?誰だよ!?」

 部長の言葉に、俺と友達が隣のコートの水澤を見た。怪訝そうな顔をしていた部長も、俺らの視線を追って水澤を見ている。

「‥え?マジで?‥いやあいつ、あんまり見かけたことないんだけど。‥転校生、ってわけじゃないよな?」

 その場は「不思議な生態の身体能力バグ野郎」ってことで話を終わらせた。練習に更に打ち込んだよ!二度と止められたくねえしな!!


 とはいえ、その後の体育では水澤が早退していたり、チーム分けの都合で対戦しなかったり、結局その後にあいつにスパイクを打ち込む機会はないまま終わった。

 そして二学期の中間試験も相変わらず俺はクラス二位だ。マジであいつなんなわけ?体育が柔道になった後は、あいつは見学していたし。

 もちろん、話しかけたことはあったよ!俺が話しかけてさ。けど何せ会話が続かねえ。休み時間の度にあいつは独りでどこかに行こうとするし。昼休みもいやしねえ!まるで早く独りになりたいから、会話は早々に打ち切ることにしている、みたいな。

 二学期には職業体験なんてのもあった。もちろんこれも不参加、体育祭や合唱コンクール、行事については全て不参加だ。まるで人との接触を限界まで減らすみたいなさ。


 俺だって必死に努力してるつもりなんだが、今のところ、勉強でも運動でもあいつには勝てない。いやもうめちゃくちゃ悔しかった。そんな中、生徒会が選挙をやるっていうんでさ、友達から推薦されたこともあってね、俺は立候補することにした。

(俺があいつに勝てるものがあるとしたら、人望か?)

 そんなことが頭をよぎったんだよ。で、どうせならトップを狙ってやるぜ!と、生徒会長に立候補したんだよな。クラスメートや同級生はもちろん、部活の先輩や後輩までもが俺を応援してくれた。


 体育館で候補者達が壇上に上がり、スピーチをする。カンペ?そんなの読み上げてたら説得力なんてないだろう?俺はそう思ったね!

 だから原稿は必死で頭をひねり、友達や先生にも相談して、これ以上はないってくらい最高のシナリオを作った。あとはひたすら練習して、中身を覚えたさ。そのうえで、生徒一人ひとりを見るように、ゆっくりと、自信を持って、堂々と話しかけた。

 俺的には、完璧だったと思うぜ?ただな!相変わらずあの野郎は、候補者スピーチの当日不在。あの野郎って決まってるだろ?水澤だよ!

 いや別にあいつに対抗してるつもりはないけどな!ただ、なんかこう中学で俺が在籍した証というか、努力した結果みたいの?爪痕を残したいっていうのかな。そのためだ!


 二学期の終わり、俺は見事に生徒会長の座を勝ち取った!クラスメートは馬鹿騒ぎだったよ!ほんでこの日も水澤は不在。くそ。

 期末試験はこれまで以上に勉強した。教科書丸暗記したんじゃないかってくらい、マジ必死。生徒会長になって、成績学年トップとか!最高だろ!?

 もちろん部活も必死だったさ。レギュラーにはなっていたけど、エースを名乗るには決定率が足りない。筋トレもしたし、走ったし、ジャンプ力も磨いた。お陰で垂直跳びはバレー部でトップになったんだ!


 たまたまトイレで水澤に出くわした。そのときについ話しかけた。

「俺、生徒会長に当選したんだぜ?二学期の期末は絶対に負けねえからな!」

 そう宣言してやった。そしたらあいつ、なんて言ったと思う!?

「そうなのか、おめでとう。‥で、誰?」

 このときの俺の心情をお分かり頂けるだろうか?俺が必死に追いつこうとした相手は、俺のことなどまるで眼中になかった。クラスメートだということすら認識されていなかったという事実に!!そして呆然として立ち尽くす俺に、あいつは首を傾げて、てくてく立ち去っていく。

「くっそーーーーーーーーーー!!」

 トイレで絶叫したわ。


 結局3年では別のクラスになり、俺はクラストップの成績は取り続けた。学年トップになるためにも勉強しまくったっての!

 けれどやはり俺は学年二位のまま。俺は塾にも通ってるんですけど?周りの連中もどこかしら塾には通っていたようだけど、どうやら水澤は塾には行ってないらしい。いや目撃情報がないから、そうだろうっていうだけの話だよ。

 そして俺は無事に高校の進学コースへ、推薦合格を勝ち取った。で、だ。やはり気になるのはあいつだった。地元では一番レベルの高い高校の理数科に、単願で満点合格ですってよ。‥やっぱむかつく!



 高校で上京した後は、相変わらず俺は勉強とバレーを頑張っていた。そんなとき、中学生になったばかりの弟、道明から、こんなメッセージが届いた。

【兄ちゃん、水澤鷹也って人、知ってる?】

 その名前を見た瞬間、俺は色々と思い出したんだよな。大した会話をしたわけじゃないけど、成績のことでマウント取られたこともなかった。何かとにかく、不思議な奴。

 全く、マジで中学時代のあいつは災害だったわ。‥‥道明の同級生の兄貴が、あいつなのか。道明、変な影響受けないといいんだけどな。


 俺は弟が心配になったけど、そのうち帰省したら、あいつとも話してみようかなと思った。



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