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掌の眼  作者: 瑠璃雀
楽しい夏休み!
113/117

動画鑑賞会

 さくらと雅が風呂から上がると、さっそく上映会が始まった。

「本来、1チーム5人でやるバスケを3人でやるんです。3ポイントシュートが2点、普通のシュートが1点。ハーフコートを使ってやります。」

 智樹がそう解説した。

「ほほう、鷹也のチームは司くんと遊馬くん?」

「そうだね、司は高校バスケのレギュラー。あいつは割と器用でさ、どのポジションでも出来るかな。反応もいいし判断も早いからフォワードに置きたいけど。遊馬も面白い。部活経験者ではないけど、だからハマると上手く引っ掻き回してくれる。」

 蒼介に聞かれ鷹也が答える。

「どう考えても俺らの方が有利だったはずなんだよな!!」

 智樹が悔しそうに言うと、智琉と恭平も頷いた。


「え!?何いまの!?」

 蒼介が一度止めたあとにスローで再生する。遊馬が一度走り出した後に方向転換して、逆方向へ走って行ったその時、鷹也が最初に遊馬が走った方向へパスを出したのだ。しかしボールはバウンドした後に方向を変え、再び鷹也の手元に戻っている。

「バックスピンですね。というかお前、遊馬が反対方向行くの分かってたのか?」

 これには智琉が聞いてくる。

「ん?その可能性もあったし、何より智琉が遊馬のマークに走ったろ?だからパスするフリして一度戻した。これでタイミングがずらせるしな。」

 楽しそうに言う鷹也に智樹の眉間にしわが寄った。

「きゃーーー鷹ちゃんカッコいい!!」

 思わず雅が叫んだのは、遊馬から司へのパスを掻っ攫い、ジャンプした司へとパスを渡した時だ。

「味方のパス奪うのはありなのか?」

「まあ、そのまま通したら恭平に取られただろうしね?司は俺が動いたのに気付いて、ジャンプのタイミングをずらしてる。あいつはこういうとこ、よく見てるよなあ。」

 蒼介と鷹也の会話に、双子たちも改めて動画を見て、司が咄嗟にテンポをずらしてジャンプする様子に驚いている。


「司は本当によく見てるんだって。中高共に、1年時からレギュラーだからね?」

 鷹也が嬉しそうに言った。

「マジか。なんかこう、派手さとか目を引くプレイはなかっただろ?」

「そうそう。器用な奴だなって印象はあったけど‥」

 智樹と智琉がそれぞれ言い、再び動画に視線を送る。

「いやしかし、遊馬くんよく動くなあ!このメンツではちびっこ枠なのに!良い所にいる!」

「可愛いわねえ!ちょこちょこ走り回ってて、一番動き回ってるんじゃないかしら?」

 蒼介と雅のいう通り、こうしてみると常に走っているのが良く分かった。


「すげえな。確かにポジショニングがいい。この時のお前の指示ってさ、“気が向いたら指示通りに動け”だったっけか?」

「そっそ。遊馬も司もそれぐらい自由な方が楽しんでくれるし、面白いことやってくれるからさ。」

 恭平と鷹也の会話を聞いて、雅とさくらが笑顔で二人を見つめている。

「うっわ!これ!!この時、間違いなく体勢崩してるだろお前!!」

「あー確かにこれは騙されるな。‥俺でもチャンスと見るだろうね。」

 鷹也が体勢を崩した瞬間に智樹がパスを出したのだが、それもブラフだったらしい。パスを出した瞬間にコースを読んで最短距離を走り、簡単にパスを奪っている。


「で!?この遊馬がバテてるのは、本当なのか!?それともブラフなのか!?」

 後半、遊馬がへろへろになっている様子を眺めながら智樹が詰め寄って来る。

「さあね?けどこれだけ走ってるんだ、バテてもおかしくはないよな?」

ぐぬぬぬといった表情を浮かべる3人に、鷹也はニヤッと笑った。

「フルで動き回らなくていい、疲れたフリでも実際疲れてるでもいい。そうやって上手く休んで、時間いっぱい楽しめよ。と、俺はそう言っただけだ。俺にすら分からないなら、お前らだって分からないだろ?」

 その言葉に智樹が絶句する。

「要するに、敵を欺くためには味方からを実践‥?」

 智琉が呟くと鷹也は頷いた。

「戦略もクソもねえのに戦略になってるのがムカつく!!」

 恭平が悔しそうに声を上げ、智樹と智琉も一緒になって大騒ぎだ。楽しそうに言い合いしている様子を、雅とさくら、蒼介も笑いながら眺めていた。


「これ!!」

 最後に恭平が決めようとしたレイアップを、上から叩き落とされるという場面。

「うっわ‥お前どんだけ跳んでるんだよ。恭平の踏み切り音はカメラ越しでも聞こえるのに、お前、いつのタイミングでジャンプしてるんだ?‥音がないんだよ、お前!!」

 智琉が思わずツッコミを入れる。

「ああ、高く跳ぶのには余計な力入らない方がいいからね。」

 そこに蒼介が入ってくる。

「え!?でも力入れないと跳べなくないです!?」

 智樹が聞くと、蒼介は笑いながら首を振った。

「もちろん反動はつけるんだけど。必要以上につけると、空中でバランス崩すし。そうするとすぐに落ちるしな。」

 鷹也もそれに便乗する。

「身体操作の一貫みたいなものかな。空手にはそういうのないけど。正拳突きも必要以上に大きく振りかぶるとか、無駄に力任せでいったら的を外す。効率の良い力配分がいいんだ。」

 道明が動画を見ながらそう呟いた。


「‥マジか。俺、もしかして柔道続けてたほうが高く跳べるようになったのかなあ‥」

 少しばかり悔しそうに恭平が呟いた。

「そうとも限らないよ。俺達は剣道‥最近久しくやってないけど。実際に活かせているわけじゃないしね。たぶん水澤家がおかしいんだ、うん。」

 智琉がため息混じりに言うと、恭平と道明が笑いながら頷いている。


「七海もいい動きするなあ。」

 その後のミニゲームを見ながら蒼介はそう言って目を細めた。

「ナナちゃん、運動神経いいわよねえ。‥羨ましいわあ。」

 智樹たちや恭平たちも、このミニゲームではかなり動きを抑えている。それでも七海は大学生を相手に一歩も引いていないのだ。

「いや、マジで反応いいし、上手いですよ。シュートもレイアップは普通に出来るし、精度高いですしね。」

 智琉も改めて見ながら感心したように言う。

「けどなあ‥基準というか、目標が高すぎて‥納得いかないみたいだ。同年代女子と比較したら頭一つ余裕で抜けてるのに。」

 悔しそうな、もどかしそうな、そんな表情を浮かべて呟いたのは恭平だ。

「もしかしてさ、勉強でも学年トップだったりするのか?」

 智琉が道明に尋ねると、道明は静かに首を振った。

「クラスにさ、すげー頭いいやついるんだ。ずっと学年トップなんだけど、運動は全然でね。あんまり喋らないし、たまに良く分からないところでキレるんで、ちょっとどう接していいか分からないタイプ。」

 道明の言葉に恭平が即座に反応した。

「うっわ、すっげー分かる!!俺は必死で努力してるのに、どうやっても学年二位のまま!キレるとかそういうのはないけど、あまりというか、全く喋らねえし!でもそいつ運動の方もアホみたいにレベル高いんだよ!なぜか柔道のときは見学だったけどな!!」

 自然と全員の視線が鷹也に集中する。


「‥‥ん?」

 なんでみんな俺を見てるんだろう?と、その表情が物語っている。

「お前のことだ!!バカタレ!!!」

 恭平にツッコまれても目をぱちくりさせているだけの鷹也に、さくらが笑いだしてしまう。そして笑いながらその後の中当て大会の動画を再生し始めた。


「うわ、これめっちゃ面白そう!!俺もやりたかった!!」

 蒼介が超笑顔ではしゃいでいる。

「うふふふ!最初の絵柄を見ると、どう見てもいじめの構図にしか見えないのに。ふふっ!」

 確かに円の外側にずらりと並んだ6人が、ボールを手に何やら悪い顔をして笑っている構図は、いじめと言われても否定出来ない雰囲気だ。

「でも鷹ちゃん、すごーく簡単に避けてるわねえ?意外と難しくないの?」

「「「難しいです!!こいつがおかしいんです!」」」

 雅の疑問に、智樹・智琉・恭平が完全にハモった。蒼介と雅は大笑いしながら画面を見やる。外野が次々に撃破され、一人集中砲火されていたはずの息子がぽつんと立っている。

「「「くっそーーーー!!やっぱりムカつく!!」」」

 三人が合唱したために道明は大笑いだ。鷹也ものんきに動画を眺めており、それがまた兄たちのイライラを募らせている。

 智樹がボールを投げる様子をコマ送りにし、このときに鷹也が何を見てどう反応しているか、蒼介が笑顔で解説してくれた。


「足の向き、肘の角度。うん、少し軸がブレているから右側に流れるね。それと他のボールに合わせようとしたのかな?リリースが少し早い。‥自分の予測より球速が出なかったんじゃないかなあ?」

「マジか‥そこまで見て分かるんですか!?」

「いやぁさすがに6人全員を一度には見れないからな~!普通に投げてくれれば避けることはできそうだなあ。」

 蒼介と智樹の会話を、道明が目を輝かせながら聞いている。その後、それぞれが交代で中心に入り、あっという間に当てられてしまう様子を観戦した。

「‥うわあ。嫌なことやるね、お前!」

 天井まで投げ上げて時間差で落とし、足元へボールを転がす息子に、蒼介は苦笑いだ。

「そうかな?面白そうだっただけなんだけど?」

「「「面白かったのはお前だけだ!!」」」

 被害者たちの声がハモリ、道明が腹を抱えて笑う。もちろん道明は引っかかっていない。


「うん、道明くんはさすがだな!拳を使うという条件を入れたこと、更にそれをきちんと活用していること。空手は段持ちだろう?その年でこれは見事だよ!」

 蒼介のストレートな称賛に道明の顔が真っ赤になった。

「ええと‥二段になりました。」

 蒼介が拍手すると、兄たちも「すげえ!」と拍手を送る。雅とさくらもにこにこしながら拍手をしてくれたため、道明は耳まで真っ赤になっている。

「うっわ!照れてる!‥かわいいなーーーー!!」

 恭平が嬉しそうに笑って弟の頭をぐりぐりと撫で回した。

「ちょ!兄貴!!やめろ!!ってか、結局、鷹兄に潰されたんだけどね!?」

 快進撃を続け、クリアできそうだった道明を阻んだのが鷹也だと聞き、雅と蒼介がじろりと見やる。

「鷹ちゃん?」

「前途ある少年を潰すとか‥」

 両親の視線にも、息子はたじろぐ様子すらない。

「‥つい試したくなったんだよなあ。」

「あははは!俺も楽しかったんでいいんですって!手加減されて勝っても悔しいじゃないですか!」

 鷹也のボヤキに道明がフォローに走る。実際、これも道明の本音だ。

「‥まあその気持も分かるけどね!」

 蒼介がそう言って道明に笑いかけた。雅も素直に引き下がるが、息子にジト目は向けている。


 バレーのブロック合戦で再び恭平が大笑いしながらヒートアップし、つられて皆も笑い転げる。

「うわ、これ俺人のこと言えないわ‥。体育の授業でバレー部に同じことやったなあ‥。」

 蒼介があちゃーと言う顔をし、再び笑い声が起きた。

「とりあえず、こいつ単体の問題ではなく、水澤家の問題だったってことだな‥」

 恭平が呆れたように言ったことで、全員の共通認識に「水澤家やべえ」が刷り込まれた。深夜になっていたが、皆楽しそうに笑い、喋り、賑やかな夜になったのだった。




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