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掌の眼  作者: 瑠璃雀
楽しい夏休み!
103/117

平凡な一日

「おはよう!」

 七海や流水が起きて身支度を整えた後にダイニングへ入ると、既に朝食の準備が整っていた。蒼介が嬉しそうに挨拶をしてくれる。

「おはよー!おとーさん!」

「おはよう。」

 元気いっぱいの流水と、少し気怠げな七海、朝のいつもの情景だ。

「もしかしてお父さんが朝ごはんを作ってくれたの!?」

 今日は雅が会社へ、霧江が編集者との打ち合わせへ、それぞれ朝早くから出かけている。


「お前たちはまだ小さかったからなあ。覚えてないかもしれないけど、俺がご飯作ってたんだぞ?」

 蒼介は言いながらご飯をよそってくれる。ご飯と味噌汁、きゅうりもみ、焼き鮭、納豆と山芋とオクラの和え物、大根の梅干し和えが並んでいた。

「「わー!すごい!いただきまーす!!」」

 パンが好きな流水も、父が作ってくれた朝食が嬉しいようだ。

「えー!この大根と梅干し和えたやつ?すっごい美味しいんだけど!?」

 薄い短冊に切った大根と、環が毎年漬けている自家製の梅干しだ。七海が一口食べてお気に召したらしい。

「わたしはシャケすきー!皮も超美味しいよね!」

 流水も、にこにこしながらシャケとご飯をもぐもぐしている。パリパリに焼いた皮は後でのお楽しみらしい。身だけをきれいに取って食べていた。

 その様子を見て、蒼介が突然笑い出す。


「え?どうしたの?」

 怪訝そうな表情を浮かべた七海に、蒼介は笑いながら教えてくれた。

「あははは!悪い!‥幼稚園でお弁当を持っていくとき‥あははは!“シャケの身はいらないから、皮だけいっぱい入れて!”って。“おかずはシャケの皮だけでいいの!”流水はそう言ってたことを思い出してさ!」

 それを聞いた流水は顔を赤くして、それでも笑っている。

「あー言われてみると‥うわぁ‥お弁当箱空けたらおにぎりとシャケの皮だけ‥」

 想像した流水が笑い出し、七海と蒼介も爆笑してしまう。

「ダメ!!‥想像したらシュールすぎて!!」

 七海が涙を流して笑っているが、そこに蒼介が笑いながら追撃した。

「人のこと言えないぞ!七海!!」

 え?という顔をしてぽかんとする七海に、流水はけらけら笑っている。

「おねえちゃんはなに!?聞きたい!聞きたい!」

「七海はなあ、エビフライのしっぽだ!」

 ぶふーっと流水が笑い、七海も真っ赤になって笑い出す。

「いやー!!そうだ!エビフライのしっぽ‥好きだった。」

 笑いながらそう呟くと、蒼介も一緒になって笑う。


「“お父さん、お弁当箱にね?エビフライのしっぽ、ぎゅうぎゅうに詰めて!”と言われた時にはどうしようかと‥」

 流水も七海も息が出来ないくらいに笑っている。かわいいお弁当箱をパカッと開けた瞬間、かたやおにぎりにシャケの皮、もう片方はエビフライのしっぽだけがみっちりだ。

 想像してしまった蒼介も食事どころではない。余りのシュールさに笑いが止まらなくなっている。七海も流水も同じだ。しばらく笑い声が食卓に響き渡ったのだった。



 賑やかな朝食を終えた後、後片付けをしてからは近所をぶらぶらと散歩する。まだ七海や流水が幼かった頃、共に行った公園を訪れた。

「‥七海は滑り台もブランコも怖がってたっけなあ。」

 懐かしそうに蒼介は目を細めた。その頃の遊具は今も残っており、当時とは違うペンキが塗られていた。

「え?ブランコは好きだったと思うけど?」

 七海の言葉に蒼介は笑顔を向けた。

「好きだったんだけどね?一定以上に揺らすと途端に泣き出したんだ。こわいーーー!!って。逆に流水はもっとーーーー!!って泣いてたな。」

 両極端なリクエストに、蒼介も雅も笑いながら応えていた。

「ね!写真撮ろう!?」

 流水は常に持ち歩いている自撮り棒で、ブランコをバックに三人で写真を撮った。滑り台やベンチでも写真を撮る。


 写真を家族メッセに送り、流水は蒼介に向かって笑いかけた。

「おとーさんが早く帰って来たいー!って思えるように!」

 そう言って父の腕にしがみつく。

「そうだね!お父さんが早く帰って来ますように!」

 七海もそう言って反対側の腕にしがみついた。娘二人に腕を組まれ、鼻の奥がツンとする。

(はー‥パパくさーい!あっち行ってーとか言われなくて良かった‥そんなこと言われたら俺、立ち直れないかもしれない。)

 つい涙目になってしまいそうになりながら、娘二人と仲良く歩く。

「昼ご飯はなに食べたい?」

 蒼介が二人にそう尋ねると、娘たちは顔を見合わせた。

「「やきうどん!!」」

 お互いに少し考えた後、同時に声を上げたことで再び顔を見合わせる。

「え?流水も?」

「え?おねーちゃんも?」


 二人は、あははは!と笑い声をあげた。

「霧江さんがいないときとか、たまにお父さんが作ってくれたんだよね?私、すっごい好きだった!」

「そうそう!お父さんが作ってくれたのがすっごい嬉しくて!」

 蒼介もそんな二人の様子に嬉しそうだ。

「あはは!仕上げに鰹節をふりかけると、二人とも“ねえねえ、かつぶし、生きてる!”って驚いていたっけなあ。」

 まだ七海と流水が小学生のときの話だ。自分が時折、そうやって食事を作っていたことを、娘たちはちゃんと覚えていてくれた。

「そっかー!じゃあ今日は久しぶりに焼うどんにするか!」

 涙ぐみそうになりながら蒼介が言うと、娘二人はきゃっきゃと嬉しそうにはしゃいだ。

「うん!たしかかまぼこ入ってた!」

「キャベツもいっぱい!野菜たっぷりだったよね?」

「目玉焼きが乗ってた!」

「あ、揚げ玉も入ってた気がするの!」


 二人は争うように焼うどんの具材について話しては、互いの記憶を確かめ合う。

「一度、間違えてソース味だったことなかったっけ?」

「あー!あった!!でもあれはあれで美味しかったよね!?」

 娘たちがそんな風に覚えていてくれたことが嬉しくて、蒼介は終始笑顔のままだ。

「そうだな、昼の食材は近くのスーパーで買って、午後は夕食の買い物がてら車で出かけようか?」

 三人は楽しくお喋りしながら、楽しそうにスーパーへと向かった。


 普段、霧江とスーパーに来ることはあるが、蒼介とこうして三人で来るのは新鮮だった。

「あ、このお菓子、まだあったのか!」

 お菓子コーナーで蒼介がつい立ち止まる。

「これは七海が好きだった、こっちは流水だな!‥一緒に買い物に来た時はせがまれて買わされたんだよ。」

 チョコレートコーティングされたお菓子は七海が、サブレは流水が、好んでよく食べていた。無くなると泣かれるので、雅と残りを気にしていたことを思い出す。


「あー!懐かしい!これ、学校の遠足でも持って行ってたなあ。」

 七海がチョコとクッキーが合わさった、戦争のネタにもなる例のお菓子を手に取る。

「私も持って行ってたー!やっぱりこっちだよね!?」

「遠足でおやつの時間になったとき、チョコが溶けて、でっかい塊になっちゃうの!」

「そうそう!」

 娘二人がにこにこしながら手に取り、そっとカゴに落とす。

「マジか~父さんはこっち派なんだよな‥」

 いちごのチョコと普通のチョコが二層になった、三角錐の超ロングセラー商品を手に取る。

「「あー!美味しいよね!」」

 娘二人も好きらしい。蒼介も手に取ってカゴに落とした。


 焼うどんに使うかまぼこやうどんには蒼介なりのこだわりがあるらしい。かごに食材を入れながら、キャベツがないなと呟いて、野菜売り場に行った。

「あ、そういえば‥山での研修?キャンプ?‥鷹兄がね、キャベツ一玉おやつに持ち歩いていて、剥がしては食べてたんだけど‥」

 七海が戸惑ったように言うと流水が笑い出した。

「あー‥あいつ、お菓子は欲しがらなくてね。確かにキャベツ食べてたな‥。あと牛乳。」

 蒼介が首を傾げながら呟くと、七海も笑い出した。

「おやつにキャベツ!?そんな子どもだったの!?」

 流水が笑いながら聞くと、蒼介も笑いながら頷いた。

「あいつ、爺ちゃんの家にいただろ?お菓子持って行っても全然食べなくてさ。プリンくらいかな‥喜んでたの。牛乳かんとか豆カンとか葛切りとか、子供の頃から好きなものが渋いんだよ!」

 妹たちは爆笑している。


「あれ?実はケーキそんなに好きじゃないのかな?」

 ふと呟いたのは流水だ。時折、試作品を持っていくと喜んでくれていたのだが。

「流水が作ってくれたからじゃないかな?嫌いなわけじゃないからね。‥ただ、誕生日のケーキとか、立夏ちゃんの所のケーキ以外は食べなかったなあ。」

 たまたま定休日だったために、別のケーキ屋で買ったケーキは、一口二口食べた後、手をつけなかった。

「何か、生クリームが重い‥とか。あははは!意外とあいつ好みがはっきりしてるんだよ。」

 兄の妙なグルメっぷりに妹たちは笑い続けている。

「確かに、立夏さんのところのケーキ、生クリームがあっさりしてる!鷹兄、わりと面倒くさい!」

 言いながら流水は笑い続けていた。


(‥今度、近所の和菓子屋さんで豆かん買おうかな。)

 七海がそんなことを考えていると、蒼介がニヤッと笑った。

「ああ、近所の和菓子屋だったら葛切りにしておけよ?あそこの葛切り好きだから。豆カンはイマイチらしいぞ?」

 図星を刺されて動揺した七海に、蒼介は笑ってしまう。

「そっそんなんじゃないし‥」

「いいじゃん、おねーちゃん!鷹兄ホイホイ仕掛けないと、きっとなかなか来てくれないから!後で買いに行こうよ!」

 流水が笑いながらそう言ってくれたので、七海もようやく笑顔になって頷いた。



 帰宅したあと、蒼介がキッチンに入ると、流水も一緒になって準備を手伝った。

「わーい!お父さんとの合作!なんかすっごい嬉しい!!」

 無邪気に笑う流水に、蒼介もついつられて笑ってしまう。

「七海!キャベツ剥くのと、玉ねぎの皮剥くの、手伝ってくれないか?」

 料理が苦手と尻込みしながらも、一緒にやりたそうな七海に、蒼介は笑顔で声をかけた。

「うん!」

 嬉しそうに小走りに近づいてくる娘に、蒼介は終始デレデレだ。


「‥やっぱりさ、料理くらい出来ないとダメ、だよね?」

 不安そうな七海に、蒼介は笑顔を向ける。

「ミヤちゃんが料理をすると災害になるからなあ。でも俺は、そんなミヤちゃんを可愛いと思ってるよ。」

 突然惚気られ、娘二人は大いに照れた。普段から仲は良いが、母がいないときにも愚痴をこぼすことなく、嬉しそうに話す父が眩しい。

「それにな料理は苦手かもしれないけど、掃除や片付けが得意だったし。いいんじゃないか?苦手なものがあったとしても、協力すればいいんだよ。」

 蒼介はそう言って穏やかに笑った。

「うー‥私、料理は好きだし、得意かもしれないけど、片付け苦手だ~!」

 部屋の中がついごちゃごちゃっとしてしまう流水がそう零す。

「私はお母さんと一緒かなあ。掃除とか片付けは好きだけど、料理は災害‥」

 七海がそう呟いたあと、流水と顔を見合わせて笑った。


「こうして料理しているとさ、ゴミとか洗い物が出るだろう?」

 ビニールゴミや野菜のくずが出ていたり、使ったボウルが流しに置いてある様子を、蒼介が七海に見せる。

「うん。」

「こういうのをね、こまめに捨ててくれたり、洗ってくれるだけで助かるんだよ。」

 七海は「そうなんだ」と頷いた。確かにその程度のことなら自分でも役に立てそうだ。笑顔で頷き、邪魔にならないように気をつけながらこまめに片付けていく。



 そんなふうに三人でキッチンに立ち、みんなで作った焼うどんが出来上がった。

「「「いただきまーす!!」」」

 踊る鰹節を見ながらつい笑ってしまう。

「「おいしーい!!」」

 確かに小学生の頃に食べたあの焼うどんだ。七海と流水は顔を見合わせ、にっこり笑いながら食べる。懐かしくて優しい味を堪能したのだった。



午後は蒼介の宣言通り、買い物に行った。

「夕飯はね、俺一人で作りたいんだ。自炊も慣れてきたからさ、その集大成でミヤちゃんと霧ちゃんに味見して欲しいんだよ。二人は何か食べたいものはあるかい?」

 運転しながら後部座席に座っている二人の娘に声をかける。

「えー!どうしよう!お父さんは何を作ってくれるの!?」

「洋食?和食?」

 二人が身を乗り出して話しかけてくれる。

「やっぱり海外にいるとさ、本当に和食が恋しくてね?和風ハンバーグときんぴら、あーでも肉じゃがも食べたいなあ!」

「「和風ハンバーグ!!大根おろしたっぷりの大好き!!」」

 七海と流水が完全にハモったので、蒼介もつい笑ってしまう。

「おみそ汁はねえ、お豆腐が好きなの!」

「えーそれならなめこも入れて欲しい!」

 そんなリクエストを聞きつつ、三人はショッピングモールへと入った。


「夕飯の買い物の前にさ、二人は欲しい服とか靴とか、ないのか?」

「「ええー!?いいの!?」」

 娘たちは大はしゃぎでショップを歩き回る。あちらこちらに立ち寄っては楽しそうにお喋りし、互いに似合いそうな服を当てては笑い合う。

 七海は深い青、流水は明るい水色が好きらしい。

「流水、このピンクのカットソー似合いそう!っていうか似合う!!超かわいい!!」

「ええー!?ホントに?ねえねえお父さん、どうかなあ?」

 姉妹で話し合い、蒼介にも確認してくる。

「いやぁ‥二人ともセンスいいなあ。かわいいよ!」

 蒼介も言葉を変えつつ、娘たちを褒めまくった。こういうときは意見を言うより、ただただ褒めるほうがいいらしいことを経験上知っている。

「おねーちゃん、このブラウスかわいい!こっちのキャミと合わせたらすっごい似合いそう!」

「わ!ホントだ!‥どう?」

「やっぱり似合うー!」

 娘たちの勢いは止まらない。蒼介は少しばかり苦笑いを浮かべながら、そんなショッピングを穏やかに眺めるのだった。



 娘たちのショッピングに付き合い、夕飯の食材を買い終えて帰宅すると夕方になってしまった。

(いやぁ‥女の子の買い物ってパワフルだなぁ‥普通に歩くより疲れる。)

 元気一杯の娘たちとは対象的に、蒼介は少し疲れた様子でキッチンに立つ。

「本当にお手伝いしなくていいの?」

 流水の申し出を断り、蒼介は笑顔で頷いて調理を開始した。七海と流水はリビングのテレビでサブスクの映画を見ることにしたらしい。最近流行っているアニメの、少し前の劇場版だそうだ。


 リビングで娘たちが寛ぎながらお喋りをして、こうして自分がキッチンに立つのは何年ぶりだろうか。高校になったら七海は家を離れてしまう。もしかしたら大学や就職先も都内を選ぶかもしれない。

(今だけの楽しみなのかもしれないな‥)

 元気に育ってくれたのは嬉しいが、少しだけ寂しい気持ちもある。いずれは結婚して家を出ていくことを考えると、やはり複雑な気分だった。

 蒼介はささやかな、この平和な時間を楽しみながら、手際良く料理を進めていく。


 ハンバーグの仕込みを終え、肉じゃがも作った。きんぴらごぼうも我ながら細く切れたと思う。急に食べたくなった、ほうれん草の胡麻和えも作って冷蔵庫で冷やしてある。

 スマホのメッセを見ると、霧江と雅は一緒に帰宅するらしい。米も良いタイミングで炊き上がる予定だ。

(そろそろハンバーグを焼き始めてもいいかな。大根おろしも用意しないと!)

 使ったザルやボウル、菜箸を洗っては拭いてしまっているので、キッチンは片付いている。娘たちが見ているアニメもどうやら佳境を過ぎて終盤らしい。

 熱したフライパンにハンバーグを乗せて焼き始めると、ジューッという音と、肉の焼ける匂いが部屋中に広がる。

「お腹空いてきたー!!」

「ハンバーグだーー!!」

 きゃあきゃあ笑い合う娘たちに、蒼介は嬉しそうに目を細めた。



 雅と霧江が帰宅する頃、ちょうど夕飯が出来上がった。

「わあああ!いい匂いーー!!」

「帰ってきてご飯があるって幸せねえ!!」

 二人はそう言って笑い合い、支度を済ませて食卓につく。既に食器やおかずが食卓に並び、蒼介がハンバーグを皿に盛り付けをして運んでくれる。


「ああああ!和風ハンバーグに焼きナスの付け合せ!どうしましょう!!どうしたらいい!?」

 雅が感激の余りに声を上げると、霧江も笑ってしまう。

「美味しく食べたらいいと思うわよ?」

 娘二人も笑いながらごはんをよそっては運んでくれる。味噌汁も配膳し、全員が席に座った。

「「「「いただきまーす!!」」」」

 元気良く食べ始めた流水が、幸せそうにハンバーグを噛みしめている。

「あーーー幸せーーー!!」

「お父さん、きんぴら超美味しい!!」

 七海は最初にきんぴらごぼうに箸を伸ばしていた。そういえば、ご飯ときんぴらを海苔で巻いて食べるのが好きだったな、と蒼介の頬が緩む。


「蒼介さん!焼きなすとハンバーグと、きんぴらと肉じゃがとーーー全部美味しいのーー!!」

 雅も幸せそうに笑っていて、そんな妻を見た蒼介も笑ってしまう。

「肉じゃがはコンソメ使っているのね?これも美味しい!」

 霧江が感心したように呟くと、蒼介は笑った。

「いやあ向こうでさ、肉じゃが食べたくなったんだよ。しょうゆもみりんも出汁も切らせちゃってね。まあ向こうではコンソメというかブイヨンかな?で作ってみたらなかなか美味かったんだ!悪くないだろ?」

 和風だしが見つからなかったらしく、醤油やみりんが高価だと聞いて七海も流水も驚いた。


「筑前煮が食いたくなってさ、和食材の店に行ったんだけどね、ごぼうも里芋もれんこんもタケノコもないんだよ!そしてシラタキ、お前もかー!ってつい叫んだよね。」

 それを聞いて霧江も大笑いしている。

「私も久しぶりに帰国した後は、和食ばっかり食べてたわ!何より最初に食べたのが、納豆と卵かけごはん!!」

「それな!!」

 霧江と蒼介が意気投合したことで、海外の食事の話で盛り上がる。七海や流水、雅も興味津々だ。春休みに蒼介の赴任先へ旅行する話も改めて持ち上がる。

 

 三泊五日と聞いて驚いた七海と流水だったが、移動時間と時差を聞いて納得した。

(高校入学前に家族で海外旅行出来るんだ‥)

 七海は初めての海外に不安がありながらも、家族全員で旅行出来ることが嬉しい。流水も目をキラキラさせており、期待のこもった眼差しで蒼介を見やる。


「これは!頑張ってスケジュールを組まないといけないな!」

 流水の修了式や七海の高校準備で慌ただしくなりそうだが、雅も霧江も協力を約束してくれた。

「「やったー!!」」

 楽しい食卓を囲み、楽しい予定を語り合う。そんな平凡な一日に、蒼介は改めて幸せを噛みしめたのだった。





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