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掌の眼  作者: 瑠璃雀
楽しい夏休み!
101/120

カラオケ紅白歌合戦

 テニスで散々遊んだ後、再び再集合した七海達は恭平の運転によりカラオケに来ていた。

「よーし!!まずは紅白分けだ!!」

 蒼介のかけ声でグーパーが始まり、二回目で組み分けが決定した。

「これは‥」

「世代で分かれましたね‥」

 七海・流水・恭平チームが赤組、蒼介・雅・霧江が白組に分かれた。

「はっはーー!!まずは恭平君、俺と勝負だ!!」

 まずは採点を入れ、さっそく蒼介が一曲目を歌い出す。


「お父さんうま!!」

「きゃー蒼介さーん!!」

 七海と雅が大はしゃぎだ!タンバリンにマラカス、スタンドマイクまで借りて、準備は万端である。流水はマラカスを持ちながら即席ダンスまで披露していた。

 柔らかい高音が特色のアーティスト曲を、蒼介はほぼ完璧に歌いこなした。

「さーて点数はーーーーーー!!」

 流水がタンバリンを振って更に効果音を追加する。

「おおー!92点だ!!すごい!!」

 拍手喝さいを浴び、蒼介は両手を上げて歓声にこたえる。


「じゃー次は俺だね!!」

 こちらも迫力ある高音が特色の、大御所ともいえるロックミュージシャン。もちろん全員が知っている曲だ。歌い始めた瞬間に拍手が沸き起こる。

「えええー!?うま!!」

「ていうか、声似てない!?カッコいいーーーーー!!」

 七海と流水が思わず声を上げてしまいながら、マラカスとタンバリンでリズムを刻む。サビではマイクスタンドを持ち、更にボルテージが上がる。

「うわあああ!これは強敵だな!!」

「本当!すごくカッコいい!!」

「圧巻ですね!」

 蒼介・雅・霧江までもが大絶賛で手拍子を取り続ける。

「さーて点数はーーーーーーー!!」

 やはり蒼介も気になるらしい。ディスプレイ画面に釘付けだ!そして!

「93点!!おおおお!!」

 七海達世代全員がハイタッチで喜び合う。


「じゃあ、次は私!」

 霧江は有名な洋画のメインテーマだ。

「うわ、洋楽!?」

 思わず恭平が声を上げ、七海と流水もイントロを聞いて「あ!あの映画の曲だ!」と分かったらしい。最初は語りかけるような静かで細く高い曲調。

「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」」

 初っ端で全員が引き込まれた!そこから中音域の迫力あるボイスへと切り替わる。

「うわ‥マジか‥これはトリハダだわ‥」

 恭平が呆然と呟き、聴き入っている。

「霧江さんすご!!」

「‥霧江さん、こんなに歌上手かったの!?」

 七海と流水も初めて聞く歌声にマラカスとタンバリンの存在すら忘れていた。唖然としたまま歌い終え、採点に入る。

「96点!?まじでえええええ!?」

 照れ臭そうに笑う霧江に、全員が拍手喝さいだ!


「待って!!この後に歌う私、めちゃくちゃプレッシャーなんですけど!?」

 七海は言いながら立ち上がりマイクを手にした。これも誰もが知っている大ヒットしたアニメソングだ。そして自信なさげに見えた七海の表情が一変した。

「うわ!」

 思わず声を上げたのは蒼介だ。やはり上手い人はイントロから引き込まれる。高音と低音を自在に行き来し、アップテンポも難なくクリアする。しゃくりやフォール、ビブラートまで駆使する技術力が凄い。

「ナナちゃん上手いわねえ‥」

 しみじみと雅が呟き、霧江も頷いた。少しハスキーがかった高音は、耳に心地よい。

「そして高けえ‥」

 男子には出せない高音域に、恭平も聴き入ってしまう。たまに大学生仲間とカラオケは行くし、女子もいるのだが、声の質が違う。

(これこそが透き通る声ってやつ!?いや、七海ちゃん、高スペックすぎん!?)

 歌い終えた後に再び拍手喝さいが起き、七海は顔を赤くしてぺこりとお辞儀をした。


「うわ!!94点!マジかよ!‥ちょ、何でこんなにレベル高いんだよ!!」

 思わず恭平が声を上げてしまうのも納得だ。これまで80点台がいない。そして雅がにこにこしながら立ち上がり、マイクスタンドに手を置いた。

「‥へ?この曲って‥ヘヴィメタ‥」

 恭平が呟いた直後、デスボイスが室内に響き渡った。

「えええええええええええ!?」

「え?お母さん!?」

「‥は?え?‥ミヤちゃん‥?」

「ちょっと待って!理解が追い付かない!!」

 ゆるふわ系代表のおっとりした雰囲気の雅から出ている声とは思えない。蒼介ですら呆然としており、固まっている。そしてこれまた凄まじく上手い。マイクスタンドを掴んで絶叫まで披露する。

 もちろん姉の趣味を知っている霧江だけが涼しい顔だ。


「はーーー!久々に思い切り歌ったらスッキリしたわーー!」

 98点後半という高得点を叩き出した雅は満足そうに笑っている。いつものゆるふわ系の微笑みだ。流水もまだ自分の曲を入れないまま固まっている。


「ええと‥ミヤちゃん?‥その、俺もミヤちゃんがこういう系の音楽好きと知らなかったんだけど‥?」

 蒼介が恐る恐る尋ねると、雅はくりっと可愛く首を傾げた。

「そういえば高校の時、ライブ帰りに蒼介さんに会っても、気づいてもらえなかったのよね‥」

「は!?えええええ!?何で!?俺がミヤちゃんをシカト!?」

 そんな夫婦の会話に霧江が笑い出した。

「そりゃそうよ!完全にV系パンクのメイクと服装してたら、気づかれないわよ!」

「はいいいいいいい!?」

 笑いながら話した霧江に蒼介は驚きっぱなしだ。

「もー!高校の学園祭のときにも、ライブやっていたのに~!蒼介さん、見に来てくれたけど、手を振っても気づいてくれなくって。」

「いやあれさ!俺学園祭のライブ全部見てたんだよ!?結局分からなかったんだけど、ジャンルもこういう系だったの!?」

 雅がスマートフォンに保存している写真を見せてくれ、全員がそれをのぞき込む。


「「「「うっそーーーーーー!!」」」」

 蒼介・七海・流水・恭平の叫び声が響き渡った。

「あ、その髪はウィッグよ?先生がうるさくって‥」

 金髪にピンクのメッシュが入った髪を逆立て、バッチリメイクを施した姿と、今の雅の姿は全くの別人である。

「‥ミヤちゃん‥こんな‥こんな格好でライブ‥」

 蒼介がスマホを見ながらわなわな震えている。さすがにショックが大きすぎるのでは?と、七海と流水が心配になるほどだ。


「なんで俺は知らなかったんだー!!くっそー!全部見たかったーーーーー!!」

 蒼介の魂の叫びに、恭平が爆笑したのは言うまでもない。

「ごめんなさいね?わたし、蒼介さんに言ってたつもりだったのに。」

「じゃあ今後もカラオケ大会やろうな!!ミヤちゃんの歌もっと聞くーーー!!」

 両親の熱々っぷりに、どう反応して良いのか分からず困惑する子供たちに霧江がため息をついた。

「蒼介さんも、姉さんも、そういうの後にしてくれる?全く、反応に困るでしょ!」

 霧江の一言で二人は静かになり、七海と流水は「あははは」と乾いた笑いを漏らすのだった。


「いやーでも、ボーカルやってたとかすげえな!蒼介さんも上手いから、そりゃ七海ちゃんや流水ちゃんも上手いわけだ!」

 さすが空気を読む男、恭平である。

「えー‥私まだ歌ってないしー!」

 ようやく落ち着いた、と、流水がリモコンを操作して曲を予約した。

「待って?流水ちゃん?‥今のボカロだよね!?クッソ早くてクッソ高い曲じゃないのあれ!?」

 流水はひょいっと立ち上がり、マイクスタンドの高さを調整する。

「えへへー!こういうのだいすきなんだー!!」


 そして曲が始まった瞬間、全員の時が止まった。流水は細く高い声を駆使し、しっかりと振り付けまで再現しながら歌う。

「‥マジか‥」

 姉の七海とはまた違う声質で、テンポも振り付けも完璧だ。とにかく速い。それなのに歌詞も完璧にメロディーラインに乗せている。

「普通に喋るときはしょっちゅう噛むのに、なんでこの曲で噛まないわけ!?」

 七海が至極まっとうなツッコミを入れ、霧江や蒼介、雅までがうんうん頷いている。流水はパチリとウインクしながら振り付けに夢中だ。どうやら楽しくて仕方がないらしい。


「はーーー!!楽しかったーー!!」

 完璧に歌い切ったその点数は、これもまた95点である。

「流水すごい!!ていうか、どうしてボカロで歌えちゃうわけ!?一番高い音なんてもう超音波だったよ!?」

 七海も初めて聞いたらしく、ただただ驚いていた。

「普通に喋ると噛んじゃうんだよねえ。あ!リズムに乗って話せば噛まないのかも!?」

「やめてちょうだい‥毎日そのピーピーやかんな音は私が困るわ!」

 流水の発言に霧江が笑いながら突っ込み、“ピーピーやかん”に七海と恭平が反応する。


「これか!!」

 動画でピーピーやかん、笛吹やかんというのを見つけた恭平がさっそく再生した。

「あはははははは!!」

「ちょ!なにこれ!!なんでヤカンでこんな音するの!?」

「え!?私こんな声!?」

 若者三人がピーピーヤカンの動画に大うけしていると、年長組は固まった。

「‥このヤカンの存在を知らない‥ですって?」

「ジェネレーションギャップ‥」

「マジか‥そういやオブラートも知らなかったし‥」

 ダメージを受けたらしく、少しばかりどんよりとした空気が流れたのだった。



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