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お花のラナァは今日も幸せ  作者: 葉月双
2章

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14話 コーデリア、照れる


 コーデリアとリュートが砂漠で対峙しているのを、シエルたちはグラウンドで見ていた。

 グラウンドの宙には、仮想世界を映した大きな映像が浮かんでいる。


「コーデリア様、何もしてないのに辛そうです」とアデリタ。


 シエルたちはグラウンドに直に座っている。

 シエルの右隣にアデリタ、左隣にヘルト。


「暑いだろうからね」とヘルト。

「リュートは平気そう」とシエル。


「来いよコーデリア。俺がお前を受け止めてやる」


 リュートはニヤッと笑いながら言った。

 仮想世界での会話も、こちらに全部聞こえるのだ。

 コーデリアの頬が真っ赤に染まる。


「俺が勝ったらデートしてくれよ」

「い、いやですわ!」


 叫びながら、コーデリアが【ファイアーボール】を放つ。

 リュートは特に動かないが、リュートの前に白い【盾】が出現。

 コーデリアの【ファイアーボール】は盾に当たって霧散。


「リュートの属性は槍盾」ヘルトが言う。「実に傭兵らしいよ」


「はい」アデリタが頷く。「攻守のバランスがいいです」


「これなら!? どうですの!?」


 コーデリアが右手を下から上へと勢いよく動かす。

 そうすると、リュートの足下から火柱が立ち上る。

 しかしリュートは飛び退いてその火柱を躱す。


「ほらコーデリア、避けねぇと胸に穴が空くぜ!?」


 リュートは槍を1本作って、コーデリアに向けて投げた。


「ひゃぁぁぁ!」


 コーデリアが慌てて飛び退く。

 その時に足を挫いて、コーデリアが倒れ込む。


「あちゃー……」


 シエルが苦い表情を浮かべた。


「大丈夫かコーデリア」リュートが駆け寄る。「ほら、掴まれ」


 リュートが右手を差し出して、コーデリアがその手を掴んで立ち上がろうとしたが、足の痛みで立てなかった。


「仕方ねぇな」


 リュートはヒョイとコーデリアをお姫様抱っこ。

 グラウンドで歓声が上がる。

 一部、「羨ましい、死ね」とか「爆発しろ、燃えろ」という発言もあった。

 コーデリアは学園でも人気の女子だし、何気にリュートも人気者である。


「あわわ、お姫様抱っこだ」


 シエルは頬を染めて、両手を自分の口に当てていた。


「ちょ、何を……」


 コーデリアは顔を真っ赤にして瞳を潤ませている。


「降参してくれると、俺もありがたいんだけど?」とリュート。


「……分かりましたわ。降参しますわ。ですから先生、早く外に出してくださいませ!」

「俺はしばらくこのままでもいいけどな?」

「嫌ですわ! ここ砂漠ですわよ!? もっとムードのある……モニョモニョ」


 最後の方、コーデリアが何を言ったのか誰にも分からなかった。


「えー、若者のアレですねぇ」ローラが言う。「とりあえずリュート君の勝ちです。はい、2人とも戻りましょうねー。戻れば足の痛みも消えますから」


 リュートとコーデリアの身体が光の粒子に変わって、弾けるように消える。


「さて、次は僕の試合だから、行ってくるよ」


 ヘルトが立ち上がって、微笑みを浮かべつつ言った。


「はい。頑張ってください」


 アデリタが両手を握ってガッツポーズ。


「頑張って」


 シエルも一応、応援しておく。

 しばらくするとコーデリアがやってきて、さっきまでヘルトが座っていた場所に腰を下ろした。


「はぁ、シエルとは戦えませんでしたわね」

「うん。でも仕方ないよ。リュート強いもん」


 シエルは小さく肩を竦めた。


「ところでコーデリア様、彼とデートするんですか?」


 アデリタがワクワクした様子で言って、コーデリアが頬を真っ赤に染める。


「すすす、するわけありませんわ! わたくし、今はそんな余裕ありませんわ!」

「そうですか……私ならデートしたいですけど……ねぇシエル」


「あたし!? あたしは別に……」シエルが視線を地面に落とす。「そりゃ……ちょっとはしたいけど、リュートは違うかな……」


 シエルはまだ自分の好みがよく分かっていなかった。


(ラナァとデートする?)とラナァ。


(そうだね。ラナァとお出かけしてみたいな)


 ラナァとはいつも一緒にはいるのだが、本当にただいるだけなのだ。


「ヘルトの試合が始まりますわよ」


 コーデリアが話を変えるように言った。

 ヘルトの試合は、特に見所もなく終わった。

 もちろんヘルトの勝ちだった。


「順当なんですけど、盛り上がりに欠けますね」とアデリタ。


「そうですわね。普通に戦って普通に勝ったという印象ですわね」

「コーデリア様は色々な意味で派手だったのにね」

「ししし、シエル!? 何をおっしゃいますの!? わたくしの試合も退屈そのものでしたわ!」


 コーデリアが慌てて、アデリタはニマニマと表情を緩める。

 シエルは小さく肩を竦めた。


「それじゃあ、次は私なので行ってきます」


 アデリタが立ち上がって、笑顔で言った。


「頑張ってねー!」

「まぁアデリタは負けないでしょうけど、油断なさらないよう」


 シエルとコーデリアがそれぞれ言って、アデリタが頷き、小さく手を振ってから駆け出した。

 しばらく待つと、ヘルトが戻って来た。


「勝ったよ」


「おめでと」とシエル。

「順当でしたわね」とコーデリア。


「僕はこれでも王太子だからねぇ」ヘルトが座りながら言う。「剣術も護身術も使えるし、シエル、リュート、アデリタ以外には負けないよ」


「アーク君も強かったよ?」とシエル。


「88位の彼か……」ふむ、とヘルトが頷く。「確かにそうだね。卒業したら僕の護衛騎士として雇いたいぐらいだよ」


「リュートはダメですの?」


「護衛騎士?」とヘルト。


 コーデリアが頷く。


「僕と彼は性格が合わない。別に彼が嫌いなわけじゃないけど、ずっと一緒にいるのはしんどいかな。まぁ、アークの人格もよく知らないけどね」


「ふぅん……じゃあわたくしの騎士に……」


 コーデリアが小声で言った。

 シエルはちゃんと聞こえていたので、ニヤニヤしてしまう。


「お、始まったね」


 ヘルトが映像を見ながら言った。

 映像では、アデリタと対戦相手が洞窟に出現した場面だった。


「わっ、真っ暗です」


 言いながら、アデリタが光の玉を浮かべて光源を確保する。

 対戦相手の方はアタフタしていたが、遠くにアデリタの光を見つけて落ち着いた。


「アデリタって主人公っぽいよね」シエルが言う。「平民だけど天才で、属性は光で、あたしがいなかったら首席なわけだし」


「戦闘経験がない割に」ヘルトが言う。「このトーナメントだけで急激に成長しているしね」


「それに見栄えも性格もいいですわ」コーデリアが言う。「アデリタに好意を抱いている男子は1人や2人じゃありませんわ」


「モテるのはコーデリア様もでしょ?」

「わ、わたくしは違いますわ!? 何をおっしゃいますの!? シエルは本当にもう……」


 コーデリアが顔を真っ赤にして首を横に振った。


(性格も可愛い)とシエルは思った。


「それに比べてあたしは……」

「ははっ、シエルはちょっと人間離れしてるからねぇ」


 ヘルトが楽しそうに言った。

 あたし人間離れしてるの!?

 シエルはちょっとビックリした。


「そうですわね」コーデリアが頷く。「シエルは見た目も性格も悪くないですけれど、やや不思議ちゃんなところありますものね。そこが、首席なのに人気が低迷している理由ですわね。極めつけは、攻撃魔法が【ドラゴンブレス】なことですわね」


「だよね」ヘルトが笑う。「口から黒い炎を吐く女の子とか初めて見たよ僕」


(あうあうあう! パパー! パパー! やっぱり人間はドラゴンブレス吐かないよぉ!)


 アビスはドラゴンブレスを教える時、「人間もブレスの1つぐらいは吐けて当然」と力説していたのだ。

 もちろんシエルは「そんなバカな」と思っていたけれど、アビスの勢いに押されてドラゴンブレスを習得した。


「ま、ドラゴンは強くてかっこいいから」ヘルトが言う。「憧れる気持ちは分からなくもないけどね」


(違うのぉぉぉ! パパがドラゴンなだけなのぉぉ! 確かに強いしかっこいいけど! そういう憧れ的な感じじゃないのぉぉ! 単にパパがドラゴンなだけなのぉぉぉ!)


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