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お花のラナァは今日も幸せ  作者: 葉月双
2章

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7話 聖域、今日も平和


「わたくしたちで解決してみませんこと?」


 赤毛の令嬢コーデリアがニヤリと言った。

 ここはアヴァロン魔法学園の食堂。

 時刻はお昼過ぎ。

 今の時間は昼食を摂りにきた多くの生徒たちで賑わっている。

 そんな食堂の隅のテーブルに、シエルたちが座っていた。


 シエル、アデリタ、ヘルト、コーデリアのSクラスが誇るトップ4である。

 入学してからすでに40日ほどが経過しており、生徒たちはそれぞれグループを作った。

 シエルはアデリタとだけ仲良くできたらいいなぁ、とか思っていたのだが、気付いたらコーデリア率いるこのトップグループに所属していた。


「夜中に寮を抜け出すのは規則違反だけどね」


 ヘルトが肩を竦めた。

 そんな姿もイケメンである。

 アデリタが頬を染めていた。

 シエルもヘルトのことはカッコいいと思ってはいる。

 思ってはいるのだが、


(こいつはいきなりイリナお姉ちゃんのおっぱいを揉んだ変態……)


 人格に難を感じているのだ。


「王子様は退屈なことを言いますのね」


 やれやれ、とコーデリアが肩を竦めた。

 ちなみにシエルの前にコーデリアが座っていて、シエルの右隣にアデリタ、アデリタの前にヘルトが座っている。


 6人用のテーブルなのであと2人座れるが、このグループに割って入る勇気のある者はいない。

 何気にシエルも「なんであたしが王子様や伯爵令嬢と一緒にいるんだろう?」と思っていた。

 アデリタは特に気にしていない様子だが。


「えっとコーデリア様」アデリタが言う。「『夜中に蠢く触手』なんて本当にいるのでしょうか?」


「真偽も含めて、わたくしたちで調査しましょう、と言っていますのよ?」


「本当にいたらどうするの?」とシエル。

「まずは友好的かどうか確認しますわ」とコーデリア。


 ちなみにコーデリアは14歳で、アデリタと同じ。

 このグループはトップグループであると同時に最年少グループでもあった。

 先生たちからは『黄金世代』なんて呼ばれている。


「敵対的だったら?」とヘルト。


「もちろん!」グッとコーデリアが拳を握る。「倒しますわ!」


「あの、コーデリア様……触手が敵対的だったら、すでに先生たちが処理してるんじゃ……?」


 シエルは現実的なことを言った。

 ここは世界最高峰のアヴァロン魔法学園なのだ。

 先生たちも全員が4星以上で、学園長に至っては7星である。

 危険を放置するほど間抜けではないはず、とシエルは思っている。


「まぁ、そうですわね」とコーデリアが頷く。


 要するに『先生たちが動いていないので、本当にいても安全だろう』という推測の元、調査しようと言っているのだ。


「私は調査してみたいです」アデリタが両手の拳を握って、キラキラした瞳で言う。「何事も経験だと思いますし、規則違反の罰は噂の解決で相殺されるかもですし!」


「……罰は受けたくありませんが……最悪バレなければいいのですわ」


 コーデリアが複雑な表情で言った。

 たぶん罰を受けた時のことを思い出しているのだろう、とシエルは推測した。

 以前、コーデリアがうるさいので担任のローラが怒って『魔法でコーデリアを逆さまに吊したあとブンブンと左右に振った』ことがある。


 あの時のコーデリアの悲鳴は、クラスメイトたちのトラウマになっていた。

 アヴァロンの教師たちは自分たちの魔法を使って罰を与えてくるのである。


「僕はコーデリアみたいに振り回されたくないけど、まぁ炎で永遠に焼かれるよりはマシだろうね」


 ヘルトがやれやれと首を振った。


「炎属性の呪いでやられたんですよね!」


 アデリタが言った。


「そう。人生で一番辛かったなぁ」


 そう言う割に、ヘルトはどこか嬉しそうに見えた。

 ああ、ラナァに救われたからか、とシエルは納得。


「そこで超常の白い女神に救われた、と」コーデリアが言う。「何度も聞いたので飽きましたわ」


「ちょうど、シエルの髪を括っている白薔薇の花飾りみたいに白かったよ」


 ヘルトが笑顔で言った。

 シエルはビクッとなった。


(この人、これがラナァの分体だって気付いてるのかも?)


(どうだろね?)とラナァ。


(うわっ、ビックリしたぁ!)


 ラナァはこんな風に、シエルの心の声に反応することがある。

 大抵は唐突なので、シエルはいつも驚いてしまう。


(ビックリクリクリ♪ ラナラナァ♪)


 そしてラナァは今日も楽しそうだった。


(ラナァ)

(んー?)

(ラナァがここにいること、ヘルトには内緒ね?)


 バレたら絶対に面倒だ、とシエルは思った。

 粘着されそう。


(はーい)


 ラナァは素直に返事をした。

 葉っぱを右手のように上げているラナァの姿が思い浮かんで、シエルは微笑ましい気分になった。



「そんなわけで、シエルたちは今夜『夜中に蠢く触手』を探しに行くみたい」


 本体ラナァは左右に小さく揺れながら、食堂での会話をイリナたちに伝えた。


「面白そうじゃのぉ」


 宙に浮いたまま腕組みをしたパメラが言った。


「確かに面白そうですね」地面にぺったんこ座りしたイリナが言う。「触手というのがなんだか少しいやらしい気もしますが……」


「ん?」パメラが首を傾げる。「触手だとなぜいやらしいのじゃ?」


「え?」イリナが頬を染める。「それはその……ねぇ……触手がうねうねーって伸びて、あたくしを拘束して、あんなことやこんな……って何を言わせるんですか!」


「うねうねー♪」


 ラナァの根っこが地面を突き破って複数出現し、触手のように動いた。

 パメラとイリナがビクッとなった。


「おお! 触手っぽいぞラナァ!」


 パメラがキラキラした瞳で言った。


「ラナァの触手なら歓迎ですぅぅ!」


 デレデレ、っと表情を崩したイリナがラナァの触手を掴んだ。

 そして自分の頬にスリスリ。

 全然少しもイリナのことを知らない人物が見たら、アッサリとヤバい女認定されそうな姿だ。


「更にうねうねー♪」


 ラナァは茎が波打つように動いた。


「おおー! 全身触手ラナァじゃな!」

「ぐるんぐるん♪」


 ラナァが茎をクルクルと回す。

 その時に自分の茎で輪っかを作ってそこを潜り、片結びの状態に。


「あわわ、ラナァ結ばれちゃったぁ!」


 ラナァが左右に揺れながら慌てたように言った。


「ラナァ!?」イリナが驚いて立ち上がる。「たとえ片結びになってもあたくしの愛は永遠です!」


「妾もじゃぁぁ!」パメラが勢いよく言う。「妾もラナァが片結びであろうが蝶結びであろうが、永遠に愛しておるぞぉぉぉ!」


「……いつものことだが、騒がしいな」


 丸くなっているアビスがボソッと言った。


「なーんちゃって♪」


 ラナァは茎を緩めて、サッと片結びを解いた。

 今日も聖域は平和である。



 放課後、シエルたちは情報収集に勤しんだ。

 先輩たちに話を聞いたり、実際に見たという生徒に話を聞いたり、図書室で調べたりなどなど。


「触手の魔物って思ったよりいませんね」


 本をパタンと閉じながらアデリタが言った。

 ここはアヴァロン魔法学園の図書室、その隅の方のテーブル。


「クラーケンとか海の魔物ぐらいだねぇ」とヘルト。

「……噂の触手って何かの見間違いな気がしてきたなぁ」とシエル。


「その可能性がもっとも高いですわね」コーデリアが溜息交じりに言った。「とはいえ、そうであったとしても、正体は突き止めたいですわ。ですので、予定通り夜中に女子寮前に集合ですわ」


「分かった」ヘルトが席を立つ。「それじゃあ僕はもう部屋に戻るよ。少し寝ておきたい」


「では解散しましょうか」


 コーデリアも席を立ち、アデリタとシエルも続く。

 図書室を出て、しばらく歩いてからヘルトが手を振って3人と別れた。

 男子寮と女子寮の場所が違うからだ。


「ドキドキしますね」アデリタが楽しそうに言う。「規則違反をして夜中に散歩。とっても楽しみです」


「ですわね」


 うんうんとコーデリアも頷いた。

 何気にシエルも楽しみだったりする。

 シエルは寮に入ってからも聖域で暮らしていた頃も、夜はちゃんと寝ていたので、これが初めての夜更かしになる。


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