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フリーダムガール  作者: 赫宗一
シャンタ編
39/111

鉄拳制裁!

ダイダラボッチの動きは鈍重《どんじゅう》だった。あたしが間合《まあ》いに入《はい》る前《まえ》に手立《てだ》てを潰《つぶ》してくるかと思ったけれど、相手の腕《うで》が届《とど》き切るよりも先に、足元《あしもと》に到達《とうたつ》した。


「ちっ、足だけは立派《りっぱ》な!]


「それだけじゃねーやい!腕《うで》も…一流《いちりゅう》じゃーい!!」


刃《は》を逆《さか》さにしてからの、右足に向《む》けて気合いの一打《いちだ》。並《なみ》の人間なら骨《ほね》まで砕《くだ》けるその衝撃《しょうげき》に、さすがの巨人《きょじん》も声を上げた。


「うがあああっ!」


「へっ、どーよ!?」


「舐《な》めるなぁ!!」


ダイダラボッチはそのまま右足を前に振《ふ》り上げる。が、それも遅《おそ》い。あたしに当《あ》てるには程遠《ほどとお》い。短《みじか》い動作《どうさ》でかわしてから、今度《こんど》はがら空《あ》きの左足に向《む》けての一打《いちだ》。想像《そうぞう》以上に堪《こた》えたのか、ダイダラボッチは派手《はで》に転倒《てんとう》する。倒《たお》れただけで地震《じしん》のような振動《しんどう》が発生《はっせい》し、突風《とっぷう》が吹《ふ》き荒《すさ》ぶ。


エルやクー、それに連《つ》れて来られた人達は無事《ぶじ》かと周囲《しゅうい》を見渡《みわた》すも、砂煙《すなけむり》が視界《しかい》を遮《さえぎ》って様子《ようす》が確認《かくにん》出来ない。その隙《すき》を突《つ》いてか、あたしの背後《はいご》から砂煙《すなけむり》を切り裂《さ》いて、1本の巨大《きょだい》な腕《うで》が伸《の》びてくる。うっかり斬ってしまわないように、刃《は》を腕《うで》に沿《そ》わせてこれを受《う》け流《なが》すと、風圧《ふうあつ》で砂煙《すなけむり》が吹《ふ》き飛《と》んだ。


次の攻撃を警戒《けいかい》しつつ再度《さいど》周囲《しゅうい》を見渡《みわた》す。するとそこには、各々(おのおの)が四方《しほう》に吹《ふ》き飛《と》ばされて尻餅《しりもち》をつく姿《すがた》があった。全員《ぜんいん》無事《ぶじ》という、ひとまずの安心感《あんしんかん》を得《え》てから、妖怪《ようかい》王との戦闘《せんとう》に集中《しゅうちゅう》する。ダイダラボッチの左足に飛《と》び乗《の》り、そこから疾駆《しっく》して一気《いっき》に胴体《どうたい》へ。腹部《ふくぶ》に一打《いちだ》入《い》れて抵抗力《ていこうりょく》を奪《うば》った後《のち》、叩《はた》き落そうとしてくる両腕《りょううで》の迎撃《げいげき》を払《はら》い、ようやく首元《くびもと》まで到達《とうたつ》した。攻撃を受《う》け流《なが》しつつ移動《いどう》した為《ため》か、日課《にっか》の走《はし》り込《こ》みなんて比《ひ》じゃないくらい疲《つか》れた。


「ふう、ようやっとここまで来れたー…。さ、もう勝負《しょうぶ》ありでいい?」


「この程度《ていど》で屈服《くっぷく》させたと思うとは!つけあがるな!!」


鈍重《どんじゅう》でも、運動神経《うんどうしんけい》は悪くなかったらしい。多分《たぶん》、周《まわ》りにいた全員《ぜんいん》が驚《おどろ》いただろう。何とダイダラボッチは、見事《みごと》な跳《は》ね起《お》きで立ち上がった。遥《はる》か上空《じょうくう》に連《つ》れ去《さ》られる前に離《はな》れていて助《たす》かった。さすがのあたしも、100m以上地(ち)から浮《う》いた場所《ばしょ》で自由《じゆう》には動《うご》けそうにない。


「ガハハ、どうした!?あれだけ息巻《いきま》いていた割《わり》には大《たい》したことないなぁ!!」


「言ってろデカブツ!!」


「口だけは達者《たっしゃ》だな!」


「腕《うで》も達者《たっしゃ》だって言ってるだろーが!!」


垂直《すいちょく》に駆《か》け上がるなんて芸当《げいとう》は出来ないので、また地道《じみち》に足から崩《くず》す。立ち上がった拍子《ひょうし》に、ダイダラボッチの足の位置《いち》が大きく移動《いどう》したので、まずはそこまで駆《か》ける。…が、今度《こんど》は接近《せっきん》を許《ゆる》さない構《かま》えだ。

身体を屈《かが》め、腕《うで》が壁《かべ》になるように右腕(うで)の上に左腕(うで)を乗《の》せ、あたしが射程内《しゃていない》に入《はい》るのを待《ま》っている。間違《まちが》いなく薙《な》ぎ払《はら》うものだと確信《かくしん》し、足は止《と》めずに対処法《たいしょほう》を考《かんが》える。すると意外《いがい》なことに、あたしが考《かんが》えるまでもなく、対処法《たいしょほう》が『やって来た』。


「リノさーん!!」


あたしの視界《しかい》の隅《すみ》から、凄《すさ》まじい速度《そくど》で接近《せっきん》して来る1つの影《かげ》。それは、さっき別《わか》れたはずのからかさ小僧《こぞう》だった。


「傘坊《かさぼう》君!?」


「僕の足を掴《つか》んで下さーい!!」


色々(いろいろ)と聞《き》きたいことはあるけれど、とりあえず今は言われた通り、すれ違《ちが》いざまにからかさ小僧《こぞう》の足を掴《つか》む。目に見えて速いのが分かっていた上で行動《こうどう》に出たけれど、想定《そうてい》を超《こ》える速度《そくど》に、あたしの身体は横流《よこなが》しで宙《ちゅう》に浮《う》く。


「ぐっ、ぐるじい…!!」


「もうちょっと我慢《がまん》して下《くだ》さい!…んん~っ!」


からかさ小僧《こぞう》はだんだんと高度《こうど》を上げながら速度《そくど》を落《お》とし、ダイダラボッチが作っていた両腕《りょううで》の壁《かべ》を乗《の》り越《こ》えた。


「からかさ小僧《こぞう》!?何故《なぜ》貴様《きさま》が!?」


「今僕がやっていることは、王が定《さだ》めた掟《おきて》から外《はず》れたもので、決《けっ》して許《ゆる》されることではありません。…でも、でも!それでも!!僕は王様にもう一度《いちど》頑張《がんば》って欲《ほ》しいと思ったから、楯突《たてつ》かせてもらいました!!」


「傘坊《かさぼう》君…!」


からかさ小僧《こぞう》の瞳《ひとみ》には、灼熱《しゃくねつ》の如《ごと》き闘志《とうし》が宿《やど》っていた。妖怪《ようかい》としての誇《ほこ》りと、王への想《おも》いが。地上をふと見下《みお》ろすと、そこには見知った仲間《なかま》達が手を振《ふ》っていた。赤鬼《あかおに》、河童《かっぱ》、ぬりかべ、そしてろくろさん。隣《となり》にいたエルとクーも、この奇跡的《きせきてき》な光景《こうけい》に笑顔《えがお》を覗《のぞ》かせていた。


「傘坊《かさぼう》君。もしかしなくても、王様の声が聞《き》こえてきたから来てくれたんだよね?」


「国中《くにじゅう》に響《ひび》き渡《わた》る大声ですからね。リノさん達の声は聞《き》こえませんでしたけど、大体《だいたい》内容《ないよう》は理解《りかい》しているつもりです」


「そっか。しっかしまあ、こうやって空を飛《と》べるとは思わなんだ」


「長《ちょう》時間は難《むずか》しいですけど、やってみせます!リノさんも、力を貸《か》して下《くだ》さい!」


「OK!んじゃまあ、皆《みんな》でおバカ王を懲《こ》らしめますか!!」


地上にいる皆《みんな》もあたしの声が聞《き》こえたのか、戦える力のある赤鬼《あかおに》、ぬりかべの両名《りょうめい》が、ダイダラボッチに向《む》かって走《はし》り始《はじ》めた。


「お前達までもが、俺様の邪魔《じゃま》をするのか…!!不愉快《ふゆかい》だ!厳罰《げんばつ》などとは生《なま》ぬるい!!妖怪《ようかい》としての力を喰《く》らってやろうぞ!!」


「心があるって自分で言っただろ妖怪《ようかい》王!!皆《みんな》の気持ちも分かれッ!!!」


不思議《ふしぎ》なぐらい手に馴染《なじ》むからかさ小僧《こぞう》に運《はこ》ばれて、あたしはダイダラボッチの懐《ふところ》に飛《と》び込《こ》む。地上《ちじょう》での赤鬼《あかおに》、ぬりかべの活躍《かつやく》が効《き》いているのか、難《なん》なく接近《せっきん》に成功《せいこう》した。


その辺《へん》の公園《こうえん》よりも広《ひろ》い肩《かた》に舞《ま》い降《お》りて、攻撃を開始《かいし》する。一打《いちだ》、二打《にだ》、三打《さんだ》。力強く刃《は》を叩《たた》きつけながら、からかさ小僧《こぞう》と一緒《いっしょ》に首筋《くびすじ》へ。反撃《はんげき》される前に急所《きゅうしょ》を目掛《めが》けて一打《いちだ》を放《はな》ち、即《そく》離脱《りだつ》。足に攻撃した時よりも確《たし》かな手応《てごた》えがあったことから、だいぶん苦《くる》しい状態《じょうたい》だと判断《はんだん》する。


「よーっし、続《つづ》けて行くぞー!!」


間髪《かんぱつ》入《い》れず次《つぎ》に移《うつ》る。ダイダラボッチの剛腕《ごうわん》が迫《せま》る前にからかさ小僧《こぞう》と宙《ちゅう》に逃《に》げ、タイミングを見計《みはか》らって反対側《はんたいがわ》の肩《かた》に着地《ちゃくち》する。同《おな》じように刃《は》の裏側《うらがわ》で叩《たた》きながら直進《ちょくしん》し、首筋《くびすじ》まで到達《とうたつ》すれば離脱《りだつ》。それを数回《すうかい》繰《く》り返《かえ》して、ダイダラボッチの体力を奪《うば》った。


「どーしたどーした!あんたの言う王の力ってのはこんなもんなの!?」


「黙《だま》れ!!今すぐにその小生意気《こなまいき》な口を壊《こわ》してやる!!」


「やれるもんならね!!」


風を切り裂《さ》いて躍動《やくどう》する二対《につい》の両腕《りょううで》が、あたしを捕《とら》えようと徐々(じょじょ)に速度《そくど》を上げて迫《せま》り来る。


「リ、リノさん!」


「うろたえないで!あたしの指示《しじ》した通りに動《うご》いてくれれば大丈夫《だいじょうぶ》だから!!」


「は、はいっ!」


一度《いちど》見せられた攻撃は、もうあたしには通用《つうよう》しない。腕《うで》の軌道《きどう》に合わせて刃《は》をしなやかに流《なが》し、なるべく傷《きず》つけずにこれを逸《そ》らす。無理矢理《むりやり》押《お》し返《かえ》そうとすれば、相手の質量《しつりょう》が勝《まさ》っている分《ぶん》、こちらが潰《つぶ》されてしまうのは必至《ひっし》。けれど、受《う》け流《なが》してしまえば何の事はない。僅《わず》かでも刃先《はさき》がずれていたらあの世《よ》行きだけど。


「王様の攻撃をこうも簡単《かんたん》に、しかも片手《かたて》だけで受《う》け流《なが》すなんて…。リノさん、貴方《あなた》は一体《いったい》…?」


「ただの気まぐれな旅人《たびびと》だよ。それ以上もそれ以下もないさ。さて…と!そろそろトドメといきますか!!」

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