↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フリーダムガール  作者: 赫宗一
シャンタ編
40/111

決着 そして…

からかさ小僧《こぞう》にお願いして、あたしはさらに上空《じょうくう》へと舞《ま》い上がる。ダイダラボッチの頭部《とうぶ》辺《あた》りが限界《げんかい》高度《こうど》だったらしく、そこまで行ってくれたことに正直《しょうじき》ホッとする。見栄《みえ》を切ってカッコつけたのに、届《とど》きませんでしたじゃ締《し》まらない。


無我夢中《むがむちゅう》で腕《うで》を振《ふ》り回《まわ》すダイダラボッチの攻撃を捌《さば》きながら接近《せっきん》し、背後《はいご》に回《まわ》り込《こ》んでからの後頭部《こうとうぶ》へ全力《ぜんりょく》の一打《いちだ》。強烈《きょうれつ》な痛《いた》みに悶《もだ》えるダイダラボッチに、あたしは追《お》い打《う》ちをかけるべく最後《さいご》の仕上《しあ》げに入《はい》る。


「傘坊《かさぼう》君、合わせて!!」


「は、はい!」


「無理《むり》させちゃうけど、頑張《がんば》ってよ~!!」


からかさ小僧《こぞう》のてっぺん…つまり、一般的《いっぱんてき》な傘《かさ》で言うところの石突《いしづ》きの部分《ぶぶん》で、ダイダラボッチの背中《せなか》に突《つ》きを入《い》れる。それと同時《どうじ》に、支《ささ》えを失《うしな》ったあたしの身体は地上《ちじょう》に向《む》けて勢《いきお》いよく降下《こうか》していく。

けれど、ダイダラボッチの背中《せなか》に擦《す》り付けている石突《いしづ》きの摩擦《まさつ》も勢《いきお》いも増《ま》し、大きな傷跡《きずあと》をつけながら地上《ちじょう》へと加速《かそく》していく。


「リ、リノさぁ~ん!い、いくらなんでも無茶苦茶《むちゃくちゃ》ですってぇー!!」


口を開《ひら》くと舌《した》を噛《か》む可能性《かのうせい》が高い為《ため》、ジェスチャーで頑張《がんば》れとだけからかさ小僧《こぞう》を激励《げきれい》して、次《つぎ》の行動《こうどう》を起《お》こす機会《きかい》を窺《うかが》う。それからしばらく進《すす》んで、腰《こし》の辺《あた》りまで到達《とうたつ》した際《さい》にからかさ小僧《こぞう》の持ち方《かた》を直《なお》し、ダイダラボッチを蹴《け》った反動《はんどう》で離脱《りだつ》する。あまり地上《ちじょう》付近《ふきん》ギリギリまで粘《ねば》ると、滑空《かっくう》を安定《あんてい》させる時間が足《た》りずに落下《らっか》してしまうからだ。


「ぐうおおおぉぉぉ!!」


「どーだ、思い知ったか!これはあたしじゃなく、あんたの仲間《なかま》達の一撃《いちげき》だ!!」


「背中《せなか》が熱い…!熱い、熱いいいぃぃ…!!」


「もういい加減《かげん》負《ま》けを認《みと》めろ!これ以上抵抗(ていこう)するってんなら、今度《こんど》は容赦《ようしゃ》なく真剣《しんけん》で斬るよ!!」


本当にその気はないけれど、わざとらしく刃《やいば》を振《ふ》り回《まわ》して最大限《さいだいげん》威嚇《いかく》する。すると効果《こうか》があったのか、ダイダラボッチは何かを悟《さと》ったかのようにピタリと動《うご》きを止《と》めた。


「そうか、貴様《きさま》は…殺《や》ろうと思えばいつでも俺様を殺《や》れたのか…。怒《いか》りで我《われ》を忘《わす》れて、手加減《てかげん》されていたことにすら気付けなんだとは。力の差《さ》は歴然《れきぜん》。認《みと》めざるを得《え》ない…か」


我《われ》に返《かえ》ったダイダラボッチから闘志《とうし》が抜《ぬ》けきったのを確認《かくにん》した後《のち》、あたしも刃《やいば》を鞘《さや》に収《おさ》める。砂クジラの時ほどではないけれど、もの凄《すご》く疲《つか》れた。地上《ちじょう》に降《お》りるまでの数分間、摩擦《まさつ》で痺《しび》れかけていた両手《りょうて》を交互《こうご》にぶらぶらさせて、軽《かる》くストレッチした。


「あー、疲《つか》れた」


「リノ!」


地上《ちじょう》にふわりと着地《ちゃくち》してすぐに、急《いそ》ぎ足でエルとクーがあたしを出迎《でむか》えてくれた。周囲《しゅうい》を見渡《みわた》すと、妖怪《ようかい》の皆《みんな》も含《ふく》めて、誰《だれ》も怪我《けが》がないようで安心《あんしん》する。


「ただいまー。エル、クーちゃん、大丈夫《だいじょうぶ》だった?」


「それはこちらの台詞《せりふ》です。奇想天外《きそうてんがい》な行動《こうどう》に出るのはいつものことですが、落ちてしまわないかと心配《しんぱい》する私達の身にもなって下《くだ》さい」


「本当だよ!リノお姉ちゃん、いつも私に無理《むり》するなって言ってるのに、自分が一番《いちばん》危険《きけん》な橋《はし》を渡《わた》ってるんだもん」


「あはは、ごめんごめん」


「いやはや、無事《ぶじ》で良かったぜ…!」


情《じょう》に厚《あつ》い赤鬼《あかおに》は、またしても涙《なみだ》を流《なが》してあたしの生還《せいかん》を喜《よろこ》んでくれている。嬉《うれ》しいことだけど、やっぱりちょっと暑苦《あつくる》しい。


「傘坊《かさぼう》頑張《がんば》ったね…。怪我《けが》はないかい?」


「おかげ様で。石突《いしづ》きが擦《す》れたぐらいで、何ともないよ」


河童《かっぱ》はからかさ小僧《こぞう》に労《ねぎら》いの言葉をかけた後《のち》、心配《しんぱい》そうにあたしを見つめる。口には出さずとも、その意図《いと》はすぐ読《よ》めた。感謝《かんしゃ》沢山《たくさん》のウインクで返《かえ》して、無事《ぶじ》をアピールしておく。


「ほんま、何ものうて良かったわあ。リノちゃんもそうやけど、傘坊《かさぼう》ちゃんもえらい頑張《がんば》ったね」


「そ、そんなことは。僕はただ…」


「勇気《ゆうき》を出して…命《いのち》をかけてまで王様に挑《いど》んだんだ。もっと誇《ほこ》って良いことだよ」


あたしの視界《しかい》に入《はい》って来たぬりかべが、無言《むごん》で親指《おやゆび》を立て、あたしのさきに放《はな》った言葉を強調《きょうちょう》させる。ろくろさんも気にいった様子《ようす》で、からかさ小僧《こぞう》に向《む》けて可愛《かわい》らしく親指《おやゆび》を立てて、その功労《こうろう》を労《ねぎら》った。


「その通りだ」


あたし達の会話《かいわ》に混《ま》じるように、背後《はいご》からダイダラボッチの落《お》ち着《つ》いた声が響《ひび》き渡《わた》る。


「俺様を目の前にして、怯《ひる》まず臆《おく》さぬその根性《こんじょう》…見事《みごと》なものであった。従来《じゅうらい》ならば、反逆罪《はんぎゃくざい》で即刻《そっこく》罰《はっ》していただろうが、もうやめだ」


消《き》え入《い》りそうな声で、大地《だいち》に腰《こし》を下《お》ろしたダイダラボッチの足元《あしもと》まで移動《いどう》し、首《くび》を痛《いた》めない程度《ていど》に上を見上げる。


「まさかここまでとは思わなんだ。俺様の評価《ひょうか》は誤《あやま》っていたようだ」


「だから言ったっしょー。今の腑抜《ふぬ》けた王様には負《ま》けないって」


「ガハハ、そうだな。しかしおかげで、人間達の心を動《うご》かせるような気がしてきたぞ」


「やる気を出したのは結構《けっこう》なことだけど、その前にやらなきゃいけない事があるんじゃないの?」


あたしの発言《はつげん》に、ダイダラボッチはこくりと頷《うなず》く。王としての責務《せきむ》に目覚《めざ》めてくれたようで何よりだ。


「背中《せなか》の消毒《しょうどく》だな!」


「ちっがーう!!ここはボケるとこじゃなあああい!!」


「冗談《じょうだん》だ、そう熱《あつ》くなるな」


「熱《あつ》くさせてんのはどこのどいつだ!全《まった》く…」


「ツッコミ、上達《じょうたつ》しましたねリノ」


「嬉《うれ》しくないって…」


無駄《むだ》に嬉《うれ》しそうなエルの表情《ひょうじょう》にあたしが肩《かた》を落《お》すと、クーが軽《かる》く背中《せなか》を叩《たた》いて励《はげ》ましてくれた。けれど、この流《なが》れだと完全《かんぜん》にボケの延長線上《えんちょうせんじょう》だ。


「さて…。からかさ小僧《こぞう》よ」


「は、はいっ!」


「今まで貴様《きさま》に命《めい》じていた行動《こうどう》の数々(かずかず)。その全《すべ》てを現時点《げんじてん》をもって取《と》り消《け》しする。…嫌《いや》な思いをさせてしまってすまなかったな」


深《ふか》いお辞儀《じぎ》。そのお辞儀《じぎ》には、これまでの情《なさ》けない王とは違《ちが》う、しっかりとした威厳《いげん》が表《あらわ》れていた。


「い、いえ!そんなお気になさらず。確《たし》かに嫌《いや》と言えば嫌《いや》でしたが、王様のお気持ちを知りましたから…」


「だが、殻《から》に閉《と》じこもるあまり、周《まわ》りすら見えていなかったのは事実《じじつ》だ。これだけの背丈《せたけ》を持ち、日々(ひび)眺《なが》めておきながら、廃《すた》れきった己《おの》が国の惨状《さんじょう》にさえ気付けないとは…愚《おろ》か極《きわ》まりない」


「じゃあ、これからどうするんですか?」


クーが問《と》いを投《な》げかけると、その言葉を待っていたと言わんばかりに立ち上がったダイダラボッチは、右手の拳《こぶし》を力強く握《にぎ》り締《し》めてさっきまで控《ひか》えめだった声を張《は》り上げた。


「妖怪《ようかい》の国の者全(すべ)てに告《つ》げる!!これより妖怪《ようかい》の国は、長い歴史《れきし》の中でもただ1つ変わらなかった『ルール』を完全《かんぜん》に撤廃《てっぱい》する!!弱肉強食《じゃくにくきょうしょく》はもう終《お》わりだ!これからは皆《みな》、平等《びょうどう》に富《とみ》を築《きず》く時代《じだい》とすることをここに宣言《せんげん》する!!」


突如《とつじょ》、各地《かくち》から歓声《かんせい》が上がる。王の意志《いし》に応《こた》えるかのような、気高《けだか》くも雄々(おお)しき歓声《かんせい》が。国全体が1つの巨大《きょだい》な声によって震《ふる》え、来《き》たる新時代《しんじだい》に向《む》けて歓喜《かんき》の咆哮《ほうこう》を轟《とどろ》かせた。

傍《そば》にいた赤鬼《あかおに》、河童《かっぱ》、ぬりかべ、からかさ小僧《こぞう》、ろくろさんらも、各々(おのおの)声を上げて喜《よろこ》びを露《あら》わにしている。


「凄《すご》いですね。王とは、これほどまでに皆《みな》を動かす『力』があるんですね。尤《もっと》も、ある程度《ていど》の信頼《しんらい》を得《え》ていければ成立《せいりつ》しないものでしょうけど」


「殻《から》に閉《と》じこもる前は、とても優秀《ゆうしゅう》な王様だったって証明《しょうめい》だよね」


クーは嬉《うれ》しそうに、エルに満面《まんめん》の笑みを浮《う》かべる。エルもまた柔《やわ》らかく微笑《ほほえ》んで、クーの髪《かみ》をくしゃりと撫《な》でた。


「へへっ。まあなにはともあれ、これにて一件落着《いっけんらくちゃく》かな?」


「まだですよ。もう1つ、難所《なんしょ》を越《こ》えなくてはなりません」


「人間側(がわ)との亀裂《きれつ》の修復《しゅうふく》…だね」


「問題《もんだい》ないって!よゆーとはいかないだろうけど、十中八九《じゅっちゅうはっく》上手《うま》くいくさ」


「あら、随分《ずいぶん》と自信《じしん》があるんですね。何か良い考《かんが》えでも?」


私の予想《よそう》と相違《そうい》とは思いますが。と、付け加《くわ》えたエルは、あたしの発言《はつげん》を待《ま》つ。エルやクーなら気付くであろう作戦《さくせん》、それは—————

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。