6.お菓子がたくさんあるわ!
「見て!美味しそうなお菓子がたくさんあるわ!」
「ほんとですね。――調子に乗って食べすぎたりしないでくださいね。ドレス、はちきれるかもしれませんから。」
お茶会当日、王宮の庭園の一角を訪れたアイリスは、そこに並んだ様々なお菓子に目を輝かせる。ジークハルトはそんなアイリスを注意深く見ている。
「そんなに食べないわよ!というか、何の心配してるのよ!」
「いや、イリー様の危機を防ぐのが俺の務めなんで。だって俺がこうやって言わなきゃ、イリー様絶対食べすぎるじゃないですか。」
お菓子たくさん!全種類食べつくしてやるわ!なんて心の隅で考えていたアイリスは、ジークハルトのいうことに一瞬だけ言葉を詰まらせる。
「―――っだからって変なこと心配しすぎよ!」
「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ。」
ある程度なら食べても良いですから。とアイリスをなだめながら、あたりをきょろきょろと見渡すジークハルトを見て、アイリスも周囲の様子をうかがう。
周りにはアイリスたちと同じくらいの年の子どもが数十人いる。みんないくつかのグループに分かれて話をしているが、目を引くほど大人数のグループはない。
一番人が集まっているところに王太子殿下がいるのだろうと考えていたアイリスは、不思議そうにジークハルトに聞いた。
「ーーねぇジーク。殿下はどこにいらっしゃるのかしら。」
アイリスのその言葉に、ジークハルトは信じられないというような表情を返す。
「な、なによ!その、何か言いたげな目は!」
「いや、、、。今更気づくなんて、今までどれだけお菓子しか見てなかったんだって思って。」
「思ってること全部言うんじゃないわよ!遠慮って知らないの!?」
確かにそうだったけど!もうちょっと婉曲的な言い方をしなさいよ!と怒るアイリスを気に留めることなく、ジークハルトは再度視線を動かす。
「来た時から探してはいるんですけど、それらしき方はいませんね。」
まぁ、主役は遅れてくると言いますしね。と一息ついたジークハルトは、それよりも、と口を開く。
「イリー様。そろそろ他の方に話しかけに行ったらどうです?」
「え?」
「え、って、、、。イリー様、お茶会っていうのは社交の練習会みたいなものらしいですよ。だから、他の方と交流しないと意味がありません。」
やっぱり、ついてきてよかった。とジークハルトがため息をついた。
そうなのか。まったく知らなかったわ。と驚きの表情を浮かべたアイリスは、先日父が言っていたことを思い出す。そんな父の言葉に、自分は確か「一人でもうまくやれる。」と返したはずだ。
「も、もちろん知っていたわよ!今から行こうとしていたの!」
「はいはい、わかりましたよ。ほら、頑張ってきてください。俺は離れたところで見守っていますから。」
「見守ってもらわなくても大丈夫よ!」
一人でもうまくやれるといった手前、行くしかない。腹をくくったアイリスは緊張した面持ちで近くのグループに話しかけた。
―――
初めてにしてなかなか上手くできたわね。
こどもたちの輪から離れたアイスはふぅと一息つく。
それなりに話は盛り上がったし、なかなかの人数と話すこともできた。これはジークハルトに自慢しなければならない。
アイリスはそう考えて周りを見渡すが、ジークハルトの姿はどこにも見えない。
(どこ行ったのかしら、ジーク。あっちかな。)
きょろきょろとあたりを見回しながら歩いているうちに、遠くの庭園が目に入った。遠くてあまりよく見えないが、白や赤、ピンクの花がたくさん咲いているように見える。
(綺麗ね。、、、行っても良いかしら。)
先日ポーレット辺境伯領で迷子になったことをもう忘れたのか、アイリスは少しずつ庭園に向かって歩き出した。
王宮が管理しているものなだけあり、庭園は今まで見たことがないほどに綺麗だった。
綺麗でかわいい花がたくさん咲いている。どれも見たことがない種類ばかりだ。
この先にはもっと珍しい花があるかもしれない。
奥へ奥へと、アイリスは小走りに進む。
(他に珍しい花はないのかな。、、あ!あの角を曲がった先にある気がするわ!)
速度を上げて勢いよく角を曲がったアイリスは、視界にあるものを捉えて、九尾立ち止まった。
「っ!!!!び、びっくりした、、、。」
「あ、、、ご、ごめんなさい、、、。」
角を曲がったアイリスの目の前には、小さな金髪の少年がいた。
お読みいただき、ありがとうございます。
よければブックマーク、評価
よろしくお願いいたします。




