5.1人でもうまくやれますわ!
「何読んでるんですか?」
自室で本を読んでいたアイリスの手元を、ジークハルトが覗き込む。
あの一件で、アイリスの父アーバスノット侯爵は、えらくジークハルトのことが気に入ったのか、度々彼を家に招いている。
この間なんて「1週間うちに遊びにおいで。」と誘い、実際にジークハルトはアーバスノット家に泊まりに来ていた。
今日はポーレット辺境伯が来るとのことだったので、おそらくジークハルトは父伯爵についてきたのだろう。
「あら!ジーク!!久しぶりね!!」
「久しぶりって、前会った時から1週間もあいてないですよ。で、何読んでるんです?」
アイリスは手元にある本を、ばっとジークハルトに掲げた。
「知らないの?『王子様物語』っていうの!かっこよくて、紳士的な王子様が出てくるのよ!!」
頬を紅潮させながら熱弁するアイリスに、ジークハルトはむっと嫌そうな顔をする。
「王子様??イリー様そんなの好きなんですか???優しいだけのやつのどこがいいんです??」
「なによ!わかってないわね!!」
「イリー様が子供っぽいだけでしょ。」
「そんなことないわよ!!!!!」
キーキーと言い争いをしているアイリスとジークハルトの元に、アーバスノット侯爵とポーレット辺境伯がやって来る。
「こらこら、2人とも。喧嘩しないよ。」
「お父様ぁ!ジークがいじめて来るわっ!」
「ひっ、、親父、、。」
侯爵に泣きつくアイリスとは対照的に、ジークハルトはさっと顔を青ざめさせた。
侯爵の横に、物凄い形相の辺境伯がいたからだ。
「お前!アイリス嬢をいじめるとは何事だ!!!」と後から雷が落とされることを悟ったジークは、途方に暮れる。
そんなジークの様子を見て、侯爵は申し訳なさそうに声をかける。
「ジーク、こんな時に悪いのだけれど、ちょっとお願いがあるんだ。お茶会の件についてなんだけど。」
侯爵の言葉に、アイリスとジークハルトは顔を上げた。
「「お茶会?」」
2人は声を揃えて答える。だが表情は対照的で、キラキラと目を輝かせるアイリスに対し、ジークハルトは怪訝そうな顔をしている。
「そう、お茶会。王妃様が主催で、殿下の、、、お友達作り、みたいなものかな。だから大人はいなくて、イリーくらいの年の子ばっかりだよ。」
さらに表情を明るくさせるアイリスを横目に、ジークハルトは何かを思い出したように答えた。
「あぁ。そういえばカーゾンがそんなこと言ってたような、、、。でも、行くって返事はしてないですね。」
「い、行かないの?」
同年代の集まりだというので当然同い年のジークハルトもいるのだと思っていたアイリスは、悲しそうな表情を浮かべる。
それを見たジークハルトは、一瞬驚いたような顔をして頬を赤らめたが、すぐにニヤりと笑ってみせた。
「―――ついてきて欲しいんですか?」
「べ、別に!一人でも平気よ!――でも、どうしてもって言うなら、ついてきても良いのよ!」
「またまたぁ。そんなこと言ってますけど、、ひっ!」
意気揚々とアイリスをいじっていたジークハルトは、侯爵の隣から発せられている禍々しい空気を察して怯えはじめる。
侯爵は、事情を察して気まずそうに笑いながらジークハルトに語りかける。
「すまないが、行ってもらえないかな、ジーク。イリーの面倒を頼めるのは、君くらいしかいなくて、、。それに、ほら、イリーってほっといたら何もせずに帰って来そうで、、、。」
侯爵の言葉に、アイリス以外の全員が「あぁ、、。」と気まずそうに呟いた。
当の本人であるアイリスだけが、状況を理解できておらず、大きな声で答える。
「何を言ってるの、お父様!ジークがいなくても、私一人で上手くやって見せますわ!」
自信満々なアイリスを見て、嫌な予感がしたジークハルトは、侯爵に「わかりました。ついていきます。」と答える。
侯爵は申し訳なさそうな表情をしている。
アイリスはその様子を見て、むっとしながら声を上げる。
「本当に1人でもうまくやれるから!!!見ていなさいよっ!!」
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