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「ねえ、ウチの話ちゃんと聞いてる?」

放課後に学校の廊下をスタスタと歩きながら私がそう問いかけると、私の横を歩く彼は気のない返事を寄越した。

「ああ、聞いてるって」

「もう、その返事する時は碌に聞いてないんだって長年の付き合いで分かってるんだからね。仮にもハイビスカス寮バスケ部のホープなんだからもっとちゃんとしてよ」

私がそう諭しても、彼の心ここに在らずという態度は変わらない。

普段からいい加減なところがある彼、リトはこう見えてもハイビスカス寮バスケットボール部のエースなのだが、今日はいつにも増して上の空だ。ここはハイビスカス寮女子バレーボール部期待の星であり彼の幼馴染であるこの私、モニカがしっかり彼を導いてやらねば。

「聞いたよ、一年生でレギュラーに抜擢されて今度大会にも出るんでしょ?今が一番頑張り時なんじゃないの」

「うん、そうだな」

「そうだなって・・・あんたねえ、急にぼんやりする癖あるけどバスケの話する時だけはいつも真剣だったじゃない。なのにどうしてそんな」

私はそうやってリトの肩を掴みかけたが、その際に私たちの真横を通り過ぎていく存在があった。

ふわりと香るフローラル系の匂いがしたかと思うと、蝶が花に惹き寄せられるような形で彼が一歩前へと踏み出していく。

「ローラじゃん、偶然」

「あ、リトくん。ここで何してたの?」

鈴が鳴るような可愛らしい声を発する彼女は同じウェスト棟に位置するプリマヴェーラ寮の制服に身を包んでいて、先程いい香りを漂わせていたふわふわで色素の薄い髪に囲まれた小さな顔は人形のように整っていた。

女の私でも見惚れてしまうくらいの美少女だったが、何より彼女を見つめるリトの目が気になった。

かつて見たことのない優しくて温かい彼の眼差しが、夕陽を受けて眩い光を放ってている。

その目線が私とは別の存在に注がれていることに、どうしようもなく胸が痛むのを感じた。

「モニカ、お待たせ。一緒に体育館行くんだろ、早くしないと部活始まるぜ」

「・・・うん、そうだね」

今度は私が彼に気のない返事を寄越す番で、足を動かしつつ名前も知らないプリマヴェーラ寮の女の子を彼が見つめている光景がしばらく私の頭の中を目まぐるしく駆け巡っていた。

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