第13話 輝きの舞台
文化祭当日、朝もやが校庭に立ち込める中、五人は最後の打ち合わせをしていた。夏希はそれぞれに異なる味のキャンディを手渡す。藤原には集中力を高めるミント、森川には感受性を研ぎ澄ますレモン、赤城には緊張を和らげるストロベリー、神崎には持続的なエネルギーを供給するオレンジ。
「さあ、行こう」藤原の声には少し緊張がにじんでいた。
展示会場には、神崎のプログラムと森川の写真が融合した空間が広がっている。来場者が特定の写真の前で立ち止まると、映像が動き出し、優しい音色が流れる仕組みだ。
「わあ、すごい!」
「これ、どうなってるの?」
来場者たちの驚嘆の声が響く。赤城がにこやかに説明をしながら、来場者を導いていく。
午前10時、審査員たちが会場に入ってきた。藤原の父親もその中にいる。藤原の表情が一瞬硬くなるのを、夏希はしっかりと彼の袖に触れて伝えた。
「大丈夫。私たちの想いが伝わると信じて」
審査員たちは一つ一つの展示をじっくりと見て回る。ある年配の審査員が神崎のプログラムの前で立ち止まった。
「これは...VRを使った心理療法の原型だな」
「はい」藤原が前に出る。「私たちは、テクノロジーとアートの融合で、人の心に寄り添う方法を模索しています」
その時、突然のことだ。神崎のノートパソコンから警告音が鳴り、画面がフリーズしてしまった。
「!?」
「どうした?」赤城が慌てる。
神崎は冷静にキーボードを叩き続けるが、画面は応答しない。
「外部からの強い電波干渉だ。故意の妨害かもしれない」
藤原の父親の口元がわずかに動いた。夏希はそれを見逃さなかった。
「大丈夫」夏希が微笑んだ。「私たちにはまだ森川さんの写真があります。そして、私たちの想いそのものが最大の展示です」
森川がうなずき、カメラを手に取る。
「その通りだ。技術がなくても、私たちの伝えたいことは変わらない」
赤城が来場者に向かって叫んだ。
「みんな、ちょっとしたトラブルだ!でも私たちの想いは止まらない!」
その時、神崎が立ち上がった。
「待て。バックアップシステムを起動する」
彼がスマートフォンを操作すると、会場のスクリーンに別のプログラムが映し出された。よりシンプルだが、心に響く映像が流れ始める。
「まさか...二重システムを?」
「当然だ」神崎の口元に笑みが浮かぶ。「お前たちの想いを、一つの機械に預けるほど俺は甘くない」
審査員たちの間に感嘆の声が広がる。藤原の父親の表情が次第に柔らかくなっていく。
午後の審査結果発表。五人は手を握り合って結果を待つ。
「優秀賞、『時の軌跡』チーム!」
彼らのプロジェクト名が呼ばれる。会場から大きな拍手が起こる。
藤原の父親がゆっくりと近づいてきた。
「...認めざるを得ない。これは単なる遊びではない」
「父さん...」
「約束を守れ」父親は藤原の肩を叩いた。「お前の道を、しっかりと歩め」
その夜、片付けを終えた美術室で、五人は笑顔で座り込んでいた。
「やったな!」赤城が嬉しそうにはしゃぐ。
「みんなのおかげです」藤原の目には涙が光っている。
森川がカメラを取り出し、静かに言う。
「この瞬間を、永遠に残そう」
フラッシュが光り、五人の笑顔が刻まれる。
神崎が突然口を開いた。
「おい、相沢」
「はい?」
「お前が最初に俺のコードを褒めてくれた時、俺は初めて...自分を認めてもらえたと思った」
夏希の胸が熱くなる。
「神崎さん...」




