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第六話 白鳥と王子


"キーンコーンカーンコーン"


 学校が始まって二日目の今日は半日授業だった。

 とはいっても、お昼はあったし、時間的に2時になってはいたが……


 やったことといえば、楽しいレクリエーションだけで、あっという間に放課後になっていた。


 楽しかったとはいえ、友達は全然できそうになかったけと……


 と、少し落ち込む。


 すると、


「じゃ、私は弓道部の見学行ってくるね!!」


 そう言って、唯一できた友達?の楓は元気よく教室を飛び出していった。


 ほんと、元気だな……

 きっと、友達もたくさんできるのだろう。


「はぁ。」


「私は、屋上に行こう。」


 横に置いていた楽器ケースを持って私も教室を出ることにした。


ーー


 屋上につくと、学校が山の中にあることもあり、空気がきれいだった。


「ふぅ~!」


 私は、少し深呼吸をする。


「さてと…オーボエを組み立てますか!」


 横においていた、楽器ケースを空け、オーボエを組み立て始めた。


「木管は、あんまり外で使うのはよくないけど……」


 練習用だし、プロの人でも木管を外で練習する人もいるから問題はないけど…

 痛みやすいのにはかわりない。


 日差しなんかが良くないらしい。


 木製だから日光で成長する的な…


「まぁ、無いか…」


 そんな馬鹿なことを考えているうちにオーボエを組み終わった。


「最後にリードを付けてっと。」


 あらかじめ水につけて湿らせていたリードをオーボエに取り付けた。


「完成!!」


 口の形をアンブシュアにし、圧力の強い、それでいて長い息を吐く。


プゥ〜♬


ブゥ〜♬


「良し!問題なさそう。」


 音を確認し、少し考える。


「何の曲を吹こうか……」


 スマホで楽譜帳を開き、曲を見ていく。


「これにしよう。」


 選んだ曲の楽譜を開き、少し目を瞑る。


 私は、湖の情景を浮かべた。

 曲を演奏するとき、いつもしていることだ。

 想像することでより、曲に演奏に没入できる。


 湖には白鳥と凛とした王子さまが見え、次第には悲しい気持ちで心が包まれていく。


ヒュロロロ〜♬


 優しくも切ない音をイメージする。


 いつも通りに……


 いつも通りに……

 

 しかし、演奏を始めた瞬間、不思議な気持ちに包まれた。


 周りで微かに聞こえる部活動掛け声、風の音、下校する生徒の笑い声。

 何より、その音たちをノイズと思わない自分。


 更には、この場所に身を任せそうになる位の開放感。


 "もしかして、これが楓が言っていた青春のど真ん中って気持ちなのだろうか"


 私は、いつも以上にのびのびと演奏をすることができていた。


ピュ〜♬


「はぁ、はぁ、はぁ!!」


 私は、演奏を終えて呼吸を整える。


「はぁ、はぁ。」


"パチパチパチ"


「えっ!」


 ドアの方から拍手の音が聞こえてきた。


「ごめんね、つい。」


 そう言いながらこちらに歩いてくる。


「それにしても、凄く感動したよ、素晴らしい演奏だね。確か曲は……そう、チャイコフスキーの"白鳥の湖"だっけ?」


 突然の拍手と声をかけられたことに戸惑いながらも、私は問いに答えた。


「あ、ありがとうございます。今のは白鳥の湖、情景の箇所です……」


 そう言って声の主のほうを見る。

 そこにいたのは昨日の先輩だったのだ。


「あの、昨日ここでリコーダーを吹いてた先輩ですよね。」


「うん……て、よく見たら君は、昨日の新入生かぁ。まさかこんなに楽器が上手い子だったなんて!確かに吹奏楽部入るって言ってたもんね。」


 爽やかな声、それでいて少しなまりのあるイントネーション。

 

 なんか優しそうな先輩…


「でも、なんで先輩がここに?」


 先輩は吹奏楽部なんだし、部活動で集まってるはずじゃ……


 と、心のなかで思うよりも先に疑問の言葉が先に出てしまっていた。


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