第七話 リコーダーの理由
先輩は、吹奏楽部ではないのですか?という疑問を投げかけたあと、ふと無粋な質問ではなかったかと思った。
人には人の事情があるだろうし、それを詮索するのはあまり良くない。
しかし、
「吹奏楽部行っても無視されちゃうんだよね、僕。だから誰もいないここで練習してたんだけど……今日は、先客がいたみたいだね。」
と、かなり重い事情を少しも暗い顔をせずに爽やかな顔で答えてくれた。
「い、色々とすいません。」
主にそんな質問をしてしまったことに謝った。
「別に気にしないで……それより、吹奏楽部入るんでしょ?」
「あ、は、はい。」
話題を変えたかったが、そうはいかないらしい。
「すごく上手だったもんね。それ、オーボエってやつ?初めて見たなぁ。」
先輩は、目を輝かせてこちらを見てくる。
「そんなに楽器に興味あるんですか?」
「そりゃあね。一応、吹奏楽部に入ってるわけだから楽器には興味あるよ。」
そう言いながら手にはリコーダーを持っている。
「なら何故、リコーダーを?って顔してるね。」
「そんな、顔に出てましたか!?」
あまり表情には出ないほうだと思っていたため、そう言われて恥ずかしくなり、少し顔が赤くなる。
「ふふっ……」
先輩はそんな私を見て、少し笑みを浮かべた。
さっきまでの優しさのある表情から一転、少年味のある笑みだ。
「あ、そう理由ね。竜胆先輩、えっと…吹奏楽部の部長の人知ってる?」
「はい。」
「入部して初めて音楽室に行ったときに、竜胆先輩が僕にリコーダーを渡してくれたんだけど……別に嫌がらせとかじゃなく、大会前で楽器を教える人がいないからだと思うんだけど。」
流石にそれでリコーダー渡すのは嫌がらせなんじゃ……
「大会前の部活に迷惑をかけないよう屋上で練習しろとも言われてね、だから大会が終わるまでは部活に顔出さずにここでリコーダーの練習を毎日してたわけ。」
でもそれじゃあ……
「大会って去年の大会ですよね。それなら終わってるんじゃ……」
「そう、それでね、大会が終わって部活動に顔を出そうと思っていた日、その日もここでリコーダーを練習してたんだけど…」
それまで、さわやかな顔で話していた先輩が、少し顔を暗くし、一呼吸を置いたあとに話を続けた。
「竜胆先輩が屋上に来て怒ってきたんだよね。『お前がそんなもの持っててなにになる!!』って、自分からリコーダーを渡したのに。何が悪かったのか聞こうと思って部活動に行ったら部員からは完全に無視。それでも、いつか竜胆先輩がここに来て僕を認めてくれる……そう思ってここで今も練習してるんだ。」
話が終わると、先輩は再びさわやかな顔に戻った。
かなりヤバい話をふらっと聞いてしまった。
もし、嘘だとしたら……
そんな訳はない。先輩が嘘をつく理由がないから真実なんだろう。
真実だとしたら…
そんな無視をしたりするような部活なのか。竜胆部長含めて、そうは見えなかったけど……
もしかしたら何か理由があるのかもしれない。
私は、楽しみにしていた吹奏楽部が少し怖くやった。




