第一話 オーボエと天才ちゃん
私は、音楽と共に生きてきた。
生まれたときからずっと…
プロのクラリネット奏者である父の影響で、どこに行ってもクラシックが耳に入っていた。
だから周りとは音楽の趣味なんかは合う訳はないし、友達も少ない。
それでも、この楽器を吹いているときだけは、幸せな世界へと行ける。
そう、このオーボエを吹いている時だけは。
オーボエとの出会いはいつだっただろう……
あれは5歳の時、父の所属しているオーケストラを見に行った時だった。父がクラリネットを吹いている横にいた女性。
その女性が吹いていた楽器こそがオーボエだった。
彼女のソロを聴いたとき、不思議な世界に惹き込まれそうになり、ソプラノで歌っているかのような演奏を目に焼き付けられた。
それから私は、オーボエに惹かれていった。父は、どうやら私にクラリネットを吹いてほしかったらしいが、意思は変わらなかった。
小学高学年になった時に、ついには父が折れ、オーボエを吹かせてもらうことになる。しかし、その時にある条件を突きつけられた。
それが同年代の人たちと演奏をすることだった。
一番手っ取り早いのは吹奏楽部に入ることだったが、進学した中学には吹奏楽部はなかった。
だから、この高校を選んだのだ。
県内で全国レベルの吹奏楽部がある、武理高校を……
ーーー
「ここが、武理高校か。」
私は今日から通う武理高校の門を前にして呟いた。
校門をくぐるとすぐに
「水泳部に入りませんか?去年は惜しくも全国で入賞はできませんでしたが、今年こそは……」
などという声が聞こえてくる。
この武理高校は、県立ながらいろいろなスポーツが全国レベルであり、特に水泳部と吹奏楽部がそのトップに君臨している。
他の部活の勧誘の声も多くあったが、どれにも興味を惹かれなかった。
「私は、この高校の吹奏楽部にはいるために来たのだから。」
少し進み、玄関にはクラス分けの紙が貼られていた。
「私は……2組か。教室は……げっ、3階。」
この高校では、1年が3階で2年、3年と下っていく方式らしい。
私は、なけなしの体力を絞り階段を登っていく。
3階につき、顔を出してみるとそこには1-1組の看板があった。
「はぁ、やっと着いた……」
ぴゅ~〜〜♬♬
ぴゅ~♬
教室へ向かおうとしたその時。
更に上の階段の方から楽器の音が聞こえてくる。
ほんの微かにではあったが、綺麗な音が。
「全国レベルの吹奏楽部にもなるとこんな日にまで演奏しているのか……」
少し気になり、私は使い切った体力を絞り、さらに階段を登ることにした。
「それにしてもこんな音の楽器って吹奏楽部で使うっけ?」
聞こえてくる音は、むしろオーケストラなどで聞く音ではなく、吹奏楽部がない中学でこそ聞き馴染みのある音。
そう、リコーダーだ!!
私は、階段を登りながらそう結論づけた。
「でも、なぜリコーダーを?」
吹奏楽部では、使わないだろうし、何のために……
階段を登りきってみるとそこにはドアがあった。
屋上へと続くドアだ。
横にあった窓から屋上を眺めてみる。
そこには、顔立ちの整ったリコーダーを演奏する男子生徒の姿があった。
ぴゅ~♬
私は、彼の力強い音と少し儚げな演奏姿になぜか目と耳を奪われていた。




