第5話 流星
運命の日…
それが突然来るとしたら前触れが
何も無い日のことだろう。
そう伝うかの如く、少年の両手を受けに隕石が降った。
オメーも覚醒者なんだな。武器関係のオブか?」
「私のはもっと気高く上品な能力だよ」
「とぼけんな。どうせ戦機だろ。
致死性の高い武装品を作れて、それを扱えるのは覚醒者だけだ」
「ハハハッ、よく言われるよ。
でもプロだから上手く騙すつもりだ。バレたら死活問題」
「…あ、なるほど。つまり…」
つまり「武装品はあくまでもマスコット」と言いたいのだ。
ちなみにディアードの悠久潜在能力は宝石というもの。
宝石を生み出し、あらゆるものに加護を付与するもので、
例えばターコイズの加護は放つ弾丸に氷のエレメントと
必中の加護が込めることができるのだ。
ウリエルを倒す際に使ったのは
翡翠の加護を付与した5.58ミリの弾。
通称”翡翠弾”の効果は、毒のエレメントと
命中した部位に腐食の加護を付与する。
神経となる様々なコードや骨組みに当たったので
言い換えるなら、精密機械に王水をぶっ掛けた状態になっている。
「バフ系の何かってね…」
「今はどうだって良いだろう
さあ、僕等の目的はこの先の魔国民の緊急避難所だ」
うすら積もった雪の路を進んでいく。
生き延びた魔国の兵士達が集まった避難所では
大きな医療用だった廃棄施設が使われている。
といっても戦争によって医者も患者も逃げたせいでできた箱。
つまり出来立てホヤホヤの野戦病院である。
病室では腕や足を怪我した人達で程々埋まっていた。
しかしそれくらいに生存者がいなかったのである。
生き延びた兵士達がベットの上で後悔と屈辱に顔を歪ませている。
相手側の兵器に対して不勉強だったと考える者や、
権力に対して学歴を積むべきだったと思う者。
次の戦争に焦燥する者がいる。
病室の一つ。コドクは名前の通りか個人部屋で治療を受けていた。
ちょうどその部屋にあたるほどに天性のぼっち。
だが静かな部屋で静かに青年は小刀を彫っていた。
コドクの趣味はノートに武器を描く事。
モチーフがなんであれ色々なパターンを書いている。
特に刀剣及びその類が好きで、自分にも断絶のカテゴリが眠っていたらと
妄想する日々だった。
「まあ、僕が目覚めてもどうせ使いこなせないだろうな…
好きってだけで目覚めたらそんなに苦労しない…」
ストルム達は入って事務室に通される。
代表の隊長が来るまで待つ事数分。
面会するや否や伝染病に効く抗生物質を100部ほど渡して
情報を聞き出すことにした。
「科国の兵器は我々の思う所を遥かに凌駕していました。
貴族は皆逃げ去ったという報告が来た時に、
全て両陣営で行われていた”戦争ごっこ”だと気付いたのです。
我々前衛の一部は命があっただけマシでした」
「この戦争で使われた兵器をご存知で?」
「使われて初めて知る事ができました。我々は特に何も…」
話すだけでとても辛そうにしている。
オブリビオンに目覚めていない者は、それだけで
事態は急激に過酷と化すのが戦争だ。
「お二人方は覚醒者で?」
「私はともかくこちらの者はそうなります」
「ブホッ!…おいコラテメーいまなんつった!?」
「はしゃぐな、病院内では静かにしろ」
「テメーが余計な事言わなきゃな!」
「あはは…お二人とも覚醒者でしたね」
「ストルム、減給な」
「ふっざけんな!」
その時別の兵士が耳打ちで会話を遮るとおもてなしを
出してくれた。
「遠路はるばる御足労頂いたわけですし
どうぞお召し上がりください」
「ああ、どうも…。ところで…」
茶にも菓子にも目もくれず色々情報を聞き出すディアード。
欠伸した後ストルムはのっそり立ち上がる。
「ちょっち御手洗」
「はい、少し距離がありますが案内板を見たらわかります」
「どーも」
ガラガラ、トン。
わざと案内板を無視して来たのは外部搬送用の事務所。
カーテンが閉められて誰も居ない様な場所で
竜はその本性を表した。
「…あんま舐めた真似すんじゃねえぞ
このタイミングであんなモン出せるはずがねえだろ」
一見すると誰もいない筈の場所で呟いた言葉。
しかし、向こう側の人間は確かに受け取った。
その呟きに込められた殺意を。
「お話頂きありがとうございました
今晩はなるべく戸締りをしっかりとしましょうね」
「は、はあ…」
「特に兵士なりたてで五体満足の者は早めに別の場所にやった方が
病人も気が休まりますよ」
その言葉を聞いた途端に隊長は血の気が引いた。
まさか、近くにいたのか。勘繰ってからは取り急ぎ
巡回と簡単な施錠を用意した。
夕明けの茜空はどことなく不安感で高まるようだった。
課題に追われる学生のような気分になるのは
一兵士となっても変わらない。
コドクは兵士でいる事に昔の自分をレイヤー越しに
見据えている。
その時、夜に入りかけた方向の空から何かが落ち来るのが見えた。
飛行機雲を描いて落ちてくるが、強い光を放つうちに消えた。
もしかしたら科国の兵器や偵察機かもしれない。
コドクは事務室の隊長の元へ行き報告をすると
外へ出て説明をする。ちょうどストルムはその付近にいた。
監視のつもりだった。
「おや、どうも。まだ近くにおられましたか」
「もう1人は兵士か。ちっこいのに勇猛なこったな」
「(風のエレメントと鱗っぽい肌…)
あの…貴方はもしや竜族の方ですか?」
ストルムは自己紹介をするとコドクは見えた光る落下物について
説明した。ますます怪しいと感じた以上離れるのも得策ではないと
判断すると、ディアードと打ち合わせて深夜まで監視をしてみる事にした。
夜、光は流星となって蘇り
コドクの手のひらに舞い降りて虹色の輝きを優しく放つ。
閲覧ありがとうございました
最後のシーンはとあるジブリ作品の
ワンシーンを思い浮かべて書きました。
選ばれし者、隠された力とかそういうのって
案外私達にも眠ってるものなんでしょうね。




