第49話 汚職とレジスタンス
修行僧の様な男に助けられる形で
現場から離脱したコドク。
戦績を報告するためのレポート作りの後は、
鞘の強化や訓練に励む。
一方リュシオにも新たな指令が降るところだった。
司令室に戻ったコドクは談話スペースに寝かされる。
修行僧の男は目が覚めるのを待つ。
その時に彼は瞑想によってその場から抜け出すのだ。
部屋から出られないというより、
抜け出すに値しない。
夢の中
工房の周辺はすっかり試作品の墓場となっていた。
造った作品の数だけできる作品が洗練される。
しかし、その経過に無駄があるとすれば、
それは過ぎ去った時間という再現できない
何かでしかない。
剥かれたバナナの皮、交換した電池、
終えた学年対象の教科書に、剥がし終えたシール。
そんな感じか。
「(前々からずっと思ってたけど、
これが試作品だと思っているうちは、進展がないんだ)」
ガラクタの山から取り出した折れた刃のダガー。
ダマスカネルの装飾がキラリと輝く。
それみよがしに
工房の書物置き場から一冊の本を開く。
「如何なる時も、最高の斬撃を提供するために、
この鉱石に目を付けた名匠は、
当然の如く潜在能力を確認し、個性を導くと
その余りにも本物の木目に似た模様に
刀剣としての素質を強く見出したという」
「(模様がなんて言って、
結局戦う事しか見出せない。
僕はそうじゃない…そうありたいのはエゴなのか)」
工房のおじさんが気にして本の文欄に指を差し、
この文に着目してくれと指示をだす。
「…結局この本が出る時代まで
この鉱石の良さは時代に恵まれなかったが、
渡るべき者に渡ったのか、こうして無事
エネルギー資源として語られたのは、
本来の良さが見出されたからなのだろうか」
後ろで輝く鉱石をくり抜いて
器になった武器を見ると少し違和感があった。
やがて空間が歪みだし。また目が覚める時が来る。
「…あ」
「お目覚めですか。初めまして、私はエバロ」
「コドクです…あの…もしかして」
「お代は結構、既に頂いています故に。
さて…目が覚めたのなら、レポートをまとめましょう」
設置していたパソコンの電源を入れれば
纏めるツールを開いてそこに書くことができる。
報告のメイン。
10日前に発生したクーデターの戦力情報と
未公開・未伝達となっていたミサイルのデータ。
戦力は覚醒者1名と兵装多数と断定可能。
戦車100台、戦闘機30台。
要は都市を落とすための戦力が完成していたという事。
「間違いなくこう言ってたけど
ミスがあったら嫌だな…」
「ではもう一度確認に行きますか?」
「…やっぱ今の無し」
流れは主に制圧戦のそれ。必要に応じて
覚醒者がそっと手助けする様な事になっている。
情報は不明だが、戦車の隊列が攻撃性の
高い布陣を意識していた為、弱体化系の可能性が高い。
「鈍化かな。弾薬の種類はほぼナパーム弾だったし」
「ほう…(良い視点ですが、まだまだですね)」
最終的に狙いは反逆者の鎮圧。
主に相手側の生死は問わない、それどころか
住宅街の建物が障害となるなら薙ぎ払ってもいいと
発言が取れた。どうやら結果を先急いだ模様。
「酷い方でした。仕事以外で関わりたくないくらいに」
「…」
「…エバロさん。今何を考えましたか?」
「…なんだと思いますか?」
コドクは作業を止めた。
今の発言は相槌を打ちやすく誘ったのに
一方的に何も言いそうになかったから。
「知ってる人…なんですか?」
「…聞かないでほしい。そもそもあの人のせいで
今回のクーデターが起こったから」
「教えてください。
こう見えて僕、運命力に自信がありますので。
…隠さずに話してくれたら、今度ランチをご馳走します」
「…ふふふ。未成年ながら先見の明がとても眩しい」
政治的汚職が発覚した事後処理を
任せた相手が情報を筒抜けにした事件が発生した。
ニュース番組でやたら騒がれたせいで
為替は安上がり、国内企業の株価は暴落した。
責任を追求しやすい状況ができたら何をするか、
選挙だ。
当然不正を行い王国議会の一員の立場を保持するも、
レジスタンスの一人が最初からそれを見抜くと、
何をしたのか
「ある一種の暴威措置ですが、
連隊責任を国民全員に投げつける政策をしました。
それがあの悍ましい工場化の原因です」
「国力回復を理由として、アレはとても…」
「できるんです。鎖国すればね」
「え?鎖国なんて…」
「表向きにはしないんです。
だから工場地帯にしてそこいら一帯を立ち入り禁止にした」
工場地帯にしたあとは利権絡みで
大陸間の企業を呼び寄せて国内の人間の就職先にすれば
物はできて職難は無くなる。
強制労働だが、国民は目の前の問題が消えて
安定した生活を前に何も文句を言えない。
隠蔽が完成した結果。開いた貧富の差に激怒する
レジスタンスが結成、内戦に至る。
「今の説明をレポートにして纏めなさい。
これで任務完了は間違いないでしょう」
「ありがとうございました
(結局関係性については聞けなかったな…)」
提出後10分が経過すると、
扉の施錠が解かれた。認証されたようだ。
「コドクさん、せっかくなのでこのまま食堂へどうでしょう?」
「え、良いんですか?ではせっかくなので行きましょう」
デザートカレーのセットは1500円。
インド料理風のスパイシーなカレーとナンのセットが
とても良い香りで提供される。
コドクも同じものを注文した。
「私の大好きなセットなんです。
ご馳走してくれた代わりに武装品の情報は如何でしょう?」
「それ、ぜひ聞きたいです!」
武装品のダガーについて説明すると
エバロ曰く刃渡を別の物にも変えられるという。
そんな説明はなかったが、レギオンのダガーなら、
店舗で相談すれば改造してくれるとのこと。
「今使っているのは…
チタン製ですね、とても基礎的で扱いが良い。
ここから変えるなら…そうですね、ダマスカネルはどうでしょう」
夢で探った鉱石を言われて腑に落ちたコドク。
戦闘時の居合ですらとてつもなく強力な一撃を
放てたが、どう進化するのか楽しみだ。
「ダマスカネルは斬撃の象徴です。
もし貴方が近接格闘に腕を覚えるなら、
今後役に立つと思いますよ」
「素材は向こうが用意してくれるんですか?」
「まあ、大方そうですけど。
ただくれぐれもブリリアントの物だけは注文しない方が
身のためでしょうね」
食事を終えると自室に帰ってディアードに連絡した。
十分な情報を出す事に成功していたので、
関心の表情で言葉をかけている。
ただ今回の任務は助太刀がなかったら
失敗していたのでその事も伝えると
少し考える素振りをしながら考察を告げた。
「ストルムにも話を聞いてみたらどうかな」
「あ…なるほど」
「もしかすれば…ね」
一方でリュシオはディアードを呼んで談話スペースで
協力を仰いでいた。単独の依頼が舞い込んだが、
今回の任務についてはそもそも1人での探索が面倒に
なりそうなものだった。
閲覧ありがとうございます
エバロは俗に言うインドの修行僧のような風貌をしています。
ひょうひょうとしていますが、武術家の界隈では一部の強者だけが
恐れ多くも素性を知っている感じです。
次回もお楽しみに♪




