第40話 成果
目標を達成して帰還が完了すると、
司令室ではナンバー2が待っていた。
話されるのは何故この任務を託したのか。
そして、戦いが不得意なコドクに何故あんな
無茶をさせたのかを語る。
鉱山地帯を降ると田舎町が広がっていた。
そこそこ賑わっている学研都市らしく、
少し離れた場所に大学と思わしき巨大な校舎が
ハッキリと見えている。
例の酒場に着く頃にはちょうどお昼だった。
街中のレストランか食堂を探したいが、
こんな大荷物でどう入ればいいのやら。
空腹な時にはリュシオに頼れば良いと思えるが、
料利はあくまでも調理工程が必要なので、
落ち葉をかき集めてサラダが作れるという
ものではない。
「雑草焼いて野菜炒めとかはダメ?」
「やった事あるけどできなかったわ」
「そういうもんかなあ」
「そういうものなのよ」
ならどうするか、
大通りに出ると見えたスーパーで買い物するだけだ。
「あ、イートインみっけ」
「そこしかなさそうね
(所有物がアレじゃなければファミレス行けたのにね)」
リュックの中には1キロ数億円の原石が保管されているわけで
そう易々と目を離せるわけではない。
惣菜コーナーの弁当は久しぶりのマトモな地上の料理であって、
見るだけで食欲をそそられた。
一方司令室でその様子を見ていたコドクとディアード。
自分たちもお昼に行きたいところだが、任務完了までは
絶対に司令室からは出られない。
なのであらかじめ買ってきている。
「もう一回ワープできないんですか?」
「僕たちは既に任務を完了しているからね、
これ以上現場に干渉するなら上の許可がいる」
「不要不急の外出はできないんですね」
備品のポッドがお湯を沸かし終えて、
レンジが温めを終える。閉じ込められている状態だが、
備える事くらいはできるのである程度の生活はできるのだ。
「ストルム、聞こえるか」
「どしたー?」
「ポイントは御手洗よこの用具室だ。
そこからワープしてくれ、鍵は開けている」
「おっけー」
こうして18時丁度に全員が帰還した。
部屋のロックが解除されると一同全員安堵した。
しかしそこから伝わるのはどう考えても安心できるような、
そんな感じはしなかった。電磁波からして向かっているのがわかる。
あの人が来た。ナンバー2だ。
「…ご苦労。
まさか発見できるとは」
「司令大臣にも後で紹介します。
パーフェクトクリアはこの者のお陰でして…」
ほう、君が…そういうような表情をしながら
物珍しく瞳を見つめる。威圧的な顔に緊張しつつも
嫌な人でも悪い人でもないと認識するコドク。
「…うむ、わかった。
ところでディアード、レポートの件だが…」
指摘箇所の説明を済ませるとミッション達成のブツを渡す。
少し見物しては小突き、中身の情報を確認して本物だと
確かめるとそのまま預かっておく事になった。
だがその瞬間。
「…!」
「な…」
ジェネシスダイヤモンドの一部が綺麗に剥がれ落ちた。
しかもまるで主人を選ぶようにその一部は
コドクの前に転がっていく。
「まさか…君だったいうのか。
ディアード、指示通りにやってくれたようだな」
「…意図こそ掴めませんでしたが、
この者は全身全霊を尽くして戦い抜きました」
そういうと、司令室の応接間にメンバーを集めて語り始めた。
「コドク君…君はこの組織に入会したときどんな気分だったか?」
「え…正直に言うと…意味不明でした」
コドクはこの時初めて自分はスカウトされていた事を知った。
あらかじめ任務の前に言うのではなく、こう言う時に言ったほうが
本人のためだと推測したという。
が、コドクからすれば答えを聞けていない。
「ウチはただ優秀な者や特別な者が入会できるわけでは無い。
私達は君のあるものに目を向けていたのだ。自分の中でそれが
何かわかるか?」
「特には…」
スカウトの決め手となったのはヴェルサイス領侵攻より
1年前に遡る。ろくに就職先が見つかる時代では無く、
器用貧乏なコドクにとって、やりたい事も特に無く、
アテの一つも持ってない中就活に奮戦していた頃。
「落とし物を届けてくれたようだね。
あの時は助かったよ、ただ…それが理由なんだ」
「落とした物はなんだったんスか?」
「(ストルム…舎弟じゃあるまいし…)。
「紙袋でしたっけ、なんと無く覚えていますよ」
「その中身が重要だった。
その時追っていたターゲットの参考資料…
警察に届けられてしまえば、重大なミスになるところだった」
運ゲーでもよくあるような展開だが、
ギルドが追っているのは当然重要指定人物。
いわゆるS級危険人物や指名手配犯に関係する
資料が入っていた物。
「突然無くなっていた事に気づいたらしい。
近くにいた時に声をかけて届けたとなると、
つまり君はこの組織に置いて貢献できる人物という風にも
捉えられる」
「ええ…なんか無茶苦茶ですね」
運命がどうのこうのといっても
それはそういう出会いをしたものだけに
語る資格がある。スカウト以外に入会がほぼ無い
組織の伝手を作るためにはそういう行動ができる
人間である必要がある。
「今ブツが君の元へ転がった時、
私は確信した。間違いない、君という人物は本物で、
この鉱石も本物だと。運命は見えて初めて信用に値する」
「それが僕だった…」
福引のガラガラで1等を当てる者がいるとしたら。
宝くじで一等を当てる者がいるとするならば、
間違いなくその人はその瞬間に運命という概念に
魅入られ求められた人物の事だ。
体は勝手に動いただけで、何も考えていない訳では無かったけど。
「…ちなみにあの怪獣は私1人でも倒せている」
「…やっぱりそうですよね」
じとーっとした目で見つめるコドクと、
うわあマジかよといった目でドン引きするストルム。
フン…とリュシオはため息。
「君にわざわざ死に目に当たってもらったのには理由がある。
ディアードから色々話は聞いたはずだが、
どうしてもこの職をやって貰う者は万能に近ければならない」
「だからわざとあんな説教してまで…」
僕らの仕事は国家存亡を賭けたもの。
あれしかできない、これならやると言うものでは
拉致が開かない。
勝ってしまうと世界征服に王手が掛かり、
負けてしまうと領地そのものが消え去る危険性がある。
そこに住まう者を無視すれば、明日からの生活が無くなる者
すら存在する。米、野菜、果物、肉、魚介を始めとする食料。
それらの生産を莫大にする機械やシステム。
ただ戦勝すれば良いという問題じゃない。
起こってしまったものを穏便に済ませるにはどうするか、
そこでこの組織があるべき結果の為に特命を帯びて
必ず任務を遂行する。
その為には必ず弱音は吐けない。
この任務にも、大きな戦いになる種はあったからこそ、
ギルドは形状を作り上げて、完遂する事で惨事を回避することが
できたのである。だからこそ、コドクも戦える人間になって貰う
必要があったのだ。入会した瞬間からあったのである。
「無茶はいわん。完遂こそが目標だった。
無様は晒せ。その為の演習であり、その為のメンバーだ」
「私の総評としては、ストルムはB+、コドクはAと断定できます」
「おい!?それどう言う意味だよ!?」
「なんだ、もう忘れたのか?
これの一個前の任務のこと」
独断と偏見でスタートダッシュを大きくミスしたストルム。
言われた通りのことはやりつつ好奇心を見せたコドク。
偶然タッチした施設はともかく、進行においては
コドクのミスは少ない。
「司令大臣、コドクは如何でしたでしょう」
「無論、想定通りよくやってくれた。
ディアードもリーダー職が骨身に付いたようだな」
「恐れ入ります」
席を離れると重苦しい空気はなくなり、
表情を緩めたディアードは面と向かって言った。
「皆ご苦労だった、
さて、お待ちかねだろうけど
今日は給料日だ。システムを説明するね」
閲覧ありがとうございます
戦争への介入になる原因はこちらの世界でも色々ありますね。
近頃ですと核兵器を持つ国に対する威圧的な物ですら
ヘタするとドカンですからね。
次回もお楽しみに♪




