第36話 思慮を乗り越えて
怪獣を倒した後、その次にやるべきは調査。
何処から現れて何が目的だったのか、
それらの全てを明かす必要がある。
その一方でストルム達は目的の品と同時に
とある脅威に遭遇したようだった。
コドクは震えていた。
赤く染められた怪獣の遺体と、その断末魔が脳裏に張り付いて
呪いのようにメンタルを蝕んでいく。あの人が敵だったら
今頃僕は…どんな目に遭っていたのだろうか。
5体満足で死なせてくれるのだろうか。
やがて気を失っても、見る夢は悪夢ばかり。
撃たれて死んでの繰り返しなのに、
その姿は一回ごとに変わる。体が毒に侵されていったり、
身体中から棘が生えたりもした。怖くて眠れない。
朝、遺体の調査を始める時、
ディアードは一瞬でコドクの体調不良を見抜いた。
傷は治りかけでも異常に疲労感が漂う。
原因は自分だとわかっていたが、だからと言って
このまま議員から解放する訳にもいかない。
隕石といい燃料といいあまりにも貴重な存在。
本来はストルムよりも必ずスカウトするべき人物だったのだから。
「今日は休みにしよう。
私が付き添いで見るから気にかけるな」
「…はい」
震える脚、敵意でも抱かれているかのよう。
さすがにショックではあるが、自分が何者なのか
それは自分が一番わかっていなければならない。
現に2度も囮に使っておいて信用しろなんて、
都合がよすぎる。
ベットで寝ても嗚咽がすごい。不安だ。
まるで死にかけの小動物を見ている気分だ。
「すまない…私自身どう接すれば良いのかわからない」
「これは…僕の弱さなんです。
いつ死ぬのかわからない、それを信用するべき人を
その魂胆にしてしまっている」
コドクの中でもどかしさがある。
ディアードのことは信用できるかできないかより、
信じ抜かなければならない存在。なのに自分はこの人に
殺される心配をしている。
「じっとして」
ディアードがローズクォーツの加護を宿して
手を額に当てる。感じるのは喪失への恐怖や暗闇への葛藤。
そして取り柄のない自分は殺されてしまうという常識。
混乱する脳、その中に伝えたいメッセージを送る。
「君は貴重なんだ」と。
しかし意外にも深層心理には紺色と暗黒の空の真ん中で、
赤く輝く強い叛逆心がハッキリと見えていた。
戦っている。茜色の空模様は色濃ゆくそれを伝えていた。
ディアードが一度レポートを纏めるために部屋から出る。
加護のお陰で少し落ち着いたのか眠りについたが、
少し経って起き上がると筋トレを始めた。
自分の中の自律心。強い人間の元にいるという事は
死ぬ気で忠誠を誓うのと、生き残るためにしょうがなく仕える
2つのパターンがある。コドクは後者であり、
今自分がディアードを相手に持つ感情を凌ぐために
この瞬間から強くなりたいと願う。
「いつまでもこんな思いをするわけにはいかない。
もし仕える理由があるのなら恐怖で抑える必要がない。
だから少しでも強くならなきゃ」
僕はこの一度きりの人生で誰、何に全てを捧げるのか。
目の前の上司はそれに値するのか、どうでもいい。
今はただ、虚栄をなくすべきだ。
休憩がてらコドクの様子を見にきたディアード。
必死に腕立て伏せをする姿に考えを察して、
少し任せてみる事にした。
「…彼も子供である事を卒業しようとしている。
大人である私ができる事は、保護よりも観察や助言であろう」
調査は順風満帆だった。
何より正体がなんと無くだがわかったのが大きな進歩と言える。
この怪獣は人工的に合成されており、その証拠として
キメラを作る際の繋ぎ目になる縫合跡に
非常に強い魔力が込められていた。
「ティラノサウルスをベースにテリジノサウルスの前足。
そして胴体の上半分と尻尾がモサレックスで翼はプテラノドン。
脚はアパトサウルス、か…小学生が考えそうな合体竜だな」
だがある意味それでも本懐は遂げていて、それでいて
生物として合理的な合体でもあった。
ティラノサウルスの獲物を捉えることに特化した頭部と
自信過剰な思考は、全ての個性を攻撃的にするにあたって
身体のパーツが優秀である必要がある。
アパトサウルスの脚が支えるのが自分の図体より
遥かに動きが軽快なら、その時点で脚力として
十分な戦力となったのだろう。ふらつくことも
よろめくこともなかった。
例え足場や戦場が急に空の上、海の中に変わっても、
モサレックスのボディなら上手く対応できる上に、
飛行するに至っても流線型の身体が滑空の磨きを掛ける。
そんな巨体を支えるのは、プテラノドンの翼。
最大級の翼竜の翼が安心できるフライトを提供する。
流石にできすぎているからこそ、ディアードは
首謀者がいると簡単に察せた。
「キメラを作る魔術はあるけど、
こんなデカい規模のモンスターを作れるのはただ一人」
何処の誰かはわからないけど覚醒者である事がわかった。
一方のストルム達は、探している鉱石を
求めて怪しいポイントは隈なく探している。
だがしかし、進展はほぼないような物で
希少鉱石の探索は困難を極めていた。
「もう3日ね…日の光が浴びたいわ…」
「俺の前でそんなこというかねえ」
「ただの呟きよ…」
悪天の化身は黙々と作業を繰り返している。
リュシオは馴れない環境に疲労困憊。
綺麗なオフィスのありがたみが身に染みる。
鉄や石炭はかなりの量を確保できたので、
おおかたの作業は省いている。
ただこのままでは埒が開かない。
そんな時だった
「コドクから?珍しいな
…おう、おつかれーす。どうよ、そっち」
「こんなドスぐらい場所でも通信できるのね…」
話を聞いた途端ストルムの目に焦りが出た。
だがどちらかというと希望に満ちた輝きをする。
「おっけ、おもしれーもん見つかるかもな。
期待してろよ!」
「何があったの?」
「良い事教えてやるよ。
この作業はあと1日で中断だ」
タイムリミットは調査の為。
そして24時間以内に出なければいけない理由は
それがその時間内に絶対見つかるからだと言う。
一体何が見つかるのやら。
閲覧ありがとうございます
頭ティラノなら脚はめっちゃ早いやつにすれば良くね?
と思いますが、誰も思いつきませんでした。
ディノニクスだとちょっと小さすぎて結局アンバランスだしなあ…
次回もお楽しみに!




