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第26話 暗雲より

遂に始まった魔国の軍事侵略行為。

科国は応戦を余儀なくされるが、

異変はリュシオが居たヴェルサイス領にも発生する。

戦争の始まりだ。

黒い雲は出ているか

今夜は俺たちが門を開ける時だ。

パイロットは現実逃避に自ら悪魔になることを選択した。

人であることを辞める者も居たが人のまま死ぬために悪魔になる。

空をひしめく死の巨大鳥(ナスカ)は合図一つで

散開し、黒い雷を落とす。

爆裂した小型ミサイルからは聞いたことも無いような

爆音が、縁もゆかりもない人達に戦火を伝う。


あちこちで悲鳴が上がる。

あちこちで物が吹き飛ぶ音がする。

言うまでもなく火災が発生する。

建物があってはならない姿になる。

地獄が生まれた。

そしてそれを嘆く者がいる。ある覚醒者は鼻息ひとつ、

気を落ち着かせて自らの悠久潜在能力(オブリビオン)を行使した。


「巨兵剛建(ゴーレム・クラフト)」

瓦礫が集まると巨大なゴーレムが現れて

海水を火災の発生した建物に射出する。

2体、3体と現れては次々に消化活動を開始した。


しかし悠長にしてはいられない。

黒い殺人機が第二ターゲットに爆撃を開始する。

倉庫街の船と建物を爆撃した後の目標は、

商業施設や商店街になると皆察した。


煙幕で空も綺麗に見えない中、

悪天候が始まると、更に怪鳥の姿は追えなくなる。

レーダーで位置を調整できている以上、魔国からすれば

更なる好奇でしかない。

しかし、この状況はとある科国の覚醒者によって

もたらされた舞台だった。


「罪なき民に暴力(ちから)を向ける悪鬼め。

竜の裁きを抱いて眠るが良い。竜術(ドラゴア)・雷撃遊行(ライディーン)!」

雷雲の中で電流が走ると、その正体として黒龍がそこには佇んでいる。

やがて全貌が明らかになると龍は旋回と遊行を始めた。


攻撃を避ける為に各自散開。

実態のない魔力の雲で作られた龍が、ところ構わずに

落雷を放ち、その大きな身体で暴風を引き起こす。

普通に生きているだけでも命の危機に瀕するのだから

例え軍用機だろうと、もはや浮いてるのがやっとだった。

そして全てがヤケクソに思えた時、

龍の牙が10億ボルトの力で鳥を噛み殺す。


「…撤退司令、撤退司令、エリア2への攻撃は中止。

直ちにスタートポイントへ移動せよ」

「…悪いな、もう俺たち龍の腹ン中だ。

あばよ、来世は貴族でも権力者にでもなってやらあ」

「繰り返す。直ちに撤退せよ。ただちに」

伝令は途切れた。雷が全てを焦がしたのだ。

暴れる龍屯雲の中では数百発の稲妻が発生し、

殺人機を全て撃ち落とした。


「これで終われば良いが…

魔国の連中…いや”神人類”が

この程度で終わらせるはずがないな」

魔国の軍機は全滅した。


一夜明けると

暗闇に紛れていた戦績が明るみに出て、

その悲惨さが目に浮かんだ。

見つけられなかったのは何も人だけにあらず、

具体的には何時も活気のあった朝市から見えた。


「…」

「親父…」

小型ミサイルで船の先端半分が消し炭にされた漁船。

冬風がお通夜の沈んだムードのように吹く。

何も言葉は出ない。眼から涙が出るくらいの気力はあった。

商売道具は家族同然、それは素人からプロまで共通。

何よりそうなると知らなかった故に何もしてこなかった自分が

一番恨めしいのかもしれない。そんな筈はないのだけれど


市場で休んでいただろう可愛げの合った猫も、

爆風に飛ばされて叩きつけられていた。

いつもの優雅で優しい毛並みは焦げて傷口が剥き出しに

なっている。何より睨みをきかせて怨念沸る表情のまま

逝ったと思われる顔が痛ましく残ってしょうがない。

店主が表情を見せることなく供養した。


日が昇る。

何もなかったように。

閲覧ありがとうございました

科国、魔国に籍を置く覚醒者は全員特定され

国に雇われています。一般市民として置いておくのも

危険ではありますけどね。

次回もお楽しみに♪

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